特級呪霊 阿部高和   作:修羅場好き

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伏黒 甚爾の回想

 

戦場において情報は命だ。

 

 

だから、信頼はできなくとも、信用はできる人物から入手する必要がある。

 

 

星奬体である少女の暗殺依頼を仲介してきた孔時雨という男はそういう意味では伏黒 甚爾にとって優秀な仲介人であった。

 

 

「星奬体暗殺の依頼をしてきた盤星教の幹部が襲われた?」

 

 

「ああ、正確に言うと、幹部だけじゃない。男全員だ。幹部の方も生きているのはいるが、アレはもう駄目だ」

 

 

「廃人にでもなったのか?」

 

 

「……ケツを掘られたらしい。もう、快楽しか頭に無い。奴らにとって星奬体なんざ、どうでもよくなっている」

 

 

「この業界でケツっていうと、アレか。例の特級呪霊」

 

 

「ああ、阿部高和だ」

 

 

特級呪霊 阿部高和に依頼主である盤星教が襲われた。その時点でこの依頼は自動的になかったことになる。生きてはいるものの、ガバガバになった尻と、快楽に侵された脳ではもはや、神を讃えることはないだろう。何しろ、何百年と続いた呪術関連の関係者ですら、一度掘られれば、ハッテン場に行くことしか考えられなくなる。

 

 

「ハッ、ホモに掘られて壊滅なんて、カルト集団の末路としてはお似合いだな」

 

 

「その通りではあるが、依頼がお釈迦だ。それに、こっちだって、色々準備してただけに金銭面の被害は結構出てるぞ」

 

 

「確か、阿部の懸賞金5億だったよな?」

 

 

「……止めておけ。アレはいくらお前でも無理だ」

 

 

「まあ、だろうな。俺も見えてる地雷を踏む気はねぇよ」

 

 

「日本にはかつて、特級呪霊が10体以上いた。今じゃ残り4体。全部阿部に喰われちまった。特級だけじゃない、強い1級、準1級なんざ、もうほとんど国内に残っちゃいない」

 

 

おかげさまで、呪霊による犠牲者は激減、呪術師はお仕事が無くなりましたとさと孔時雨はぼやいた。

 

 

「昔、呪霊が掃除機に吸い取られるみたいに公衆便所に吸い込まれていくの見たから知ってる。あれは一種の領域展開、それも強力過ぎて、俺でも回避不能だ」

 

 

「だろうな、禪院家の連中が総がかりで阿部討伐しようとして、全員掘られて呪術奪われたからな。今じゃあ、禪院家なんてつぶれかけのボロ小屋だ」

 

 

禪院家では非呪術師はまともな人間として扱われない。

 

 

かつて「禪院」の姓であった伏黒 甚爾も猿と呼ばれ、動物のように扱われていた。そんな、禪院家が阿部高和に手を出し、男が掘られ尽くされ、今では壊滅状態。まともな呪術師は分家にしか残っておらず、禪院家はもはや、絶滅危惧種に近い。

 

 

禪院家を風前の灯火にまで追い込んだ阿部高和に伏黒 甚爾は密かに感謝していた。

 

 

「確か、歴代初の女の当主が出るかもって話が出ているんだったか?」

 

 

「ジジイ共が認めるなら、そうなるな」

 

 

ただ、伏黒 甚爾はそうはならないことを知っている。誰でもない己の息子の中に禪院家が欲して止まない呪術の残骸が残っているのだから。

 

 

問題は、そう、いつ売り飛ばすかだ

 

 

最も高い値段が付くのは今ではない

 

 

もう数年必要だ

 

 

ただ、星奬体暗殺という大口依頼が無くなった以上、別口で金を稼ぐ必要はある。そんな 伏黒 甚爾の心境を悟ってか孔時雨はポツリと呟いた。

 

 

「なるべく無傷で星奬体のガキ攫えるか?」

 

 

「誰が、金払うんだよ」

 

 

「星奬体なら、金を払うやつは探せばいくらでも出てくる。ただ、盤星教ほど金払いは良くない」

 

 

「やっぱ、そうなるか」

 

 

金を使った戦略が使えない以上、単独でシンプルに動くしかない。

 

 

「呪術高専の敷地に入って油断した瞬間をサクッとヤッて拉致する。それしかないな」

 

 

まあ、それしかないわなと孔時雨も相槌を打った。

 

 

それが三日前だった

 

 

想定通り、星奬体の護衛として配属されていた五条悟は慣れ親しんだ呪術高専の敷地内ということで油断していた。

 

 

計画通り、五条悟を背後から刺し、星奬体を奪い去った。

 

 

正確には奪い去ろうとした。

 

 

ちょうどその瞬間、5体に分裂した阿部高和が呪術高専を上空から襲った。

 

 

天元様による結界に守られているにもかかわらず、腰の一振りで結界を破壊した。

 

 

 

 

「「「「「この分身って術式いい感じじゃないの」」」」」

 

 

 

それを見た瞬間、星奬体の少女を阿部高和に向かって投げ捨て、伏黒 甚爾は逃げ出した。

 

 

「そう、慌てるなよ。兄ちゃん」

 

 

その声はすぐ耳元で聞こえた。

 

 

「俺と一発。や・ら・な・い・か」

 

 

伏黒 甚爾は走馬灯を見ながら全力疾走でその場から逃げ出した。

 

 

背後から呪術高専が蹂躙される音が聞こえていた。

 

 

 





分身の人は阿部さんに掘られて術式を奪われました

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