プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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ミキリハッシャマンが今起きました。枕元の時計を確認して……あーっと天を仰いだ!そして……あーっと!開き直って二度寝!二度寝です!


一度ぐだるのが癖になると中々治せませんからね。ここは踏ん張って欲しい所ですが


寒くなるとお布団から中々出られませんからね!しょうがないとも言えます!




(12月に入り超絶お仕事が忙しくなった結果更新がめちゃ遅れてすいません。やっと休みもらえそうなので頑張ります。ほんとに頑張ります)


ありがとうを伝えたくて

 

 大げさなイベントではあるが、根幹はそれだ。面と向かってありがとうを言える機会は多いようで少なくて、巡って来た機会はあっという間に過ぎてしまう。観る者と観られる者として近くて遠い絶対的な壁で区切られた関係性の垣根を可能な限り取っ払う為の祭事なのである。

 

 

 流石に無制限に受け入れてしまうと問題が起きるリスクも跳ね上がるものだから、中央トレセン学園ファン感謝祭は事前予約のみのチケット制で入場管理が行われる。凄まじい倍率を潜り抜け、三女神様の祝福を受け取った者達は今学園の前で途方もない行列を成しながら、奇妙な程静かにその時を待っているのだ

 

 

 しかしこの僕ときたら列に並ぶことも無く、当然チケットの抽選に参加することも無く。だというのにこうしてウマ娘諸君が活気づいて忙しなく動き回る様子を見守りながら温かなコーヒーを楽しむことが出来ている訳だ

 

 

「これほど贅沢な立場に身を置けるなんて子供の頃の僕は夢にも思わなかっただろうね……」

 

「アタシ達が忙しくしてるのにのんびりしてられるなんて、ほんっとに良い御身分よね」

 

 

 刺々しい言葉が僕の心を突き刺さんと右舷から飛来した。しかしちょっと待って欲しいんだスカーレット。確かに僕は皆が最後の準備に入っている中で1人のんびりしているかもしれない。だがこれは間違っても君達に仕事を押し付けて自分だけゆっくりしているとかそんなパワハラじみたものではない

 

 

「この日を迎えるまでに僕は随分骨を折ったんだよ。その甲斐あってか、僕がするべき仕事は今朝の時点で全て終了している。後は不測の事態が起きない限り水を差すような事はしないよ。今日は君達ウマ娘とファンの方々だけの舞台だからね。僕達スタッフは影にいるべき存在なんだ。うん、敢えて言うなら君達の頑張っている様子を眺めるのが今日の僕の仕事と言えるのかな」

 

 

「あのねぇ、そうは言うけどチームのトレーナーであるアンタを見に来る人だっているかもしれないでしょ?しゃんとしてくれないとアタシ達のメンツにも関わるんだからね!」

 

「無論、君達の評判を下げるような事はしないさ。僕が外面を取り繕うのは得意なのは君もご存じの通り」

 

「……ま、確かにそれはそうね」

 

 

 動きやすいトレセン指定のジャージの上から可愛らしいピンクのエプロンを纏ったダイワスカーレットが思い出すように視線を空に向ける。参観日の事を思い出しているのだろう

 

 そんな彼女の頭にはこれまた可愛らしく三角巾が巻かれていて気分はすっかり料理人だ。本日、我々ムーンシャインのチームハウスの周辺にはいくつもの屋台が建てられていた

 

 

 簡単な料理を出す屋台、お土産やグッズを売る屋台。接客を通じてファンの方々とお喋りができるよう、1人1人の作業量が少なくなるよう人数は多めに配置されている。各々別のイベントに参加する時間帯もあるので、手薄にならないよう上手にシフトを組み上げるのはかなり大変だった(殆どレイヴンがやってくれたのだけれど

 

 

 今日一日彼女達ウマ娘はとっても忙しい。誰一人として暇な子はいないだろう。確かに大きな実績を残してたくさんのファンから応援されているウマ娘を中心にイベントが組まれ、それが一日のスケジュールの中心になっている事は事実だ。全員が主役である、と合言葉のように互いに励まし合ったとしても皮肉のように受け取る子もいるだろう

 

 

 だがわざわざ学園に来てくれるファン達が見たいのは主役だけではない。どのウマ娘にも、その子だけのファンがいる。脇役だとしてもしっかり舞台でスポットライトを浴びる機会が用意されているし、無駄な役は1つも無い。だからこそ僕は言おう。今日は全員の為の舞台なのだと

