何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー 作:木岡(もくおか)
「うん。てっきり男装が見られるもんだとばかり」
「期待してた?」
「いや、冗談。本当に男装してたら困るって。最後まで悩んでたのも驚き」
「安物のカツラしか用意できそうに無かったし、髪をベリーショートにする勇気も無かった。私、まだまだだな」
「え」
話しながら、ラーメン屋のほうに向かって歩き出す。短い距離だけど、昨日予習した通り車道側を歩いた。
「電車通学じゃないよね?」
「うん。徒歩通学だね」
「もしかしたら電車の中にいるかもと思ってさ、ちょっと探したんだけどいなかったから」
「折原さんは電車通学か」
「そう、それに同じ電車通学だったら、私より先の電車で来てくれてたって事じゃん」
「ああ、そっか。そうなるね」
店が空いてる時間が良いという理由で待ち合わせの時間は昼前になっていた。2人とも早く着いたので、時刻はまだ11時30分にもなっていない。
だから、ラーメン屋の入り口を開けるとすぐにタオルを頭に巻いた店員が席に案内してくれた。
「いらっしゃーせー。何名様ですか」
「ふ、2人です」
僕が答えた。2人だと。そう、女の子と、折原と2人きり。待ってるほどいないとは言っても、店内に客はそこそこいる。その人達にも見られてる――。
緊張は店内に入るとさらに加速した。店中に広まる濃い中華の匂いを堪能する余裕もない。奥へ案内される間、僕は前だけを見てまた「自分はイケメンだ」と頭の中で言い聞かせた。
「ごゆっくりどうぞ―」
お兄さんが気を利かせてくれたのか、ブラインドになっている窓際のテーブル席に辿り着く。僕はそこで、周囲にバレないくらいの深呼吸をしてから、折原の対面の席へ座った。
「うわあ。中はこんな風になってるんだね。ワクワクしてきた」
しかし、少し頬を膨らませながら笑う折原がそこにいて、僕の心が折れてしまいそうになる。
やっぱり無理かも――。デートとか早すぎたかも――。だって、かわいすぎる――。
「め、メニューはこれか……。何にする……」
「ああ、これがおいしくないってやつ?」
胃の当たりが痛くなってくる。俯きながらとりあえずメニューを渡して、落ち着く時間を稼ごうとした。けれど、折原が小声でささやくように言ったものだからさらにかわいいが膨らむ。
「私何にしようかな。これはダメだとして、本当のおすすめは何なの?」
「そうだね……。俺は……豚骨ラーメンが1番好きだった……気がする」
「……ねえ、緊張してる?」
息の仕方すらも忘れてしまいそうになっていた僕は、言われた言葉で思わず顔を上げる。
「え」
「緊張するよね。私も実はしてるんだ。男の子と2人でご飯食べに来たのなんて初めてだしさ」
「そ、そうなの?」
「うん。たぶん君とじゃないと無理だった。なんかさ、話しやすいよね。そういう雰囲気がある。メッセージでも話しやすかったから勢いで誘っちゃったんだけど、やっぱ会うと緊張する」
「あ、そういえばごめんね。この前は夜にいきなりメッセージ送っちゃったりしてさ……」
「ううん。嬉しかったよ」
折原が優しく笑う。
僕ってそうなの――。折原さんから話しやすい感じなの――。それって良い意味でだよね――。
高速回転でオーバーヒートしかけていた頭がまとまり始める――。
そして、その瞬間。完っ全に惚れた。
僕は決めた。頭で決めたのではなく、心や本能的な何かが決めた。
この子とどうしても付き合いたい、絶対近いうちに告白するんだ――と。