プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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申し訳ございません



今回を最終回にする気でしたし



サブタイトルもそんな雰囲気でつけてるんですけど



なんか書きたい事書いてたら文字数がアレだったので



最終回は次回って事で許して下さい





字余り



さよならに花束を添えて

 

 

 

 流れる日常の節目にタイトルを付け物語を組み立てていく上で、最終回に相応しいタイミングというのはどこにあるのだろうか。

 

 

 

 老いて死にゆく最後の一時、迎えに来た天使に手を引っ張られる瞬間まで書き続けようものなら絶対中だるみするし、スレで散々に叩かれるだろう。『高校生編以降は蛇足』『主人公が出てない時の話の方が盛り上がる』『途中で異能バトル路線に変更したから切った』とか好き勝手言われるに違いない

 

 

 何か丁度良い区切りが必要だ。打ち切りを匂わせないような、誰もが納得できるようなイベントで盛り上げて、シレっと意味深な台詞で締める。次回作に続けようと思えば続けられる感じがベストだ

 

 

 スカーレットが桜の下でこちらを振り返りながら明るいを笑顔を向けてくれるシーンで画面を暗転させてエンドロールを流し、Cパートでフクキタルに水晶玉を持たせてなんかそれらしいことを言ってもらえば感動の最終回になること間違いなしだ。この際彼女がフンギャロフンギャロ言い出さないようしっかり場の雰囲気をシリアスに寄せておく必要があるが

 

 

 さて。僕の視点で語ってきたお話が多いとはいえ、主人公は常にウマ娘たる彼女達だ。そんな彼女達が学生である以上、やはり最終回っぽさが最も醸し出されるのは卒業式の日だろう。一般的な教育機関とは少々違った基準で運営されるトレセン学園も3月には卒業式が執り行われ、4月には入学式が開催される

 

 

 卒業式を迎えた今日、普段は騒がしい空気で満ちているトレセン学園を透明な静けさが覆っていた。理事長を筆頭にURAの役員や生徒会長のシンボリルドルフの長いお話も今日ばかりは誰も聞き流す事無く神妙に聞いている

 

 

 派手さに欠けた固い式典が終わってしばらく、大丸さんはチームの保護者の方々の所に挨拶へ。レイヴンは記念撮影をせがんで来た卒業生達に連れていかれた。別れを惜しむようにたむろする学生諸君を少し離れた所から眺めている僕の下に1人のウマ娘が近付いて来る。胸に卒業生の花飾りを付けた彼女はひらひらと手を振った

 

 

「大和サブー。お疲れ様です」

 

「やあ、ポッポサブレ。卒業おめでとう。わざわざ挨拶に来てくれたのかい?」

 

「はい。お世話になりましたし、最後にご挨拶をって思いまして」

 

「ああ、ありがとう。僕の方こそ君にはお世話になった。長い間本当に___うん、お疲れ様」

 

 

 僕が手を差し出すと、目の周りを少し赤く腫らした彼女はやさしく微笑み手を握り返してくれた。ポッポサブレはエルコンドルパサーやグラスワンダーも所属するチーム〈アークトゥルス〉のメンバーで、ネイチャ達の同級生である。アークトゥルスはムーンシャインとはチーム単位で付き合いがあり、レースという場で激しく競い合いながらも合宿やイベント等で協力し合う事も多々ある関係性だ

 

 

 さらにサブレは僕が開設した『トレセン《サブ》の会』(※暇なサブトレーナー達が定期的に集まってダラダラする会)の名誉会員でもあり、リハビリ疲れを癒すのも兼ねてよく会合に参加してくれていた良き友人であった

 

 

「地元に戻るんだって?確か静岡だったかな」

 

「あ、よく覚えてますねぇ。はい、結構いいトコの私立受かったので、次は勉強でがんばろーって思ってます」

 

 

 彼女のメイクデビューのレースは今でもよく覚えている。ネイチャやテイオーと同年代である彼女は秋の終わり、寒さの訪れを吹き飛ばす程の熱気を会場に巻き起こす見事な走りで華々しいデビューを飾った。ただその後の不運なケガにより長くターフと縁の無い生活を送る事となる。それでもあきらめない彼女の姿は同期を奮起させ、後輩達を導いた

 

 

 そして3年生に進学した春ようやく完治のお墨付きを得るとブランクを感じさせない鮮烈な2勝目をあげたが、再び不運な故障に合い完治を望めないと診断された夏の時点で……トレセン学園高等部への進学を断念した。彼女がターフを走る姿はもう二度と見る事が出来なくなってしまった

