ありがとう
心を込めて
花束を
さようなら
春の日差し、温かな風。ふわりと漂う若芽の香り。近頃は気温の変化が激しく穏やかな気候は刹那で過ぎ去ってはしまうものの、ただそれこそが春の儚さをより際立たせてくれるのだと考えるようにしている。ポジティブに生きるのが今年度の抱負だ
さて。春は出会いの季節。心が新たな出会いを予感して静かに湧き上がる中、僕はしかし高鳴る心を落ち着けるため大きく息を吐く
今は桜の彩りよりも作業に集中するべき時だ。僕は姿勢を正し、改めてピンセットを手に取る。デカールの1ミリのズレは美しさを損ない、完璧でない結果は後悔になる。頭に乗っけたヘッドホンからは春を称える美しきクラシックの調べが流れてくる。うん、時にはこういった落ち着いた雰囲気で作業に没頭するのも悪くな___
「んでお前が先に読んでんだよ!返せよ!」
「ちょっと何よ邪魔しないで!返せもなにもアンタのじゃないでしょうが早い者勝ちよ!」
「俺が!先に!読むって言ってたじゃん!昼前からずっっっと言ってたよな!?解ってて横取りしたんだろうがこの性悪!おいトレーナーどうなんだよコレァ!スカーレットが悪いよなぁ!?」
「はー!?アタシが悪いワケないでしょうが!正しいのは常にこのアタシよ!!!そうよね!!?アタシが一番だもんね!!?」
「それ引き合いに出すのやめろ!」
___今何か聞こえたかな?僕には聞こえなかったけど。でもなんだろう、なんとなく僕は音楽のボリュームを上げる事にした
「ちょっと聞こえないフリするんじゃないわよ!」
「おいトレーナー!お前からもコイツにガツンと言ってくれよ!最近チョーシ乗ってんだよコイツ!」
ヘッドセットがすぽーんと勢いよく外され、繊細な弦楽器に替わり2人の怒声が左右から僕の脳を揺らす。確かに2人の可愛らしい声はクラシックの調べに負けず劣らず重厚で奥深い味わいが……あるかもしれないけどちょっと抑えてくれないと脳が受け止め切れない
「2人共喧嘩はよくない……いや、君達の場合は別にいいけれど、それはそれとして少々落ち着きを持つべきじゃないかな。もう君達も先輩になるんだから。それに僕は今は集中すべき作業に取り組んでいてだね……」
「遊んでるだけじゃん!」
「遊んでいないよウオッカ。これは企業さんからの依頼で組み立てがちゃんと上手く行くかを確かめているんだから、立派な仕事だ。間違いない」
まあしかし作業に集中していて気付かなかったとはいえ、来客を放って作業に没頭するというのも失礼な話だ。僕は《スーパーグレート・ナイスネイチャ(最終決戦仕様)》の試作品を組み立てる手を一度止めて部品を丁寧に箱に閉まった
「そもそもなんなのそれ……?」
「なにってスカーレット、スーパーグレート・ナイスネイチャ(最終決戦仕様)のプラモデルの試作品だよ。肩と腰のキャノンは変形して格闘戦用の武器になるんだけど、このプラモでもちゃんと再現は可能なんだ」
「ネイチャ先輩の肩と腰にキャノン砲は付いて無くない?」
いいんだよこれはそういうネタの人気シリーズだから。本人だって渋々ではあるけれど許可を出してくれてるんだからね
ちなみに2人の喧嘩の原因は、本日発売されたオグリキャップの自伝(を多少脚色した)漫画の記念すべき第1巻を取り合っている事にあった。授業のある学生達と違い僕達トレーナー勢は朝一で本屋に行く事が可能だった。仕事の合間に何度も読み直したが、素晴らしいの一言に尽きる。読めば読む程面白さが増していくのだ
僕はその素晴らしさをチームの皆にグループメッセージですぐに宣伝した。あくまで善意であり、決して授業に拘束された学生諸君を煽ろうなどと考えていた訳ではないがとにかく興味を持った二人が授業の終わりと同時にトレーナー室へと飛び込んで来た次第だ
