何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

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word54 「もしも 宇宙戦争起こっていたら」⑦

「君は頭を撃たれていないね?」

 

「……え」

 

「大丈夫。いきなり殺したりしない。質問に答えてくれるだけでいいんだ」

 

「日本語……?」

 

「はいか?いいえか?」

 

「……はい」

 

 困惑する僕を置いてけぼりにするように映像は進んだ。ただ単に似ているだけの可能性もある……でもこれはどう見ても……。

 

「じゃあまず、君に撃たれるはずだったチップを返してくるかな?」

 

「……はい」

 

 ニット帽の男がポケットから1つの小さな機械を取り出した。青い色をしていた。

 

「ありがとう。じゃあ奥に進んで、手前の椅子に座って」

 

「……はい」

 

 ニット帽の男は僕がお隣さんに会った時よりもびびっているようだった。とにかく「はい」と答えるだけで、何も考えずに言われた通りにしているという風に見える。

 

 僕はもうこの男がどんな結末を迎えるかよりも、この宇宙人がどういう連中なのかということに頭が引っ張られていた。しかし続く映像には一気に思考を動画の方へ引き戻される衝撃があった――。

 

 ニット帽の男の顔が別人に変わったかと思うほどひきつる――。

 

 既に地球人の人体実験が始まっていたのだ。先ほど映像の中で奥へ進んでいった若い女が……周囲にいた人間がもう二度と治ることは無いだろうほどに傷ついていた。

 

 裸にされ脳に何か付けられている若い女は見たことが無い動きをしていた。軟体動物かのように体全体をぬめぬめと動かし、時折両手足が痙攣を起こしながらばたつく。

 

 その隣のスペースにいた男も、後ろ向きで全力ダッシュを繰り返す奇怪な動き。ただ後ろ走りが早いのではなくて前に走る映像を逆再生しているみたいな、とても正常な人間ができる動きではない。

 

 そして奥には、シンプルに頭を開いて解剖されている人間がいた。

 

 こういうとんでもないグロ描写が来てしまったかと僕は後悔する。選択肢を間違っていたようだ。10秒ほど見て耐えきれなくなった僕は画面を手で覆った。

 

 ここで見るのをやめようかとも思う。けれど、このニット帽の男の結末までは見届けることにした。

 

「私たちの言うことに従っていれば君にはこんなことしないから大丈夫。さあ、座って」

 

「…………」

 

「座りなさい」

 

「……はい」

 

「話を始める前に1つアドバイスだ。とにかく私の求めた答えだけを話すんだ。はいかいいえで答えられるものにはその2つのどちらかのみを…………返事は?」

 

「はい」

 

「うん、良い子だ。では君が我々の攻撃から逃れて助かった時の状況をなるべく詳しく話してもらおうか――」

 

 僕はそこからの映像をほとんど画面を隠しながら視聴した。時折近くにあるグロテスクが映り込んでこないか心配だったので、ホラー映画のクライマックスシーンを見る時と同じくいつでも画面から目を離せるようにした。

 

 結局男に救いは無かったし、最後はかなりあっけなかった。映画のように上手くいかない絶望が常にあった。彼は物語の主人公では無かったのだ。

 

「最後に……これから君はどうしたい?もう1度よく狙ってチップを撃たれたいか、帰りたいか、この2択だ」

 

「……家族に会いたいです」

 

「本当にすまない」

 

 これで頭を後ろから撃たれて終わり。僕はニット帽の男が絶命すると共に、黒いパソコンを閉じた。

 

 イヤホンを取って布団から出ると、背中に汗をかいていたことに気付いた。部屋の空気は映像を見始めた時から何も変わっていないのに、存在にありがたみを感じてほっとする。

 

 1階から父のよく響く笑い声が聞こえる。普段はうっとおしく感じるけれど、今はもっと近くで聞きたい。しばらくこの怖さは消えないんだろうな。僕は悪夢を見た時は翌日まで引きずるタイプだ。

 

 でもまあ、元々こういう風に楽しもうと思っていたのだから、ちゃんと目的は達成できた。

 

 ああ、そういえば……お隣さんと映像の宇宙人の関係はどういうものだったのだろう。地球を救う為の検索をしてからお隣さんと顔を合わせていないけど、本当は悪い宇宙人だったり……。

 

 そんなことを考えながら、黒いパソコンを片付けている時だった――。長らく見ていなかったスマホも目に入る。ちょうどそのタイミングでスマホが振動した――。

 

「2023/01/27 16:37 折原 裕実 スタンプを送信しました」

 

 メンタルが弱っている僕は別ベクトルの恐怖を受けて、今しがた見た映像以上の戦慄を覚えた。

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