プリティダービーに花束を(本編完結)   作:ばんぶー

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ミキリハッシャマンも流石にこの文字数には困惑した様子!だがそれでも足を落とさず先頭を維持する構えを見せます!ゴジチェックタントウは既にコースアウトして人参をかじっています!頼むから仕事をしてくれ!諦めないでくれ!



たくさんお気に入りしてくれて嬉しい♡ありがと♡更新頑張るね♡








素晴らしい素質

「ネイチャ……君の思いは伝わったよ。熱い回想回だった」

 

「……そ、そっすね」

 

「だがまあ、言うべきではないのかもしれないけど……自分で語った方が恥ずかしかったんじゃないのかな……?」

 

「あーっ!解ってるならスルーしてくれたらいいから!それで、どうなの?」

 

 

 茶化してもこの問いを取り下げる気は更々無いようだった。少しばかり答えに悩む。いや言いたいことは決まっているのだが、どういう風にそれを伝えるべきなのかが少々問題だった。彼女が求めているモノが僕の言いたいことと一緒だと良いのだけれど、こればっかりはどう転ぶか解らない

 

 

「さて……サブトレーナーとしての僕に聞いているのか、個人的に聞いているのか。2つ答えを用意してみたけど、どちらから言おうか」

 

「えーっと、それって結構違う感じ?なら……サブトレさん的にはどう思ってるのかな」

 

「止めないさ」

 

 

 僕は悩むことなく彼女の問いかけに答えた。彼女が湯呑を握る手から力が抜けたのが見て取れた

 

 

「……え、そこは止めてくれないの?」

 

「君が決めた事をただ応援するのがサブトレーナーである僕の役目だからね。背中を押す事はするが、舵取りはしない。我々のチームの十箇条が1つにもあるように、『来るものはタコパで歓迎し、去る者は鍋パで送り出す』だ。進退について最も大切なのは君の意志だよ、ナイスネイチャ」

 

「じゃ、大和サンとしてはどうなのさ」

 

 

 少し怒ったように唇を尖らせて促す様に聞いて来る。よかった、それを聞いてくれなければこのまま話は終わっていたし、君を引きとめなかった事を皆に死ぬ程責め立てられただろう

 

 

「止めるよ。ネイチャ、君は僕のお茶に付き合ってくれる数少ない友人なんだ。卒業までのあと4年間、きっちりこの学園に居てくれないと困るよ。その間に僕がクビを飛ばされる可能性もあるにはあるけど……それでもさ」

 

「……またまたぁ。大和サンには他のコもいるじゃん。それこそ新しく入って来たコにはこれまた随分入れ込んでるらしいじゃないの。だってのにそんな事言っちゃっていいのかなー?」

 

「それを言われると弱いな。スカーレットに限らず僕の愛すべきチームメイト達は皆非常に魅力的だけど、君以外の子は少々元気が有り余っている子ばかりでね。君が居てくれないと心のバランスがとれないというものだ。僕個人の思いを語るのであればそう言う事さ」

 

 

 僕がダイワスカーレットにゾッコンなのは間違いない。ただ、それを誰かを疎かにしてしまう言い訳にする気はさらさらない。ナイスネイチャは僕がこの学園である意味安心して話せる数少ない友人である事は確かなのだ。少なくとも、突如夜中に遠くの神社までお参りに行かなくちゃならないから付き添ってくれだの煮えたぎる謎の薬物のデータを取らないとご飯を食べる気になれないだの言いだす事は一度も無かった。だから非常に安心してお茶に誘えるのだ

 

 

 ネイチャは参ったね、といった風に頭を掻きながら力なく椅子の背もたれに身体を投げ出し、うへーっと息を大きく吐いた

 

 

「あー安心した。アタシ、そう言って欲しくてここまで来たんだよね。結局やめる度胸なんて無いしさ」

 

「僕の言葉は軽い。安心を得たいなら、君の周りの友人たちにも相談してごらん。競技者としては君の選択を受け入れる者もいるだろうが、友人としてであれば縛り付けてでも君を学園に残すと皆が言うだろうさ」

 