 

 

 とても、ありふれた話だ。導くべき者が正しく導けず、1人の少女の夢を終わらせる。悲劇のようだが、厳しいレース界隈ではとてもありふれた話だ。美談にもならず笑い話にも落とせず、時の流れで癒せない後悔が当事者の胸を刺し続ける。サブレの担当トレーナーである新藤さんは酒の席で悲鳴のようにそう吐き捨てた

 

 

 担当トレーナーと教え子の2人がどう折り合いをつけたかは知らない。いや、折り合いがついたのかどうかも定かでは無い。チラっと視線を遠くにやると、グラスワンダー達に励まされなんとか自分の脚で立っていはいるものの、人目を憚らずゲボ泣きしている成人男性の姿が見えた。見なかったフリをしてすぐ視線をサブレに戻すと、彼女も気付かないフリをしているらしい。彼が立ち直るまでもう少しお喋りに付き合う事にした

 

 

「学びは人生を鮮やかにするからね。ここと違う場所にいけば、今までとはまた違った景色が見える筈だ。応援しているよ。落ち着いたら是非ともまた遊びに来てね。……実際、君のトレーナーさんは君の前じゃ最後までカッコつけてたかもしれないけど、ご存じ彼は僕に負けず劣らずの寂しがり屋だ」

 

「んふふ、解ってますよー。……ほんとに、お世話になりました」

 

 

 最後にもう一度握手を交わすと、彼女は自らのチームメイト達の下に戻り担当トレーナーを励ます作業に加わる。その様子を少しの間見送り、僕も騒ぎの輪を遠巻きに見つめる作業に戻った。その後もちょくちょくと馴染のメンツが顔を出してくれて、そして去って行った。その度に僕は心の欠片が削られるような、どうしようもない寂しさに襲われた

 

 

 中高一貫となっているトレセン学園ではあるが、中等部を出た子達全員がそのまま高等部へ進学するという訳では無い。サブレのように中等部を卒業するタイミングで競技人生から身を引く事を決意し学園を去る子は少なくなかった。誰に聞いても、後悔は無いなんて言いはしないだろう。だがしょうがないのだ

 

 諦めが希望を上回れば、それは未練を通り越して惰性でしかない。そして、ウマ娘の本能は惰性を認めない。自分達が終わったと理解してしまった彼女達は、どれだけの後悔があろうとレースの場に自分が立つ事を許せない。だから、さようならだ

 

 

 

 

「よっす大和サン。どう?中学生最後のネイチャさんは?」

 

 

 彼女が僕の下へやって来てくれたのは、去り行く友を何度となく見送った後のことだった。別れの涙を本日2枚目となるタオルで拭い去り、僕は新たな門出を祝う為笑顔を作り直して彼女を出迎える。尤も、彼女はそんな僕の浅はかさなど軽くお見通しだっただろうが

 

 

「___大きくなったねネイチャ。入学式のあの日、ぶかぶかの制服に身を包み緊張と期待を幼い顔いっぱいに浮かべていた君の姿が今でも思い出せる。もう3年も経つんだねぇ」

 

「いやあんさん入学式の時アタシと面識ないでしょうが」

 

 

 マジレスと共に彼女の細い手がぺしりと僕の胸元を打った。この衝撃により思い出と幻覚がごっちゃになったナイスネイチャドキュメンタリーの上映会に囚われていた僕の意識は再び現実に引き戻され、呆れた様子で僕の前に立つ彼女の姿が再び目に飛び込んで来る

 

 

 ネイチャはクリーニングしたばかりの制服の胸に花飾りを付けている。普段より少し大人っぽく見えるが、チームの先輩にお化粧を施されたのだ、と彼女は恥ずかしそうに笑い髪の先をふわふわと手で弄ぶ。よく見た格好だというのに僕の想い出の中で笑う彼女より一歩大人びている様がなんともノスタルジックで、僕はただ静かに涙を流すしかなかった

 

 

 この人泣いてばっかじゃん……と呟きながらネイチャがいそいそとハンカチを差し出してくれるが、どうぞおかまいなく。今日の為に大き目のタオルを何枚も持ち合わせているのでね。君達のハンカチは、同級生と涙を拭き合う為に使ってくれ

 

 

「それはそうと、誰かに譲る予定が無いなら第二ボタンもらえないかな?」

 

