プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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ミキリハッシャマンだれている!完全にだれている!タイトルも完全になめくさっていることから、間違いなく夏バテでしょう!!!ゴジチェックタントウはテツヤシッピツゴウに引きずられる形でなんとか踏ん張っている!まだまだ先は長いですが大丈夫でしょうか!


まだ7月にもなっていないので、へこたれずに頑張って欲しいですよね。気持ち次第でどうとでもなるはずですから。心頭滅却すればなんとやら、最後は気合が大切ですよ


そうですね!!ちなみに実況席ではガンガンにクーラーを稼働させています!!あーっとミキリハッシャマン達がこちらに突っ込んでくるゥー!!これは謝った方がいいんじゃないでしょうか解説さん!


そうですね。ちょっと言いすぎたかもしれませんね。ですからクーラーを破壊しようとするのだけはやめて欲しいところ…はい、すいません。はい。地球環境のためにも扇風機と風鈴で乗り切ります。はい




ウマ娘はエビフライの夢を見るか

 

 

 人には向き不向きというものがある。できる事とできない事が生まれついた時にある程度決まっているのだと、あまりに浪漫の欠けた考え方が蔓延している。しかし多くの人が真理だと肯定してしまう程に実感を得ていることから、満更適当な考え方でもないのだろう

 

 例えばこの僕が生真面目にコツコツと生きるのにまるで適正が無かったように、こういうものは努力しても修正できないのだ

 

 

「あなたの場合はそれを改善する努力をもう少し積むべきではないかな」

 

 

 修正できない。或いは、できないと思って諦めて受け入れて過ごしている。そういうことだ

 

 

 ちなみに僕は都合の悪い言葉を聞こえないフリをして話を続けるのに向いている人間だ。そしてウマ娘にも当然、向き不向きがある。例えばシンボリルドルフ氏は人の独白に刺々しい言葉を差し込むのに向いている。だがウマ娘を差して『向き不向き』という言葉を使う場合、本来は『走る』事に対しての指摘になるだろう

 

 

 先頭を逃げたり集団の中で機を窺ったりと得意な走り方もそれぞれ違えば、長い距離を力強く走り続ける事が得意だったり短い距離を凄まじい速度で一息に走り切る事が得意だったり。1人1人に『最も適した走り方』と『最も適した距離』というものがある。らしい。偉い人達が昔からそう言うのだから、あるのだろう

 

 

 ミホノブルボンというウマ娘がいた。短距離適性がとても高いウマ娘という評判の触れ込みだった。逆説的に、長い距離を走るのがとても苦手だという欠点が共通認識となっていた。彼女がトレセン学園に入学してすぐの話である。彼女を伝説的なスプリンターとして育て上げようと胸に炎を灯した意欲あるトレーナー達が我先にと彼女に手を差し伸べたが、ミホノブルボンはそれらの手を1つも握り返そうとはしなかった。彼女が目指すのはクラシック3冠___つまり、長い距離を走りたがったのだ

 

 

「あの時の事を覚えているかな?誰もが言ったよ、ウマ娘には向き不向きがあると。ふふ、滑稽だったな。本来ウマ娘の夢を叶える為に存在する筈の我々トレーナーが口を揃えて『夢を諦めなさい』と子供を諭す様は。ああ、なんてロマンの欠けた話だろうね」

 

「だが現実を教え込むのもトレーナーとしてのあるべき姿でもある。無謀な挑戦を無責任に後押しし未熟な若者を破滅に陥れるのも、同様に罪深いだろう。私は彼等がミホノブルボンの夢に対し苦言を呈したのも理解は出来るよ。ただ、浪漫に欠けるという点に関しては同意するけれどね」

 

「まあ彼等にロマンが足りていないように僕には責任感とトレーナーとしての能力がまるで足りていなかったから、後ろ指を指す権利はないけれど。そもそも僕はミホノブルボンに手を差し伸べる事は無かった。彼女が欲しがっていたのは同情でも寄り添いでもなく、相棒……今でいう所の、マスターだったからね。僕が相応しくないのは明白だった。まあ程なくして彼女と肩を並べるに相応しい男が1人、僕達を蹴っ飛ばして彼女の前に立った訳だけど」