「いやいや、こんな構ってちゃんな事相談できるのは大和サンくらいしかいないって。春の天皇賞やらヴィクトリアマイルやら目掛けて頑張ってる子も多いのに、下らない話で水を差しちゃ悪いもん」

 

 

 

 彼女は足をさすりながら他人事のように、或いは羨むようにそう言った。4月後半と5月前半に備えたG1レース。再発した足の痛みもありここ数ヶ月レースから離れざるを得なかった彼女は参戦に間に合わなかったが、仮に彼女が挑戦していれば善戦を遂げていたのは確かだろう

 

 

「確かにこの学園で時間が有り余っているのは僕くらいだものね。ふむ、懺悔室のような相談窓口でも設けようかな?」

 

「いやいや、大和サンには私達の為にずっと暇でいてもらわないと困りますよ~」

 

「善処するよ。さて、取り合えず先程の問いは片付いた。だから次は君の不安の原因を取り除こうか。誰かに何かを言われたのかい?それとも、またあの自称『世界一クールでカッコよくてサイコーな三冠ウマ娘』ちゃんの絡みが原因かい?もしそうなら彼女のトレーナーに告げ口するが……」

 

「いや、今回テイオーは関係ないんだけど。いやあるっちゃあるけど、そもそもアタシ自身の気持ちの問題っていうかさ?」

 

 

 彼女はもたれかかったまま力なく呟いた。時計をチラリと見ると、授業の1時間目がもうじき終わろうかという時刻を示していた。かなり長く喋って喉が渇いているだろうに、ネイチャは半分ほど残ったお茶を飲もうともせず湯呑を手の中で遊ばせながらぽつぽつと話を続けた

 

 

「アタシ、菊花賞で3着だったじゃん。1着じゃなかったけど、恥ずかしながらアタシの中では……その、自慢できる数少ない実績ってやつなんだよね」

 

「うん。実際、どこに出しても恥ずかしくない実績だ。それ以外にも自慢していい実績はたくさんあるけどね」

 

 

 菊花賞。ウマ娘が競技者として生きていく上で一度しか出走できない、名誉あるG1レースの1つだ。彼女はソレに挑む権利を得て、挑戦し、そして見事表彰台に上がって見事な歌とダンスを披露してくれた。まだ記憶に新しい、昨年秋の出来事だ

 

 そもそも『G1レースに出走する』という事自体、ウマ娘の中でもほんの一握りの選ばれた者のみが手にできる勲章のようなものだ。なにやらさっきからやたらと自虐が過ぎる彼女だが、僕から言わせれば上澄みの上澄み、胸を張って天才の二つ名を名乗ってくれてもいいくらい優秀だ

 

 

 実際、彼女を応援する地元商店街の方々が立ち上げたファンクラブは大盛況だし、僕も時たまそこのメンバー主催の飲み会にゲストとして呼ばれ彼女の近況について語って欲しいと頼まれる事もあるくらいだ

 

 

「ちょっと大和サン!?そんな話今初めて聞きましたけど!?」

 

「ネイチャ、今のは僕の胸の中で語った情報だ。スルーしてくれないと困るよ」

 

「ぐぬぬ……後で詳しく聞かせてもらいますからね。そんなことより、アタシが腐ってるのはそこですよ。確かにアタシみたいなのが場違いみたいな大舞台で結果を出せた。でも、それだって運のおかげっていうか……。その後はどのレースでも3着しかとれないし、またまたケガしちゃって折角ファン投票で選んでもらった有記念にも出れなかったし……」

 

 

 つまり彼女は優秀で、頂点に挑む権利を得られる程度には高い場所に立っている。だからこそ折れてしまったのだろう。

 

 雲に隠れて頂上が見えない程に高い山をガムシャラに駆け上がり、いざ山の頂上まで上がってみれば美しい翼をもった鳥たちが空高く自由自在に飛び回っている。しょげてしまってそこで座り込んでしまったのだとしても、気持ちが解らない訳ではない

 

 

 

「そうだね。君が3着という結果を残し続けたのは運が大きく絡んでいる。これは間違いないだろう」

 

「っ___ですよねー。うん、そうハッキリ言ってくれるコが周りにはいないからさ。助かるってもんよ。それで、アタシは……」

 

