タマモクロス実装!
タマモクロス実装!!
タマモクロス実装!!!
引けませんでした
字余り
「あ、見なさいよウオッカ。校内新聞の一年分をまとめたヤツが売ってるわよ」
「そんなん欲しいヤツいるのか……?いや結構売れてんな。わかんねぇもんだな」
ウオッカとスカーレットは普段の数倍の人口密度を叩き出しているトレセン学園をゆっくりと歩き回りながらファン感謝祭を楽しんでいた。先輩方が忙しくしているのを他所に遊びに行くのは気が咎めたが、『お客さんとして楽しむ事で自分がこれから人を楽しませる事の勉強にもなる』と言いくるめられ、素直に従う事にした
2人はこれまでチケットの抽選に当たった事が無く、一般のお客さんと来て参加する事はこれまで叶わなかった。初めて自分の目で見る感謝祭の賑やかな空気に新鮮さを感じながらあちらこちらに視線を巡らせる。この1年で見慣れた筈の学園も、今日は特別で新鮮な雰囲気で満ちている
まず2人は腹ごなしに『トレセン学園ラーメン部』が出しているラーメン屋台に出向いた。高等部のウマ娘、ファインモーションが学園のラーメン好きを集めて結成した同好会メンバー達によるお店だ。この日の為に各員が協力して作り上げた至高の一杯は最早学生の出し物としての域を越えている……とパンフレットには書かれている
ラーメンは確かに美味しかったのだが、鬼気迫る迫真の表情で厨房内を動き回るウマ娘達の迫力に圧倒されすこし落ち着かなかった。その後、安らぎを得る為に2人が向かったのは『おこた喫茶』である。こたつ型の座席でウマ娘と相席してお喋りする時間制の喫茶店らしい
座って喋るだけだし楽だろうというセイウンスカイが提案した案に乗っかったサボリ癖持ちのウマ娘達は、現在彼女達とお喋りをしたいファンが延々と押しかけている事により非常に忙しくお喋りに興じるハメになっていた
スカーレットとウオッカがチラっと入口から様子を見た時も店内は非常に混雑しており、人手が来た!とばかりに目を輝かせたセイウンスカイ達の視線が一斉に飛んできた。それに完全に気付かないフリをして2人はスッと回れ右をして店を出る事にした
「ま、あーんなおっとりした出し物を認可した時点で生徒会もあんだけ忙しくなるのは読んでただろうしいい薬なんじゃない?2人はライブまでゆっくりしてればいいじゃんね」
そう言ってネイチャは2人の前にお茶の入った湯呑とお菓子の乗ったお皿を置いてくれた。その後学園をあちこち見て回った2人は結局ムーンシャインのチームハウスへと戻って来ていた。更衣室兼資材置き場兼休憩場となっている今日のチームハウスは非常に散らかっている
普段なら怒りだしそうなエアグルーヴも、今日ばかりは目をつぶって部屋の隅で身体を休めている。彼女の前にネイチャがお茶を置いた
「ほい。グルーヴ先輩もお茶どうぞ」
「あぁ……すまないな」
「お疲れですねぇ」
「毎年の事ながら、いつも予想外の騒ぎが起きるものだからな……」
「なんかトレーナー対抗戦、大変だったんですって?よく知りませんけど」
「掘り返すな。事態の収拾は係りの者に投げてきた。私ももう知らん」
「おや、珍しく無責任な」
「これくらいの事は捌いてくれる。後進が育ってきたのを会長に見せつけるいい機会だ」
エアグルーヴは疲れたようにウマホをテーブルの上に置いて脚を伸ばして身体をソファーに預けた。ネイチャはお湯を沸かしながら楽しそうに話を続ける
「ああ、それで。さっきルドルフ会長が大玉転がしに参加してるの見たんですけど、えらく楽しそうでした」
「今日くらいは肩の荷を降ろして、呑気に遊び回っていて欲しいものだがな……」
そう呟いた瞬間、エアグルーヴのウマホがけたたましく音をかき鳴らす。嫌そうな顔で通話に答えたエアグルーヴの眉間にぐっと皺が寄る。絞り出すような「今度はゴールドシップか……」という呟きを残してのろのろとソファーから立ち上がった彼女がチームハウスから出て行くのを、ネイチャ達は苦笑いで見送るしかなかった
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時は流れ、日も西に傾いた。祭りは夜になってこそ真の盛り上がりを見せるものだが、学生主催の祭りではそうもいかない。日が暮れれば感謝祭は終わってしまう。その終わりを惜しむからこそ、感謝祭のトリに行われる各チーム単位で行われるライブは非常に盛り上がるとも言える
「よし、全員揃っているな」
勝負服に身を包んだエアグルーヴの呼びかけに準備万端のチームメンバー達が元気に応じる。チーム全員参加という規格外の規模で行われるライブとあってスカーレットとウオッカも少し緊張していたが、それに勝る程の期待と興奮が胸に渦巻いていた
