プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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お酒飲みながら書いていたらお話が全く進みませんでしたわ


ヤバイですわね


ヤバイかもしれませんわ






字余り


そして僕は泡のように弾けた

 

 

 

うん。段々記憶が戻って来たぞ。セイウンスカイに許してもらう為にひたすら謝り、彼女の赤面がようやく収まった辺りで僕は解放された。お詫びとして今度の日曜に彼女と友人達が服を買いに行くのに車を出し、それぞれに1着ずつプレゼントをするよう約束させられたがその程度で許してくれるなら軽いものだよと請け負った。うん、そういう話までしたんだったね

 

 

「しかし頭が割れそうだね。まだ飲み始めて間もないというのに二日酔いにでもなったのかな」

 

 

 僕は頭を冷やすために冷たいビールを飲み干してから溜息と共にそう言った。横ではネイチャがぐらんぐらんと頭を揺らしながら涙目でウオッカの方にもたれかかりながら頭を差し出して呻くようにこういった

 

 

「アタシたんこぶできてないかな。ねね、ウオッカちゃん。どう?」

 

「え?えっと、失礼します……。うん、大丈夫だと思いますよ先輩」

 

 ウオッカはネイチャの頭を撫でまわすようにしてしばらく触診を行っていたが問題無しの太鼓判を押した。その時ふと閃いた。成程、ああいう風にすれば頭を撫でてもらえるのか。ぽんと手を叩いてから僕は反対隣に座っているスカーレットの方を向いてこういった

 

 

「やあスカーレット。僕の頭にたんこぶができてないかな?」

 

「自分で確かめればいいんじゃないかしら」

 

 冷ややかな声で僕は頭のガンガンとした熱がすっと引いていくのを感じた。うん、スカーレットの愛らしい声には頭痛を癒す効果があるらしい。今度から頭が痛い時は彼女と会話するようにしよう。じとっとこっちを睨んでくるスカーレットからすっと目を逸らし、お向かいに座るナリタタイシンの方を向く

 

 

「は?」

 

「おいおいタイシン、僕はまだ何も言ってないよ。酷いじゃないか」

 

「アタシも何も言ってないけど」

 

 

 まあそうだね。確かに彼女は何も言ってない。ただ凄く鋭い目つきで『は?』と死ぬ程めんどくさそうに言っただけだった。僕は気を取り直して話を続ける

 

 

「たんこぶがね」

 

「アタシがもう一つその頭に作ってあげてもいいけど」

 

「タイシン、ここの料理は美味しいかい?」

 

「ん、美味しいよ」

 

「それは良かった」

 

 

 やれやれだ、上手くいかないものだね。恐らくこういうのはネイチャの様に普段の行いが良い子じゃないと上手くいかないものなのだろう。僕は気を取り直す為にビールを飲もうとしてジョッキが既に空になっている事に気付いた。ハンバーグをもぐもぐと食べていたタイシンが僕の間抜けな様子を見て呆れたように頬杖をついた

 

 

「アンタ飲み過ぎじゃない?絡みがいつも以上にめんどくさいんだけど」

 

「ふむ、それはすまないな。僕はうっとうしいかな?」

 

「メンヘラ女子高生みたいな絡み方やめなよ……」

 

 タイシンはメチャクチャな偏見の入ったツッコミをしてくる。隣で聞いてたスカーレットが『いやタイシン先輩も女子高生じゃないですか』とツッコミを返すかどうか迷った挙句愛想笑いするだけに留まったのが解った。

 

「ふむ、僕もまだまだ若いって事だね」

 

「お兄様、女子高校生さんくらい若いんならお酒はもう飲んじゃダメだね」

 

 

 背後から恐ろしい言葉が聞こえて来た。僕はほんの数秒逡巡した後、若さを放棄してお酒のお代わりを頼む為に手を挙げた。綺麗にお寿司が盛り付けられた下駄の形の皿を持ってきたライスシャワーが僕の斜め向かいに座る。

 

 ライスの為に机の上の空いた皿を重ねてスペースを空けてくれたタイシンが、めんどくさと呟きながらまだ口を付けてないお水の入ったコップを僕の方に押し付けてくる

 

 

「チェイサーって言うんでしょ?これでも飲んだら?」

 

