無能な変身魔術師の真髄 ~武器と道具が女の子になると、最強になれるんですね~   作:室星奏

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03 王虎・キングタイガー戦

『グルルル……』

「――ッ、あいつ、アレ食らってまだ生きてんのか?」

 

 毛皮が一部焼き払われたにも関わらず、王虎はその巨躯をゆっくり起き上がらせ、こちら目掛けて再度威嚇の声を上げる。

 さっきの女の子が変身した魔杖だという事を知っているのか、先ほど落下した魔杖を睨みつけ、今にも踏みつぶさんと前足を地面にこすりつけている。

 この状況を打開する――それにはやはり、先ほどの魔杖の力が必要なようだ。しかし、先ほど手に入れたのもあってこの杖がどういう物なのかも理解していない。

 

『グルルゥァ――!!』

「っと――!」

 

 杖を手に取り、飛びかかってきたタイミングでその巨躯の下を抜け出し退避する。その隙を見計らい、魔杖の詳細を表示する。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 武器種:杖(魔術師専用)

 名称『天地開闢の魔杖』

 

 固有スキル:【森羅万象・術】

 【効果】

 一部天職を除き、使用者は全ての魔術が使用可能になる。

 

 スキル:【魔力循環】

 【効果】

 使用魔力が半減する

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 確かに一目見た時から魔力は微かに感じてはいたものの、まさか全ての魔術が使用可能になる杖とは想像もしていなかった。これひょっとしなくても、この世にいる全ての魔術師が欲しがるだろう。何せ、これを持つだけで敵無しになるような物なのだから。

 まあ当然のように、俺が持ったとしてもそんな効果は発揮されないみたいだが。この一部天職には、変身魔術師も入っているという事だろう。じれったい。

 

 宝箱から手に入れたという事は、つまりこの魔杖の現在所有者は俺という事になる。つまり、変身魔術行使の適応内というわけだ。だから俺の呼び声にも答えてくれたのだろう。

 

 へっ、勝機が見えた。

 

「変身魔術――……なんていえばいいんだろ。ん~……とりあえず、女の子!」

 

 先ほどは無意識だったが、原理はいつもの変身魔術と同じ道理な筈だ。

 変身させたい物に向けて魔力を送り込み、何に変身するかを脳内で念じ叫ぶ。変身魔術師にとって一番大切なのは、何に変身するかのイメージ力だ。それがどういう構造をしているのか、どういう動きをするのか、それら全てを脳内で想起して、その情報を変身させたい物に魔力を介して送り込むのだ。

 

 そうすればあら不思議。

 

 ボフンッ。

 

「……ぉ、おぉ」

「……」

『グルルルル……』

 

 先ほど現れた女の子が再び、俺の目の前に姿を現した。しかし元は杖でしかない為、歩く事もできなければ喋る事も出来ないみたいだ。まあさすがにそこまで便利じゃないわな。無能ですから。

 だけど、この子を杖として扱えば問題ない。

 物に変身させるのと生物に変身させるのとで、扱い方が変わってくるのは変身魔術師の中では常識中の常識だ。

 物に変身させた場合は何も考えなくていいが、生物に変身させた場合に至ってはその限りではない。生物に変身させた場合は一部行動を除けば、こちらが魔力を送って命令することによって、変身する前の物の力を使用することができる。

 今回の場合だったら、魔杖の固有スキルやスキルを使用できるというわけだ。先ほどの攻撃もそういう原理なのだろう。

 

「……よくわかんないから、とにかく凄いのでやっちまえ!」

『グルルルァーー!』

 

 王虎が激しい咆哮を上げ、無力の私とあくまで元は杖でしかない彼女はそれで軽く吹き飛ばされてしまった。壁に背中を強く打ち付ける。かなり痛い。

 しかし、彼女は何事も無かったかのように目を見開き、王虎に向けて手を広げる。

 

「――獄炎(ザボルグ・ガイア)

「……へ?」

 

 手から何重にも重なった朱色の魔法陣が展開され、陣に描かれた魔術文字が次第に炎を纏っていく。どうして? 何で魔法を展開しただけで地鳴りが起きるわけ?

 炎を完全に纏った魔法陣はひとりでに回転を開始し、壁や床を裂きながら王虎目掛けて勢いよく放たれる。

 

『グァ!』

 

 でかい図体をしているクセして、運動神経はかなり良く地面を勢いよく蹴り上げ、放たれる魔法陣を回避する。

 しかし、魔杖が一枚上手であった。飛びあがった場所目掛けて次なる魔法を叩きこむ。

 

「――神雷(ディア・ギガルド)

 

 今度は黄金色に輝く魔法陣が現れ、中心部から轟音を荒げ、大きな雷が放たれる。飛びあがって、身体を自由に動けない王虎に回避手段はない。

 さらには、先ほど放った魔法陣もスカした瞬間に急転回して再び王虎目掛けて動き出す。ホーミング付きかよ、本当に魔法か? アレ。

 

『グガァァアアァァァァ……ァア……』

「どあぁあ!?」

 

 爆風と共に、上空の王虎が二つの上位魔法によってはじけ飛ぶ。焼き焦がれたその巨躯は死体とかして俺達の目の前に落下し、瘴気と共に魔法石へと変貌する。さすがA級クラスのモンスターだ、回収できる魔法石の量の尋常じゃない。

 俺は、なんとか危機を回避することができたのだ。

 

「……にしても……なんだこれ、すげえ」

 

 俺の身体にもたれかかる魔杖の女の子に視線を移し、感嘆の声を上げる。いや、上げざるを得ないだろう。

 ……もしかしたら、もしかしなくても、ここで色んな武器や道具を回収して、女の子に変身させれば、この逆塔を攻略することができるのではないだろうか?

 

 そうと決まれば、さっそく上を目指すとしよう。さっきも言ったが、こんな暗い所に長居したくないからな。

 

 よっと立ち上がり、俺は歩きだす。

 

 ……あ、そうか。杖だから歩けないのか。歩き出した瞬間、支えを失った魔杖の女の子は地面に倒れ込んでしまった。

 仕方ない、何か手段を考え付くまで、お姫様だっこでもして運ぶことにしよう。女の子に変身した杖ならば、こういう扱いの方が適任だろう。

 

 ――あれ、これってもしかして、俺勝ち組になったのでは?

 そう考えれば、見捨ててくれたあのクソ野郎どもには感謝しなければならないな。

 

 とりあえず、まずは服を着せる事にしよう。眼のやり場に困って今後に支障が出てしまう。しばらくは、俺の服を貸してあげる事にしよう。




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