前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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第131話 秋月壊⑥

 卯月が限界を迎えたのを見て、確実なるトドメを刺すべくD-ABYSS(ディー・アビス)を全力解放させた秋月。しかしそれこそが秋月を敗北へ追いやる最後の一手となった。

 

「──ッ! 、ッッ!?」

 

 身体を食い破りflagshipのオーラが吹き荒れる。全身の肉が爆発していく。艤装からの出火が止まらない。どうしてこうなったのか秋月には理解できない。

 

「ぷっぷくぷー……ざまぁねぇぴょんこのマヌケ。抑止がかかってんのを忘れていたな?」

 

 判断ミスは正にそこだった。

 秋月のシステムは、内部に入り込んだ()()()()()()()と脚部に絡んだ()()()()()()()()()()()により、吸収効率が低下していた。

 

 これを補うために暴走寸前まで出力を上げていた。

 つまり、元々限界を超えて動かしていたのだ。

 その状態で、更に出力を上げた瞬間、吸収効率が戻ればどうなるか。

 

 答えが秋月の惨状である。

 

 ナイフを砲撃で砕いたのは攻撃のためなどではない。飛び散った破片で脚部艤装の布フィルターを破くためだったのだ。

 

「妖精さん、もう脱出して良いぴょん!」

 

 大声を出す卯月の声を聞き取った妖精さんが、艤装に空いた穴から脱出する。同時に吸収効率が完全に戻る。しかし今の秋月にはダメージを深くするだけ。

 

「あ、アアア゛アア゛!?」

 

 身体中の激痛と同時にエネルギーが漏れ出していく。見ての通りの暴走状態。

 

「これでホントに最後の最後だぴょん……!」

「ウウウ゛……ォオオォオッ!!」

「五月蠅い!」

 

 そんな瀕死を突き抜けた状況でありながらまだ秋月は戦闘を続行する。尋常ではない。しぶと過ぎる。だがもう今しか撃破のチャンスはない。

 

 

 

 

 援護しなければならない。横目で卯月たちを見る不知火達はそう思っていた。しかし最上はそれを許さない。

 

「ダメじゃぁないか、戦闘中に、余所見だなんて!」

 

 こいつを抑え込まなければ援護には行けない。余所見しながらどうこうできる相手ではない。

 

「駄目じゃないですか。戦闘中に、無駄口だなんて」

 

 だからこそここで彼女は現れる。

 

 撃とうとした主砲が受け止められ、ひっそりと動いていた甲標的は爆雷に動きを止められる。生きていた彼女に最上は顔を顰めた。

 

 最上を止める為に熊野が復活したのだ。

 

「……申し訳ありません。捨てた艤装を回収するのに、少々手間取ってしまいました」

「大丈夫なのかクマ。その艤装使えるのかクマ」

「時間は稼げます、あと少しでポーラさんが再度狙撃できます……それまでなら」

「感謝します熊野さん!」

 

 指示を出す必要もない。不知火と共に一斉に卯月の元へ増援へ向かう。一方最上は顔こそ明るいが苛立ちが隠せていない。自分にあてがうのがボロボロの艦娘一人だけなのが気にくわない。舐められている。

 

「生きてたんだね、僕は嬉しいよ、でも空気を読もうか熊野ォ!」

 

 熊野へ殺意を向けて躊躇なく襲い掛かる最上。そうしながらも新たな甲標的や瑞雲を飛ばし、秋月を援護しようと試みる。熊野の艤装はもうボロボロ。まともに戦えないと踏んでいた。

 

 それは誤りだと最上は知る。

 

「……私が、ヤケクソで主砲を捨てる訳ないでしょう」

 

 攻撃が行われ最上を妨害する。見た目はズブ濡れで故障しているのに問題無く使えていることに驚く。

 確かに熊野は艤装を捨てた。だがそれにしても注意を払った。ある程度は使えるように、完全に壊れないよう注意していたのだ。

 

 

 

 

 熊野が最上を相手どってくれたおかげで、他のメンバーも秋月撃破へ集中できるようになる。

 

