前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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 空を飛びながらモンスターの尻(闇討ち)に熱く熱された鉄の棒(爆杭砲or地烈斬)を捻じ込む怪人と化したガンランサー。
 ガンランスはどこへいくのでしょうか。誰か教えてください。


第159話 透明

 満潮は首を傾げていた。

 負傷箇所が増えた最上が、全力で動こうとした途端、白目を剥いてひっくり返ったからだ。

 勝ったのか、何だ今のは。

 

「どうやって勝ったの、今ので」

 

 白目を剥き、海面へ倒れ伏す最上を見ながら、満潮は呟いた。

 

「なんと言いますか。少々語弊がありますが、自爆というのが一番適切ですわ」

「自爆って、どういうことよ」

「元々最上さんは、()()()()()()()()()()()も同然だったのです」

 

 最上の凄まじいフィジカルは、実の所再生能力によって齎されたものだった。

 踏み込めば音速突破、タックルで砲弾を粉砕。

 そんな滅茶苦茶な身体能力は、彼女の限界を超えており、一挙手一投足の度に肉体の崩壊を招いていた。

 

 それを端から再生させることで、帳尻を合わせていたのだ。

 戦闘中発揮された再生能力は、その一部分に過ぎなかった。

 

「言うなれば、修復しながら飛行機を飛ばしているようなものでしょうか。わたくしはその修復作業量を増やしただけです」

「で、飛ばす労力にまで手が回らなくなったってことね」

「そういうことですわ」

 

 しかし、それには限界がある。

 外部から損傷を受けた場合は、そちらへ再生のリソースが割かれる。

 その為、余りにも外傷が深すぎると、肉体強化へ用いていた再生力まで、そっちに回さざるを得なくなる。

 

 この間、最上の身体強化と再生の帳尻が合わなくなる。

 

 一時的ならまだしも、それが長時間続けば、明らかな形で消耗が現れる。

 挙句最悪なことに、最上は『加減』を知らなかった。

 堕ちてからずーっと、『強化』込みで暴れてきた為、それがない時の動き方を知らなかった。

 

 肉体の限界を超えた動きをしても、それが危険だと分からない。

 分かってもそれ以外の動き方を知らない。

 

 熊野により、最上は全身の傷を深く抉られた。

 結果、そちらに再生リソースが割かれ、肉体崩壊が始まった。

 なのに気づかず、同じ暴れ方を続けようとしたせいで、肉体崩壊が限界を超えて──意識を失ったのだ。

 

「とは言え、肉体限界を超えても、叩き続けるガッツの持ち主だったら、かなり不味かったので、運が良かったと思います」

「確かに、その状態になってから、直ぐに引っ繰り返ったわね」

「再生能力頼りで、限界を超えて戦うというシチュエーション自体、なかったのでしょうね」

 

 なんなら、追い詰められからの暴れ方は、秋月より大人しかった。

 

 というか秋月より根性ナシだった。

 

 限界を超えても再生するから、本人に負荷がかかならい。

 そんな状況を続けていたせいで、いざ限界を超えた負荷を感じたら、全く耐えられなかったのだろう。

 

「まあ、お蔭で秋月さん程、体内ダメージは大きくなさそうなので、そこは安心できるところですわ」

「……それは、そうね。こんなに苦労して死んでたなんて、目覚めが悪すぎるものね」

「ええ、本当に……思いますわ」

 

 熊野からしたら、良い事ばかりではない。

 これでとうとう、鈴谷の生死が明らかになってしまうからだ。

 真実が分かるのが恐い、生きている可能性がある状況で、留めておきたかったとは思う。

 

 だが、それは鈴谷への侮辱になる。

 絶対に口には出さない。

 満潮も何となく、そういう気持ちは感じた。

 複雑そうな表情にも、何も言わないことにした。

 

「……おおーい、決着は、ついたのか……っぴょん」

「うわ卯月、アンタ意識が戻ってたの」

「何度も気絶してるせいかなぁ……何か、あっさり起きれるようになってる気がする……ぴょん」

 

 それ結構ヤバイのでは? 

