プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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ミキリハッシャマンどうでしょうか。体調の方は改善したのでしょうか。……あー戻ってきました。大丈夫そうです。手を振っています。


暑いからといって雨の中ではしゃいでいたら風邪もひきますね。しっかり身体を拭かないといけないと、いい年なのですから学んでほしいものですが


ちょっと風邪ひくとご時世的に行動が大きく制限されてしまいますからね。しっかり身体の調子を整えて欲しい所!ちなみに解説さんは体調が悪い時はどうされてますか?


酒飲んで寝ますね


それで治りますか?


治りません。


成程ォ!!!!!!!!!





何でもないような騒がしい夜

『ルルとダイブの様子はどうかな?』

 

 

 ウマホの通知音に気付いて画面を見ると大和からそのようなメッセージが来ている。エアグルーヴはストレッチを中断して部屋を見渡し、2人の様子を改めて確認した。皆思い思いに夜の時間を過ごしていたが、大半のウマ娘達は部屋の中央で輪になってトランプに興じていた

 

 

「___そんでさ。私が風邪で授業休んだ時にルルがノート見せてくれたんだけどさ、もう明らかに途中で字がぐちゃってて、あー絶対この辺で寝落ちしたじゃんって解るのよ。でもそもそもこいつ普段ノートなんてほとんどとらないんだよね。なのに私に見せる為に頑張ってくれたってのが嬉しくてさー」

 

「ダイブ!もうやめよ!?ね!?」

 

「はぁ?いいじゃんか別に。何がダメなのよ、褒めてるんだからいいじゃん」

 

「私を抱っこしながらする話じゃないでしょぉ!?は、な、し、て!」

 

 あぐらをかいて座るワンモアダイブの足の上に座らされているルルは顔を真っ赤にさせてもがくのだが、自分より頭一つ分背の高いダイブにしっかりと抱きかかえられていては手も足も出ない。エアグルーヴと目が合ったルルは必死に手を伸ばして助けを求めた

 

 

「グルーヴ先輩!助けて下さいよぉ!いじめられてるんですぅ!」

 

「程々にな、ダイブ」

 

「あいあい」

 

「これもう程々は過ぎてるでしょぉ!?え、先輩なにしてるんですか?」

 

 エアグルーヴは無言でウマホを向けるとパシャリと写真を撮り、そのまま大和への返信として送り付けた。大和からも『安心したよ。ありがとう』と返事が返ってくる。無事にミッションを完了させた事に満足したエアグルーヴは何事もなかったようにストレッチに戻った。ルルが本気で嫌がっているようなら介入しようかと思ったのだが、全然本気で抵抗していなかったのでスルーする事にしたのだ

 

 

「え!今写真撮りましたぁ!?」

 

「はいはい暴れない。んじゃ私の話はこれで終わり。じゃあ次行こうか次」

 

「ほいほーい。グルーヴ先輩もやりましょうよ」

 

「私はまだストレッチが残っている。次から入れてもらえるか」

 

「了解でーす」

 

 手元でトランプをシャッフルし終えていたセイウンスカイが参加者達にカードを配り出した。ルルはカードを受け取りながら不満そうに頬を膨らませる

 

「そもそもおかしいじゃん……!負けた人が恥ずかしい話を披露するって罰ゲームなのになんで私の話してんのさぁ!」

 

「私が自己管理が甘くて風邪ひいちゃったって恥ずかしい話をしたら、偶然にもルルに飛び火したってだけだからセーフでしょ」

 

「セーフじゃないんだなぁこれが!あぁ~~~もうっ!私トイレ行きたいから一回放してっ!」

 

「はいよ」

 

 解放されたルルは頬を膨らませながら小走りで部屋を出て行った。配られたカードを整理していたウオッカはこの隙にルル本人がいると少々聞きにくかった質問をする事にした

 

「あの……ルル先輩、学校も辞めちゃうんすか?」

 

