プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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優雅な午後だ……。天気が良いし、身体の調子も良い



こんな日は……ガチャを回すしかないっ!スーパークリーク完凸まであと2枚ですっ!!






大騒ぎと大男

 大勢のウマ娘達が我先にと一斉に自己紹介を始めた。ダイワスカーレットが半ば諦めの境地に達した笑顔で聞いているのを横目で見つつ、僕はジュースを一口飲んだ。ぜひ覚えてね!と言うのならせめて一人ずつ名乗らないとどうしようもないだろうに。彼女の隣でウオッカも目を白黒させている。名前と顔に関しては後で資料を渡して、それで覚えてもらう事にしよう。僕は口を挟まずソファーに深く身体を預けた

 

 

 しばらく怒涛の自己紹介をBGMにのんびりしていたのだが、やがてそれも終わり各々が好き勝手くつろぎ始めた。ようやく解放された2人に声をかけようとソファーから立ち上がったのだが、どうもスカーレットとウオッカはソワソワとあちらこちらに視線を走らせている

 

 

「何か気になる事でもあるのかい?2人共」

 

「ええ。凄いのね、タイキシャトルさんにタマモクロスさんもいるなんて!」

 

「タイキシャトルがいるのかい?タマモクロスも?……本当だ、気が付かなかったな」

 

 

 スカーレットの視線を追う。部屋の隅の机にホットプレートを展開し小柄な体を手速く動かしながらたこ焼きを作り続ける灰色の髪のウマ娘、タマモクロス。その横で笑顔で肉を焼き続ける大柄なウマ娘のタイキシャトルの姿が目に入った。確かに両者とも最高峰のG1レースで優勝を飾った事もあり、トレセン学園を目指すものであれば憧れるであろう有名なウマ娘達だ。2人が目を輝かせるのも当然の事だろう

 

 

「少し声をかけてくるよ。ここで待っていてくれ」

 

「ね、アタシもちゃんと話してみたいわ。一緒に行っていいかしら?」

 

「俺も俺も!」

 

「うーん、やっぱり待っていてくれ。彼女達にこっちに来てくれるよう頼んでみるから」

 

 

 一心不乱と言った調子で調理を行う2人に近付いて僕は声をかけた。忙しそうなところ悪いが、少々確かめないといけない事がある

 

 

「やぁ2人共。精が出るね。ところでその材料は___」

 

「おう大和サブ!歓迎会って聞いたもんでな!好きにやらせてもらっとるで!材料?いつも通り食堂に言うてもろてきたわ!んでお前さん、チーズ入り好きやったよな?今ちょうど焼いとるさかいな!」

 

「ああ、毎度すまないね。ちなみに貰って来たってどれくらいの量を___」

 

「ほらあがったで!悪いな、あと何人か注文もらっとるんや。それ終わったら話聞くわ!」

 

「そうしてくれると助かるよ。じゃあタイ___」

 

「ワオ、大和サーン!ハウディー♪お肉どうですカ?」

 

「調子はいいさ。お肉も、ぜひ頂くよ。ねえタイキ、そのお肉はどこから___」

 

「安心してください!ちゃんと食堂から貰って来た上質なお肉デース!」

 

「それは美味しそうだね。うん、よかった。聞きたくないんだが、ちなみに上質ってどのくらい___」

 

「感謝シマース!それじゃお肉焼き終わったらまたお話しまショウ!」

 

 

 やんわりと追い払われた僕は2人から受け取ったたこ焼きの乗った皿と丁度良く火の通った肉を手に持ってテーブルを離れた。後ろからお肉とたこ焼きを食べまくるチームメイト達の感嘆の声が上がる。それはいいのだが、少々心配事が出来てしまった

 

 

 彼女達の後ろに高く積み上げられた材料の山は明らかに事前に申請を出した物ではない。こういった宴会で食材を使う際は、前もって生徒会に申請を出した分量だけを貰う決まりになっている。食堂の食材管理を適切に行う為だったり予算の関係だったり、まあ難しい話は解らないがとにかくこの決まりを破ると生徒会やら職員の人に怒られる

 

 

 どう言い訳したものかな、と悩みながらたこ焼きをつまみ、お肉を口に入れると___余りの美味しさに全てがどうでもよくなった。よし、今日は楽しもう。そうしよう!僕は都合の悪い事を全て脳内のゴミ箱に放り込み、2人の下へ戻った

 

 

「話は後にしよう。2人はまだしばらく忙しくしてそうだ」

 

「そう……残念だけど、後で色々お話してみたいわ」

 

「ああ、そうするといい。彼女達は別のチームの子達だけど、聞けば色々教えてくれる筈だからね」

 

「は?」

 

 ウオッカの素っ頓狂な驚きの声に僕も肩をすくめて気持ちは解るよ、と言葉を返した

 

「歓迎会ではタコ焼きパーティーをするのが我らのチーム十箇条の1つにもあるんだが……『タコパと聞いたら黙ってられへん。一口乗らせてもらうで!』との事で、勝手にチームハウスに入ってきて気の済むまでたこ焼きを作って行くのがタマモクロスだ。嵐のたこ焼きガールだよ。タイキシャトルはBBQが好きなんだ。BBQ欲を抑えられなくなると勝手に僕達のチームハウスでパーティーを開催している。とはいえ歓迎会は賑やかな方がいいからね。僕は咎める気はないけど」

