何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

96 / 215
word39 「記憶 消す」③

 毎日黒いパソコンを使う度に、扉を開け、ボックスを開け、衣類を掻き分けて取り出し、また後を残さないように丁寧に戻す……。その作業がめんどくさくなって段々やりたくないと思ったのは事実である。そして、作業を少しずつ怠るようになっていったのもまた事実……。

 

 しかし、黒いパソコンが他人に知られた時の危険性を僕はちゃんと分かっていた。重く重く受け止めていた。綺麗に隠すのをめんどくさがりながらも、さすがにバレたら終わりの状態で、黒いパソコンを隠さずに外へ出ることなんてできなかった。

 

 だから、バレても大丈夫なように準備をしておいたのである。

 

 まさかまさか僕が部屋にいる時にバレるとは思っていなかったけど、まあこんな場合も問題なく対応できるほどの準備をしておいた。

 

 なんと僕は人の記憶を消すことができる。その力を手にしていた。少し前から。

 

 油断していたのは、万が一バレても大丈夫だからだったのだ――。

 

 

 その力を手にするには3回、黒いパソコンでの検索を要した……。まず1つ目のワードは……。

 

「記憶 消す」

 

 物凄くシンプルな検索ワード、検索をしたのはちょうど1ヵ月まえくらいのことだ。検索をした理由は正に黒いパソコンがもしバレても大丈夫なようにしたいと思ったから。雑に隠せる楽ちん生活になりたかった。

 

 黒いパソコンはその検索に対して「あなたの力ではできません」と答えた。僕も正直なところ、どうせそういう答えだろうなと思っていた。

 

 人の記憶を簡単に消す方法なんてあるわけ無い。

 

 しかし、黒いパソコンは続けてこんな文を表示した。「後日ショッピング検索をしてみてください」。

 

 それを見た僕は次の日、また黒いパソコンの前に座った。

 

 言われた通り、ショッピング検索とやらをしてみる為に。

 

 けれど、その前に得体の知れない黒いパソコンでのショッピング検索が気になったので僕は先にそっちから検索してみることにした。ショッピング検索を勧められたけど一体何だったっけ。

 

 それが記憶を消す力に辿り着くまでの3つの検索の内、2つ目だ――。

 

「ショッピング検索 とは」

 

 スマホでもよく行う単語の意味の検索、「とは検索」。存在はしっていたけど、詳しくどういうものかは知らなかったショッピング検索について教えてもらった。

 

『ショッピング検索は宇宙中にある物の内、商品として売られているものの中から、条件に合う物を見つけ出し、望むならばそれを取り寄せることができる機能です。購入には毎日の検索で貯まるポイントを消費する必要があり、購入にも1日1つまでの制限があります。なお、所持ポイント以上の値がする商品は検索しても表示されません。』

 

 黒いパソコンにはこんな文が表示された。

 

 ざっと読んだだけで分かる。えれえ機能や。まだこんなのが隠れとったんかい。

 

 実のところ、僕はこのショッピング検索をただのショッピング検索だと思っていた。少し便利なくらいの。たぶん欲しているものが1発で表示されて、最も安く売られているところが分かる機能ではないかと。

 

 それがまさか魔法のような機能だったとは。良い意味で裏切られた。

 

 ――さらに次の日、僕はまた黒いパソコンの前に座った。新たな体験に胸を躍らせながら。

 

 初めからチートアイテム、知れば知るほどチートアイテム、そしてさらに1段階進化する。記憶を消す力に辿り着くまでの3つの検索の内の3つ目を検索した日は、そんな進化を目の当たりにする日であった。

 

「記憶を消す 道具」

 

 右クリックから始まるショッピング検索で行った元々の目的を達成するためのワード、Enterキーを押すと黒いパソコンは見たことが無いタイプの画面へと切り替わった。

 

 黒でデザインされた、どこかにありそうな通販サイト。利用者は僕しかいないはずなのに上部にユーザーIDやお届け先住所が書かれている。下を見れば購入履歴やおすすめ商品の欄も用意されてるだけど、そこに並ぶ商品は何もなかった。

 

 そして僕が望む商品は画面の真ん中に表示されていた。

 

 1つではなく、2行使って画像と共にいくつか並んでいる記憶を消せるらしい商品。僕は各商品の説明を読んで、中から最も望むものを選んだ。

 

 深く考えずに押した購入のボタン。押せば、住所や減少するポイント量の確認画面が表示されて、さらにOKのボタンを押せば……すぐに日付と「お届け済み」という文字が表示された。

 

 あまりにも早い配達。どこに届いたのか分からなかったのだけど、ちょっと視線を逸らして部屋の真ん中を見れば、既にそこに1つの段ボール箱が置いてあった。

 

 入っていたのは先程まで黒いパソコンの画面に表示されていたものだった。プチプチに包まれたそれを持ち上げる時に僕の手は震えた――。

 

 あれから1か月とちょっと後、僕は今、その性能を姉に試そうとしている――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。