 

 

「本日は僕も半分休日のつもりで、ファンの1人としてみんなの頑張りを見せてもらおうと考えているわけだね」

 

「大和サンはいつもそんな感じじゃない?」

 

「半分休日って、残りの半分は頑張ってますみたいな感じ出すのやめたら?」

 

 

 ネイチャとタイシンが何か言っているのが聞こえた気がしたけど全然聞こえなかった。何故なら丁度開門の合図を告げる校内放送が鳴り響いたからだ。僕の聴力はウマ娘ほど優れてはいないので、放送以外の音をシャットアウトされて全く聞こえなかった。いや、ほんとに

 

 

『___ではただいまを持ちまして中央トレーニングセンター学園、秋のファン感謝祭の開会を宣言致します!』

 

 

 

 生徒会に所属する中等部の子のやや緊張した声色によって執り行われた開会宣言が終了すると同時に、遠くから地響きが地面を伝わってくる。走るのは禁止されているが、限界ギリギリの速度で繰り出される早歩きが産み出す振動だ

 

 

 さて。1日のスケジュールは事細かく分厚いパンフレットに記載されている。生徒会主催で行われる大々的なイベントに限らず、生徒達が希望して執り行う小規模な出し物まで全てが網羅されている。更に学園の公式サイトから各チームのHPを辿ればそれぞれに所属するウマ娘達がどういったスケジュールで1日を過ごすのかを追う事ができるので、自らの推しウマ娘の行動に合わせて学園を回る事が可能なのだ

 

 

 

「つまり、エアグルーヴが口を酸っぱくして分刻みの行動を意識するよう言っていたのはそういうことなんだよ。当然休憩は適宜取って欲しいけれど、自由時間以外は基本的にスケジュールを意識するようにね。スカーレット、ウオッカ。君達1年生は勝手が解らなければ先輩方にすぐ聞けば大丈夫だからね」

 

 

 2人は素直に頷いてくれた。まあとはいえ流石にデビューして間もない2人は一日中イベントに引っ張りだこという程忙しい訳でもない。ファンとの交流も大事だが、この日だけの学園の特別な空気を楽しんでもらえたらと心から願う。普段からこの学園には楽しい空気が満ちてはいるが、今日という日は全てのウマ娘達にとって特別なものだからね

 

 

 

「そういう訳だからほらスカーレット、案内用の看板貸して。呼び込みは私がやるから」

 

「そんな、悪いですよモブ先輩。こういうのは後輩である私が……」

 

「あのね、スカーレット。デビューして無傷の2連勝を上げているあなたとウオッカはムーンシャインの期待の新人なんだから、会いたいって人はきっと多いよ。そんな子が呼び込みの看板持ってその辺でぶらぶらしてたら通路に人が溜まって流れが悪くなっちゃうでしょ?」

 

 

 こういう時は暇人に任せておきなよと看板を手にしたモノクロブーケが屋台から出て、学園のメインストリートとチームハウスから伸びる小道を結ぶ交差点の所まで小走りで駆けて行った。先頭集団を引き当てた運の良いファン達の第一陣、その中の一部がこちらを目指して歩いてきているのが見えたのだろう。彼女は看板を振り上げた

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー。ムーンシャインのチームハウスはこちらです。皆さま順序良く並んで___」

 

「あ、モブちゃんだ!モブちゃんカワイイヤッター!!握手いいですか!!!?はい、一瞬で大丈夫なので!!!!」

 

「モブちゃんエプロン可愛いっすね。やっば……一緒に写真いいですか?お金払いますから」

 

「あ、あの。あのっ。はい、ありがとうございます。あ、お金は大丈夫ですから。あの、ハイ」

 

 

 モノクロブーケは一瞬で取り囲まれてしまいその姿を消した。ただ彼女との交流を求めるファン達は流れの邪魔にならないようスッと脇に退いて列を形成している。その手腕、流石というべきだ 

 

 

「なにやってんだろねモブ。遠回しに自分の人気を自慢したいのか?」

 

「なんか助けて欲しそうに手を振ってっけど……まぁほっとこうか。満更でもないだろうし。はーいいらっしゃいませー!ありがとうございまーす!」

 

 