 

 

「今結構大勢の先輩達がいるけど、もしかして……」

 

「ああ。別に皆がこのチームのメンバーと言う訳ではないね。かつてここに籍を置いていた者や、何かしら僕やチームリーダーと縁があったり、たまに身体を休めにくる物好きだったり。このハウスの扉を潜ったものは誰でもチームメイトとしての扱いを受けられる、それが『ムーンシャイン』の良い所でもあるんだよ。……ああ、今入って来た子はこのチームに所属しているよ。彼女の事も知ってるんじゃないかい?」

 

 

 僕の言葉にスカーレット達は揃って首を回す。丁度扉から入って来たのは、高等部所属のウマ娘ナリタタイシンだ。彼女が入って来たのを見つけたチームメイト達が一斉に声をかけると、彼女はうっとおしくてかなわないと言った様子で睨みを聞かせながらもヒラヒラと手を振って挨拶を返す。じっと目を凝らしてその姿を見ていたスカーレットが興奮した様に声を上げた

 

 

「ウオッカ!ウオッカ!!ナリタタイシン先輩がいるわ!BNWの!!!」

 

「うぉーマジだ!」

 

 

 チームメイト達に出迎えられる小柄な彼女は人波をかき分けるようにしてこちらへやってきた。普段は不機嫌そうに釣り上げている小さな目を新入り2人に向け、気だるそうに話し出した

 

 

「新人?歓迎会、今日だったんだ。ま、よろしく」

 

「よろしくお願いします!あの、尊敬してます!サインもらえますか?」

 

「は?やだけど」

 

「キャー!塩対応、塩対応よウオッカ!ありがとうございますっ!」

 

「マジでテレビで見るのと同じだな……!ありがとうございます、タイシン先輩!」

 

「……え、なんでアタシお礼言われてんの?嘘でしょ……またヘンな後輩が……」

 

 

 つっけんどんに拒絶するナリタタイシンを見ても、2人は嫌な顔一つせずむしろ嬉しそうにはしゃいでいる。一方のタイシンは頭を抱えて、2,3歩後ずさった。勢いのある後輩に振り回される彼女を見ているのは結構面白いものだが、僕が笑いながらやり取りを見ているのに気付いたナリタタイシンの機嫌が明らかに悪くなった。これは不味い、黙って笑っていると痛い目を見る事になるだろう

 

 

「やぁタイシン。相変わらずファンサービスが上手だね」

 

「うっさい」

 

「はは、手厳しいね。スカーレット、ウオッカ。彼女はなんだかんだ歓迎会には必ず出席してくれる後輩思いの子なんだ。2人共彼女とは仲良くね」

 

「ほんとうっさい!」

 

「おっと、蹴るのは勘弁してくれ。僕の脚の骨は長ネギくらいの耐久力しかないんだから。……おかえりタイシン、遠征ご苦労様。疲れてるだろうに、顔を出してくれて本当にありがとう」

 

「ん……ただいま」

 

 僕が手の平を上にして差し出すと、軽くパシンと叩いて応えてくれた。……軽く、だと思うんだけど手の平がじんじんと痛くなってきた。やれやれ。本当の意味で手厳しいななどと下らない事を考えながら手を軽くさすって辺りを見渡すが、彼女に付き添って遠征に行っていた筈の彼の姿が見えない事に気付いた

 

 

「おや?リーダーの姿が見えないが……」

 

「置いてきた。うっさいから」

 

「おいおいおい、酷いじゃないかタイシン!本当に置いて行く奴があるか!?」

 

 

 ぬっと大きな影が扉から入ってくる。思わずぎょっとしたのか、スカーレットとウオッカが僕の背後に回ったのが解った。発達した筋肉を似合わないスーツに無理やり詰め込んだスキンヘッドの大男が大笑いしながらこちらへずんずんと歩み寄ってるのだから、中等部に入ったばかりの2人からすれば……いや、誰だってちょっと怖いか。でも彼の笑顔はよく見ればとても人懐っこいし、立ち振る舞い自体は意外と紳士だ

 

 

「やぁ、お帰りなさい。紹介しますよ、こちらがダイワスカーレットとウオッカ。2人共、彼がこのチームのリーダーだ。では……名乗りをどうぞ?」

 

「ああいいとも。話は聞いてるぞ2人共、ようこそムーンシャインへ。俺がこのチームのリーダー、ドウェイン・ジョンソンだ。

 

……はっはっは!勿論嘘だとも。俺は大丸(だいまる)だ。よろしくな、新入り達」

 

 

 頼れるチームリーダーは屈んで視線の高さを合わせると、鮮やかなウインクを決めてみせた

 

 

 






ダイワスカーレットのデビューの話を書くまでにあと半年くらいかかりそうですねぇ!


……はい、スカーレットさん。はい。解ってます。大丈夫です、急ぎます。はい
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