 狙いは一つ。どうにかして再びポーラの射程距離内へ押し込むこと。彼女なら再び艤装を狙撃してくれる。長10センチ砲を片方無力化してくれる。そうしなければ勝ち目がない。

 

 秋月は力づくで逃れようと魚雷を撒き散らした後にしゃがみ込む。跳躍と砲撃による空中移動で無理矢理逃れようとする。

 

「逃げることなんてできないわよ、この空爆なら!」

 

 同時に飛鷹の艦載機が大量の爆弾を投下する。防空能力は健在。ボッと破裂音が鳴った瞬間爆弾も艦載機も消滅。一瞬で大量の弾幕を張ったのだ。しかしその一瞬、長10センチ砲の照準が逸れる。

 

「今だ、発射だクマー!」

「援護します」

 

 無防備な本体へ球磨が砲撃を撃ちこむ。逃げ道を不知火の魚雷が塞ぐ。更に球磨が放った甲標的が水面下から魚雷を放つ。

 秋月はまず魚雷を排除しようと、脚を高く振り上げ、津波を起こそうとした。更には津波の壁で砲撃を阻もうとする。

 

「何度目よそれ。もう見飽きたわ、そんな一発芸は!」

 

 そこへ満潮が砲撃を放つ。狙いは顔面だ。抉れた下顎へダメージを入れようとしている。それでも足を振り下ろす方が速い。秋月は更に力を込めて津波を起こそうとして──転倒した。支えにしていた片足に、何かが激突した。

 

「満潮のに集中しすぎたのかクマ?」

 

 当たったのは球磨の水上戦闘機。いつの間にか飛ばしていたそれを、姿勢を崩す弾丸代わりにしていたのだ。

 

「──ッ!!」

 

 片足を救われ転倒。だがまだ諦めない。少し時間が経った結果長10センチ砲が再発射できるようになった。転びながらも砲撃をしようとする。

 

「うりゃぁぁぁぁ!」

 

 そこへ卯月が()()()を投げ込んだ。

 このまま撃てば顔無しが爆散。秋月は砲撃を止めるしかない。攻撃できず、無防備に宙に浮く形になった彼女。

 そこへ球磨と満潮が狙いをつける。

 

「さあ、これで、最後よ!」

「助けてやるから感謝するクマ!」

 

 二人の砲撃が、頭部に、胸部に、脚部に直撃する。空中コンボのような連撃に肉片を散らせながら吹っ飛ばされていく。未だ人の形を保っているのは流石だが、いずれにせよ、これで秋月は射程距離内に入った。

 

『チャージ完了、Fuoco(フォーコ)~!』

 

 遥か遠くのポーラがトリガーを引いた。

 

 艤装の限界を超えた電力が放出されプラズマが迸る。その轟音よりも早く弾丸が発射される。戦艦を越えた射程距離でありながら、瞬きするより早い。

 一瞬視界が白く染まり、それが収まった時、左側の長10センチ砲の固定ユニットに、綺麗な風穴が空けられていた。

 

 修復誘発材が暴走する。風穴を中心に『融解』する。そして左側の主砲が旋回できなくなる。左側が死角となった。

 

 そして吹っ飛ばされた先には、もう卯月が待っていた。

 

「ハイクはあるかぴょん。秋月」

 

 予めそこへ突撃していた卯月がナイフを振るう。防御しようにも、後方から左の死角へ移動する不知火たちに気を取られ即応できない。

 

「あっても言わせないけど」

 

 目が切られる。誘発材が塗られる。

 

 以前と同じように、秋月の眼球が破裂した。

 

「これ以上の抵抗は許さない。お前には何も見せない、地獄だけ味わって貰うぴょん」

 

 視界があれば照準をつけることができる。左側に回りこまれないよう動ける。数秒耐えれば怪我は治り逆転できる。

 秋月の考えは、卯月には分かりきっていた。それじゃ駄目。確実に仕留めるためには一切の抵抗も許してはならない。

 