「タイシン、まさか僕が飲みすぎだと言うのかい?まだまだこれからだって所をお見せしようか」

 

「ライス、なんとかして」

 

「う、うん。お兄様っ、あと一杯だけにしておかなきゃダメだよ?タイシンさんも迷惑してるって言ってるし」

 

「や、まあウザい絡みだとは思うけど別に話しかけて来るなとかそういうんじゃなくて……」

 

「ごめんよタイシン。ただ、僕は嬉しいんだ」

 

 空のジョッキを机に置いて、タイシンが差し出してくれた水をありがたく頂く。なんだコイツ、みたいに眉をひそめるタイシンに対し、僕は湿っぽい真面目そうな表情を作るとゆるりとした声で言葉を続ける

 

「昔の君は身体作りの為に無理やりご飯を詰め込むように食べている事が多かったからね。そんな君が楽しそうに美味しそうに後輩や友達と喋りながら食事をしている。うん___泣けてきたね。飲まずにはいられない。本当に心の底から嬉しく思うんだよ」

 

 

「~~~ライス!マジでコイツなんとかして!」

 

「たたたタイシンさん!ゆゆゆ揺らさないで!」

 

 

 ライスシャワーが肩を揺らされて何人にも分身した様に見える。僕が酔っている訳ではなく、あれだ。タイシンが揺らしているからだ。うん、僕は酔っていない

 

 

「トレーナー、アンタ大丈夫?」

 

「ふふ、大丈夫だよ。スカーレット、僕がお酒をたくさん飲む理由はね。酔っている時くらいしか周りに心配してもらえないからさ。寂しい大人とはこういうものなんだよ」

 

「めんどくさっ」

 

「うーん。メチャクチャに心が折れたな……」

 

「あ、ごめんなさい!その、思わず……いや、違うわよ?思わずっていうかなんていうか」

 

「冗談だよ。酔っ払いを免罪符に少々面倒な絡みをしているのは自覚している。やれやれ、確かにライスの言う事にも一理ある。これ以上君達に迷惑をかけないよう、ビールはあと一杯だけにしておくよ」

 

 

 ほっと胸を撫で下ろすライスシャワーを後目に、僕はこちらへ素早く歩み寄ってきた給仕のお姉さんに目で合図をする。彼女は滑るように厨房へ向かうと、僕がコップの水を空にするより早くお目当てのものを持ってきてくれた。ライスを含め、同じ机に座っている皆の目が点になる

 

 

「ありがとう。重いだろうにすまないね」

 

「……トレーナー。なんだそれ」

 

「知らないのかい?ウオッカ。ピッチャーだよ。このサイズだと2Lだね。ああ、心配しないでくれ。ここのピッチャーはちゃんとビールが最後までぬるくならないよう二重構造の隙間に薄い氷が入っている仕掛けなんだ。……どうしたんだいライス。一杯は一杯だろう?」

 

「エアグルーヴさあああん!お兄様が!お兄様がぁぁぁ!」

 

 

 悲鳴のような声を上げながらライスが両手を振り回して彼女の名を呼ぶ。おいおいおいそれはずるいだろう。エアグルーヴを呼ぶのはフェアじゃない

 

 

「ちょっと待ってくれライス。僕は約束を守ってるじゃないか」

 

「一杯は一杯だけど……!でもこれはいっぱいすぎてダメだと思う!思う人……手を挙げて下さい!」

 

 同じ机に座るウマ娘全員の手が上がった。やれやれ民主主義か。やるせないな

 

「なんだどうした?またトレーナーが余計な事をしたのか」

 

「やあエアグルーヴ。多数決の暴力でいじめられているんだ。助けてくれないかな」

 

「ふむ、それはなによりだな。トレーナー、お前はもう少し痛い目を見た方がいい」

 

「酷いな……」

 

 

 状況を察したエアグルーヴが呆れ顔で僕の手からピッチャーを取り上げ、さっき空にしたジョッキになみなみと注いで僕に手渡してくれた

 

 

「残りは大丸トレーナーに渡してくる。貴様はこれくらいで我慢しておけ。……あと、ビールは最後と言ったが他の酒はセーフ、みたいな屁理屈をこねるような真似はせんだろうな?」

 

