白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第四十五話

 

 

 

 

 

 ──アイズ達side──

 

 

 風の剣と炎の剣がぶつかり合う。剣同士がぶつかる度に天地を揺るがす程の衝撃を発し、エルピスが形成した世界『月と聖火の箱庭(プロミス・ザ・ムーン)』を壊していく。

 

 燃え続ける炎に囲まれた湖。湖に映らない月がただ悠々と空に浮かぶ。その衝撃で湖が割れ、炎が消え、月が抉れる。

 

 しかし、壊れた側から修復されていくため、誰も『月と聖火の箱庭(プロミス・ザ・ムーン)』の安全性を疑ってないし、攻撃の手も緩めない。

 

  

 「【ウィン・フィンブルヴェトル】」

 「【アルクス・レイ】」

 「【ルミノス・ウィンド】」

 「──『聖なる風よ(テンペスト)』──『白く輝け(クラネル)』」

 

 

 世界を凍らせる氷雪が、必中の砲弾が、圧縮された風弾の嵐が、白く輝く風の斬撃が一柱(ひとり)の亜神へと向かう。

 

 しかし、亜神は余裕綽々にそれらを見つめ、ただ右手を出して詠唱する(呟く)

 

 

 「──【月鏡】」

 

 

 世界が反転する

 

 上が下に、右が左に、前が後ろに、そして『現実』は『虚構』に。

 

 【魔法】が炸裂する。しかし、何一つとして『現実』に作用する事はなかった。

 

 4人が驚くのも束の間、エルピスが解説する。

 

 

 「ふふっ、驚いてるね。これは私が持つ『魔法』の一つ。その実態は『権能』に近いものがあるけど、所詮神の力(アルカナム)の残滓のあり合わせでは『権能』には届かなくてね。それでも勿論、『権能』に近いだけあって、並大抵の『魔法』では叶わないよ。それ故に、この世界でしか発動できないというデメリットはあるけどね」

 「さて、話を戻そうか。この【月鏡】は、この世界に存在する『現象』を反転させる効果を持つ。ほら、見てごらん? 空に浮かぶ月が消え湖の水にただ映るだけになり、周囲で燃えていた炎は全て熱を発さず空間を揺らすだけになった。それ即ち、『現実』の『現象』が反転し、『虚構』の『現象』が現れた」

 「……つまり、『現実』の『現象』である『魔法』は全て『虚構』になったから、『現実』の存在である私達には何の効果も及ぼさないという事?」

 

 

 エルピスの説明にアイズがざっと纏める。

 

 その言葉にエルピスは大正解と言わんばかりの拍手を送る。

 

 

 「流石アイズ、その通りさ。この【月鏡】の前では、物理法則を無視する君の風を無意味になる。我ながら良い『魔法』だろう?」

 「……そうね。まさか、こんな大それた『魔法』があるなんて思いもしなかった」

 

 

 アイズはまるでびっくりしたかのように言うが、エルピスの目には()()が映っていた。

 

 

 「ふふっ、アイズ。私だって一応神なんだよ? 私の目は『嘘』が見える。君は全く驚いていない。流石は世界は渡った者、たかだか『反転世界』じゃ驚きもしないか。それとも、まだ私が、いやベルすら知らないナニカでもあるのかな?」

 「……無いよ。少なくとも、もう私が持ってる全てはベルが知ってる。ベルが知ってるって事は、勿論貴方も知っている」

 「ふむ、嘘は言ってない。しかし、違和感が拭えないね。君が、そんな低レベルな筈がない」

 

 

 エルピスはそう言うが、アイズからすれば亜神視点から言われてもという感じである。

 

 アイズは一応エルピスに勝つ方法として一つ思いついているが、その方法を使おうとすると確実に成功する前に妨害されて失敗する未来しか見えないため、()は使う事ができない。

 

 アイズは自分の風を通して、3人に作戦を伝える。

 

 

 『了解』

 

 

 言葉に出さず、4人はアイコンタクトで意思疎通をする。

 

 

 「作戦会議は終わりかな? じゃあ、第二ラウンド開始だ、ね!」

 

 

 エルピスはレフィーヤの元へ高速移動し、蹴りを放つ。

 

 

 「まずは1人目かな!」

 「やっと感覚が戻りました。もう油断はしません。【盾となれ、破邪の聖杯(さかずき)】──【ディオ・グレイル】!」

 

 対してレフィーヤは友の魔法を唱え障壁を展開し、さらに短杖(ワンド)と短剣を交差状に構え、エルピスの蹴りを受ける。その蹴りの威力は例え上級冒険者であってもその一撃だけで戦闘不能に陥らせるものであった。

 

 障壁こそ破れたが、予めしていた武器の防御で衝撃の大半を殺したことによりレフィーヤ本人にそこまでダメージは与えなかった。

 

 その()()()防御にエルピスは驚愕する。

 

 

 「……驚いたね。さっきまでの君なら、確実に捉えられなかったと思うんだけど」

 「確かに今の私の【ステイタス】は他の3人に比べて格下も格下です。いくら前世でレベル10まで達したとは言ってもです。兄さんもお姉様も私も例外なく転生という形で世界を渡っている以上、【ステイタス】のリセットは不可避ですからね」

 

 

 レフィーヤは膝にかかった埃を両手で払う。短杖(ワンド)をエルピスに迎えて構え、紡ぐ。

 

 

 「【◾️】──【アルクス・レイ】」

 「おっと、驚いた。君の【二重追奏(ダブル・カノン)】は警戒していたんだけどね。まさかそんな()()()()()()で詠唱を簡略化するとは。ああ、その恐ろしい『魔力』の精密さで分かったよ、私の蹴りを耐えられた理由も。素晴らしいよレフィーヤ、君は間違いなくベルとアイズの義妹だ。その馬鹿馬鹿しさが2人に似ている」

 「それはそうです。2人の横に立つために、常識という常識を全て壊して来ましたから」

 「……レフィーヤ」

 

 

 エルピスはレフィーヤに惜しみない賞賛を贈り、アイズはレフィーヤが自分達と同じ『領域』にいると確かに感じた。

 

 

 「【レア・ラーヴァテイン】!」

 「おっとっと」

 「私達を無視してもらっては困るな。そうだろう、【疾風】?」

 「ええ、そうですね。そろそろ『彼』も動き出したようですし、私も好き勝手やるとしましょう! さあさあ今宵始まるは英雄達の宴! ならば、『古代三大詩人』の1人であり、古き彼の友として面目躍如と行きましょう!」

 

 

 

 

 

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