特級呪霊 阿部高和   作:修羅場好き

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誤字脱字の報告誠にありがとうございました。


乙骨憂太の喪失

乙骨憂太という青年の人生は決して幸福なものではない。幸福ではなかった。

 

 

将来結婚を約束した折本里香を交通事故で失い、彼女が自身に害する全てを排除する呪いとなって以降、「生きてもいいという自信を持ちたい」と願いつつも死を願っていた。

 

 

そんな乙骨憂太は五条悟との出会いによって、呪術の道に歩むこととなり、呪術高専に入学をする。入学の手続きの途中に五条悟は簡単に現状を説明した。

 

 

「僕たち呪術師は絶滅危惧種なんだ」

 

 

淡々と五条悟は語った。

 

「絶滅危惧種ですか?」

 

「そう、僕たち呪術師は一方的に狩られている。里香ちゃんと同じ阿部高和っていう、特級呪霊によって」

 

眼を隠している布を払い、まっすぐに乙骨憂太を見ながら五条悟は上層部の意図を語る。

 

「呪術界ってのは、クソだ。人を陥れる、騙す、時には自分の肉親さえも簡単に売り買いする。そんな人間が上層部の大半を占める」

 

ピッと指を立てて、五条悟は一度間を置いた。

 

「だが、奴らは、今、追い詰められている。一方的に狩られて、もう、後がない。そんな中に見つかったのが、君だ」

 

「僕ですか?」

 

「正確には、君と里香ちゃん。上層部は里香ちゃんなら阿部高和を殺せるかもしれないと考えている。んで、君と里香ちゃんと阿部高和をぶつけようとしている」

 

本来であれば、君は危険すぎるとして、死刑判決が出てもおかしくなかった。でも、上層部は保護観察にして、君を鍛えるよう僕に依頼してきた。里香ちゃんが制御できるようになったら、阿部高和にぶつけるためにねと五条悟は付け足した。

 

「…そんな!里香ちゃんは何も関係がない!」

 

「そう、関係がない。むしろ、僕の問題だ。だから、君には戦わないで欲しい。僕が阿部高和を討伐する。その間に里香ちゃんの解呪を進める」

 

「解呪?」

 

「呪いを解いて、成仏させてあげるってことさ」

 

「できるんですか!」

 

「うん、できるよ」

 

「だから、阿部高和は誰に何を言われようと僕に任せてほしい。アレは僕が倒さなくてはいけない」

 

飄々とした態度から一辺倒、五条悟は静かに拳を握りしめた。

 

 

 

 

 

そして、乙骨憂太が呪術高専に入学してから3か月が過ぎた。徐々にではあるが、同級生とも打ち解け、友人関係が構築されていった。

 

乙骨憂太は失った幸福を取り戻しつつあった。

 

 

「傑。上層部がそろそろ動き出す。本気で折本里香を阿部にぶつけるつもりだ」

 

「君を敵に回してもかい?」

 

「あの老害共はやる。それも近いうちに」

 

馴染みとなった居酒屋で五条悟と夏油傑は話していた。

 

「だから、先に阿部を僕が潰す」

 

「…できるのか。正直、過去5年で阿部は1級を4人掘っている、上層部も相当ヤられている。呪霊も掘っていることを考えると、昔と比べ物にならないくらい強くなっている可能性が極めて高い」

 

 

「中途半端な術式を大量に抱えてもむしろ、邪魔になるだけだ。阿部の本当に怖いのは、術式の無効化・貫通能力、それと、恐ろしい程の移動速度だ」

 

「阿部の領域展開もあるだろう」

 

「ああ、だけど、それだけなら、僕の領域展開でも相殺ができる」

 

「なあ、生徒を守ろうとする姿勢は正しい。そうあるべきだと思うだけど、悟まで術式を失ったら、それこそ、すべてが終わりだ。折本里香をぶつけるという選択肢は必ずしも間違いではないと思う。女性である以上、傷つくことはないはずだ」

 

「駄目だ。万が一、呪霊操術で操られることがあったら、それこそ、本当の終わりだ」

 

「仮に呪霊操術を使うなら、乙骨憂太君を殺害しない限り無理だよ」

 

「…本当にそうか?」

 

「ああ、私の術式だったんだ。それは間違いない」

 

「それは傑が知っている呪霊操術のままだったらだろ?」

 

「阿部が術式の改造までできると?」

 

「そういう術式を手に入れた可能性はゼロじゃない」

 

「たしかにそうだが。それでも、悟が戦うよりリスクは低い」

 

アルコールが苦手な五条悟は一旦、ノンアルコールビールで喉を潤し切り出した。

 

「これでも、阿部について徹底的に洗ったつもりだ。アレは元人間、それも呪術とは何の関係もない一般人。ただ、事故で亡くなった自動車工場の整備士だ。それがいつの間にか特級呪霊になっていた。折本里香以上に出所不明だ」

 

「特級に至った過程も不明だったよな」

 

「呪霊になった瞬間から特級クラスだった説が一番有力でたぶん、正解。アレはたぶん、なんかの概念が呪霊になって、それがたまたま近くにいた人間の外見になったタイプ」

 

「それで、何が言いたいんだい」

 

「女の呪術師でも阿部は討伐できていない。帳を貫通できるからとか、それだけじゃない。純粋に阿部が速すぎるんだ。動きが速すぎて、誰にも補足できない。スピードがあれの最大の武器だ。アレの速度についていけるのは、もう、僕か甚爾のおっさんしかいない。折本里香は強い。でも決定的に速さが足りない。最悪の場合、乙骨が掘られて、折本里香の制御を奪われる」

 

そして、何よりも自分の責任だと思っているとは五条悟は口に出さなかった。

 

「だから、阿部は僕が討伐する。しないといけない」

 

「そうか、そこまで言うならもう止めないよ」

 

カキンとグラスを合わせる。十年前のリベンジ戦を静かに誓う二人の携帯電話に呪術高専が阿部高和に襲撃され、乙骨憂太が交戦中だという報告が届くのは数分後のことだった。

 

 

乙骨憂太の幸福がまた、崩れつつあった

 

 

 





次回、乙骨憂太 vs 阿部高和

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