 モブが人だかりに囲まれながらも懸命に掲げた看板が目印になってか、はたまたそんなの関係なく目的地がここだったのか。途切れる事無く来てくれるファンの方々とお喋りをしながら品物を手渡す。レースでの成績によって列の長さは違うけれど、ただどの子も自分を応援してくれている人達との交流を存分に楽しんでいるようだった

 

 

「よぅ。やってるな」

 

「感謝祭はウマ娘への取材は基本的にNGだよ」

 

「今日はプライベートさ」

 

 

 そんな中僕の友人に1人が顔を見せた。彼は入場者用のチケットが入ったネックストラップを見せつけるように手に持ってひらひらとかざして僕の横に立った

 

 〈週刊それなり・ロマンチック〉の記者の1人でもある彼を含め、本日は会場の様子を撮影するテレビスタッフか学園お抱えの専属カメラマン以外の記者の立ち入り枠は用意されていない

 

 入りたければ一般の方々と同じ条件でチケット争奪戦に加わり戦い抜くしかないのだが、どうやら彼は見事勝ち取ったらしかった。

 

 あちらこちらにいくつか設置された定点カメラの映像が動画サイトで垂れ流しになるし、実際現場にいなくても参加気分は味わう事はできるだろう

 

 

「とはいえだ。どれだけ近くても観客席からレース場を見下ろすしかない俺達からすれば、感謝祭は同じ場に立って喜びを分かち合える夢の舞台だ。いくら払ってでも参加したいと思う奴は多いんだなぁ……これが」

 

「しかしお金を積んでも手に入らないものだ。URAが厳しく目を光らせている。トレセン学園ファン感謝祭に参加する人間は三女神様が選び出すものであり、だからこそ選ばれた人達は心行くまで今日を楽しんでもらいたいね」

 

 

 尤もだな、と頷いた彼はポケットをまさぐっていたが目的の物がそこに入っていない事に気付き少し気落ちした顔で黙り込んだ。残念ながらトレセン学園はタバコの持ち込みは厳禁である。持っている人はゲートで預けなくてはならない。まあ、教育施設だからね

 

 軽い世間話をした後、彼はスーツのポケットに手を入れたままクールに去って行った。かと思いきやそのままうちのチームの屋台の列に並び、皆のグッズを一式購入していた。うん、勿論ムーンシャインでは購入したグッズを無料でご自宅まで配送させてもらうサービスも設けているので安心して欲しいだけ買っていってもらって大丈夫だ

 

 

 

「わー!ダイワスカーレットちゃんだ!握手してください!」

 

「はい、アタシでよければ。応援ありがとうございます!」

 

「ウオッカちゃん、私こないだのレースからファンになっちゃったんだ!いい走りしてんねぇほんと!」

 

「あざっす!次も見てて下さい!もっといい走り見せますから!」

 

 

 すっかりファンサービスが板についた2人の様子を後ろから腕組みをして眺めていると、僕の内側に言葉にできない昂ぶりが湧き上がっているのを感じる。なんだろうかこれは……後方腕組みトレーナー面、というものだろうか。彼女達が世に出るに連れて多くの人から注目されるのは誇らしいが、寂しくもあるな

 

 

「ふ。僕とした事がトレーナーみたいな感情を抱いてしまった」 

 

「実際トレーナーさんなのでは……?」

 

「おっと、いらっしゃいませ。それでも僕はサブトレーナーですよ」

 

「やあそうでしたな、サブトレーナーさん。お久しぶりです」

 

 

 帽子をとりながら差し出された手を握り返す。彼は長年ムーンシャインを応援してくれているファンの方だ。チーム主催のイベントにも何度も顔を出してくれている。折角の機会だというのに、彼のようにわざわざ僕に挨拶をするために時間を割く物好きな方々も少なからずいる

 

 ムーンシャインファンクラブの会員の馴染の人から、初めてお目にかかる人まで様々だ。僕自身はメディアへの露出が多くならないよう心がけているし、書類上の実績も薄く大丸さんと違って顔は売れていない筈なのだけど

 

 

「欲が無いねぇサブトレーナーさんは。GⅠウマ娘が所属するチームのサブトレーナーっつったら下手な芸能人より顔が売れるもんなのに」

 

「僕はお飾りですからね。他のトレーナーの方々と肩を並べてひな壇に座るなんて、考えるのもおこがましいくらいです」

 