2人が纏う衣装はトレセン学園制服をモチーフにしたものを少し飾り立て、真っ白に染めたデザインだ。これから自分の色を見つけて行く、という1年生の為に用意されるムーンシャイン伝統の衣装である。他の面々は自分の勝負服か、或いは自分が着るならばこんな勝負服が良いというイメージを形にしたライブ衣装を着こんでいる
「勝負服のデザインって1年の時に考えておけって授業で言われるじゃん?でもGⅠ出れない子の方が多いから妄想のまま消えて行くのが9割なんだよね」
「モブ先輩、どうしたんですか突然」
「別に。ファン感のライブで着るだけのものだけど、それでも自分が昔デザインした勝負服を着れる機会っていいもんだなって思っただけだよ。シュー、あんたはその衣装でレース走れるように頑張りなさいってコト」
「頑張りなさいじゃなくてモブ先輩も頑張るんですよ!」
「あーはいはい。頑張る頑張る」
レースで使われる勝負服は様々な形をしているが、総じて非常に高価な素材をふんだんに使っていてとても頑丈でお高い。ライブの為に用意された衣装はレース用の物よりぐっと予算は抑えられているが、決して安いものという訳でもない
「うん、うんうん。皆とてもよく似合っているよ。とても華がある。給料をつぎ込んだ甲斐があるというものだ」
「え、トレーナーの自腹なの!?」
「僕だけがお金を出している訳じゃないけれどね。スカーレット、君とウオッカが着ているのは新規で作った物じゃない。ただ2年生以上で自分用の勝負服を持っていない子達のは僕達トレーナー陣と、あとはファンの方々からのご支援によって作られている。まあつまり、推しのウマ娘達の新衣装を見る為に課金したという訳だね」
でっかいカメラで写真撮影を行っていた大和が何気ない調子でそう答えた。彼は本日行われたほぼ全てのイベントに顔を出した事もあって非常に疲れていたが、最後に残った気力が彼の身体を突き動かしていた。そのフットワークの軽さと根性を日頃の仕事でも出してくれればな、とエアグルーヴが小さい声で呟いたのだが彼には聞こえないらしかった
「さあ、こうしてみんなで1つの舞台に立って踊れる機会は多くないからね。存分にこの時間を楽しんでくれたまえ。僕達はそれが何より観たいんだから」
そういうと大和は小走りで去って行った。と同時に進行係りのウマ娘がこちらへ駆け寄り、出番が間近である事を伝えてくれる。皆の視線がエアグルーヴに集中した
「……まあ、トレーナーの言った通りだ。期待を寄せてくれるファンに恩を返すのは大切な事だが、肩に力を入れ過ぎては意味がない。いつも通りを見せればいいだけだ。思うようにやれ。慣れている者でフォローする。よし、フクキタル。開始の音頭をとってくれ」
「えぇー、今の勢いでエアグルーヴさんがやってくれれば……はいっ!何でもありません!任せて頂きます!ではでは皆さんお手を拝借しまして……」
フクキタルが右手を開いて突き出した。何がしたいか察した皆は自分の手の平を重ねて行く。しかしムーンシャインの全メンバーを合わせれば20名を超えるのだ。案の定輪になり切れずぎゅうぎゅうに押し合いになり上から下から手を伸ばしてなんとか全員の手が触れてる感じになった
「うぅ……狭いよぅ……ライス、ぺしゃんこになっちゃう……」
「うぐぐ……流石に無理がありました……!普通に肩組んで円陣すればよかったですね……!」
「やる前に解りませんでしたか!?」
ダイワスカーレットの悲鳴が全員の心を代弁した。ごほんと咳払いで誤魔化したフクキタルが声を張り上げる
「さぁ皆さん!力を合わせて最高の舞台にしましょうっ!」
「……え、それだけっすかフクちゃん先輩?」
「……さぁ皆さん!三人寄らば文殊の知恵!七人揃って七福神!即ちチーム皆の想いを束ねれば最高のステージになること間違いなし!ファンの皆々様方にハッピーをお土産にしてもらえるよう、力の限り楽しみましょう!」
「わ、ちょっと捻ってきた。流石だわー」
「うぐっ。ネイチャさんもう勘弁してくださいよぉ!ほら皆さん行きますよー!せーのっ!」
ムーンシャインのメンバー達は重ね合って触れ合う手に仲間達への熱い想いを託した。言葉を交わさずとも、彼女達はこの瞬間確かに1つになっている事を実感していた。フクキタルの合図と同時に、胸に溢れる想いを高々と叫ぶ
「「「レッしょワーサどたららりればムー肉だー!!」」」
マジで1文字も噛み合わなかった。タイシンは半笑いで肩をすくめ、エアグルーヴは小さくため息をつき、フクキタルが目を白黒させる
「え、なんです!?皆なんて言ったんですか!?」