 だから視界を潰した。降下した時を再現する為に。

 

 そして卯月が左に回りこもうとする。

 

 それを許してはならないと、秋月は必死で狙いを合せる。電探でまだ捕捉はできる。しかしそれも無駄な抵抗。

 

「総員一斉射、一発も残さないで構いません、撃ち尽くしてください」

 

 不知火の指示で一斉砲撃が放たれる。

 文字通りの全て。主砲、魚雷、機銃、三号爆弾、三式弾全てが降り注ぐ。最上を抑えている熊野も遠くから三式弾で援護してくれている。

 

 秋月の電探は全てを捕捉してしまった。電探上が光点で覆い尽される。回り込んで来る卯月の位置が分からなくなる。視界も切られて見えていない。ヤケクソ気味で撃ってもそれなりに当たるのが恐ろしいが、卯月はそれを冷静に回避していた。

 

「さあ、お休みのお時間がやってきたぴょん」

 

 死角へ到達した卯月。今の秋月に彼女を止める方法はない──だがそれでもまだ強化された膂力で暴れる恐れはある。

 

 だったら近づかなければ良い。そう考えた卯月は『錨』を投げつけた。

 

 狙い通りに飛んだ錨。その鎖が秋月の首に絡まった。

 

「窒息と溺死。好きな方を選ぶと良いぴょん」

 

 そう言って卯月は錨を海底へ沈めた。

 

 本来、軍艦一隻を固定できる錨。それが首に絡まま沈んでいけばどうなるか──鎖が閉まるに決まっている。

 

「ガッ……!?」

 

 重量に従い沈んでいく錨。鎖が絡まった首がそれに引っ張られ、海面に顔から引き摺りこまれる。

 

「────ッ!」

 

 顔が水面に沈む。更に絡んだ鎖が首を絞めつける。卯月の言った通り窒息死と溺死の危機に陥る秋月。両手で踏ん張り沈まないよう堪える。だが錨はどんどん沈んでいき、首もどんどん締め付けられていく。

 

「さっさと、意識を手放しやがれッ!」

 

 手元に繋がっていた鎖を引っ張る。卯月が引っ張り、沈む錨が引っ張る。両方から引かれたせいで秋月の首が更に絞まっていく。

 

 それでもまだ意識を失っていない。がむしゃらだが砲撃を続け、左側以外からは誰も近寄らないよう足掻いている。

 

 手だけでは駄目だ。卯月は背負い投げのような体勢をとって、全身で鎖を引っ張る。鉄の鎖が千切れてしまうんじゃないかと、不安になるぐらい力一杯に。あと数秒もない。融解した艤装が治る。その前に倒さねば。

 

 その時音が聞こえた。

 

 『メキメキ』と言うような、鉄が千切れるような重い音が。

 

 そして『ブチリ』と千切れる音が聞こえた。

 

「まさかッ!?」

 

 鎖が千切れてしまったのではないか。顔を青ざめて振り返る卯月。しかしそれは杞憂に終わる。秋月の首を絞めつけている鎖は無事だった。

 

 じゃあ今の音は何だったのか。

 

 振り返った卯月はそれを見てしまった。顔面蒼白になる。絶望に心が折れそうになる。

 

 そこに立っていた存在。それは──

 

 

 

 

 長10センチ砲ちゃんだった。

 

「…………」

 

 だが考えて欲しい。

 

 秋月の長10センチ砲は、島風の連装砲ちゃんとは違い、艤装に固定されるタイプ。自分で立つことなんてできない。

 

 だが、確かに長10センチ砲ちゃんは、秋月から離れて立っていた。

 

 艤装の搭載ユニットは融解したままだが、長10センチ砲ちゃんがいた場所はもぬけの空。

 

 つまり今目の前で立っているのは、融解させ旋回を封じた左側の個体。

 

「……ぴょ」

 

 それは秋月の最後の奥の手。

 

 この長10センチ砲ちゃん。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そうすれば接続ユニットが溶けてようが関係ない。自力で卯月の方を向ける。