 この質問は部屋にいるほぼ全員が疑問に抱きながら、中々聞き出せない質問でもあった。答えを知っているのはルル本人を除き僅か数名。その内の1人でもあるダイブがぽりぽりと頭をかきながらウオッカの問いに正面から答えた

 

「いや、学校自体は辞めないってさ。レースには出ないけどこれからもチームハウスには顔を出すって言ってたね。まあ引退したからって皆が皆学校まで辞める訳じゃないからさ」

 

「そうなんすか。いや、それが気になってて……」

 

「走らなくなった、あるいは走れなくなったウマ娘を追い出すような制度は学園には無い。むしろそういったウマ娘達が次を目指して歩き出せるようサポートする体制もしっかり整っている」

 

 

 エアグルーヴが話を引き継ぐ。そういった制度がある事自体はスカーレット達も知っているが、実際に引退したウマ娘達がどのような道を辿るのかはあまり詳しくはない。エアグルーヴは生徒会メンバーとしてそういった子達と接する機会も多くあった。当然ルルの去就についてもレース後に大和を通して話を聞いている

 

 

「レースに向けて頑張ってる奴等との温度差でしんどくなっちゃう、っていう理由で学園を辞めちゃう奴も多いんだけどね。まあでもルルは残るって言ってくれたよ。少なくても私がレースを辞めるまでは一緒に居てくれるってさ」

 

 

 嬉しそうに語るダイブは少し照れ臭そうに笑った。寮の相部屋の組み合わせは基本的に変わる事は無い。多感な思春期を数年も共に過ごせば特別な絆が生まれるものだ。喧嘩も多いが、最も心を許せる親友である事も間違いない事実だった

 

 

 レースからの帰り道。バスに揺られながら今後について恐る恐る尋ねたダイブに対してルルは眠そうな目をこすりながら耳元で囁いた。___ちゃんと最後まで一緒に居るから、という言葉が未だにダイブの脳内でぐるんぐるんと回り続けていた。彼女のルルに対するボディタッチが多めなのもその現象によるハイテンションが原因である

 

 

「ふーただいま。え、なにこの空気。なんの話してたの?」

 

「いや別に」

 

「なにそれ」

 

 部屋へ戻って来たルルをなんとも生暖かい空気が出迎える。眉をひそめながらルルはよっこいしょと元いたダイブの脚の上に座り直した。皆の視線が集中しているのに気付いて少し不思議そうに首を傾げて少し考えた後、あっと声を出して慌ててそこから立ち上がろうとする。しかしダイブが素早く腕を伸ばし捕まえて自分の脚の上に引き戻した

 

 

「わざわざ戻ってくるとか可愛いが過ぎるな……」

 

「違う!間違えた!間違えたの!!!あーもう……!」

 

 

 仲良いなぁ……と生暖かい視線が集中する。ルルは真っ赤になってなすすべなく親友の脚の上で縮こまった

 

 

 その後もしばらくトランプを用いた勝負が継続されたのだが、毎日のように遊んでいたからか持ち込んだトランプにもウノも少々飽きが来ていた。勝負に緊張感を持たせるという名目の下1位の人が最下位に罰ゲームを1つ言い渡すというルールが導入されたのだが、どうにも目新しい物もなくなってきた

 

「なんかもっとスリルのある罰ゲーム無いの?ケガするから物理は無しで」

 

 退屈を感じ始めていたタイシンが小さなあくびを1つしながらそう言うと、負けた罰ゲームとして彼女の背中をせっせとマッサージさせられていたナイスネイチャの耳がピクリと怪しく反応した。にやりと不敵に笑うと小柄な先輩の背中に指を這わせる

 

「ほうほうスリルがお望みっすか。それじゃ秘伝のツボ押しを1つ試してみますかねぇ」

 

「ちょっとネイチャ変な事___うぁっ……!」

 

「お、ここがええのんか。ほれほれー」

 

「すとっ、ストップ!やめろって……ええい!」

 

「うわっやばい!」

 

「調子に乗りすぎなんじゃないのネイチャ……!」

 

「ひゃひゃひゃ!や、やめてー!」

 

 