「誰にも譲る予定ないけど、この制服明日からも着るんでダメっすねー」

 

「あとで新しいの用意するし裁縫も僕の方でやるし第二ボタンもらえないかな。今日の為に現金は多めに財布に入ってるから交渉には乗るよ」

 

「いや必死。え、もしかしてお酒入ってる?」

 

「おっと、つい衝動に突き動かされて……すまない、不快にさせてしまったね。流石の僕もこの神聖な場に酒片手に立ち会う事はしないよ。ただ夢を追い続けた君達が今日という1つの大きなゴールを迎え、その喜びと寂しさに流す涙の香りに中てられ酔ってしまった……そういう意味では素面ではないかもしれないな」

 

「どゆこと?」

 

 

 僕はクールに微笑み目を閉じると、ふわりと吹く風から春の始まりを感じようと意識を空に向けた。要するにネイチャの厳しい追及を無視した。ここはさらっと流すとこだよネイチャ。助けが来てくれる事を期待しながら顔を背けつつ薄く目を開くと、そこには救いの女神が立っていた。少々不機嫌そうな顔で

 

 

「ライスの時はお兄様、普通だったのに……ネイチャちゃんの時はそんななんだね」

 

「いやライス先輩これ嫉妬しちゃうような事じゃないと思いますよ。ただからかわれてるだけだし」

 

「ワッ……マウントだぁ」

 

「ちょちょちょそういうんじゃないから!?セイちゃん余計な事言わないっ!」

 

 

 ネイチャは卒業生だけが持つ伝説の黒い筒(卒業証明書入ってるアレ)でスカイの頭をぽこんと叩いた。ライスはじとりとした目でそのような事を言うけれど、ライスの時は春の天皇賞への調整で忙しかったりなんだったりで感傷に浸る余裕が無かったというかなんというか……いや、中等部から高等部への進学が決まっている子の卒業式でこんな気持ちになったのは初めてというのは確かなのだけれど

 

 

 普通の女の子として進学をするという選択肢を片手に乗せ、もう片方の手に乗せた夢の重さと天秤にかけながら僕のトレーナー室にネイチャがやって来たあの日から季節が巡り再び春となった。今の彼女がすっきりとした顔で夢を追いかける事に夢中になっているのを見て特別に心を揺さぶられているというのはある

 

 

 彼女が夢を手放さなくてよかった。これは傍観者の押し付けというか、新たな夢へ歩き出す選択肢そのものを冒涜するとかじゃなく。ただ彼女と別れずに済んだ事を喜んでしまう気持ちを抑えられないだけなんだ。みたいな言い訳をしたらライスの膨らんだほっぺを鎮める事は出来るかもしれないけど、ちょっと本人の前で全部口にするのは小恥ずかしいのでなんとか察してくれないかな

 

 

「ごめんよライス。君の時は、これからも共に頑張ろうという気持ちを改める式という気持ちが強かったからね。ほら、なんというか。……あとで一緒に買い物でもどうかな?好きなお菓子買ってあげるよ」

 

「もうっ、ライスはそんなにお子様じゃないんだから。……でも、今日はおめでたい日だからこんな事でライス怒ったりしちゃだめだよね」

 

「そうですよライス先輩。笑ってお別れしないと。ネイチャ先輩短い間でしたが___」

 

「卒業せんわっ。いやするけど!」

 

 

 再びぽこんと音がなる。同級生達と別れを惜しんでいたモノクロブーケ達中等部3年生の他のメンバーもぞろぞろと集まって来る。今年はムーンシャイン所属の中等部3年生全員が高等部への進学を決めている。そんな彼女達はこの後教室に戻ってホームルームを行った後に解散となり、学生諸君はご家族の方々と共に過ごしたりそのまましばらく帰省したりと各自の予定通りに行動する手筈だ。そしてそれは中等部卒業組だけの話ではない

 

 

「そういや1年生ズは?」

 

「さっきフクキタル達に連れていかれた。高等部卒業生のお姉さん達に弄ばれているね」

 

 

 僕の視線の先、少し離れた場所では高等部の卒業生達が輪になって騒いでいた。その数は中等部の卒業生達よりいくらか少ないが、最高学年になるまで残っただけあってどの子も名の通ったウマ娘達だ。そんな高等部3年生もほとんどが学園を去る。ドリームリーグに籍を置いたり、トレセン学園所属のまま海外に挑戦したり等々の理由で残る子もいるがそれはほんの一部に過ぎない