 

 さっきの音は、融解した接続ユニットから分離した時の音。

 

 勿論砲弾は搭載済み。発射までコンマ数秒。

 

「ぴょぎゃぁぁぁぁ!?」

 

 生まれてから最大級の悲鳴を上げる。死ぬ。間違いなく死ぬ。鎖を全身全霊で引っ張っていたせいですぐ動けない。だいいちもう動ける体力が残っていない。

 

 砲塔から輝きが見える。死の予感が襲い掛かる。だが諦める必要はない。再び背中を向けて死ぬ物狂いで首を引っ張る。持っていた顔無しを一端投げざるを得ない。両手で全力で首を絞めていく。

 

 秋月の意識が、失われる直前、ついに長10センチ砲から砲弾が飛び出た。

 

 それとほぼ同時に。

 

「しつこいって、何度も何度も、言ったでしょうがぁ!」

 

 満潮が主砲で秋月の頭部を殴りつけた。高高度から振り下ろした、重力も乗せた渾身の一撃が、頭蓋骨に亀裂を入れる。

 

「──ッ」

 

 その一撃と酸欠溺死のパニックで意識を一瞬奪われる。

 

 その一瞬全ての迎撃ができなくなり、秋月はあらゆる攻撃を無防備な全身で受け止めることに。

 

 それら全てと、D-ABYSS(ディー・アビス)暴走の反動を受けた秋月は、血を噴き出しながら泡を吹き、白目を剥いて、力なくその場に崩れ落ちる──漸く、その意識を完全に奪い取ったのだ。

 

 

 *

 

 本当にギリギリの決着だった。秋月が意識を失ったことで、長10センチ砲ちゃんも機能停止する。

 だが、ほぼ発射された主砲は止まらない。

 機能停止と同時に転倒したことで、数度だけ射角がずれたが、それでも砲弾は卯月の首元を軽く抉っていった。

 

「ごばぁっ!?」

 

 やはり全身に衝撃波が走る。最後っ屁で大ダメージを負う羽目になる。しかしこの程度で済んだのが幸い。あとコンマ1秒遅れていたら。

 卯月は考えることを止めた。そんなことより秋月だ。

 

 意識を失ったのか。倒れる秋月を見ても信じられない。これまでもしぶとかった。まだ意識があるかもしれない。近づいて確かめるべきか卯月は迷う。

 だが今迷うのはとても危険な行為で看破できるものではない。不知火が即座に指示を飛ばす。

 

「卯月さん顔無しを回収してください、早く!」

「りょ、了解ぴょん!」

「満潮さんは秋月捕縛、他メンバーは熊野さんのところへ!」

 

 さっき投げ飛ばしたままだった。そう遠くない場所を気絶した顔無しが漂っている。卯月はそれを回収しようとする。

 手を伸ばして腕を掴んだ。その瞬間。

 

 目の前に艦載機が現れた。

 

「え」

 

 周囲は警戒していた。なのに気づけなかった。

 

 これが気づけない艦載機なのか。そう驚く時間はない。

 

 もう爆弾が切り離されている。思考している暇もない。反射的に腕を引っ張り顔無しを手繰り寄せる。

 

 しかし爆弾の直撃を回避するには遅すぎた。

 

 閃光を放ち炸裂する爆弾。卯月は木の葉のように吹き飛ばされていく。蓄積したダメージも相まって意識が消えかける。そんな状況でも掴んだ顔無しの腕は絶対に放さない。自爆不全の(この)顔無しは重要な何かを抱えている。敵に破壊される訳にはいかないのだ。

 

 あちこちを抉られた状態で海面を転がる。くすむ眼を開ける。顔無しの手はどうにか握ったままだ。

 

「……せ、せーふ、だぴょん」

 

 とりあえず破壊されて無くて良かった。けれども無事ではなかった。その腕を引っ張った時、爆発から逃げきれなかった箇所なのだろう。

 反対側の腕がまるごと消え去っていた。

 

 爆発で消滅したのか? 

