「パンダは初めてだったが、こう、独特の締め付けがあっていいね」
未だに鋭角を保つ股間の剛直を引き抜き、阿部高和はそう一人呟いた。パンダは意識がないのか、ぐったりと床に倒れている。
「な、なんでここに校門にいたんじゃ」
刀に手を伸ばしながら恐る恐る距離をとる乙骨に対して、阿部高和は相変わらず人好きな笑みを浮かべていた。
「ああ、アレ分身な」
本体がここにいて、校門に分身がいるということはまんまと陽動に引っかかったことになる。里香を呼び戻すとう手段があるが、その場合、校門の防衛が瓦解する可能性がある。加えて、呼び戻している間は隙だらけだ。
「兄ちゃんはもうちょっとしたらタイプなんだけどな」
股間がむき出しのまま、阿部が迫ってくる。如何に膨大な呪力を持つ乙骨といえども、ここまで実力差があると切り込めない。自然体なのにまるで隙が無い。
とにかく、やるしかないと刀を阿部の首目掛けて振り回すが、腰の一突きで股間の豪槍が軌道に入り、あっさりと刀は粉砕された。
「私ごとやりなさい!」
その瞬間、パンダが起き上がり、阿部を羽交い絞めにした。抜け出そうと阿部がもがくか、突如自身の『縛り』が発生したことに気づいた。
「なんでメスになって…」
心の底から困惑している表情の阿部に対して、条件反射的に乙骨は動いた。可能な限りの呪力を練りこんだ拳を阿部の胸に叩き込んだ。
「…やるじゃないの」
どろりと阿部の身体が溶けた。
「これも分身!?」
「ええ、ここに来ているのは全部分身よ」
「パンダ君だよね?」
「その姉よ。弟と兄は掘られたショックで気絶しているから代わりに私が出てきたの」
「パンダ君のお姉さん?」
「詳しい話は後、まず狗巻と学長を助けに行くわよ。校門以外に分身はあと二体いるはず」
「本体はどこに?」
「京都呪術高専よ。京都校の学長を掘りに行ったってさっきペラペラ話してたわ」
走りながら乙骨とパンダは情報を交換した。学長もう、定年超えたジジイなんだけどとパンダが呟いたため、乙骨は想像してしまい、吐きそうになった。
「狗巻君はどこに?」
「天元様のとこに学長が連れて行ったわ。私は時間稼ぎで残ってたの」
パンダは走りながら天元について説明をした。
「確か、こっちには警備員の甚爾さんがいたはず」
「阿部が来たと分かった瞬間。真っ先に逃げたわ」
「……甚爾さん」
気持ちは分かるが警備員がそれでいいのだろうかと思わず、乙骨はため息を吐いた。その間も一人と一匹の足は止まらない。
「ドアが破られてる」
「もう来てるわね」
急いで天元の元に至る階段に足をかけた。
【潰れろ】【動くな】【死ね】【ふきとべ】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るな】【来るなぁぁぁぁ!】
最後の方は掠れてほとんど聞こえない。
「狗巻君!」
乙骨とパンダが乗り込んだそこには、下半身むき出しで白い液体に塗れ、床にうつ伏せで倒れた呪術高専:東京校の学長夜蛾。そして、壁際まで阿部に追い込まれて半泣きの狗巻棘が佇んでいた。
「来い!里香!」
乙骨はこの段階で躊躇なく、里香を呼ぶことを選択した。その瞬間、阿部は優し気な笑みを浮かべていた。
術式発動
「呪い貫通」「解呪」「人形封印」
呼び出された里香が突如光りだす。
「里香ちゃん!?」
慌てて乙骨は里香に抱き着いた。女性を傷つけられないはずなのに、何故。焦燥感だけが募る。
「兄ちゃん、俺は女性を一切傷つけることができない。いかなる状況においてもだ」
しかしと阿部高和の分身は指を立てた。
「本人にとって、益になることはできるんだぜ」
「ゆ、憂太?」
光が収まった先には、かつての思い人が佇んでいた。
「里香ちゃん?里香ちゃん!」
たまらず、乙骨はかつて無くしたはずの想い人を抱きしめた。
「ちょっと、何をしているのよ!」
パンダの怒号が響いた。乙骨憂太と折本里香が感動の再会を果たしているその間に、いつの間にか、阿部高和と狗巻棘の姿が室内から消えていた。
日本の滅亡は着実に近づいていた。
完結まで後5~6話になります。
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