ガチャって言うのは……回そう、という意志が大事なんだ。『当てよう』と考えてしまうと、人は結果に囚われていつか心を壊してしまう。回そうという意志だけでいいんだ。それだけを大事にすればいい。回し続けていれば、必ずお目当てを引き当てる事が可能になる訳だからね
そんな気持ちでいつも回しています
そしてナリタタイシンを180連で引き当てる事ができました。天井には達していないので私の勝利です!!!いぇーい!!!!!そんなわけで4話ですね!!!!!!!
(スカーレットのヤツ、めちゃくちゃに飛ばしやがって……!どうする、もうちょいペースあげるか!?いや、脚を残しとかねーと半端になるのが関の山か……?)
焦るウオッカに対してほぼ無心で前を走り続けるスカーレットであったが、決して余裕の走りと言う訳にはいかない。演技でもなんでもなく、実際オーバーペースと言える走りでがむしゃらに逃げている彼女は今までに体験した事の無い苦痛を感じていた。それでもスカーレットは確かな手応を感じながら先んじて最終コーナーへと足を踏み入れる
スカーレットは落ちない。本能的にそう判断した瞬間、ウオッカは予定より早く溜めていた力を爆発させた。ぐんぐんと距離が迫っていく。しかしウオッカは自分が全力を出してもゴールまでにスカーレットを追い抜くことが到底不可能な事も同時に感覚で悟っていた
(___関係ねえ!アイツも無茶して限界を越えて来た、俺だってそれをやるだけの話だろうがよ!)
スカーレットは後方で爆発音のような強く地を蹴る音を聞きつけ、ほてり切った背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。
(ウオッカならここからでも追いついて来る!アタシがちょっと、ほんのちょっとでも力を抜けば負ける!___でも言うならば、死ぬ気で走り切ったなら___)
(あとほんの少し!そのほんの少しを引きだせりゃ、スカーレットに___)
「「勝てるッ!」」
自分に気合を入れるように叫ぶ。スカーレットは持てる力を使いきり、勢いを維持するのもままならない。しかし不格好でもゴールへと彼女の脚を動かすのは、飽くなき勝利への執念が産み出した底力だ
ウオッカは力の限りの加速を見せていた。心臓が焼き切れるような苦しさもおかまいなしに足を回転させる。傍で見ているエアグルーヴもトウカイテイオーもその加速を見てもしかして最後に差し切るのではないかとそう思ったが、トレーナーは勝利を確信したまま表情を崩す事は無い。
……内心かなりヒヤヒヤしているのだがそれを表に出さないのは彼なりの意地だった
「「うおおおおおおおお!!!!」」
ダイワスカーレットが倒れ込むようにしてゴールを割る。一瞬遅れて黒い影がその横を高速で駆け抜けて行った。ウオッカはしばらく天を仰いでいたが、直ぐに気を取り直して地面に座り込んで息を荒げるスカーレットの側へ駆け寄った
「どうよ……!ぜぇっ……はぁっ……!勝った……わよ!ゲッホゲホ」
「はぁ……解った解った!俺の負けだよ!だから取り合えず一回息整えろって。喋るのは後にしろ」
がりがりと頭をかきながらウオッカも地面に身体を投げ出した。2人はしばらく勝負の余韻に浸っていた
「……アタシ、ほんとに勝ったの?」
「ああ、お前の勝ちだよスカーレット。俺の負けだ」
「勝った……勝った!勝ったわ!ちょっとトレーナー!見てたでしょうね!?アタシ、ウオッカに勝ったわよ!」
「うるせーな!連呼するんじゃねーよ!だあああちくしょー!」
2人のやかましい声がレース場に木霊した
______________
「悪かったな、スカーレット。変な事言っちまって」
「ふん。まあ今回は許してあげるわ」
僕は事前に用意しておいたタオルとスポーツドリンクを2人に手渡しながら口を挟んだ
「ウオッカ、僕こそ悪いことをした。君を引っ掛けるような真似をして申し訳ない……ただ、そうまでしなければならない程君は厄介な相手だったのでね」
「んなの気にしてねーよ。アンタのお陰でいいレースになった。それを逆に感謝したいくらいだぜ」
彼女の目は真っすぐこちらを見ていて、明るく笑うその表情からも嫌味は感じなかった。ウオッカと直接話した事は無かったが、存外気持ちの良い性格をしているようだ
エアグルーヴから賞賛を受けているスカーレットを横目で見つつ、耳打ちするようにウオッカに話しかけた。ちなみにトウカイテイオーはレースを見届けた後「いいレースだったって2人に言っといてね!」と言いながら自分のトレーナーの所へ慌てて帰って行ったので既にここにはいない