解決策として、本とは別に電子版をインストールしておいたタブレットを渡し2人で仲良く読み合うように言い含めるとしばらくぶつくさ言いながらも仲良くソファーに並んで座り大人しく読書を始めた。細かい作業をする気持ちが吹き飛んでしまった僕も椅子に深く腰掛け外に視線をやる
入学式から数日、学園は新しい風が吹き込み一時の湿っぽさが吹き飛ばされいつも通りの活気で満ちている。ただ僕は未練がましく机の上の卒業アルバムを未だに片付けられず、時折手に取り開いていた。もう何度も目を通している。恐らく、これを手にしたどの卒業生諸君より多く読み込んでいる自信がある
アルバムを開く度に去って行った皆に恥じないよう仕事を頑張ろう、と意気込んではいるのだ。ただ意気込んではいるものの何分生来の不精者であり意気込んでもすぐ抜けていく。身体のどっかに穴が空いてるかもしれない。そして今日も今日とて椅子に深く腰掛けて物思いに耽りながら、春のそよ風をゆりかご代わりにうとうととまどろんでいた
「ねえそれはそうと、トレーナー。冷蔵庫に入れといたアタシのコンビニスイーツ、知らない?」
ダイワスカーレットの声が僕を現実に引き戻す。いつかどこかの光景が遠くの世界へ消え去り、僕の視界の先には見慣れた天井が写っている。深く腰掛けた姿勢をゆっくり起こすと彼女は僕の横で腰に手を当てて唇をツンと尖らせていた
機嫌が良いか悪いかで言うと、若干悪い方に斜めっている様子であった。ウオッカを横目で見ると我関せずと言った顔で漫画のページをめくっている。助けに入ってくれる気配はなかった
「ほう。春の新作、桜と桃の春色ゼリーかい?上にクリームが乗ったやつ」
「よくご存じね。税込みで328円よ」
「ふむ。僕が逃げる可能性を考慮し、射程距離に詰め寄ってからの尋問。君の成長を感じられて僕は嬉しいよ」
「そう。アタシも犯人を追いかけ回す手間が省けてとっても嬉しいわ」
「おおっと誤解が産まれているようだが?事情を全く知らない訳ではないが、しかし君のスイーツを食べたのは僕じゃない。これは確かな真実だ」
桜花賞という1つの目標を見事な結果で終え、厳しい栄養管理から一時的に解放された彼女から楽しみを取り上げるような事はしない。これはマジ。というか、トレーナー室の冷蔵庫はそも隠し場所として全く機能していないという事を自覚するべきだ
何故なら、トレーナー室の冷蔵庫にある僕の私物の中に紛れ込ませて隠すというアイデアを思い付いたのは自分だけだとチームのほぼ全員が考えているからだ
『秘密だからね!』と真剣な表情で冷蔵庫や棚に躍起になって隠していく様子は非常に微笑ましい。そして頑張って隠しすぎた挙句自分の隠した物を発見できなかったり、誰かに間違って食べられたりしてる。あと僕がうっかり『中の物は好きに食べていいよ』と言ってしまうことも若干あるし
つまり僕はそう、これ本当に自分のだっけ?と頭の片隅で疑問に思いながらも嬉しそうに新作コンビニスイーツを頬張るフクキタルを止めはしなかっただけだ
実際フクキタルも「あれっ!?これやっぱ私が買ってきたヤツと違くないですか!?」と叫んだあとコンビニに走って行った。そろそろ詫びスイーツを手に戻ってくるだろうし、紅茶を入れる準備をしながらそれと無くフォローをしておく必要がある
「まぁまぁスカーレット、失せ物というのは後々ひょっこり出て来るものだ。ここは1つ別のお菓子でお茶にしないかい?ウオッカ、君も紅茶をどうかな」
犯人を庇う僕の態度で事情を察したのかスカーレットは溜息をつきながらも大人しくソファーへ戻った。俺はコーヒーブラックで!とウオッカが意気揚々と声を上げる。勿論それとなく砂糖とミルクを一緒に横に並べ、彼女がそちらをちらちらと伺うのに気付かないフリをしながら自分の分のカップの用意を始める
「貰い物の高級カステラがあってね。ザラメがついてるヤツで、いくつか頂いたんだがこれは是非とも君達にもと思って用意しておいたんだ。……ん?どうしたんだいウオッカ。その視線は気になるな」
