お久しぶりです。あけましておめでとうございます
お年玉変わりといってはなんですが、折角なので投稿させていただきます。楽しんでいただけたらと思います
※完全にIF世界観です。物好きな方だけ読んで下さい
※ちょっとラブコメっぽい感じです。正月テンションです。ご注意下さい
年越しも迫りつつある冬の夜。マチカネフクキタルは自らが生まれ育った家へと戻って来た
白い息が闇夜へ立ち昇り、跡も残さず消えゆく。もうしばらくすれば年末年始の参拝客でいっぱいになるだろうがこの時期はまだ人もまばらだ。すれ違う人やスタッフさんが声をかけてくれる度、フクキタルは人の好い笑顔でファンサービスをしながらゆっくり進む
鳥居をくぐり薄い照明で照らされた神社の境内を進んでしばらく、歴史の深さを感じさせる木造の日本家屋が見えて来る。ただよく見ればあちこち近代風にリフォームされていて、その証拠に人の接近をセンサーが感知し玄関周りの照明が一気に点灯する
それに連動した家の内側の灯りに照らされて、ドアのすりガラス越しに人影ならぬウマ影がそわそわしている様子が浮かび上がる。思わず吹き出しそうになりながらフクキタルは重たい荷物を背負い直してドアをこんこんとノックした。影が硬直し、わざとらしく間が空いてからゆっくりとドアが開かれた
「あらフク。おかえりなさい」
「はいお姉ちゃん。ただいま」
落ち着いた態度を崩さない姉だったが、しかしニコニコで両手を広げるフクキタルを見て諦めたように照れ臭そうに笑い同じように両手を広げて妹を優しく抱きしめた
かつて大病を患ったフクキタル姉が過ごしやすい環境を作る為、親族一同が奔走した結果マチカネ家は近代リフォームが進みバリアフリーとオール電化の恩恵を大いに受けている。広々としたリビングもぽかぽかに温められていて寒空の下やって来たフクキタルの疲れを癒してくれる
彼女はそんな温かな部屋で机の上に並べられたご馳走と向き合っていた。長い学園生活でしばらく離れていても実家の味というのは遺伝子に刻み込まれていて決して忘れることはなかったし、卒業してあちこちを飛び回るようになった今でもこの場所には変わらぬ安心がある。家族団らんを兼ねての夕食は彼女の心を癒してくれる……筈であったが
「どうでしょう胡舞跳さん。お口に合えばと思いますが……」
「無論、絶品です。ただ1つ不安な事があって」
「というと?」
「持ち合わせが足りるか心配だ。これだけの料理、値段が想像もできません」
「うふふ、それなら後でお皿洗いでも手伝ってもらいましょうか」
「やぁ、それぐらいならお安い御用です」
きゃいきゃいとやり取りをする2人になんとなく混ざり辛く、フクキタルは箸と口だけを動かしながらテレビに映るバラエティ番組を眺めるフリをする。内容は全く頭に入って来ないし、フクキタルのウマ耳は2人のやり取りを余す事無く聞き取ってしまう
「しかしご厚意とはいえ、水入らずに混ざって申し訳ございません」
「ほんとお気になさらないで下さい。胡舞跳さんにはお世話になってますし、ぜひ一度家に招きたいと家族でも話していたんです。それに両親が帰って来れませんでしたが、胡舞跳さんのお陰で寂しい夕飯にならずに済みました。ね、フク」
「え。うん、まぁ……そうだね」
朝早く少し遠い町に買い物に出かけた父と母は交通事情の関係で今日は帰れなくなったそうで、折角なので明日まで2人でのんびりすると先程連絡があった。それにしてはきっちり料理が作り置きしてあったりと妙な気配を感じてしまうが、シラオキ様は何も言ってくれない。いや何か言ってはいる。でもなんかはしゃいでらっしゃるのでフクキタルは全力で聞こえないフリを決め込んだ
「あれ。どうしたのフク?なんだか気まずそうね」
「はは、僕の前でお姉さんに甘えるのが恥ずかしいのでしょう」
「あらお可愛いこと。ちなみに私の妹が可愛いのはここ数年で全世界に周知されましたけれど、私はこの子の魅力を産まれながらに見抜いてましたからね?」
「え、お姉ちゃん何言ってるの……?」
フクキタルのか細いツッコミが宙に浮く。対面に座る大和は真に受けて感嘆の溜息を吐きながら頭を振るばかりだし、姉は目が据わっている。大和はともかく、姉にしては珍しくお酒のペースが速いなとは思ってはいたがどうも厄介な事になっているらしかった
