プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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ミキリハッシャマン先頭!先頭です!!大きく逃げる!!!大丈夫でしょうか!!?


これはめちゃくちゃに掛かっていますねぇ!!!!その場の勢いで投稿せず一息ついて今後の事も考えてくれると良いのですが!!!???


泥の中で輝く華

『1番になりたい』

 

 

 彼女はそう言った

 

 

 ああ、僕もそうなりたいと思った事はある。一度ならず、何度もだ

 

 

 群れを成す生き物である以上避けられない欲求と言えるだろう。男なら___いや女だって一度は夢見る地上最強というやつだ

 

 

 しかしその『1番』ってやつは、努力し、成長し、自分というものを理解していくうちにやがて現実的で具体的な妥協案へと収束していく、文字通り『夢』でしかない。皆やがて目を覚まし、現実を生きていく事になるのだ。遅いか早いかはあるだろうけど

 

 

 僕はかなり早く夢から覚めたタイプの人間だ。なまじそこそこテストの点の取り方が上手くて、身体を動かすのが苦手じゃなくて、それなりに人に取り入るのが上手だったもので___

 

 

 だから、一番を目指して努力するなんてコストパフォーマンスの悪い競争からは早々に逃げ出した方がいい事に気付けたんだ。全てを投げ出して身を削って、どこにあるかも解らない黄金で出来た玉座を目指すより、程々の汗を流して、程々にふかふかのソファに座れるよう生きた方が割にあっているだろう?

 

 

 

 

『1番じゃなきゃダメなの』

 

 

 

 そんな事あるものか。だってよく考えてみなよ。1番になれるのはこの世界でたった1人だ。君がどれだけ優秀でも、その考えに縛られていては得られるものも得られない。取りこぼし続ける生き方なんだよ

 

 

 

 

『だって、そういう風になっちゃったんだから!しょうがないじゃない!!』

 

 

 残酷な現実に打ちのめされて夢から叩き起こされた彼女は、それでも誰よりも速く、何よりも美しくありたいと言いながら泥にまみれて無様にのたうち回っていた

 

 なりふり構わず駄々を捏ねる自分が滑稽だと解っていても、それでも___それでも1番がいいと宣言して、自分を決して許さないのだ。既に夢の中の住人ではないというのに、彼女は夢から覚めていなかった

 

 

「本当に君は目指すのか!?1番を!」

 

 

 雷に打たれたかのような衝撃が僕の全てを作り替えたとでもいうのだろうか。あるいは、今初めて僕は自分がどう生きるべきなのかに気付いたのだろうか

 

 

 

「無茶で無謀でバカ丸出し!全くもって君が言った通りだろう!いい年こいて駄々こいてる君が滑稽かと聞かれれば僕もそうだと答えるしかない。しかしどういうことだ、今の君が放つ輝きの美しさときたらこれまでも僕の人生観をすっかり塗り替える程に飛び抜けているじゃないか!」

 

 

 彼女の手をとって僕は叫んでいた

 

 

「僕は1番になれなかった。そうだろう、そうだろうとも!だってこの世界には君がいるのだからな!」

 

「は!?え!?なんなの!?」

 

「1番になるべきは君だったんだ……!君ならなれる。その為に必要なものを僕が提供できるというのなら、まさに願ったり叶ったりと言ったところだ」

 

「嘘でしょアンタ……一体なんなの?」

 

「君をスカウトしたい。君のトレーナーにして欲しいんだ」

 

 

 逃げる事しかしてこなかった僕には、巨大な壁に立ち向かう方法なんて知る由もない。負け犬だ。認めよう

 

 途方もない努力を積み上げても世界一のトレーナーの座には届かない。上には上がいる。これも認めよう

 

 1番は常に1人。だがしかし、1人は必ず辿り着くのだ。頂点で輝く黄金の玉座に座るのがこの子で何が悪いんだ

 

 

「ダイワスカーレット。僕はもう一度、夢を見たいんだ」

 

 

「ほんっと……変ね、あなた」

 

 

 

 

 

___________________________________

 

 

 

 

 