「いや……あのさ、言うか迷ったんだけどなんかトレーナーちょっと太ったか?」
「そのような事実は確認されていないね」
「確かに言われてみれば……アンタなんか丸いというかふにっとしてるって言うか」
「大人の包容力がにじみ出ている、君流のツンデレ式で褒めてくれているのかな」
スカーレットは無言でぼくに近寄り顔にそっと両手を添える。ちゅーかな。でも困った、いくら最終回とはいえそんな急にもっともらしい盛り上げをされても誰もついて来れない。ただ君の気持ちは受け入れ___いや違うなほっぺ引っ張られてるなこれ
「こんなに柔らかいほっぺしてて一番のアタシに相応しいトレーナーだと言えるワケ?」
「その視点から攻められると刺さるな」
まあここ最近飲み会のお誘いが非常に多いし、ほぼ毎日お花見日和だったのもあるし、それになにより最近差し入れの数が凄い。トレーナー室のお菓子棚と冷蔵庫は品の良い箱に包まれたお菓子で溢れかえり、壁際には栄養ドリンクやプロテインの詰まった段ボールが丁寧に積まれている
皆にオススメしやすいよう味見も兼ねて少し食べすぎた自覚はあるが、それでも全然減ってないので少し焦りを感じて来た。これを処理しきるには暇を持て余したウマ娘達が大挙して押し寄せるような事でも無ければ難しいだろう
「こんちはー。暇つぶしに来ましたよ。差し入れにスルメ持ってきましたぞー」
「はろはろー。あれー?大和さんこたつはー?」
なんだろう。暇を持てました若きウマ娘が押し寄せて来る気配がする。根拠は無い
「やぁネイチャ。丁度今日の晩酌の為の乾きものを切らしていてね。助かるよ。君にはお返しにカステラをご馳走できる。こんにちは、スカイ。こたつは残念ながら撤去されてしまった。ああ、残念な事にね」
露骨に残念そうに耳を垂らすスカイの隣でネイチャが苦笑いを浮かべる。その時の状況を思い浮かべているのだろうが、まぁネイチャの想像通りだ。『もう春だというのにいつまでダラダラしとるんだ』と室内に雷が落ちたのはつい先日の事
毎年毎年、あらゆる手を使い彼女をこたつに引きずり込む事でなぁなぁにしてきたが今年はあまりにも手強く、トレーナー室の真ん中を占拠していたこたつは片付けられてしまった
「おー、賑わってるねぇ」
「お疲れ様ですー」
どやどやとチームメイト達が集まって来る。コットンルルにワンモアダイブ、高等部へと進学を果たしたモノクロブーケ、同室の後輩ショコラシュー。どれだけ勢いよく来客があろうと1人1人の目を見て挨拶をする、というのは僕のこだわりだ
そして彼女達が落ち着ける場所を用意している間に素早くお茶を淹れていく。慣れた物だが、しかしどうしたものだろうか。僕は顎をさすりながら既に満員に近い部屋を見渡す
本日はチームハウスが定期点検で立ち入り禁止、拠点が使えないという事でムーンシャインは全体で休みとなっている。行き場を無くした学生達は遊びに行くでも無くここに集まり始めているのだろう
皆が遊びに来てくれるのはとても嬉しいが、チームハウスと違い全員が集まってくつろげるほどのキャパシティは無いのだ。とか言っている間にライスシャワーが扉を開け、そして目をぱちぱちとさせながら硬直してしまっている
「やぁこんにちはライス。見ての通り今日は少々手狭だけど構わないかな?お茶とお菓子は有り余るほどあるから安心して欲しい」
「う、うん。こんにちはお兄様。あの、おかまいなくだよ。邪魔ならライス廊下に立ってるから……」
「おいおいおい冗談じゃない、君を廊下に追いやるくらいなら僕の仕事机を窓から放り捨ててやるとも。誰かお茶の用意が出来るまでライスを捕まえておいてくれないかな?」
オッケー!と複数の叫び声が上がりライスシャワーは部屋の中に引きずり込まれた。威厳ある先輩ではあるが、こういう時は小動物的可愛がりを受ける彼女が誰かの膝の上に乗せられているのを確認しながらふと思う。避難所としてはここ以外にも適した場所があるのではないか。大丸さんやレイヴンの所に分散してもらわないとそろそろ溢れてしまいそうだ