「レッツゴームーンシャインじゃないの!?」
「わっしょい感謝祭じゃないんですか?」
「今夜は焼肉ー!って言った人いなかった?」
係りのウマ娘が呼びに来たので円陣を組みなおす時間は無かった。でもまぁなんだかんだステージに出たらなんとかなった。キラキラと輝くステージに興奮しすぎた大和サブトレーナーは興奮のあまり両足首を捻挫したりしなかったりした。あとライブ映像が収録されたBDには特典がたくさんつくので是非予約して欲しい
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美味しい料理はいつ食べても美味しいように、素晴らしい作品は何度見返しても素晴らしいままだ。ただ間違っても最初に感じた感動を繰り返している訳ではない。見る度に得られるものは替わっていき、同じ体験は一度として再現できない。ただそれは悲しむべきことでは無く、歓迎すべきことなのだ
「つまり?」
「もうちょっとだけ待って欲しいんだ。あと15分で終わるから」
「お兄様、もう何度も見たんでしょ?だったらお仕事しないと」
「ライス。僕が何度も会ったからという理由で君達への対応を雑にしたことがたったの一度でもあったかな?」
「ううん、お兄様はいっつもライス達の為に一生懸命頑張ってくれてるよ?」
「そうだろう?つまり___」
「つまりライス達の為に一生懸命お仕事してくれるってことだよね?」
ふーむ成程。ライスがそういうのならそうなのだろう。僕が深く腰掛けているふかふかのソファにちょこんと並んで乗ったライスは、僕が手に持っていたリモコンとポップコーンを優しく取り上げて代わりにペンと書類を握らせてくれた。至れり尽くせりの環境に感動すら覚えるよ。ああ、間違ってもこれは皮肉などではない。心の底から感謝しているとも
液晶画面に映し出されていた感謝祭のライブ映像がライスの手により一時停止された。丁度ライスが可愛くウインクをしている画面がどアップで映し出されたシーンだった。ライスがこほんと顔を赤くしながらちょっとだけ再生ボタンを押し、ネイチャがドアップになったシーンで止めた。ヨシ、と小さな声で呟いたライスが改めて僕の方へ向き直る
「それでライス、これは一体なんの書類かな?」
「ジャパンカップのインタビュー記事の答えを書いてきたから、お兄様に確認してもらおうと思って」
ふむ。今更僕が彼女の原稿にペンを入れるような事はない。しっかりと自分の意志を示す強さを持っている。素早く目を通してみても、やっぱり何の問題も無いように見えた。彼女には別の意図があるようだった。真っすぐ僕を見つめる瞳を見返しながら、無意識に言葉が滑り出す
「ねぇ、ライス」
「なぁに?お兄様」
「とても強くなったね。君とフクキタルと、どちらが勝つのかなんて僕にはまるで予想もつかないんだ」
「うん。私も解らないんだ」
楽しみだね、と口にしたかったのだがその言葉は喉でつっかえた。本心である筈なのだが、僕の中の何かがストップをかけたらしい。本当に言いたい事ではないのだろう。だったら僕は何を言いたいのか。少し考えて、よく解らないまま僕はふむと鼻息を吐いて書類にサインをした。差し出した書類を受け取るライスはそのまま僕の手を包み込むように握った
「お兄様は優しいんだね」
「優柔不断という文字列に含まれているように、そういう意味でも僕は優しいんだろうね」
「ライスも応援して欲しいし、フクキタルさんも応援して欲しい。私もおんなじだよ?」
いつもみたいに待っててくれたら大丈夫だから。ライスはそう言って書類を持ってトレーナー室から出て行った。僕は椅子に座ったままゆっくりと回転し部屋を見渡した
既に僕が教える事など何1つ無い。自らの脚で立ち、進んで行く道を決める事ができる。大切な友人達の出走するレースである。心が躍るようで、待ち詫びていたようで。しかしどうにも___始まって欲しくないような、不思議な気持ちがある事が不思議だった
トレーナー室の壁に取り付けられた神棚の方から、カタッと何かが動くような音が聞こえた気がした
クリスマスじゃん!!!!!平常運転です。よろしくお願いします。番外編としてクリスマスにまつわるお話かきたいなぁ・・・と思っていますが年末ギリまで毎日お仕事お仕事!!!ケーキ食べてる場合じゃないですわよ!!!!
ジャパンカップの出走条件はその年の重賞に勝ってる事とありました。フクキタルは海外遠征に行く前に1つ勝っている、という設定なので。そこんとこふわっとした認識でいていただければと思います。ちょっと色々ボロが出てき始めた気がしますがこのまま勢いで行きたいな?ミキリハッシャマン!?