ところで!人間の場合、お酒は二十歳になってからです。ウマ娘は身体能力を考えると恐らく肝臓の機能も人間より数倍高いと思われます!もしかしたら人間よりもっと早くお酒を飲んだりできるのでしょうか!みんな大酒飲みなのでしょうか!あるいは身体に悪い飲み物なので本能的にあまり好きじゃないのでしょうか!!
どう思われますか解説さん!(泥酔
いやぁ全然解りませんね(泥酔
くっくっくっ、と冷えたビールを一息に呑み干し、僕は空になったジョッキをゆっくりとテーブルの上に置いた。鮮やかな金色、キレのある冷たさ。この所酒を断っていたからか、あるいは勝利の美酒だからか。僕は筆舌に尽くし難い幸福感で満たされていた
祝勝会は歓迎会と違って学園内で執り行う場合可能な限りひっそりと開催する、もしもできるならば学園外でやるのが定石だ。勝者より敗者の方が多くなるのが常だからである。学園内で大っぴらに開催するとどうしても他の子の目を気にしてしまい祝われる者が少々気後れする事もある。その点、ここは僕の古くからの友人の店だ。誰に遠慮する事無くセイウンスカイの勝利を祝う事に集中できるし、スカイも気楽に楽しめる___筈だった
「だというのに何故彼女達がいるんだろうか」
「うぅ……ぐすっ、ふじゅっ。モグモグ……」
「ほらほらスペちゃん!もう泣かないで、今夜は目いっぱい食べ散らかしまショー!」
「そうですよスペちゃん。武士は食わねど高楊枝ですが、腹が減っては戦は出来ぬ。食べられる時は食べる事に集中しなくては。……エル、食べ散らかす、などと見苦しい行いをするような事があれば。その時は___」
「あー!言葉の綾ですから!アヤ!」
少し離れたテーブルにチラリと目をやる。涙を流しながらも美味しそうに料理を口に詰め込むスペシャルウィーク。その横で澄まし顔のグラスワンダーは僕からの視線に気づいたのか小さく会釈をし、エルコンドルパサーもVサインを向けて来る。僕はどうするべきか一瞬迷い、ジョッキを顔の高さまで上げて遠くから乾杯の仕草を取ってから遠慮がちに視線を逸らした
「いや本当に気まずいですね。誰なんです?彼女達を連れて来たのは」
「すまんな大和。彼女達も今日は残念会をするという事らしいから、折角ならばと俺が声をかけたんだ。あの子達のトレーナーにも許可はとってあるから心配するな」
心配しているのは彼女達のトレーナーの許可もあるが、何よりセイウンスカイの事だ。いつも一緒にいるメンバーとはいえ今日に関してはちょっと距離を置いてムーンシャインの面々と食事をとっている。そりゃあそうだ、僕の100倍気まずいだろう。だというのに向かいに座る大丸さんの表情は一切悪びれてない
「今日で心の整理を付けたいんだそうだ。敗北を振り返るのは終わりにして、勝者を祝う事で前に進みたいとさ。その漢気に感銘を受けたから連れて来たんだ」
「成程、そういう事ならこちらは気を遣う必要はないと言うことですね。ちょっと声をかけてきます」
「まさかと思うが煽るなよ」
「……」
僕は席を立った
「おい大和返事しないか!おい、後で他所のトレーナーから苦情が来てもしらんからな!」
「大丈夫ですよ。空気を和らげてスカイとの間をそれとなく取り成すだけです」
失礼な言いがかりをかけてくる大丸さんに言い返してやると、僕は大人用のテーブルを立って歩き出した。今日はバイキング形式に近い形で、店の真ん中にどんどん運ばれてくる料理を各々が好きに取って自分の席に持って行って食べたり、立ち食い用の高いテーブルの周りに集まって会話を楽しんだりしている。僕と大丸さんは最初の乾杯が終わった後は2人掛けのテーブルに座って遠巻きに学生達の様子を見守らせてもらっていた。もとい、酒におぼれていた
そんな僕はカウンターで新しくビールの入ったジョッキを受け取ると、スペシャルウィーク達が座るテーブルへと近づいて行く。こちらの接近に気付いた面々に向かって努めていつも通りに話しかけようと僕は少し悩んで、軽いジョークから入る事にした
「やぁやぁ、久しいね皆。今日はセイウンスカイの超絶完全大勝利と三冠達成へ向けての前祝いにわざわざ足を運んでくれたようで___あの、ごめん。座ってくれないかグラスワンダー。ジョークだよ」
「あらあら、ジョークですか。思わずいきり立ってしまいました。ごめんなさいね大和サブトレーナーさん」