 

 トレーナーとして名を売る事はひいては担当しているウマ娘の名を売る事にも繋がるので、積極的にメディアへ露出する者も多い。かと思えば逆に己を日陰者だと割り切り影に潜る者もいる。どちらが正しいというより、各々考え方や目指す場所が違うという話だ。実際、今日行われるイベントの中にはトレーナーがメインとなって参加する競技も存在している。今年は僕は出場しないのだけれど

 

 

「大和サブ。それなんだけど」

 

「やぁタイシン。この流れで嫌な挟み方をしてくるね」

 

「参加登録しといたから。悪いね」

 

「ふーむ。ほんの少しだけでいいから、謝意を感じさせる顔で言って欲しいかな」

 

「アタシ、演技とかできないタイプだから」

 

 

 当然嘘である。GⅠウマ娘である彼女はCMとか雑誌の撮影なんかに呼ばれる機会も多く、そして上手にこなしているのを僕は知っているからだ。全くやれやれだね。しかし本人の知らない所で参加申請が通るなんてことあるのだろうか。参加を無視すると進行に悪影響を及ぼす可能性もあるので、流石に逃げる訳にはいかないだろう

 

 

 

________________

 

 

 

 

『という訳で開催されます、毎年恒例のトレセン学園トレーナー対抗戦!司会はわたくし、押しも押されぬ桜印の委員長!サクラバクシンオーが担当いたします!はいっ!解説にはー!』

 

『はい。理事長秘書を務めております駿川たづなです。トレーナーの皆さん、張り切りすぎてお怪我だけはなさらないでくださいね?もっとも、毎年言い続けても必ず張り切りすぎる方がいるのであまり意味はない注意なのかもしれませんが』

 

 

 詰めかけた観客からどっと笑いが起きる。いや殆どがウマ娘じゃないかな?その目はぎらついている。あわよくば自分のトレーナーの弱味や恥ずかしい所の1つでも握ってやろうという顔付きだ

 

 

「あなた方の日頃の行いが出てますね」

 

「お前みたいに甘やかしてばっかじゃいられないのだよ。月光の」

 

「おお、菱星の。お年だというのに対抗戦に出るなんて、大丈夫ですか?」

 

 

 僕が心配そうにそう挨拶を返すと、チーム・デルフィンを率いる浜中トレーナーは白髪混じりの髪をかき上げながら鋭い眼光を僕に向けてきた。まるで積年の恨みを晴らさんとする老兵のような凄味を感じる。全く身に覚えがないので、八つ当たりか人違いだろう

 

 

「体調は良くないな。一昨年のファン感で泥まみれにされた恨みをやっと晴らせると思うと昨日は眠れなかった」

 

「2年経てば時効ですよ」

 

 

 一昨年、超絶ダート100mレース(どろんこ競争)にしぶしぶ出る羽目になった僕はなんか上手くいってなんか1位だった。1位の景品は大型テレビだった。部屋に置くには大きすぎるので、チームハウスに置いて皆がゲームしたり映画見たり存分に使ってくれている

 

 それを得る為に多少色々な物を犠牲にした。ちょっとした友情や信頼なんかがそれだ。まあトレーナー間の友情は儚いものだが(ちなみに当チームの大丸さんは身体能力が規格外なので、対抗戦の競技が運動系の場合は殿堂入り扱いで出場禁止となっている

 

 

『さて、では今回の競技ですが……!実は私も知りません!たづなさん、お願いできますでしょうか!』

 

 

 えぇ……と不安そうな声が集まったトレーナー陣から湧き上がった。確かに、今回は服装の指定も無いし集合場所もレース場ではなく噴水前のステージだ。身体を動かす系じゃないとすれば……なんだろうか。のど自慢勝負は何年か前に一度行われ事があるし今回もそういった系統かもしれない

 

 どうあれ、今回も恥ずかしい目に合わされると理解しながら我々はトレーナーとしての腕を変な形で競い合う訳だ。周囲を取り囲む観客の中に混ざったウマ娘達から囃し立てるような歓声が上がる

 

 

『トレーナーさん達だけが知ってる、担当ウマ娘さんの可愛い所を発表してもらいます』

 

『チョワッ』

 

 

 流れが変わった。場の雰囲気だけでなく、トレーナー達の目の色が変わった。あと取り囲むウマ娘達の顔が強張った

 