「流石の読みだね。お手上げだ、今日はこれで最後にするよ」

 

「ふん。飲み足りなければ後で大丸リーダーと、理事長達とで二軒目にでも行くんだな」

 

「……なんだって?」

 

 

 バアン!と大きな音がした気がした。いや実際したのかもしれない。開かれた扉には2人の女性の影。片方は見れば解る立派な大人の女性だが、もう片方は一見未だ未成年の学生……いわばお子様にしか見えない。しかも頭に被った帽子に猫を乗っけている。そんなマンガみたいなデザインをしておきながら彼女は立派に成人しているというのだから驚きだ

 

 

「これは夢だろうな」

 

「残念!夢ではないぞ!遅ればせながら、お呼ばれを受けて参上した!」

 

 

 この距離で僕の呟きを聞き届けたのか、理事長がずびしと手に持った扇子をこちらに向けて来た。逃げずに待っていろと目が語っていた。彼女が放つ迫力は凄まじく、体格で上回る筈の僕が比にならない程強い存在感を備えている。若くしてこの国随一のウマ娘教育機関のトップに座るだけの事はある。誠に尊敬に値するのだが、正直面と向かって会いたいかと言われると今に関してはちょっと困ってしまうというのが本音だった

 

 

「わー理事長とたづなさんだー!」

 

「こんばんは!いらっしゃいませー!」

 

 

 学園のトップ、秋川やよい理事長とその補佐を務める駿川たづな。知名度と人望のある両名の登場にあちらこちらで歓迎の声が上がった。何故彼女達がいるのかは解らなかった。恐らく夢だろうし、酔った故の幻覚だろう。僕は正気を取り戻すためにビールを一口飲んだ

 

 

「見事!セイウンスカイ、皐月賞での勝利は拝見したぞ!実に鮮やかだ!君の益々の精進に期待と祝福を!それを言いに来た!」

 

「ありがとうございまーす。理事長さん直々にお祝いしてもらえるとは、いやぁー頑張った甲斐がありましたな」

 

 

 スカイが理事長の差し出した手を握り返し、周りのウマ娘達が歓声を上げる。うん、微笑ましく誇らしい光景だ。しかし見とれている訳にはいかない。逃げるならば今の内だ

 

 

「あらあら、どちらへ?大和さん」

 

 

 肩にぐっと重さが伝わり椅子から立ち上がる事は叶わなかった。やれやれ、彼女は間違いなく忍者だ。でなければ天狗だ。少なくとも素面で無ければ逃げ切る事が難しいのは確かだった。おっとりした声に反し、僕を逃がさないという確かな強い意志を感じる。僕は仕方なく彼女を歓迎した

 

 

「やあたづなさん。年度末の飲み会以来ですね。会いたかったですよ」

 

「そうですね。私も会いたかったです。何度も呼び出しを無視されておいででしたので、ようやく会えて本当に嬉しく思います」

 

 

 横に座るダイワスカーレットが怯えているのが解った。うん、解るよ。彼女は誰にでも優しい。入学して間もないスカーレットからすれば怒っているたづなさんを見るのなんて初めてだろう。そのギャップに怯えるのも無理はない

 

 

 

 救いがあるとすれば、学生達の門限の関係上祝勝会自体はもうすぐ終わりに近づいている事だった。まあなんとでもなるだろう、と僕は高を括る事にした。そう思わなければやってられない。幸運にも僕には恐怖から逃げる為の手段が手の内にある。全てから逃げ出す為に、僕は残ったビールに口を付ける事にした

 

 

 

 

 

 





この作品に置いては秋川理事長は成人されていらっしゃいます。そういう設定です。お願いします、そういう感じでお願いします!!!!


祝勝会は次のお話で終わらせる予定です。これでも結構尺を抑えたつもりでしたがパーティーがかなり長引いてしまいました。もうしばらくお付き合い下さい


ちなみに前回のお詫びとしてうまぴょいを踊らせていただこうと何件かお伺いさせていただいたのですが、全てのご家庭で門前払いをくらいました。踊りスキルを磨いて出直させていただきます

スカーレット以外がメインになる回が多くなるのは……?

  • 浮気よ!!!!
  • それもありね!!!!
  • 好きにすればいいじゃない!
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