 身体を跳ね上げてネイチャを振り落とし素早く上下を逆転させて見事なウマ乗り(ウマ乗りって言葉、ウマ娘世界で通用するのかな?という疑問はさておいて)になったタイシンのテクニカルなマッサージがネイチャに襲い掛かった。小刻みに身体を震わせながら布団に倒れ伏したネイチャを見て満足そうに鼻を鳴らしたタイシンだったが、少々汗をかいてしまったらしくシャツをパタパタとはためかせて身体に風を入れた

 

 

「あっつ。……もう一回風呂いこっかな」

 

「あ、俺も行きます。スカーレットは?」

 

「アタシはパス。髪乾かすの大変だから」

 

「ん。他は?」

 

「あたしも……行きますです……。はい……」

 

 

 へろへろと立ち上がったネイチャとウオッカ、タイシンの3人は連れ立って風呂セットを担いで本日2度目の風呂場へ向かう。建物の横に作られた大浴場はいつでも汗を流せるようになっている。汗を流した3人はすっきりした気持ちで再び部屋へ戻るのだが、何故か開催されていた枕投げ大会に巻き込まれ再び汗をかくことになってしまった

 

 

_________________________________

 

 

 

「皆、今年の夏も実りのある良き時間が過ごせただろうか。」

 

『合宿開始前のデータと比較しても十分に成果は出ているように見えるねぇ。特に新人の2人は目を見張る程の成長率だ。実に素晴らしい時間だったと言えるだろうね』

 

 

 君も参加してくれたらよかったのに、という僕の誘いをアグネスタキオンは呆れたように鼻で笑って流してしまった。確かに今の彼女にとって数ヶ月部屋から離れるといった行為はいささか耐え難いだろう。たまには長期休暇でもとってのんびりして欲しいものだけど

 

『そんな怠惰な時を過ごしている余裕は無いさ』

 

「お互い忙しい身だからね」

 

『ふーん……?』

 

 通話越しだが彼女が疑問を露わにした表情をしているのが手にとるように解る。いや僕だって忙しいんだ。彼女とはまた違った忙しさではあるのだけど

 

「それじゃあまたね。」

 

『ああ。お土産を頼むよ』

 

 

 通話を切ってスマホを机の上に置き空を見上げた。今宵は良い月が出ている。屋外テラスに並べられた椅子に座り目を閉じれば、涼し気な夜風がふわりと肌を撫でた。昼間の熱気がウソのような爽やかな夜だった。その風に乗って、聞きなれたのんびりした声が飛び込んできた

 

 

「うーん大人の楽しみ方って感じですねぇ」

 

「やあスカイ。どうしたんだい?こんな時間に」

 

 ひょっこり現れたスカイが隣の椅子に座った。半袖シャツから伸びる健康的に日焼けした腕を頭のうしろで組んで、宙に伸ばした足を僕の膝の上に乗っけるとうーんと身体を伸ばしてリラックスできる姿勢を取った

 

 

「いやいや罰ゲームでしてね。大和さんの所からなにか食べる物をもらってこないといけないんですよ」

 

「ふーむ。しかしもう21時だよ。こんな時間に食べるなんてよくないんじゃないかな?」

 

 今日の夕食も十分食べただろうに、まあ成長期である彼女達であれば数時間もすればお腹を空かせてしまうものだろう。1流のホテルでもあるこの宿泊施設にも当然売店は設置されているが、合宿期間中は夜間は食べ物の販売を停止してもらっている。そうしないと合宿でいつも以上に疲労した彼女達が深夜お泊り会テンションのまま暴食の限りを尽くしてしまう恐れがあるからだ

 

「えー。そんなこといわないでさ、なんかちょっとしたお菓子でいいから恵んでくださいよ。手ぶらで返ると先輩方に怒られちゃうんですよー」

 

「営業の人みたいなセリフだね。しかし御覧の通り僕こそ手ぶらでね、君に何もあげられないんだ。さあ、速く部屋に戻った方がいい。そんな薄着だと冷えてしまうからね」

 