 

 

 その輪の中で珍しく年相応にはしゃいでいるフクキタルもエアグルーヴも(フクキタルに関しては珍しいとは言い切れないが)、これまで経験した事のない程の別れとなる今日をそれでも笑顔で迎えていた。明日から同級生達がほとんどいなくなる学園の寂しさを想像しなかった筈も無いだろうに

 

 

 彼女達は学園に籍を残す事を躊躇わなかった。これまでと変わらず、去った者の想いも背負い未来へ進む事を選択した。無論学園にいたまま次に繋がる勉強をして資格を得る事もできるので学生である事に代わりは無いが、1つ上のステップに上がる事に間違いはない

 

 

 

「いや~盛り上がりました!お二人共すいませんねぇ。本日、門出にあたり若人と一緒に記念写真を撮るのが吉と出ておりまして」

 

「お力になれたのなら何よりです……」

 

 

 そう力なく笑うスカーレットとウオッカは面識の薄い先輩方にもみくちゃにされて少々疲れているようだった。後でジュースでも奢って労ってあげないとだ。罰の悪そうに頭をかいていたフクキタルだったが、慣れない服装でとてとてとこちらへかけ寄りくるんと回転しながらその裾を翻してみせた

 

 

「どうですか大和さん?お着物なんて少々身の丈に合わないかもしれませんが……」

 

「いや、見事に似合ってるよ。和の心ここにありって感じだね。君のコスプレ自体は見慣れているけど、純な和服というのは初めてかな?うん、君の穏やかで温かな部分と噛み合って今日という日に相応しい奥ゆかしさと華やかさが程よく演出されていてとても絵になる」

 

「ちょっと褒めすぎじゃないですか!?恥ずかしいじゃないですかぁ~。……しかし、この前も引き留めてもらったのにまたまたこんな良い扱いしてもらえるなんて、卒業も悪くないですねぇ」

 

「お姉様。そういう冗談ほんとよくないと思うよ」

 

「あっ、すいません」

 

 

 ライスの声が1オクターブ低音になったのを察知しフクキタルはすぐさま謝罪した。頼むよ、今なんとかご機嫌をとったところなんだから。とはいえライスも口に手を当てて笑っているし、そこまでの事じゃないのだろうけど。和フクキタルと記念撮影に入ったライスを横目に佇んでいるもう1人の卒業生へと顔を向けた

 

 

「エアグルーヴの着物姿も良く似合っているよ」

 

「まあ……うむ。そうか。そうだろうな。母様も見立てを手伝ってくださったからな」

 

 

 生徒会の副会長でもあり当日も誘導等の仕事がある関係上制服で参加するつもりだったエアグルーヴだったが、後輩達から『自分達が全部仕事は請け負うので大人しく送り出される側としてのんびりして下さい』と有無を言わさず仕事を取り上げられ、1参加者として今日を迎えていた

 

 

 彼女の代名詞とも言える美しい勝負服に合わせたような黄色と青に分かれた美しい着物で着飾った彼女は、しかし何故かずっと目線が上いったり横いったりと挙動不審だ。何か思う所でもあるのか解らないが彼女らしからぬふわふわした態度に首を傾げているとフクキタルがそんな彼女の肩を後ろから手で持ってぐいっと僕の方に押した

 

 

「お、おいよせフクキタル!今でなくともいいだろう!」

 

「ダメですよ。引っ張る方が言い辛いって先程ご自身でも仰ってたじゃありませんか」

 

「機が熟していない……!人目が多い……!」

 

「こんなもの当然の道理であって恥ずべきことでも何でもないわ!って胸張ってたじゃないですか」

 

 

 2人は僕の前で横並びに立ち普段は見慣れないような殊勝な顔でこちらを見上げた。僕はさっぱり察せない、といった感じで曖昧に微笑んで見せるが何か言いたげな事は解ったし、確信は持てなかったけど言いたい事も解った。あんまりマジな感じでこられると困るので場の空気を茶化してやろうとした僕の気配を察したか2人が先に動いてしまった

 

 

 

「「6年間ありがとうございました」」

 

「___」

 

 

 2人が揃って頭を下げるのを見て、思考に完全な空白が産まれてしまった。感無量と言うべきか、一拍遅れて押し寄せた衝撃が心を静かに打ち抜いた。ほんの一瞬の出来事だったが脳裏を様々な想い出が過った