 良くない慣れをしている気がしてならない。

 今心配しても意味ないが。

 

D-ABYSS(ディー・アビス)の負荷には、随分慣れたようですわね……あまり喜べないですが」

「うーちゃんは良いっぴょん……決着、ついたんだよね?」

「ええ、ご安心ください」

「そう……」

「それと」

「うん?」

「叱咤して頂き、ありがとうございます。お蔭で目が覚めましたわ」

 

 吹っ切ることが出来たのは、卯月のお蔭と言っていい。

 お礼を言うのは当然だった。

 だが、卯月は不思議そうに首を傾げている。

 

「うーちゃん、ただ、本当にうっとおしかったから、イライラして怒っただけだぴょん。八つ当たりだけぴょん」

「卯月さんの意図がなんであれ、結果として良い状態なったと思います。お礼ぐらいは受け取ってくださいな」

「じゃ、帰ったら、間宮パフェ……お願いぴょん」

「かしこまりましたわ」

 

 話している最中、遠くの方から球磨たちも近づいてきた。

 

「そっちは終わったのですか?」

「そうだクマ、あらかた片付けたクマ。最上がやられたのを見て、残党は逃げて行ったクマ」

「成程」

 

 周囲を観察しても、敵らしき影はない。

 上空を警戒しても、艦載機の影はない。

 敵は全ていなくなったのだろう。

 これで戦闘は終わり、全員ホッと一息ついた。

 

「……で、どーして、熊野さんがいるんですか?」

「出撃許可は中佐から貰いました、高くつきましたが、こうして最上さんを倒せたのだから、安い買い物でしょう」

「そーでしたかそーでしたか、良い顔つきですね~、スッキリした感じ。ポーラそっちの方が好きですね~」

 

 まあ、ストレスや悩みでしかめっ面してる人より、好印象なのは確かだ。珍しくポーラの言うことが正論だ。

 何はともあれ決着はついた。

 後は最上をしっかり拘束して、帰投するだけ。

 

「……この音、大きな音、秋津洲の輸送艇……ぴょん?」

「そーみたいですね~、あーもーポーラ疲れました~、腕も足も棒みたいです。機内にワインはありますよね?」

「重油でも飲んでろクマ」

「……いけるかも」

 

 ダメだコイツ。全員色々と諦めた。

 

 そうしている間に、輸送艇が着水。

 太陽も昇ってきた、安全なフライトが楽しめるだろう。

 これでやっと、身を休めることができる。

 卯月は心の底から安堵した。

 

「いえ、搭乗は暫く待ってください」

 

 だが、それを不知火が止めた。

 

「どういうこと?」

「忘れているのですか。この戦い、いる筈の存在がいなかったことに、気づいていますか」

「……ステルスの艦載機?」

「それです。最上さんとの戦闘中、それに遭遇しましたか」

 

 卯月たちは遭遇していなかったので、首を横に振る。

 イロハ級と戦っていた球磨たちも同じだったので、同様に首を振った。

 秋月との戦いでは、ちょこちょこ妨害してきたアレが、最上との戦いでは出てこなかった。

 言われてみれば、違和感しかない。

 

「そもそも、来てないって可能性もあるんじゃないの」

「ええ、それも想定されていました。だから高宮中佐は、熊野さんの出撃を許可したのです」

「……わたくし?」

「許可の理由は、熊野さんが特効艦だからではありません。いいですか、残念ながら作戦は内通者の手により、どうしても一部漏洩してしまします。逆に言えば、敵はその情報を元に動くということ」

「そりゃそうね」

「では、情報と違う事態が起きたらどうなるか。現状確認を()()()()()()()()

 

 事前情報を貰って、行ってみたら想定外のことが起きていた。

 すぐに情報を更新する必要がある、動く必要が出てきてしまう。

 それは仕方のないことだ。

 