おかしいな、少し言葉の選択肢を間違えてしまったらしい。完全にこめかみに青筋を立てていたグラスワンダーが発する凄味に当てられてヒェッと小さく息を吐き固まってしまったエルコンドルパサーの気持ちも解る。僕も回れ右して帰りたくなったくらいだ
「励ます方が嫌味っぽくなるかなと思ったんだ」
「であれば普通に接して下さればいいと思います……」
ジロリと睨まれると背筋がゾクゾクしてしまう。何度か本気で怒らせてしまい追いかけ回された時の記憶が蘇りそうになったので、頭を振って再び記憶の奥底に押し込んだ
「ふむ、普通というのも難しいな。まあどうだろう。今回のスカイは運が良かったようなものだ。次のダービーでは変に意識する事無く挑んで欲しいな。決してスカイを意識せずにね」
「あらあら、そう言われれば余計にスカイさんの事を意識してしまいますね」
「おいおい、しないでくれと頼んでいるのに酷いなグラスワンダー。……君達の走りは本当に凄かったよ。1ファンとしていいレースを見せて頂けた事に感謝したい。是非とも乾杯を受けてくれないかな?」
「……ええ。かまいませんよ」
グラスワンダーが差し出してくれたコップに軽くジョッキをぶつける。あるいは、グラスのグラスにグラスを……やめておこう、あまりにも下らないジョークに僕のやる気が下がる所だった。ジョッキを差し出すとエルコンドルパサーもスペシャルウィークも快く応じてくれた。本当にいい子達だ。是非後で色紙にサインを貰う事にしよう、と思いながらふといつも一緒な筈のもう一人の姿が見えない事に気付いた
「おや、キング嬢の姿が見えないね」
「ひんふはんははほほーひをほひひひっへはう」
「ああ、スペ。答えてくれてありがとう。でも呑み込んでからもう一度教えてくれるともっとありがたいかな」
「ゴクン。ごめんなさい、キングちゃんならお料理を取りに行ってますって言おうとしたんです」
「ああ、ありがとう。スペシャルウィーク、遠慮せず食べて行っていいからね。今日はかなり多めに用意してもらっているから」
「はいっ!ありったけいただきます!」
可愛らしくぐっとガッツポーズを決める。うん、僕の今のセリフには暗に多少は抑えて欲しいという意味を込めた社交辞令のようなものだったのだけれど。ただ目を赤く腫らしながらも満面の笑顔で、本当に嬉しそうに箸とフォークとスプーンとナイフと鉄串を操る彼女を見れば、とてもそんな事は言い出せなかった
「ですから!キングジョーだとウルトラマンの怪獣みたいなのでやめてくださいと毎度言っているはずですけれど!?」
その時、僕の雑多なボケにお行儀よくしっかりツッコミを入れてくれる優しいキングヘイローの声がした。振り返ろうとする僕を押しのけるようにして彼女はとってきた料理のお皿を机に置くと、怒りで顔を染めながらも僕が差し出したジョッキにコップをちょこんとぶつけてくれた。サービス精神は流石である
「やあキングお嬢。相も変わらず王者の風格だね」
「そんな私が居ない事に最初気付いてなかったようだけれど?」
「___うん、じゃあ皆、今日は楽しんでくれ。参加費はいつも通り、後日僕の所にお菓子か何かを1つ差し入れるようにね」
「キングの問いかけを流すとはいい度胸じゃないの……!」
「冗談だよ。相変わらず元気そうでなによりだ。次もいい走りを見せてもらえる事を期待するよ」
「ええ。___ダービーでは負けませんから」
手を口に添えながら、キングヘイローは切れ長の美しい瞳をキラリと光らせた。その背後でグラスワンダーもふふふと笑いながらステーキ肉にナイフをすっと切り込ませているし、便乗したようにエルコンドルパサーがバサっと立ち上がりこちらにずびしと指を突き付けた
「今度はこの怪鳥、エルコンドルパサーの為のステージをお見せしまーす!覚悟しておいて下さい!」
「ふぁへははへん!」
可愛らしい目にいっぱいの闘志を秘め___そして口にも一杯ご飯を詰め込みながら___心同じくといった表情のスペシャルウィークも僕に啖呵を切った。多分。まあ聞き返すのも野暮だし、僕もそれらしく不敵な笑顔っぽい表情で頷いておいた
また後で、と手を振ってその場を離れる。向かうはチームメイトに囲まれてもぐもぐと口を動かしているセイウンスカイの下だ。彼女の頭には誰が作ったか金色の折り紙や厚紙で制作された可愛らしい王冠が乗っかっていた