「ご慧眼おみそれしました。シラオキ様のお導きが無ければ彼女を見つけられなかった僕には、あなたの凄さが真に理解できます。世辞ではありませんよ」
「ふふ、でも胡舞跳さんの尽力があったからこそ妹の魅力は周囲にも理解してもらえるようになったのです。自己満足の応援しかできなかった私なんかは……」
「境遇にめげず前へ進む事を諦めなかったあなたの背中があったからこそです。誇って下さい。僕の大好きなフクキタルは、あなたがあってこそのフクキタルなのです。さぁ呑みましょう。大人と言うのは素面だと景気の悪い話に逃げがちだ。それに僕の事は気軽に大和と呼んで下さい」
「……ええ、明るくいきましょう大和さん!」
静かに見つめ合いながら2人はグラスをカチンと打ち合わせぐいっと飲み干した。いや全然素面じゃないじゃん、というツッコミが意味を成さないだろうと察したフクキタルは無言でちょびっとグラスを傾けた
「ねえフクもガンガン飲みましょ!もう成人でしょう?」
「いや2人ともめちゃくちゃ飲んでるし。私まで酔っちゃったら誰が後片付けやるの?」
「!!?頼りになる妹だこと……!」
「ふふ、お姉さんに対してだけ砕けた口調になるの……ふふ、かなり好きだよ。酒が進むね」
うわめんどくさいな……。なんて思わずダウナーに呟いてしまうくらいフクキタルは疲れていた
確かに実家の帰省に際し大和を誘いたいとは常々思っていた。学生時代には冗談交じりで言えたお誘いも、成人した今だと中々ハードルが上がってしまったのもあって実家の方から大和にそれとなく誘いをかけてくれたのは大いに助かった
ただいざその時になってみれば後悔半分、やけくそ半分となって妙なテンションになっていた自覚がある。いや普段から彼女は変なテンションだと周りから思われているが、それとはちょっと色の違うものになっていた
実家に帰ってきて真っ先に自分の想い出アルバムを隠すためGⅠウマ娘ダッシュを決めたのだが、その隙に姉が隠し持っていたアルバムを取り出し大和と2人居間でお茶をしながら鑑賞会を始めた。もちろん発狂した
確かにお元気破天荒なキャラではあるがプライバシーとか恥じらいとかを持たない訳ではないのだと訴えても「フクは可愛いねぇ」としか言わない姉はあまりにも無敵だった。帰ってきて1時間経たずに100フンギャロを達成してしまった辺りでフクキタルは完全にエネルギー切れになってしまっていた
「あ、唐揚げ前より美味しい……」
「でしょぉフク!?実家の味、という言い訳に逃げずに日々ベストを目指し続けるお母さんの姿勢はねぇ……!本当にすごいなって、お姉ちゃん思うんだ!」
「う、うん。確かにお母さんは凄いよね」
「でももうお姉ちゃんは凄いって言ってくれないんだねフク……」
「こんなめんどくさいお姉ちゃん見た事無いんだけど!?お姉ちゃんはもうお酒ダメだから!ちょっ、大和さんフォロー側に回って下さいよ!何楽し気に鑑賞してるんですか!?」
「君達姉妹の絡みがあればおつまみいらんなって思っちゃうよね」
「流石の私もぶち怒っちゃいますよ……!」
最初から3人分用意されていた料理を無事食べ終わり(平均的にウマ娘1人分は成人男性2~5人前で計算される)後片付けを済ませている間に少し落ち着いた姉に連れ添いお風呂に入れ、その後シャワーだけで結構だと遠慮する大和を「お酒臭い人はお部屋に入れませんよ!」と問答無用でお風呂にぶち込みフクキタルはようやく一息付けた
「ふー、いいお湯だった。お姉ちゃん、牛乳飲むけどいる?」
「ん。ありがとうフク」
椅子に腰を下ろしあくびを1つ。冷たい牛乳を一気に飲み干し、軽くげっぷをするフクキタルを姉は半目で睨みつけた
「はしたないよ」
「お姉ちゃんしか見てないしー」
「ほんとかなぁ。そういうの、大和さんの前で出ちゃうと幻滅されるよ?」
「えー?今更そんなこと気にしないと思うけど」
「……もしかして思ったより進んでるの?2人って」
「ん?どういうことそれ?」
「いや、いいわ。というか私もあんまりアドバイスできる程経験ないし……」
姉の言いたい事が解らず首を傾げたフクキタルは、しかし気にせずコップを流しに持っていき水ですすぐ。それからしばらく雑談で時間を潰しながら大和が戻るのを待つことにした