 

『え、あの、たづなさん?』

 

『確かにトレーナーさんの皆さんが汗水を流す様子も反響がいいのですが、今年はもうちょっとウマ娘を応援するファンの皆様に還元できる催しをと考えまして。つまり___暴露大会です。コンプライアンスを守った上で、それでも盛り上がるのをお願いしますね?』

 

 

 舞台の真ん中には一本のマイク。必要な物は揃っているという訳だ。我々聡明なトレーナーはすぐに状況を理解した

 

 

「一番手は俺だ!そしてそのまま一位をとらせていただく!」

 

 

 いの一番に飛び出して行ったのはサクラバクシンオーのトレーナーだ。彼はとにかく判断が速い。考えが浅いとも言う。こういった催しものではとにかく一番手に名乗り上げて突っ込んでいく。彼の何事にも意欲的なその姿勢は素晴らしいが、今回ばかりははいどうぞと譲る訳にはいかなかった

 

 

「一番と聞くと譲れないね」

 

「大和サブ……!珍しいな!君が積極的とは!」

 

「僕自身は二番手でいいが、スカーレットは一番でなくてはならないのでね」

 

「その心意気や見事!しかし聞きたくないか大和サブ!普段はバクシン一筋の彼女が最近ちょいちょい見せてくれるしおらしさがもたらすギャップのジェットコースターを!」

 

「成程。詳しく聞こうか」

 

 

 本当にしょうがないがここは譲ろう。それにあれだ、こういう勝負は後攻が有利というのがお約束。勝つ為に先攻を渡すという作戦を選ぶ。敢えてね

 

 

『ちょわわわっ!?すいませんちょっとあれです、なんといいますか……いったんCMを入れましょう!ね!』

 

「いいやカメラは回しておけ!二度は語らないぞ!」

 

 

 彼は飛ぶような軽やかな動きでステージに飛び上がった。だが彼がマイクに辿りつくことは無かった。実況席から文字通り飛び出したサクラバクシンオーがあっという間に距離を詰めて彼をひっとらえたからだ

 

 

「何故だバクシンオー!?何も恥じるような事は無い筈だ!」

 

「なんといいますか、ダメです!ダメなものはダメなのです!」

 

 

 止められたのならしょうがない。ならば自分がと壇上に上がろうとしたトレーナー達ではあったが、観客席から飛び出してきたウマ娘達が続々と飛び掛かって来てはどうしようもなかった

 

 

 お客さん達は微笑ましく見ているが、ウマ娘達は割と本気で止めに入っているように見える。何しろトレーナー対抗戦は『トレーナーさん達が慣れない競技で面白ムーヴメントを披露するのを笑い飛ばす』という、生徒側であるウマ娘達の中にある思春期特有のちょっとした反骨心の部分に溜まっているストレスを解消するのが影の名目であったりする

 

 それ自体は我々トレーナーも承知の上ではある。しかし日頃から真面目に働いている彼等トレーナ―諸君には……こう、なんというのかな。公の場で堂々と教え子であるウマ娘達を褒めちぎり、照れさせたいという欲望が常に溜まっている。発散できる場が用意されたとなればこのような混乱は予測の範疇だっただろう

 

 

 やれやれだ。そして僕は皆の影を渡り歩き目立たないようマイクの前に立つことに成功した訳だ。いつも視野が広い者が勝つ。勝負の鉄則だ

 

 

「では失礼して、ムーンシャイン所属のサブトレーナーである私が1番手として喋らせて頂きます。この間チームの子達数名と猫カフェに行った時のお話をしましょう。そこでエアグルーヴがですね___」

 

 

 

 ___そうして喋るのに夢中になっていた僕は背後から近付くエアグルーヴに気付く事ができなかった。つまり、話はここで終わりという訳だね。残念だけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






エアグルーヴさんをオチに使うのは、こち亀でいう所の「両津はどこだ!」と部長がキレ散らかしながら派出所に入って来る有名なオチみたいな感じがしますよね。つまりとっても使いやすいオチだということです!




はい。すいません。はい……エアグルーヴさんにご迷惑をかけるのは月に1回までにします。はい、すいませんでした





次回はウマ娘視点でちょっとファン感謝祭に触れてジャパンカップとかかもしれませんし、全く関係ない冬の日常回かもしれません。いや全然解りません。とにかく頑張ります

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