「ねえトレーナー。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

 

 不意に、僕を呼ぶ声がした。

 

 どうやら仕事に集中する余り彼女の来訪に気付けていなかったらしい。僕は呼び声に反応して書類から顔を上げる

 

 いつの間にかトレーナー室に入って来ていた彼女___ダイワスカーレットは覗き込んでいた冷蔵庫のドアをバタンと閉めてこちらを見る。その目は静かな怒りに燃えており、トゲトゲした声色は質問というよりまるで詰問のようだった

 

 

 目上の者や見知らぬ人の居合わせる場では行儀の良い優等生を演じている彼女が、自分をさらけ出して接してくれるのはある意味信頼を感じて心地よいのだが照れ隠しなのかどうにも攻撃的な態度をとってしまう事が多いのはいただけない

 

 

 だがまあ僕は多感な時期の乙女心というものに少しばかり理解があると自負している。兎にも角にも彼女の悩み事を受け止めてあげるため、僕は努めて穏やかな空気を構築しようと笑顔で応対することにした

 

 

「やぁスカーレット。どうしたんだい?少々機嫌が悪そうだが……」

 

「あたしのプリン、知らない?」

 

「知らないさ。マジで知らない」

 

 

 間髪入れずに答えながら僕はデスクの下にあるごみ箱を足で蹴るようにしてゆっくりと奥の方に押し込む。恐らくぼくはそのプリンについて知っている。なんなら味についてのレビューを軽く語ってあげられる程度には知っている。でもまあ恐らく彼女は僕が味の感想を語るのを求めないだろうが

 

 

「なんか甘い匂いするわね。この部屋」

 

「ぼくの君への愛が身体から溢れてるんだろうね」

 

 ウマ娘は人間より耳も目もいいのは知っているが、くずかごの中にある空容器を嗅ぎつけられる程にハナが利くとは知らなかった。この事実は新しいトレーニングに活かせるだろう___生きていられたらの話ではあるが

 

 

「ふーん。溢れんばかりの愛があるなら……ねえトレーナー。1つお願いがあるんだけど、ちょっとそこどいてくれない?」

 

「ふむ……」

 

「……」

 

 

 ここで両者一斉にスタート!トレーナーは滑るように背後の窓に飛びつく!ここは建物の二階、下は植え込み!己の健脚をもってすれば十二分に逃走経路になり得るというトレーナーの判断だ!追いかけるダイワスカーレットは机という障害物を迂回しないといけない事もあり出遅れは必然___

 

 

 迂闊!しかし下には人影……いやウマ影!!そう、窓の下にあるのはただ乱雑に並べられた仕切りとしての役割しか持たない草の塊などではなく、確かな意図をもって管理されている美しい花壇をも兼ねたものだ!これでは飛び降りてクッションにするなんて鬼畜な事は出来ない!いかに命の危機と言えどここは踏みとどまるしかなかった!

 

 

「コラ待ちなさい!というか危ないでしょうが!」

 

「グエー!首が締まってる……!手を放してくれないか……!」

 

「あ、ごめんなさい。いやなんでアタシが謝ってるのよ!アンタの自業自得じゃない!」

 

「いや本当に申し訳ない。悪気はなかった、間違えたんだよ。君の分は午後の授業が終わる頃には買い直しておくから」

 

「私は今!この昼休みに食べたかったのよ!」

 

「それはすまなかっ……いやそもそもなんでトレーナー室の冷蔵庫に入れておいたんだい?言っただろう、差し入れやらお客様用の買い置きやら僕の適当な買い物と混ざるから私物はここに入れないでおいてくれと」

 

「しょうがないじゃない!部屋の冷蔵庫だとたまにウオッカの奴が食べちゃうんだから!」

 

「ならば、せめて事前に言っておいてくれたら間違えなかったのに」

 

「……うっかり忘れてたのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何を騒いでいるんだ、あ奴等は……」

 

 

 花壇に水やりをしながら聞き耳を立てていたエアグルーヴは呆れたように呟いて、きゃいきゃいとした喧噪をBGMに花壇の世話を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はあります。今から考えます
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