何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

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番外編 2 「人類 滅亡」②

 初めての出会いは深夜2時。そんな時間なのに父も母も外出している自宅のアパートで、見慣れない黒いパソコンを見た。

 

 私も家にいたくなかったので外出していた。知らないものは放っておいて、誰もいないうちにゆっくり寝たい。しかし、遮るように私が使う枕の上に黒いパソコンはいた。

 

「何これ」

 

 見つけた瞬間に私は言った。

 

「このパソコンにはありとあらゆる全ての疑問の答えが入っています。あなたは気になる言葉を入力することでその答えを知ることができるでしょう。しかし、それにはルールがあります。答えを検索することができるのは1日に1度だけです。1日に1度であればどんな質問にも答えることができます。宇宙のことでも、未来の事でも。そう、このパソコンならね。」

 

 答えは眠気眼で雑にキーボードを叩いた私の元へすぐに届けられた。

 

 使われてない布団の中へ、黒いパソコンを挟む。そこから私の人生は変わった――。

 

 初めは「お金 欲しい」とワードボックスに入れた。黒いパソコンの性能は疑わなかった。他に頼るものも信じる物も無かったから、神様が私にくれたのだと決めた。神様なんて信じていなかったけど、救いの手は誰にでも差し伸べられるのだと思った。

 

『3丁目のホストクラブ「ラスト・プリメーラ」の向かいにあるアパートの裏、最も古い室外機の下を覗いてみてください。』

 

 パソコンはそう答えた。

 

 私は指示通り、私が知っている3丁目に行って、ホストクラブの向かいにあるアパートの敷地内に入った。

 

 いくつも似たような室外機が並んでる中、明らかに1番古い室外機はあった。内側から草が生えてきていて、犬の小便のような跡もついている。

 

 周囲を確認して頭を地面に付けると、茶色い封筒がそこにあった。

 

 掴むと重みと厚さで分かる。もしもこの全てが1万円札なら……。

 

 鼓動を早めながら、近くの公園のトイレに移動して、中身を数える。すると、82万円もの札束だった――。

 

 

 私はしばらくビジネスホテルで生活することにした。黒いパソコンを鞄に入れて持ち出して、1泊5000円。高いホテルではないけど、自宅のアパートよりはずっと豪華。

 

 ご飯はコンビニで少し高い弁当を買った。好きなお菓子を買って食べたのも久しぶりのことだった。野菜も果物も、長く食べていなかったものは片っ端から腹に入れた。

 

 最近は髪の毛がよく抜けるようになっていたし、常にお腹の調子が悪い。きっと栄養不足とストレスが原因だったんだけど、死ぬことはなさそうだから放っておいた……。

 

 それが1週間くらいで劇的に改善された。

 

 前から欲しかった服やバックも買った。収納する場所はないので、1着だけだけど。

 

 お金を好きに使うのに抵抗は無かった。茶色い封筒の中に「死ぬので好きに使ってください」と書かれたメモが入っていたからだ。

 

 その間、黒いパソコンでは大したことは検索しなかった。お金がたくさんあるだけで抱えきれないほど幸せだったから。

 

 前から気になっていた疎遠になった友達の現在だとか、テレビに出ている好きな男優の前にあったスキャンダルの真相だとか。ちょっとビックリしたのは父と母の過去についてくらいだった。

 

 元気になった私がお金を30万円くらい消費した時だった。私は今までで1番気合いを入れて黒いパソコンの前に座った。深呼吸をして、柄にもなく数分間の間、瞑想なんかもした。

 

 私はここ2週間くらいでたくさんのお金を使って、好きなことをしたが……それは最後の晩餐のつもりだった。黒いパソコンを手に入れてから数日後には、この旅の最終目標は決めていた。

 

 いくら私を嫌っている両親でも面倒なことになっていないかと私のスマホをしきりに鳴らしてきて、無視することもできなくなってきていたので実行に移すことにした。

 

 検索するワードは……。

 

「人類 滅亡」

 

 私が幸せになることを目標に生きてみることも考えたけど、私はこちらの道を選んだ。私の中にある憎しみを発散する道だ。

 

 私が幸せになるか、全人類を不幸にするかを天秤にかけた時に、いとも簡単に道は決まった。そんなもの全員を地獄に落としてやるに決まってる。

 

 私1人の力で何ができるとも思わないけど、きっとこの黒いパソコンなら道を示してくれると思った。

 

 そして、願いはどうやら叶うらしいということがEnterキーを押すと分かる。黒いパソコンはできませんとは言わなかった。

 

 ……………………。

 

 なるほど、でもこのやり方だとやっぱり私も死ぬな……。

 

 それが分かっても私は笑っていた。

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