 

 

 

 それから1年が過ぎた頃。世はミホノブルボンというヒーローに憧れと敬意を抱いた。圧巻の努力量で己には不向きだった筈の距離を走り切る脚を手に入れた彼女が皐月賞に勝利し、日本ダービーで世を沸かせたのだ。ミホノブルボンが三冠ウマ娘になるという夢を叶える事を、皆が心の底から願った訳だ。

 

 ど根性大逆転ストーリーの果てに、華やかな祝福に溢れた3冠ウマ娘の誕生を願う人々の愛が非常に厄介な熱を持った結果。菊花賞を走るライスシャワー達は英雄譚に花を添えるか、泥を被せるか。その二択を迫られる事になってしまったのだ

 

 

 ライスシャワーと初めて出会ったのは、学園にいくつかある僕のサボリ___いや、違う。考え事をするのに適した、人目に付かないスペースだ。階段の下だったり、使われていない倉庫の裏だったり。偶然そこを通りかかった___というより隠れ場所を探して人目のつかない場所を目指して歩いていた彼女が、草むらにシートを敷いて昼寝していた僕のお腹を踏んづけたんだ。僕が悲鳴を上げるより早く、彼女は自らがしでかした事に仰天して鶏が絞殺されるみたいな迫真の悲鳴を上げた

 

 

 動転して泣き出す彼女を宥めるのにはとても時間がかかった。……ああ、あの頃の彼女はとても泣き虫だった。今とは違い、些細な事象全てを自分が原因で引き起こされる不幸だと認識しては自虐的な衝動で自らを傷つけていた。或いは、そうすることで自分の心を守っていたのかもしれない。まあ踏まれたのは僕の寝ている場所が悪かったからだけど

 

 

 なに?そもそも学園の敷地で昼間から寝るな……?それについて怒るのはよしてくれ。今は話の本質から逸れるのはよくないからね。まあとにかく彼女にとっては不幸な出来事だったのかもしれないが、この出会いは僕にとってはそれなりに幸運だったと言えるだろう。彼女にお腹を踏まれたお陰で、僕はとても素晴らしいウマ娘と友人になれたのだから

 

 

_________________

 

 

「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ライス、悪い子だ……」

 

「これに関しては僕の運が悪かったのさ。あまり気に病むことではないよ。名も無い花を踏んでしまった事を憂うのは愛おしい行為だが、君が踏んだのは雑草のような男だ。萎れるほどに悲しむ必要はないと思うがね。というより誰かに謝られるのには慣れていないからやめて欲しいな……なんだか不安になってしまうよ」

 

「ううん、トレーナーさんは悪くないの。ライスは他の人まで不運にしちゃう、悪い子だから……」

 

「ふーむ。君の今日の運勢は大凶、ということなのかな」

 

「今日っていうか……ライスは、ずっと大凶なの。今まで、運が良かった日なんて一度もなかったもん……」

 

「そうなのかい?ほう、ずっと大凶か。不思議な事を言う。僕から言わせれば、運命なんてものは長い時間から見れば全て平凡、真ん中に収束するものだ。波乱万丈を気取ってみても、外から見れば何もかも丁度よく収まっているものなのだよ。ただ当の本人が素晴らしいものだと誇るか、下らないものだと言って嘆くか。その違いだけなんだ」

 

 

 僕は二つ、炭酸の缶ジュースを取り出して彼女に差し出した。遠慮がちに視線をさ迷わせた後、彼女は耳をぴこんと立てて恐る恐る手を伸ばしてくる

 

 

「あぁ、気を付けて。どちらか一つは、蓋を開けたら中身が吹き出す。強く振ってあるからね。君の大凶と僕の大凶、どちらが神に愛されていないか一つ僕に見せて欲しいものだ」

 

 

 自分が試されているという状況が若干不服なのだろうか、彼女は少し怯えたように耳をへにゃりと曲げて疑り深い視線を左右の缶ジュースに走らせた。それでも彼女は言われるがまま僕の右手から缶ジュースを受け取り、小さな指先でブルタブを強く引いた

 

 