「……んー?なんか私を追い返そうとするなんて怪しいなぁ」

 

 彼女はじっとりとした目でこちらを見て来る。目を逸らすと後ろめたい事がありますと自白するようなものだ。僕は真っすぐ彼女の目を見つめ返すと心底心配そうな表情を作り上げて、彼女に僕の真意を解ってもらう為に言葉を綴った

 

「別に何もないさ。ただ君が万が一にも風邪をひいてしまうような事があってはいけないし、こんな時間に胃に物を入れるという行為はあまり身体に良いとは言えない。良識ある大人としてはオススメできないね。何より睡眠というのは成長期の君達にとって___」

 

「お待たせいたしました大和様。こちら生ビールと特製海鮮アヒージョになります。こちらのバゲットはアヒージョに付けてお召し上がりください」

 

「___ああ、ありがとう」

 

 スカイの方から「は?」と咎めるような声が飛んでくるが、どうしたのだろうか。何に怒っているのか僕にはまるで見当もつかない

 

「……こちらの生徒様にも何かお持ちいたしましょうか?」

 

「いや、彼女はもう寝るから結構だよ」

 

 スカイが素早くウマホを取り出し僕の方を向けてシャッター音を複数鳴らした。突然の事態だったので上手く表情を作れたか自信が無い

 

「いやちゃんとキメ顔できてるよ。というか自分だけお夜食ですか?いけないんだー」

 

 成程、弱味を握られたという訳かな。この写真をお腹を空かせたチームメンバー達に送信されてしまえば、僕の優雅な夜の時間は木っ端みじんに砕かれてしまう事だろう。僕が小さく溜息をついたのを見て、彼女はすいっとお皿を自分の方へ引き寄せた

 

「うわこれ美味しい。このパンを付けて食べるんですか?」

 

「はい。ガーリックの効いたオリーブオイルベースのスープに付けて召し上がっていただくと非常に美味しく楽しんでいただけます」

 

 そのまま流れるように勝手にバゲットを鉄鍋の中に突っ込んで食べ出した。正直軽食ってレベルの料理では無いのだけれど、彼女は完全にスイッチが入ったようでフォークとパンを両手で持って机に向き直ってしまった。どうも僕の分が残りそうな様子は無い。僕は諦めてビールを一口飲むとスタッフさんに声をかけた

 

「やれやれ。申し訳ない、僕の分をもう1つもってきてもらえるかな。後は彼女達が部屋でつまめるような軽いお菓子を袋に包んで持ってきて欲しい」

 

「かしこまりました」

 

 給仕をしてくれた彼女はくすくすと笑いながら頭を下げて室内へ戻って行った

 

「スカイ。それを食べたら戻るんだよ」

 

「美味しい……半端に食べたらお腹空いてきた……」

 

「うーむ。若さだね」

 

 

 その後ごねる彼女にお土産を渡してなんとか部屋へ送り返す事に成功した。しばらく1人で夜食を楽しんでいると、僕のスマホにチームの子達からいくつかのメッセージと写真が送られてきた。

 

 どうやら部屋へ戻ったスカイは最初こそ戦利品を持ち帰ったことで部屋の皆に歓迎されたようだが、なんともいい匂いをさせている事を怪しまれ最後には枕投げの標的にされぼっこぼこにされてしまったらしい

 

 抜け駆けは罪である。僕はなんと返事を返すか迷ったのだが、とりあえず早めに寝るようにねと当たり障りのないメッセージを返信してスマホを置いた

 

 

 夏合宿ももう残り僅かとなっていた

 

 




投稿遅れてすいませェーん!ずっと寝てました!


大分元気になったので頑張っていきます!夏合宿編も今回と次くらいでようやく終わりです!その予定です!リアル時間帯と合わせたいと考えていましたが今後はちょっとずつ作品内の時間の方が速くなっていきそうです!















今後のウマ娘達の過去回の長さは

  • 数話使ってもよろしくてよ
  • 1話で簡潔にすませるべきですわよ
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