 

 その考えを否定する声が聞こえる。

 

「その重傷具合でその反応速度。意外にやるんだね、卯月!」

 

 声の主は最上。彼女の手には今爆発で千切られた、顔無しの片腕が握られていた。

 

 そう戦いはまだ終わっていない。最上がまだいる。間違いなく秋月より強いであろうこいつがほぼノーダメージで健在だ。

 

 最上は「あーあ」と呆れたため息をついて秋月を見つめる。その秋月は戦闘終了直後、素早く満潮が確保していた。

 もし確保が遅れていれば、最上は先程の顔無しと同じように、『処分』しにかかっていただろう。

 

「しっかしまあ、結局やられちゃったんだね秋月。無様というか何というか……同胞(はらから)として僕恥ずかしいよ。生き恥ってヤツだね。そんなもの晒すぐらいなら、死んだ方が良いよね、秋月の為にも!」

 

 そう言った瞬間、秋月と彼女を確保している満潮の周囲を、艦載機が包囲した。

 

 一瞬で現れた。としか言いようがない。虚空から出現したとしか思えない。

 

 それでも誰も怯まない。爆弾が落とされようとしたのと同時に、飛鷹たちの援護攻撃が艦載機を叩き落とす。

 

「うわっ、破壊されたの!?」

「そうですわ。どこへ出てくるのか分かっていれば、予測して砲撃するなど簡単なのですわ」

「流石だね熊野。昔と同じだ。でもその身体で何ができるのかな。僕が合図を出せば、後方に控えている援護部隊がどどーって出てくるんだよ?」

 

 誰も彼もボロボロだ。特にD-ABYSS(ディー・アビス)をずっと使った卯月、最上を単独で相手していた熊野が重傷。こんな状況で戦えば死人が出る。

 

 けどそれで良い。生還を軽視するのがこの前科戦線。

 

 今重要なのは顔無しと秋月の回収だ。その意志を不知火が伝える。

 

「問題ありません」

「へ、そうなのかい?」

「ええ、唯の一つとて」

 

 何人かがしんがりと務めれば撤退まではどうにかなる。ズタボロの身体を叩き、熊野と卯月は立ち上がる。

 

 卯月たちと最上が睨み合う。

 

 長い時間が流れた気がして、最上の溜め息でそれは終わった。

 

「分かった。撤退するよ」

 

 と言って主砲を降ろす最上。彼女は手に持った『顔無しの片腕』を大事そうに持っていた。

 

「顔無しも秋月も確保されちゃったけど、僕的にはこの『片腕』だけで十分だからね。今日の所はこれ(片腕)の回収を優先させて貰うよ。帰投中、万一があるかもしれないから。うん君達の予想通り。この顔無しはとっても大事なサンプルなのさ。そっちで解析してみても良いよ、絶対分かんないと思うけど。だって僕も知らないし!」

 

 最後の一言に突っ込む気力などある訳がない。

 

 隠れる気も皆無。顔無しの片腕を持ったまま、最上は遥か遠くへ去っていった。

 

「飛鷹さん、追跡は」

「生憎だけど偵察機も全滅、無理よ、ごめんね」

「いえ、仕方ありません」

 

 秋月は確保、重要そうな顔無しも確保。更に全員生存。戦果だけ見れば間違いなく完全勝利。

 

 しかし卯月は到底そうは思えない。

 

 特に異様な雰囲気になった熊野を見ていたら、尚のこと思えなかった。




艦隊新聞小話

 補足というか実際のところと言いますか、最上さんが言った通り、後方には追撃のための顔無し部隊がまだいました。これを投入すれば前科戦線に大ダメージを与えることは可能でした。
 ですが、最上さんの優先目的は、顔無しの腕を無事持ち帰ること。
 帰投中、襲撃がある可能性もありますからね。なのでその顔無し部隊を、自分の護衛にして、安全を確保する方を優先させたんです。
 ……え?最上さんを誰が襲撃するのかって?
 ハハハ、『黄金の暴風雨』をお忘れで?
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