何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

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word58 「夢 叶え方」⑥

「それにしてもヨーグルトドリンクってのは偉大だね。あんなに口の中痛かったのにかなりマシになった」

 

「めっちゃ効果あるよね。マヨネーズとかもさ、辛いの食べる時にいいよ。でも……」

 

「でも?」

 

「……でもさ、マヨネーズ系のサラダとか一緒に食べちゃうと……辛さを楽しめなくなっちゃうんだよね。あれはヨーグルトよりも長く口の中をコーティングしちゃうんだよ」

 

 会計は約束していた通り割り勘で済ませて、外に出るとカラオケを目指して歩いた。風が強くなっていて、汗をかいた体に寒さが染みた。

 

「そうなんだ。じゃあ辛党の人にとっては邪道みたいな?」

 

「別に悪ではないけど私は無いかな。マヨネーズと一緒に食べるくらいなら辛い物は食べない。同じ理由で辛いラーメンにタマゴ入れちゃうとかもやだ。タマゴもね、全然辛くなくなっちゃう。なのに何で入れる人いるんだろ」

 

「あー、タマゴはインスタントの激辛ラーメンとかに入れてる人結構いるよね。それは分かるっていうか……あの、タマゴは俺もやっちゃうかも……」

 

「ええー」

 

 途中で寄りやすい場所にあったコンビニに入った。2人ともペットボトルの飲み物を選んだ。男友達とカラオケに行くときは店に入る前に飲み物を買うのが常識だったので、僕が提案した。店で頼むと何倍も高い。

 

 ついでに僕は徐々に蘇ってきている辛さを完全に絶つ為に甘いチョコレートも買った。支払いはさっき割り勘だったからと僕が負担した。

 

「俺払うよ」

 

「……あ、ありがと」

 

 レジに入る前に言うと、折原はぼそりと返事をした。

 

「さっきの店さ、意外と若い人多かったよね」

 

「え……ああ、うん」

 

「しかも女の人のほうが多かった。俺あんな感じだとは思ってなかったなあ。なんとなく激辛好きっておじさんが多いのかと」

 

 引き続きカラオケを目指して歩いた。あとは人通りの多い道に出て、信号を2個ほど過ぎれば着くという道のりだった。

 

「ああでもネットとかでは言われてるよね。甘党には意外と男の人が多くて、辛党には意外と女の人が多いとかって」

 

「確かに言われてみればそうかも。男も基本的に甘い物好きだしなあ。うちの母さんとかちょうど辛い物好きで甘い物嫌いだな、そういや」

 

「私は甘い物も好きだけど……」

 

「食べ物の好みにあんま性別関係ないか。皆それぞれ違うね」

 

「うん……皆それぞれ……」

 

 ラーメン屋を出てからの折原はどこか遠くを見る時間が増えた。たまに会話のテンポが不安定になる。ぼんやりしているのではなくて、別のことを考えているような感じだった。

 

 これから同級生に自分が歌っているところを見られるから緊張しているのか。ただでさえ折原は友達にも歌が上手いのを隠しているのだし、やっぱ隠し事を打ち明けるみたいで恥ずかしいのか。緊張しているのは僕も同じだけど……。

 

「ここのカラオケよく来るんだけどさ、会員登録してるから私が受付していい?」

 

 店に入る手前で、スマホを取り出しながら折原が言った。

 

「そうなの。じゃあお願いしようかな」

 

「うん、時間はどうする?」

 

「どうしよう……2時間とか……でも2時間なら……ショートフリータイムみたいなやつのほうがお得になる?この店にもあるかな」

 

「3時間パックがあるね」

 

「じゃあそれにしようか」

 

「うん……」

 

 折原が受付にいて店員とやり取りをした。女性の店員だったし僕は少し後ろで見守った。

 

 折原の背中を見ながら、通う高校とは違う地域であまりアクセスが良い場所でもないカラオケ店に何で会員登録してるんだろうと思った。家がこの辺だったりするのだろうか。

 

「7番のお部屋だって。行こ――」

 

 指定された部屋を探して廊下を歩く間も、折原のテンションは上がってこなかった。僕もそんな折原が気になって、ラーメン屋にいた時よりも静かになってしまっている。

 

 これじゃ駄目だと思った僕は7番の部屋に入ると、わざとらしく手首を回して見せた。

 

「よーし!歌うぞー!」

 

 こういう時は男の僕がリードして緊張を解いてあげなきゃ、僕は元気よく言った。

 

 それなのに折原はドアを閉める前に回れ右をする。

 

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

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