 

 

 言葉が詰まったまま腑抜けている僕をよそに2人は静かに頭を上げる。僕は目を閉じて気持ちを整理するように1つ息を吐くと、じっとこちらを見つめる2つの視線を正面から受け止めゆっくりと口を開いた。言葉は勝手に湧き上がってくる。それを取り繕うつもりもなかった

 

 

「ああ……ありがとう。僕の方こそお礼を言いたい。君達と出会えたこと、共に在れたこと。奇跡的な、運命的な時間だった。これから何十年経っても……僕は君達との思い出をきっと忘れる事は無いだろう。忘れるには少々刺激的過ぎたからね」

 

 

 照れ臭そうに笑う2人だが、僕も同じような顔をしているに違いない。感動を分かち合う熱烈なハグをかわそうと両手を広げて大げさに近づく。一方はいかにも嫌そうですって感じの顔をしながらもぎこちなく僕の背中に手を回し、一方は恥ずかしさを誤魔化すようにきゃいきゃい笑いながら受け止めてくれた

 

 

「はぁー……。今日という特別な日には流石の君も鉄仮面を外すらしい。貴重な顔が見れたのは嬉しいが、カメラを構える暇が無かったのが残念だ」

 

「フン。貴様こそ今日は泣いてばかりで憎たらしい愛想笑いをする余裕も無いらしいな。妙に恰好を付けるのもこれを機に辞めたらどうだ?」

 

「……よし皆、今ならエアグルーヴとハグし放題だよ。さあ、ゴーだ」

 

「は?」

 

 

 は?とエアグルーヴが言い終わるとほぼ同時に囲んでいた皆が殺到したので、彼女は文句を続ける事が出来なかった。

 

 気まずそうに見守ってくれていた後輩達はしっとり感を吹き飛ばさんとばかりにエアグルーヴに飛びかかった。胴上げこそ拒否したもののそれ以外はなし崩しに受け入れて困惑している彼女といつも通りにこにこのフクキタルを見つめながら僕は今度こそ涙を拭った。もう涙出ないよ今日は。泣きすぎた

 

 

「よし、それじゃあ門限から解き放たれた2人には今宵の卒業パーティーの二次会にも参加してもらおうかな。朝まで歌って踊り明かそう」

 

「おおっ!お供しますよ勿論!ね、エアグルーヴさん!」

 

「いや普通に疲れそうだから嫌なんだが」

 

「大丈夫ですよエアグルーヴさん!私が授かったありがた~いスピリチュアルな長距離因子をお分けしますので!」

 

「そんな怪しげな物はいらん。大体だな、いくらめでたい日とはいえ羽目を外しすぎては___」

 

「おっといいのかい。君が参加しなかった場合誰が代わりにカラオケとボウリングに付き合わされることになると思う?君のお母上だ」

 

「いや私が行かないのにお母様が参加するのはおかしいだろうが!」

 

 

 おかしくはない。バカ騒ぎに興じて君達を労いつつ寂しさを誤魔化したいというのは僕だけが思っている事ではない。本人達が参加しないとなると恐らくかなり陰鬱とした涙ながらのお別れ会になりうるが?それでもいいなら構わないが。とにかく今日ばかりは、バカ騒ぎに付き合ってもらう。そう言うとエアグルーヴはいつものように眉間に皺を寄せた

 

 

「普段から付き合わされているが……?」

 

「ですよねぇ」

 

「フクキタル。お前も付き合わせてくる側の筆頭だが???」

 

「スイマセン……」

 

 

 

 

 

 この後太陽が昇るまで歌って踊って飲み明かした僕は参加してくれた保護者の皆様をホテルまで送り届けた後に校門を潜ると同時に力尽き、左肩を支えられながら怒鳴られ右肩を支えられながら呆れられ、なんとかチームハウスのソファーまで生きて辿り着く事ができた訳であった

 

 

 

 

 

 





卒業式、着物着て来る女子いたな……と思いフクキタルの着物ネタ回収するついでにグルーヴさんにも着ていただきました



「書きたい事書いたけど、なんかうまくまとまらないな……」→「後半部分を切り離して次話に回そう!いつもそうしてるし!」→「でも今回が最終回って言っちゃったしな……」これを一ヶ月くらいループしてました。大変申し訳ございません。


次こそ!次こそすぐ投稿いたします!わたくしのこの1天井分の無償ジュエルに誓って!


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