「おう、邪魔するぞ」
ガラリとドアが開いてどでかいおっさんが入って来た。頼りになる叔父も今日ばかりはあまりにも邪魔過ぎる。できるなら廊下に立っていて欲しい。そんなぞんざいに扱えるような人ではないのだが
「なんで来るんですか。あなたみたいなデカイ人入れるスペース無いですよ」
「いやな。自分のトレーナー室、ワックスで床磨いたから今日は誰も入れんくなった」
「何故よりによって今日そんな大がかりな掃除を……?んじゃレイヴンの所は?」
「タキオンさん主催で勉強会やってるよぉ。タイシンさんとか、あと赤点常連組も何人か捕まってるねぇ」
ルルが返答してくれた。なるほど、姿が見えない何人かはそういう事か。というか君も赤点常連組だったじゃないかとツッコミたいのだが……まあやめておこう。それは過去の話、最近彼女の成績は明らかに伸びてきている。平均ちょい上くらいまでは。彼女も将来に向けて一生懸命勉強に取り組んでいるし今日くらいのんびり息抜きを楽しんで欲しいものだ
そうこうしている内に大丸さんは部屋の隅に座り込みパソコンを床に置いて仕事を始めた。え、なんかすごく申し訳ないんだけど。でもカフェテリアに追いやるなんてかわいそうな事はしたくないし、折角だからお菓子の消費を手伝ってもらおう。でもせめて椅子を使ってください
彼の為に頑丈なアウトドアチェアを用意し適当な菓子箱を押し付け一息つく。茶会は約束されたように加速度的に盛り上がりを増していった
再びドアが開く。様子を見に来たエアグルーヴは部屋の中を一目見た途端露骨に嫌そうな顔を浮かべ僕が挨拶する間もなくドアを閉めようとする。しかしパーティーをすっぽかすなど許されない。後ろから来ていたフクキタルに背中を押され、入り口付近に居た後輩達に捕まって椅子に座らされた
「折角の休日だというのに寝転がって菓子を食い散らかすとは……貴様ら有意義な時間の使い方はできんのか?」
「そ、そんな……!私達、先輩とこうしておしゃべりできる時間をとっても有意義なだって思ってるんです……!先輩にとっては無駄だって言うんですか!?」
「そうか。ではスカイ、少し私と腰を据えて話をしよう。丁度いくつかお前に言うべき事と、言いたい事があったんだ。主に最近の授業態度と提出物の悪さについてだ。こういうのはトレーナー陣はほとんど野放しだが」
「あ、いやそういうのは明日とかで……。今日はせっかくのお休みなので……」
「奇遇な事に私も後輩と話をする時間をとても有意義に思っているんだ。付き合ってくれるんだろう?」
余計なコト言うんじゃなかったな、とスカイは耳をぺたんと畳んで神妙な姿勢でソファーに座り直しているがおそらく言葉通り、エアグルーヴも休日を有意義に過ごしたいのだ
目を伏せながらチラと様子を伺うだけのスカイは気付かないのかもしれないが、機嫌良さげな所を見るにエアグルーヴは後輩とくだらない話で午後を潰したいだけのようである。助け舟は必要無いだろう
「あのぉ、それでですね。どなたかが冷蔵庫に入れていたゼリーを私が食べちゃったみたいでして。一応代わりを買って来たので許していただけたらと思うのですが……どなたのでしたか?これ」
「あ、それは___」
「わたしわたしぃー。私のですよフク先輩ー」
「ちょっ!?ルル先輩っ!アタシのですけど!」
おずおず、と謝罪すべき相手を探すようなフクキタルに対し少し気まずそうにスカーレットが手を挙げようとした。それを見てから反応したルルがパッと割り込み、そして一気にスカーレットが点火してルルに詰め寄った
「おおお怒らないでよぉ!ワンチャンに賭けただけだから!」
「なんのワンチャンですか!?」