プシュッ、と小さな音がした。彼女は手元で爆弾が爆発でもしたかのような大げさなリアクションで目をぎゅっとつぶったが、空気が溢れた後は炭酸が弾けるシュワシュワとした爽やかな小さな音が鳴り続けるだけで中身が吹き出す事はなかった。恐る恐る目を空けた彼女は、しばらく目をぱちぱちと瞬かせた後ほぁーっと小さな感嘆の声をあげた。しかしすぐに頭をブンブンと振って、僕を遠慮がちに上目遣いで見つめてくる

 

 

「君の言いたい事は解る。こっちの缶もそもそも吹き出したりしないんじゃないか?では御覧あれ。ほらこの通りだ」

 

 

 僕の手の中の缶は、蓋を開けると白い泡と液体をぶわっと溢れかえらせた。この結果が解っていた僕は足元のシートが濡れないよう手を伸ばして液体が土の上に零れるようにしながら少し得意げな顔で彼女に種明かしをした

 

 

「君は恐らく左利きだろう。見ていれば容易に判別できた。つまり僕の右手に持った缶を取る可能性が非常に高いと踏んだ訳なのさ」

 

 

「あの、あの。ライスは右利きです」

 

「……ふむ。そうなのかい?やあ恐れ入った。つまり僕のような姑息な人間が立てた安直な作戦など意に介さず、君はただ運よく当たりを引いたという事になるな!いやぁ素晴らしい運をお持ちだね」

 

「ライスが……運がいい?」

 

「大和さぁぁぁぁん!どこですか!?ダメですよっ、1人で出歩いてはっ!今日のあなたは恐ろしい程に運勢最悪!どっ底辺!歩けば棒に当たり、走ればぬかるみにはまること間違いなしなのですから!」

 

 目をぱちくりさせる彼女に返事をしようとしたが、木々を揺らすほどの甲高い喚き声にかき消された。折角隠れているというのにあんまり大きな名前で僕の名を呼ぶものだから、仕方なく顔を出して彼女に手を振って居場所を伝える事にした

 

「やあフクキタル、苦労をかけたね。それで、何か運気の上がりそうなものはあったかい?」

 

「なんとここにいらしたんですねっ!むふふ、ご期待下さいご覧ください!はいっ!こちら、エビの天ぷらのキーホルダーですっ!黄色いごつごつした衣と赤いしっぽの部分が合わさってなんとも幸運のお守りって感じがしますね!雑でむらっぽい彩色なのも趣を感じます!」

 

「ふむ。幸運かはさておいて、とても安っぽい___いや、美味しそうなキーホルダーだね。それでこれはいつ手に入れたんだい?」

 

「昨日遊びに行った時にガチャガチャを回したら連続で5個出て来たんです!はい。たくさんあるので全部どうぞ!さあさあ遠慮なさらずに~」

 

「ふーむ。確か昨日の君の運勢はとびきりの大吉という事だったね。そんな君が連続で引き当てたという事はさぞかし運命力を秘めたアイテムなのだろう。しかし本当に全部貰ってもいいのかな?いらないから押し付けてきている、なんて事は無いと信じたいけれど」

 

「そそそそんな事、私がするワケないじゃないですか~。ご冗談を。大和さんの事を思ってこそですよぉ」

 

「やれやれだ。ふむ、しかし折角のプレゼントだ。是非ともありがたく頂戴して全て僕の物にしたいが……やあ、幸運のウマ娘さん。君にも1つお裾分けするとしよう」

 

 

 僕はジュースをちびちび飲んで気まずそうにしていた彼女の手にエビ天キーホルダーを1つ握らせた

 

 

「え、ええ?ライス、貰ってもいいの……?」

 

「ああ。その代わり、次にここにサボリにくる時は僕を踏まないようにしてくれないかい?僕の腹筋は豆腐といい勝負でね、君のような小柄な子に踏まれただけでも少々ダメージが大きいんだ」

 

「ご、ごめんなさいっ!本当に、気を付けます!」

 

「いや冗談だよ冗談。そんなに悲観しないでくれ」

 

 