「……それで、フクはこれからどうするの?」
「どうって?」
「色んな意味でだよ。今のフクも楽しそうだし私は良いと思うけど、お父さん達はできればもうちょっと落ち着いて欲しいみたい」
ドリームトロフィーリーグに籍を置いてはいるので、フクキタルは今でも年に数度大舞台に立ち過去の名選手達と勝負を繰り広げている。全員がピークとは言えないが、ただ往年のファン達はトゥインクルシリーズを去った彼女達が走る所を見れるのならば見たいと言ってくれる。それに応えるのも役目ではある、と同期や先輩に諭されフクキタルはそれを選択したし、楽しく走ってはいる
ドリームリーグに移籍したウマ娘達は、しかしかつてのように走る事だけを考えている訳ではない。それぞれ別の夢を追いかけている。指導者の道や創作者、アパレルブランドや自分の飲食店を構えたり、家庭を持った者もいる
フクキタルも今の生活のメインにしているのは、世界中のパワースポットを想うがままに散策し旅の記録をつけることだ。自分を導いてくれた物を深く知り、そして新たな視点を持ちたかった。世界中に散らばる縁起物のルーツを学び、肌で感じてみたかった
別に占い師になりたい訳ではない。迷える自分を導いてくれた占い事を生業に……というのも考えなかった訳ではないが、あくまで趣味の1つに留めるべきだと最後には結論付けたからだ
自分は導かれ、そして最後には自らの脚で走り抜けた。その過程や考え方が誰かの助けになるなら素晴らしい事だが、占い師です!と胸を張るのは少し憚られる。その為たまーに取材や学園訪問で迫られた時には張り切って占いをする、そんな感じの付き合い方だった
「ブログは結構ウケがいいんだけどねぇ」
「ふふ、お父さんもお母さんも楽しそうに見てるよ。ただフクったら結構無茶な旅したりハプニングに見舞われたりしてるし、ネタは事欠かないんだろうけど身内はヒヤヒヤしながら見てるのよ?」
「うっ。心配かけちゃってるんならもうちょっと実家に帰って来るようにしようかなぁ」
「別に実家じゃなくても、ちゃんと帰る場所があれば安心だと思うよ?2人共」
それってどういう意味?と聞こうとした時、大和が客間へ顔を出したのでこの話は切り上げた。身内の話は少し気恥しかった。風呂上りのビールが無いとよく眠れないなどと抜かす彼に熱いお茶と蜜柑を押し付け場所を変える為客間を後にする
トランプやらなにやらで眠くなるまで暇つぶしでもしましょうか、と軽い提案をしたフクキタルだったが思ったより熱が入り数時間。酔いが醒める程の時間が経っていた
「___いったあああああ!?なんてことするんですか!もうすぐゴールだったのに甲羅投げるなんてひどいです!それでも私のトレーナーさんなんですか!?」
「ははは。応援する立場であれば君の1着を何より大事にするが、僕も参加しての勝負となればそうもいかないのだよ。それに『元』トレーナーだ、今は対等な友人だろう?であれば加減しないのが礼儀というものだ」
「う~もう嫌です!頭に来ました!実家に帰らせていただきます!!」
「へぇ、ここ以外にも実家があったんだね」
んぐっ、と言葉に詰まるフクキタルは手にしたコントローラーで大和の膝をぐりぐりと押しながら無言の抗議を続ける。楽し気に笑っていた姉は壁掛け時計を見上げると、そっとコントローラーを床に置いて立ち上がった
「それじゃもう眠いし私は部屋に帰るね。……でまあ、お父さんもお母さんも今日は帰って来ない訳だし」
「?」
「まぁ、私の部屋からはさ。この部屋でどれだけ騒いでも何も聞こえないからさ」
「え?でも流石にもう疲れて来たから私もすぐ寝ると思うけど」
「私はいないと思ってね?ね??大丈夫だからね???」
「……え?お姉ちゃん?なに、え。なに!?なんなの!?」
フクキタルが顔を赤くして立ち上がるより速く姉は素早く部屋を出て去って行った。フクキタルは咳払いをしてぶんぶんと頭をふると再びクッションの上にお尻を落とした。どちらとも無くコントローラーを握って、2人は再び画面の方を向いた。そんな感じでも、ただ意識は画面には向いていない。フクキタルの耳がひょこひょこ動いているのを察して大和が先んじて口火を切った
「そう言えばさっき少し小耳に挟んだけど、お節介でなければ進路相談に乗ろうか?一友人として」
