何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

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word18 「何時から 並べばいい」

 明日は新作のゲームが発売される日である――。

 

 ずっと昔から続いているシリーズの最新作で、今年でなんと30周年。モンスター育成要素がある王道ファンタジーRPGは3年くらいおきに新作が発売される度、世間全体で大きな話題になる。しかも30周年記念作品の今回はより注目されていた。

 

 僕が生まれる前からあったゲームだけれど、僕もそのゲームの大ファンだった。

 

 高校生になってからはコンシューマーゲームから離れていたが、そのゲームだけは明日の発売日に買ってプレイするつもりだった。PVが発表されてからずっと楽しみにしていて、ついにこの日がやってきたかという気分である。

 

 僕は待ちきれなくて、今公式から公開されている情報を自室で見返しながらにやにやしていた。

 

 ああ、早くプレイしたい。このゲームの全貌を自分の手で味わいたい。

 

 ただ、問題があって……僕はそのゲームを予約していない。

 

 前から買うつもりではあったのだけど、なんだかめんどくさくって。昔よくゲームを買っていたような近くの店はいつの間にか潰れてしまっていたし、そもそもゲームを予約して買うって自分1人ではやったことがないからである。

 

 あとは、まあ予約してなくても午前中に行けばさすがに買えるっしょという考えもあった。実際そうだと思う。いくら人気ゲームとはいえ初日からどの店も完売ってことはないはず。最悪、今のご時世ならダウンロード版という手もある。

 

 けれど直前になってさらに問題が1つ。

 

 できれば初回限定版がほしい……。

 

 コントローラーのカバーやらストラップやらが付いてくるやつで、パッケージも普通のやつより気合が入っているやつだ。

 

 基本的に僕はそういうところまでこだわらないタイプで、初回限定版というのがどういう物か知りもしなかったのだが、つい数日前に内容を見た時一目惚れしてしまってどうしてもほしくなった。

 

 大抵の店では店頭販売はしてなくって、予約せずに買おうと思えばメーカーの公式ショップに行くしかない。

 

 そして、おそらくそこで買おうとすれば開店前に長蛇の列に並ぶ必要があるだろう。いつから並べば買えるかも分からないのでなるべく早く行って。

 

 正直めんどくさい。欲しいけど早起きして何時間も立って待つのはだるい。でも、やっぱ欲しい。

 

 こんなことならもっと前から準備しておけば良かった。黒いパソコンを持っている僕なら1番安いところで予約するのも、懸賞で当ててしまうのも訳ないというのに。

 

 だがしかし、それすらも大した問題ではない。黒いパソコンなら今からでも確実でより良い初回限定版までへの道を教えてくれるだろう。

 

「何時から 並べばいい」

 

 僕は黒いパソコンにそう入力する。何時から並べばなるべく時間を使わないでいいか、いつ並べば最後の1人になれるのかを調べることにした。

 

 と、そんな生温い検索をするつもりはない――。

 

「何時から 並べばいい(エロ)」

 

 僕は鋭い手つきでワードを付け足した。

 

 最後だろうが列の中盤だろうが、ある程度長い時間並ぶのは変わらない。だとしたら、並んでいて一番心地が良い場所を狙うべきだと賢い僕は考えた。

 

 それはつまり数人はいるであろう綺麗な女性の後ろとかで、入力せずとも僕の考えを汲み取ってくれるかもしれないけど、僕はワードを付け足したのだった。

 

「7時12分11秒~7時13分34秒の間に到着すれば、あなたの望む位置に並ぶことができます。」

 

 多くは語らないその文を見て、本当に今日の僕は冴えていると思った。その後、明日のゲームプレイを妄想しながら眠りについた――。

 

 

 翌日、時計をよく確認しながら問題なく店へ辿り着いた僕はちゃんと望んでいたような光景があることに安堵した。小さくガッツポーズをして、何知らぬ顔で最後尾に並ぶ。

 

 並ぶ際にすれ違い、ちらりと見た横顔から推測する年齢は23歳。朝方でしっかり支度もしてなさそうなのにきめ細かくふわっとした栗色の髪と、びっくりするくらい綺麗な二重の目。

 

 マスクをしているから顔の全体は見えないが、とんでもなく上玉だと確信を持てる女性がそこにいた。

 

 おまけに体もナイスバディ。割と軽い服装で太ももは後方から丸見えだった。これから開店までのおよそ2時間、ずっと拝むことができる。

 

 それから僕は前から香ってくる良い匂いを、鼻で気づかれない程度に精いっぱいかき集めながら時間が来るのを待った。

 

 はあ~……良い匂いだ……。

 

 途中、係の人に「もう少し詰めてください」と言われるラッキーイベントもありつつ、ゲーム以上に価値のある物を手に入れた休日の朝であった。

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