 その後、しばし3人で歓談を楽しんだ。春の木陰は気持ちよい風がふわりと通り抜けてとても過ごしやすく、最初はガチガチに緊張していた彼女……ええと、ライスシャワーというらしかった。彼女も少し落ち着いたようで、脚を崩してジュースをちびちびと飲んでいた。……もしかして炭酸は苦手だったのかな?と聞くと慌てたように首を振り、ただ一気に飲むとびっくりするからこうしているだけだという事だったので安心した

 

 

「しかしライスシャワーさん、でしたか?今日は1年生の選抜レースが行われている筈でしたが、行かなくてもいいんですか?」

 

「そ、それは……」

 

「いいじゃないか。ウマ娘にだって走りたくない日だってある。或いは、走りたいけど走りたくない日だってあるだろう。僕にだってどうしたって真面目に仕事をしたくない日が、ほんの稀にあるくらいだ」

 

「ううん、サブトレさんはどちらかというと真面目に仕事をしたい日っていうのが稀にしかこないのでは?というより私は見た事ありませんが?」

 

「やれやれ、厳しい意見だね。しかしある意味では的を射ているとも言えるかな」

 

「……」

 

 彼女が不安そうに顔に影を落としたのを見てすぐさま話を切り上げた。フクキタルも僕を茶化して雑談にシフトしようという僕の意を汲んでくれたようだ。……まあ選抜レースに出ないからと言って、彼女達に凄まじいデメリットが科される事は無い。ただ、スカウトの目に止まらなくてはトレセン学園のトレーナーの指導を受ける事は叶わない。

 

 

「……ライスが勝っても、誰も喜んでくれないから。ライスが走ろうとするだけで誰かの靴紐がきれちゃったり、転んじゃったり、雨が降ったり……。もうなにしても、よくないことにしか繋がらないの。だから選抜レースなんか出ないで、こうしてここで……全部終わるのを、座って待ってた方がいいんじゃないかなって思えるの」

 

 

「ふむ。確かに君と走っている誰かを心から応援している者からすれば、君が勝ったことにがっかりしてしまう人もいるんだろう。深い愛がある故に、人は誰かを無意識に傷つけてしまうものだからね。でも同じように、君だけが幸せにできる『誰か』も必ず現れるだろう

 

 しかし、その『誰か』が見つかるまで悲しみに暮れて座っているだけ、というのはあまり楽しくないんじゃないかな。きっと他にも色々と、やり方があると思うんだ。例えば、こうして僕のお茶会に付き合ってもらったりとかね」

 

「ええっと。もしかしてトレーナーさん、ライスをスカウトしてくれてるの……?」

 

「どうだろう。僕はトレーナーでは無くサブトレーナーだよ。だから……いやだからと言う訳では無いが、君を勝利に導く為の特別な何かをしてあげられる自信は無い。ただ……君が憂いなく楽しくレースを走り、そして勝利を手にして笑ってくれる事を願いながら、そばにいてあげることならできるかな」

 

「でも、ライスが一緒にいたら……サブトレーナーさんもフクキタルさんも、不幸になっちゃうかもしれないよ?」

 

「お任せ下さいライスさん。幸運はいつだって、どんなところにだってあるものなんです。ハッピーがあなたから逃げるというなら追いかけましょう!追いかけ方は、私が教えてあげますよ」

 

 

 にこっと笑うフクキタルから差し出された手をライスシャワーは反射的に握り締めて、それから僕とフクキタルの顔を交互に見つめた後、ここでようやく初めて小さな笑顔を見せてくれた

 

 

 ライスシャワーがメイクデビュー戦を1着で走り切り、そして汗と涙に塗れた満面の笑顔を見せてくれたのは、この出会いからおよそ半年程後の話だった

 

 

 

 

 

 





馴れ初め語って終わっちゃいました。後半へ続きます

ライスちゃん右利き設定は、ゲーム内の賢さトレで右手でお鉛筆をおもちだったので…もしかしたらみんなモーションが統一されてるのかもしれないし、ちょっとわかんないですね…

あと皆様、本当に暑さにはお気を付けになってくださいませ。冷房を躊躇わず、水はぐいぐい飲みましょうね


次回も半分くらいは書いてあります。でももう半分書くのに一年くらいかかるかもしれないので気軽にお待ちください
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