「この戦場は、そのステルス機──の使い手に、監視されていたんです」

「……え、待つクマ。じゃあこの待ち伏せ作戦自体、最初からバレてたってことになるクマ」

「そういうことになります」

 

 最も全部露見していた訳ではない。

 どの辺りの海域で待ち伏せしているかとか、何時頃に、何処を航行しているかとか──致命傷になりにくいが、作戦に支障をきたすぐらいの情報を、敢えて漏らしておいたのだ。

 

「でも最上さんは、そんなこと知ってそうではありませんでした」

 

 基地全体を用いた罠にも引っ掛かっていた。予め知っていたとは思えない。

 

「恐らくですが、全部囮だったのでしょう」

「全部って」

「大量のイロハ級も、最上さん自身も全てが囮。敵はきっと、不知火たちが輸送艇に乗り込み離陸する時を待っていたのだと、想定されます。疲弊して抵抗できず、空中で逃げ場もない中、最上さんごと不知火達を抹殺する為に」

 

 その為だけに、ステルス機を出さずに待機させていた。

 高くつくが、確実かつ纏めて殺す為に。

 あれだけの数のイロハ級でさえ、囮に過ぎなかったと言うのだ。

 

「故に、ステルス艦載機は近くで、動きを見ていると踏みました」

「ムリでは? だって、見えないんですよね~」

「ええ、ですが熊野さんが来たことで、観測ができました」

「……ああ、そういうことですの」

「情報になかった人が来たせいで、ステルス機を動かさざるを得なかった。しかも夜間、明かりがなければ正確な観測は不可能。ほんの一瞬ですが確かに見えました、艦載機の明かりが遥か上空に」

 

 これが意味することは一つ。その事実に臨戦態勢へ戻る。

 

「この近く、いるの、敵が」

 

 不知火は頷いた。

 

「けど……どこにいるんだクマ。さっきから偵察機は飛ばしてるけど、敵影なんて見当たらないクマ」

 

 戦闘が終わり、日が昇った頃、輸送艇の安全確保を兼ねて偵察機を飛ばしていたが、何も見つからなかった。

 本当に敵なんているのだろうか。

 だが、近くに敵の艦載機があったのは確かなのだ。

 

「マジで誰もいません。あるのはイロハ級の水死体ばかり。じきに消えるでしょうけど」

 

 もうじき泡になって消える。それが深海戦艦の宿命だ。

 

「でも、気のせいにするのは、ちょっと怖いですね~。戦闘中に巻き添えで倒してた~、とかどうでしょ~」

「そんなことで倒せるなら苦労はしてないクマ」

 

 全員敵を疑っている。目を凝らし、耳を澄ませても何もない。

 

『ちょっとー、迎えに来たのに何してるのかもー』

「敵がまだいるかもしれないんです。申し訳ありませんが、秋津洲さんも周囲を警戒してください」

『二式大艇ちゃんを沈めるつもり!? なんて奴見つけて殴ってやるかも!』

 

 しかし何も無い。レーダーにも、ソナーにも、目視でも偵察機でも痕跡一つ発見できない。

 

「……撤退した可能性もありそうですが」

 

 熊野の言う可能性が高そうだ。

 何時までも此処にいるのも、それはそれで危険。

 仕方なく、撤退の判断を下そうとする。

 

「……待って、おかしい、ぴょん」

「卯月?」

「艤装が、動いてる音が、()()()()()()()()

 

 卯月が指差したのは、イロハ級の死体の山だった。

 何割かは泡となって消滅し出している、間違いなく死んでいる。

 死んでるから勿論、艤装の機能も停止している。

 だから、音がする筈がないのだ。

 

「どれからですか」

「あそこ、頭部が半分砕けてる、空母ヲ級の死骸」

 

 頭部、というか頭蓋骨が半分捥げてなくなっている。

 どう見ても死んでいる。

 一目で分かる死体である。

 

 けど、卯月の聴力に疑う余地はない。

 

 警戒し、フォーメーションを組んで死骸へ接近する。

 