「もうルルさん……。ええっとそれより、あのゼリースカーレットさんのでしたか?本当にごめんなさい、ついうっかりで……!ここは1つ、私の三点倒立土下座でなにとぞお許しを……!」
「いや大丈夫ですから!いやほんと、危ないですからフクキタル先輩!……で、ルル先輩!だからそのゼリーあたしのですって!!ちょっ、ツッコミ……!ツッコミできるウマ娘呼んで下さい!!!」
スカーレットの要請は却下された。エアグルーヴも今日は休みと決めているのか珍しく聞こえないフリをしている。可愛そうだが、先輩に翻弄されているスカーレットは観ていてとても微笑ましいので仕方が無いね
やはりこの騒がしさこそ僕が好きな時間だ。お茶は静かに飲む時と、音に囲まれて飲む時とで味が違い、どちらがより美味しいかというのは比べるべき問題では無い。ようは楽しみ方を心得ているかどうかだ
まあしかし、フクキタル。スカートで逆立ちに挑もうとするのはいささかハレンチなので辞めるべきだと僕は思うけど……とか注意するのもなんとも気まずいので、こういう時は全くもって気にしてない感じで窓の外を見ながら溜息混じりに紅茶を飲みながら壁にかけた時計を見やる
「おっとまずいな、もうこんな時間だ」
「お兄様、どこか行くの?」
「ああライス。そうじゃなく、お客さんが来る予定になっていてね」
「えぇ?そ、そうなの?じゃあライス達みんなお邪魔になっちゃうかな……?」
「いや大丈夫だ。むしろ都合がいいとも言える。というのも、やって来るのは今年の新入生でね。ムーンシャインにぜひ入りたいというから、では一度しっかり話をしようと今日時間を作ってもらったんだ」
僕がそういうと部屋の中が色めき立つ。新入りの話はまだトレーナー陣だけが聞き及んでいる極秘情報だった
「スカウト?」
「いいやスカイ。彼女の方からの希望さ」
入学式の翌日。下を向いてふらふらと歩く危うい様子の新入生に声をかけた所、あまりの緊張に一睡もできず眠気に身を任せ校内を徘徊していたらしかった。そんな彼女は何かの縁だと思ったのか……ぜひとも担当して欲しい!と頼み込んで来た
来るもの拒まずという僕の性分、それになにより彼女はこの縁を本気のものとしている熱意ある眼をしていたので受け入れる事にしたのだ
「なにその見切り発車な感じは……」
「僕達トレーナーがスカウトする時も勢いが9割さ。それに、スカイの言う通り名は体を表すを地で行く勢い任せの在り方がとても気に入ってね。ほぼ出来レースの面談を兼ねた話し合いだったが、せっかくだから全員で面談を受けてあげようじゃないか」
「いやープレッシャーすごいと思いますよ大和さん……私なら逃げるなぁ……」
とかなんとかスカイがぼやいているがもう遅い。こんこんとドアがノックされ、全員がピタリとお喋りを止めた。部屋に妙な緊張感が漂う。僕は咳払いを1つしてからドアの向こうに聞こえるよう声を張り上げる
「さぁどうぞ入って。歓迎するよ」
ドアがからりと開くと同時に、ふわりと新しい風が部屋に吹き込んだ。僕は薄く目を細め、彼女を真っすぐに見つめた
来訪者は部屋の中があまりにも混みあっているのを見ておもわず半歩後ずさったが、それでもきゅっと口を結んで小さな身体で精一杯胸を張り前へ踏み込んだ
「よ、よろしくお願いしますっ!私は___」
新たな出会いが尽きぬこの学園で、僕達は何度でも新たな夢を見る。彼女達は夢を追い、走り続ける
僕は寄り添い、時に引き留め、少しだけ椅子に腰掛けることを提案する。いずれは走り去って行く彼女達とほんの一時、穏やかな時を分かち合えるのなら。それこそが僕の幸せなのだ
これからも新たな仲間が加わったり、そして去って行ったりする中で数え切れない程の物語が紡がれるのだが___それはまた、次の機会に語るとしよう
プリティダービーに花束を。完
次回あとがき
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