「運が悪かった。運が邪魔をしなければ、君は全て1着でもおかしくはなかったと僕は今も思っているよ。それこそ、菊の名を冠したあの大舞台でもね」

 

「っ」

 

「背中を押して、君の手を引くのが僕の仕事だ。ナイスネイチャ、悪いが僕はお世辞は言わない。あの時、トウカイテイオーの三冠を阻止できる可能性は十分あったと僕は本気で思っている。たまに夢に出るくらいだからね」

 

 

 気付いて欲しかった。君にだって空を飛ぶ翼があるんだと。いやウマ娘は別に空を飛ぶ必要はないんだけど、物の例えで……ちょっと混乱して来た。つまり何が言いたいかと言うと、彼女にはまだまだ諦めて欲しくないのだという事だ

 

 

「……」

 

「実際、君は菊花賞に出る資格を得る為に僕と共に地方の小さいレースを駆けまわって1着の実績を重ね、中央の名のある同期を下し、テイオー世代には未だナイスネイチャという新星が残っているのだという可能性を示し続けた。たった1つの敗北だとしても、万全で挑んだ上での結果だ。君の心が曇るのもしょうがない」

 

「……情けない事に、こんなんだったらはじめっから戦わない方が身のためだったのかなーって思っちゃった訳ですよ」

 

「そういう身の守り方もあるだろうからね。恥ずかしながら、他でもない僕こそ逃避する事で己を保ってきた。しかし、ネイチャ。僕だって全てから逃げて来た訳ではない。程々に譲れないもの、退けない機会というのがあったんだ。君やチームの子の事だってそうだし、つい最近もどうしても譲れないものが1つ……いや2つ出来てしまったしね」

 

 

 僕がそう言ったのを聞いて、彼女も小さく笑った。呆れたのか、それとも……どうだろうか

 

 

「……アタシ、もうこのまま一回も勝てないかもしれないよ?」

 

「勝たなくていい。そういうウマ娘があってもいいのさ。僕のお茶に付き合ってくれるのならね」

 

 

 僕はふざけた事を平然と言ってのけた。彼女はマジかよこの人、という視線を向けて来る。とはいえ、僕は本気でそう思っているのだからしょうがない。これは別に、努力が無駄だとか、才能がある奴にはどうせ勝てないだとか。そういった物とは少し違うんだという事を彼女には解って欲しかった

 

 

「勝者にのみ価値があるというのなら、トレセン学園を毎年何百ものウマ娘達が胸を張って卒業していくのはおかしな話じゃないか。彼女達の99%は敗者だし、真の意味で全勝を記録している子なんて殆どいないだろう。なのに、彼女達はみな価値あるウマ娘として理事長から卒業証書を賜っている。

 

どれ程優れたウマ娘だったとしても、誰もが敗者としての一面は持つものだ。毎週のように朝礼でご高説を垂れて僕達の眠気を促進させてくれる彼のシンボリルドルフ氏も、1着以外を知らない訳ではないからね。……すまない、今の発言は生徒会メンバーには告げ口しないでくれよ。もう生徒会室で半日近く正座させられるのは御免だからね」

 

「あー、そんなこともあったねぇ。いやいや、それは置いておくにして……。でもさ、一度も勝てないってなると話は違うでしょ?」

 

「どうだろうか。僕は一度も勝利しないまま去って行ったウマ娘さん達を何人か知っている。卒業にせよ中途退学にせよ、ここを去った後全てに絶望し骸のような生を送っているのかというと存外そうでもないのさ。

 

勝てなかった。上には上がいる。厳しい現実に打ちのめされた記憶は、楽しい人生を送っている中でもふとした拍子に湧き上がる。敗北が生んだ劣等感は、感情を歪にするのかもしれない。それでも彼女達は各々が定めた新たな目標目掛けて日々を丁寧に過ごしているんだ。どういう事かと、聞いた事がある。

 

この学園で学んだのは『1着以外に意味は無い』という無慈悲で冷徹なものなんかじゃなく、『ゴールへと走り続ければ必ずそこへ辿り着ける』そして『ゴールした者を祝福してくれる者は必ず居る』というとても基本的で、忘れがちになってしまう事だった。みなそう言っていたよ」