「いい王冠だね」
「そうでしょそうでしょ。わたしも気に入ってるんだー」
「へへーん。なんとアタシが作りました」
胸を張ってそう言ったナイスネイチャが自分の横の椅子を指でちょいちょいと指し示したので、遠慮なく腰を置かせてもらう。今日に関してはセイウンスカイは王様のように振る舞う事を周りから求められているようで、冗談めいて付き人のようにチームの子達が彼女の欲しい料理や飲み物を取り、うやうやしく献上している
「そうだ、スカイのレースの動画をみんなで見ようと思ってパソコンを持って来たんだ。おーい兄弟、プロジェクターを使わせてもらえるかな」
「準備は出来てるぜブラザー。好きにやってくれ」
厨房の方からすぐさま声が飛んできた。事前に言っておいたとは言え準備が良い。給仕担当のお姉さんがケーブルの束を差し出しながら親指を立てた手をぐっとこちらに向けて来たので、僕もぐっと親指を立てて返す。持ってきたノートパソコンをネイチャが接続し、事前に用意しておいた動画ファイルを再生してくれる様子を横目で見ていた
「さあ上映会だ。いいかな、スカイ?」
「えぇ~恥ずかしいじゃん。ま、いいけ___」
『エグッ、ウッ、勝ったよぉ……!わたし、勝ったんだ……!』
「のわぁ~!!!?」
へらへら笑っていたセイウンスカイの顔から全ての余裕が吹き飛んで、とんでもない大声が出た。すごいな、あんな大きな声出してるの初めて見たかもしれない
「あ、まずいな。ネイチャ、再生するファイルを間違えてるよ。これはライブ後の控室で感極まって大泣きするセイウンスカイの動画じゃないか」
「おっとこりゃ失敬」
「ちょっとなにこれ!?こんなの撮ってたの!?やめてやめて!はい皆目閉じてってば!」
王冠を吹っ飛ばす勢いで立ち上がったセイウンスカイがぶんぶんと手を振り回す。はは、珍しい一面も___ヤバイな、メチャクチャ怒ってないか彼女。いやこれに関しては僕は悪くないぞ。あくまで動画を再生したのはナイスネイチャなんだから
「だって動画ファイルの中に『あとで焼き増ししてこっそりファンに配りたいヤツ1.mp4』って書いてあるのが混ざってたもんだからさ。いやぁ誰だろうねこんなついつい再生したくなっちゃうファイル名にした人は。ね、大和サン」
「まあそれは僕だけど……」
「んもーっ!ありえないよほんと!あー……!」
「ごめんよセイちゃん。まあでもほら、あれだよ。どうせあん時結構皆見てたしさ。今更気にしなさんなって。いやアタシが言うのもなんだけど」
「え、そうなんですか」
思わず呆然とした表情で素のリアクションを取るスカイの肩をポンと叩いてなけなしの慰めを試みたネイチャが、指を折りながら数えるように名前を読み上げた
「セイちゃん気付いてなかったかもだけど、あん時ふつーにアタシもいたしライス先輩もいたし、大丸さんとかも居たし。ま、大丈夫だって」
「全然大丈夫じゃないです……」
顔を手ですっかり隠してしまったスカイになんと声をかけるべきか、と迷っていた僕の肩にポンと手が置かれる。思わず横を向くとネイチャの肩にも手が置かれていた。ふむ、綺麗な手だな。大人びていて、しなやかで力強く___怒りに満ちていた
「貴様もネイチャも、どっちもが悪い」
「ふむ、そうだね。いささか遊びが過ぎたようだ」
「あー……ゴメンナサイ」
「よろしい。反省しているようだな。では軽くにしておいてやろう」
女帝の鉄拳が頭上から振り下ろされた。やれやれ、本当に手加減はしてくれるん____
セイウンスカイちゃんを弄んでしまい、本当に申し訳ないです。お詫びと言ってはなんですが今夜わたくしが皆さんの枕元で一晩中うまぴょい伝説を躍らせて頂きます。楽しみにしておいてください。遠慮なさらないでください
スカーレット以外がメインになる回が多くなるのは……?
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浮気よ!!!!
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それもありね!!!!
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好きにすればいいじゃない!