「僕が信用ならないのは仕方ない。しかし、スカーレットを裏切る事は決して無い。僕の持てる全てを賭けて彼女に尽くしてあげたい。この気持ちが本物である事だけは信じて欲しいんだ」
「す、全てって……!こっぱずかしい事言うなよな!」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに悶えだしたが、すぐ咳払いをして仕切り直すと再び僕の目を見ながら申し訳なさそうに言葉を続ける
「あの、俺こそすんませんでした。俺……アンタの事よく知りもしねぇのにアイツに色々言っちゃって……」
「ふむ、それは気にしないでいい。僕の事を褒めてくれる人間なんてこの学園にはいないさ。もしいるとすれば、僕に弱味を握られているか……僕に大きな借りがある人間だけだろう」
「あー……アンタやっぱヤバイ人なのか?」
「普通の人間さ。他のトレーナーの方々は余りに優秀なものだから、そんな僕が目に障るんだろう」
「ちょっと何コソコソやってんのよ。ウオッカアンタ、また変な事言ってんじゃないでしょうね!」
ぐいっと間に割って入ってきたスカーレットがぎろりとウオッカを睨みつけた。……ついでの様に僕も睨まれた
「はぁ!?ちげーよ!」
「スカーレット、もういいじゃないか。ウオッカは君が心配だったんだ。君だってそれは解るだろう?」
「ちょ、やめてくれよ!?」
「まぁ、それは解ってるけど……」
「だぁぁあ!やめろ!別にそんなんじゃねーって言ってんだろうが!」
真っ赤にした顔をブンブン振る彼女は、口調こそ荒いが心根は真っすぐで人の事を良く見ている。向上心の高さ故にスカーレットとは衝突してしまうのはしょうがないだろうが、2人は良き友人になれるだろう。というかなってもらわないと困る。毎日喧嘩してその度に蹴り飛ばされるトレーナー室のドアの気持ちにもなってみてくれ
「でも、ウオッカが聞いたよからぬ噂ってやつはアンタの口から詳しく聞きたいわ。いいかしら?」
「……ふぅん、そうだね。それじゃあ休憩も兼ねてトレーナー室で少し話そうか」
彼女の目が真っすぐに僕を捉えているが、そこにどんな感情が込められているのかは解らない。しかし彼女の問いにはしっかりと答える義務が僕にある事は確かだろう。僕は、憐れみか心配か解らないエアグルーヴの視線にも気付かないフリをして、ただ曖昧に微笑む
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前日、放課後のミーティング
『___大きく逃げる。細々と語ったが、君が一番意識すべきはこれだ』
ホワイトボードの左上に書いた『逃げ』という文字を線でぐるぐると囲んで、そこでようやくペンを置いた。久しぶりに文字を書きながらレースについての考えを語った気がするし、腕も喉も疲れ切ってしまった。これを頻繁にやっている専属トレーナー達の体力には敬意を表するよ
スカーレットは腕を組んでふんふんと聞いていたが、僕が質問を促すように手を差し出すと彼女にしては珍しく口を開いては閉じてを繰り返し何やら言いあぐねている様子だった。遠慮しないでいい、と先を促すと恐る恐るといった感じで質問してきた
「アンタ、スタミナ管理って概念……知ってるわよね?」
「おいおい、そこまで僕の評価低いのかい?一応この学園をトレーナーバッチを付けて歩いても怒られない程度の教養は備えてあるとも。この間エアグr……幽霊から逃げる君を見てて思ったのだが、随分とスタミナがついているんじゃないかね?夜間練習も無意味ではなかったというわけだ。即ち確かな根拠を持って提案させてもらった作戦であって___」
「ちょっと待ちなさい、なんでソレ知ってるのよ」
「……ゴホン。話を戻すが」
「いいえ、この話は譲れないわ。見たってどういうこと?あんな時間にアタシの寮の近くを通る事なんてある筈ないわよね。トレーナー室からもトレーナー寮からも随分離れてるもの」
「スカーレット。たまたまだよ、たまたま。ね?これでいいだろう?決して深く掘り下げるような話では___」
「絶対掘り下げるわ」
「いいから落ち着いてくれ、本当に___」
ちなみにエアグルーヴが関わった事だけは何とか誤魔化した
誤字指摘助かりました。ウオッカをウォッカだとずっと勘違いしていた前任者は破壊され、今日から新型である私が執筆を引き継ぎます。ここから先、精神的動揺による誤字は一切無いとそう思っていただこうッ!!