 

「ん……」

 

「敗北と向き合う事は難しく、辛い事もある。しかし僕の様に愉快に生きる敗北者もいる。君もいっそのこと世界一幸福な三番手になってみればいい。最も1番を目指すのはとても素晴らしいことだけれど、それを達成できないからと言って、何もかもを悲しまなくてもいいんじゃないかな」

 

「えぇー……。いやいや、一番なのか三番なのか、どっちなのさソレ」

 

「ああ。世界一の3番手だ。いいじゃないか、おしゃれな二つ名だ。観客の皆が先頭に立つ者に祝福を与え、2番手に激励を贈るのであれば、僕とチームの皆が3番手の君の為に美味しいご飯を用意してチームハウスで待っているよ。そう、いつもみたいにね。……本当にもうダメだってなるまで、楽しんでおいで。僕はまだ君が走っている所を見ていたいよ、ナイスネイチャ」

 

 

 長々と話したが、僕はようやく言いたいことを締めくくる事が出来た。すっかり冷めて飲みやすくなったお茶が喉を気持ちよく通過していく

 

 ナイスネイチャは天を仰ぐようにしばらく上を向いていたが、やがて椅子の背もたれに抱き着くように後ろを向いてしまった。背中に声をかけるのは無粋だろう。今のうちに僕は出来ることをやることにした。タブレットを叩き、彼女のクラスを担当している先生の所にメッセージを送った

 

 

 彼女が朝のホームルームから姿を見せなかった事を心配していたのであろう、担任の先生からはすぐに返事が来た。僕が急に呼び出したので授業を欠席させてしまい、その連絡が遅れてしまった事。進路相談の為に2時間目も休ませるかもしれないという事の2点を詫びるメッセージを送信した所でネイチャが鼻をこすりながらこちらに振り返った

 

 

 

「はー……。ごめん、ちょっとナイーブだった。うん、ちょっとだけね」

 

「いいのさ。僕の見えないところで落ち込まれる方が困る。君が落ち込むと、君の同室の子が僕に謎のメッセージを大量に送ってくるんだよ。マーベラスが足りないだのどうだのってね。いや、彼女が良い子なのは解るんだけど……少々面白すぎる。彼女とのメッセージのやり取りが一晩中続いた事もあったが、頭がマーベラス一色に染められる所だったよ。危なかった」

 

 

「マーベラスなにやってんだ!?あーっ、ごめん!迷惑かけちゃった!」

 

 

 彼女は勢いよく椅子から立ち上がって、ぱたぱたとスカートをはたいた。少なくとも、このまま生徒会室とか理事長室に退学届を出しにいくような顔じゃなかった。僕の好きな、弱腰であれど不屈の闘志を秘めた顔だ

 

 

「ね、大和サン。なんか熱血キャラになってない?」

 

「ふむ、今朝も指摘されたがどうもそうらしいんだ。ネイチャ、今日の放課後はチームハウスに顔を出してくれ。新しいチームメイト達を是非紹介したいんだ」

 

「ほほー、成程ね。サブトレさんに火をつけたコとあれば、ちょっと会ってみたいかな。……ん、じゃあ戻るわ。ごめんね、朝っぱらから」

 

「どうせ暇な身だ。時間を問わず声をかけてくれ」

 

 

 

 手をヒラヒラと振りながらナイスネイチャは部屋を去った。その背中を見送った後、僕は大きく息を吐いた。やれやれ、本当に長く話し込んでしまった。少々小腹が空いた僕は時計を見て、少しお昼には早い気がするもののとにかく学園のカフェテリアを目指す事に決めた

 

 

 

 

 








この世界線ではトウカイテイオーは三冠取ってます。そういう設定です


大変長い文章になってしまいました。書く方も大変だし読む皆さんも大変だと思いますが、お暇な時にちょこちょこっと読んでいただけたらと思います。あとゴジチェックタントウがコースアウトしたので、誤字のチェックは皆さんにお任せしたいと思います、はい



全体的に文字数多すぎます?もっと小分けにした方がいいですか?

  • 多すぎ♡
  • これくらいでも許してあげる♡
  • 少ない♡少ない♡
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