「撃ちますよ」

 

 宣言してから、不知火が主砲を叩き込んだ。

 爆発が起き、ヲ級の外皮が吹き飛ばされる。

 そして中身が顕になる。

 

「……空、ですわね」

 

 生きていれば機械部品や内臓等が詰まっていたのだろう。しかしこれは死体だ。既に内蔵は泡となって消えてしまっている。

 

「待ってよ。変よコレ……そういう風には見えない。中身が綺麗過ぎる気がするんだけど……アンタどう思う」

「球磨も同じだクマ。泡になって消えたなら、腐りかけみたいな感じになる。でもこれは……」

「予め、くり抜かれた様な?」

 

 つまり、このヲ級は最初っから『皮』だけだったのだ。

 誰かが潜んだ状態で戦線にやってきて、適当なタイミングで、死体の振りをしていた。

 ある意味理にはかなっている。

 正確な偵察をしたいのなら、最前線に潜んでいるのが一番だからだ。

 

「でも、中身ないですけど」

「皮を捨てて、もう逃げちゃったんでしょーか?」

「……まだ、音は、してるぴょん」

 

 今度こそ、異常であると把握した。

 中身がなく、くり抜かれた空洞のヲ級。

 ならば、どうして艤装の音がしてくるのか。

 

「まさか……カメレオンのように、透明になってるんじゃ」

 

 満潮の無茶苦茶な予想に、球磨が反論する。

 

「冗談は止せクマ。ステルス迷彩なんて、SFにしか出てこないクマ」

「じゃ目の前のこれ何」

「……クマ」

 

 ステルス艦載機の使い手なら、本人も透明になれるのではないか。その可能性は高い。

 

「……試してみます」

 

 砲撃や魚雷では、爆炎で見えなくなる。

 機銃の銃弾を一発取り出し、それをヲ級の死骸へ、放り投げた。

 

 弧を描いて弾丸が落ちる。

 

 それはカツンと音を()()()、透明な何かに弾かれた。

 

「誰だ! 動くなク──」

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 誰が悲鳴を上げる。

 何も無かった空間から、突然艦娘が現れた。

 

 何と土下座をしていた。

 

Sorry(ごめんなさい)! Sorry(ごめんなさい)! いじめないでください! 殺さないで! 心の底からintrospection(反省)しています! なんでもしますから靴も床も舐めます! だからplease(お願い)どうか殺さないで! pleaeeeeeeeese(お゛願い゛じま゛ずう゛う゛う゛っ)!!!」

 

 金髪のツインテールで、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにさせながら、謝り倒すそれに変な恐怖を覚える。

 

 本当にステルス迷彩だったことにも驚いた。だがそれ以上に、この態度に衝撃を受けた。

 

「何、コイツ」

「……該当する艦娘は、います」

「誰なのよ」

「カサブランカ級護衛空母、19番艦、Gambier Bay(ガンビア・ベイ)ですね……」

「ヒィィィィ!」

 

 三隻目、ステルス機を操る存在との遭遇は、とてもグダグダなものとなった。




艦隊新聞小話(久々)

 艦娘強化システム(仮)のD-ABYSS(ディー・アビス)ですが、エネルギーを外部から取り込む、という特性上、いくつか副次作用を生み出すことができます。
 ご覧の通り、最上さんの場合は、外部からエネルギーを供給することで、高い自己再生能力を実現していました。
 まあ、肉体限界を超えた稼働の反動で、壊れていく身体を端から再生する使い方をしてた訳ですが。
 肉体が限界突破してたのなら、脳も崩壊&再生を繰り返してるかもしれませんね。直接調べてはいないので、わたしは分かりませんが。
 ガンビア・ベイも何かしらあるのでしょう。おおかたステルス能力に関係してそうですが。
 卯月さんは……あるんですかね?

 ちなみに、ここまで登場したD-ABYSS(ディー・アビス)艦娘、秋月、最上、ガンビア・ベイには一定の法則があるらしいですよ?
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