「それでは、ご友人として。……大和さんもやっぱりダメだと思います?ふらふらしてるのは」
「はは、僕だって人生の半分くらいふらふらして生きて来た男だ。説教する立場じゃないし、肯定派さ。そも、学園での寮生活、果ては日本中を飛び回っていながらもその実レースに縛られてきた君達は卒業後は放浪癖が付きやすい。理解はあるつもりだ。
ただ僕が、僕達が嫌なのは……君達が帰って来なくなることだ。ターフで出会えた君達がすっと消えて、いつか記憶だけの存在になってしまう。ファンである僕達はいつもそんなことを恐れている。でも何より大事にしたいのは君達の気持ちなんだ。君が何も憂いなく過ごせているならそれでいいんだ」
ゲームの待機画面の賑やかな音が部屋に小さく響く。少し息を吸って、吐いて。天井を見上げながらフクキタルは言葉を選ばず想いを吐き出していく
「あっちへこっちへ気が向くまま、引かれるままに東奔西走。一人旅は気楽で楽しいんですが、やっぱり寂しくって……いやその寂しさも楽しみの1つではあるんですけど___」
「どこまでも一緒についていく、という話は……一度僕は断ったことがあったね」
くっ、と息が詰まったようにフクキタルが黙り込む。大和はそれでも言葉を続けた。彼がこちらを見ているのに気付いていながら、フクキタルは画面から目を離せずにいた
「僕も一応トレーナー職だし、レイヴンと新入り君にまかせっきりと言うのも流石に気が咎める。だからせめて、君の帰ってくる場所の1つであれたらなんて烏滸がましいことを……最近強く思うようになってね。当然、時間が合えば君の旅にも付いて行かせて欲しいけど」
「……プロポーズですか?」
「君の気持ちを尊重するよ。解釈次第だ」
「え!?ここで逃げるんですか!?」
「逃げれば差してくれるだろうと踏んだんだ。作戦だよ」
「上手いコト言った感じ出さないで下さい!!!あんだけ普段愛してる愛してる言っといてここで引くとかありえなくないですか!?」
「確かにそうだ。よしじゃあこっち向いてフクキタル」
「いや別に言って欲しいとか言ってるわけじゃ無く!いや言ってない訳でもないんですが!あああああ、なんというか___」
騒がしい言い合いはしばらく続き静かになるまで少しばかり時間がかかったが、その内部屋の電気は消えて家は静かになった
その後2人は普通に寝て普通に早起きして朝ごはんを作った。マチカネ姉は何故か寝不足だったし、台所で朝ごはんを用意する2人の様子を見た瞬間両手を叩いて歓喜の声を上げながらからかい始めた所顔を赤くしたフクキタルに産まれて初めて本気でドツかれソファーに沈んだ
___________________
「……んがっ」
「あっ。お姉様おはよう。わわっよだれ垂れてるよ?ティッシュどうぞ」
むくりと身体を起こすと、そこは見慣れたチームハウスの談話室でちょこんと隣に座るのはライスシャワー。えらく長く眠っていたようで、重たい頭をほぐすようにこめかみ辺りを両手でこねてから受け取ったティッシュで口元を拭く
「……ん。ありがとうございますライスさん。……あの、私なんか変な寝言とか言ってませんでしたか?」
「……う、ううん。ライスなんにも聞いてないよ?」
「ライスさん。なんでウマホを背中に隠したんですか?何故後ずさりしてるんですか?なんでそんな顔赤いんですか……!?」
「あの、その___ちょっとお兄様に見せたいものがあるから!ライス失礼します!!」
「何撮ったんですか!?絶対失礼させませんよ!!!」
騒ぎながら校内ガチレースをおっぱじめたの2人だったが、トレーナー室手前でエアグルーヴに捕まりダブルで拳骨を落とされた。ちなみに問題となった動画だが、エアグルーヴが検閲したところちょっとこれ見せるのは可愛そうだろう……とマジなトーンで注意されたためライスは泣く泣く消した(消した事になっている。一応)
あけおめぇ!!!
年末年始はガチャで大爆氏!!!!!
クリスマススカーレットとウオッカの立ち絵を実家の壁に彫り込みました。最高過ぎたな……
あとキタサンブラック、衣装もキャラデもかっこよすぎじゃない?はやくフィギュア化してください……耐えられない……
キャラEND、こんな感じで出来ればメイン全員分書くつもりです。もしよければまたお会いしましょう