前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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掘りで完全にぬまった。ヤバいでち。


第213話 ガンビア・ベイMk.II"D"②

 艦載機を使い、空中から逃亡を図るガンビア・ベイ。

 しかし、その足場が一斉に破壊される。

 それは、彼女の天敵の仕業。

 防空駆逐艦、秋月が、対空砲火を次々に撃ち鳴らす。

 

「長10センチ砲ちゃん。頼りにしてるからね!」

 

 秋月の呼びかけに、彼(?)等は嬉しそうに腕をパタパタ振る。

 全盲となった秋月は、どう戦場で戦えばいいのか。

 

 答えは案外単純だった。

 視界を、長10センチ連装砲ちゃんに補って貰えば良かったのだ。

 

 元々彼らは自立稼働ができる。その稼働をする為に彼等は彼等で視力を持っていた。その情報を受け取れば、周囲の状況把握は可能。

 

 伝達のタイムラグこそ発生する。

 それでも尚、防空駆逐艦に恥じない対空砲火が実現した。

 

「ひぃぃぃぃッ!?」

 

 足場がなければ落下するのみ。空中にいたガンビア・ベイは、真っ直ぐに落下。しかも結構な高度から。海面に叩きつけられればダメージは免れない。

 

「ハッハー! 上へ逃げたのは判断ミスだぴょん!」

 

 卯月はこれを狙っていた。

 意図して、より高い位置へ逃亡させ、落下時のダメージを大きくするのが目的。

 狙った通りに事が動き、卯月はゲラゲラと大笑い。確実なトドメを刺すべく、落下地点で待ち構える。

 

 ちなみに邪魔なのでガスマスクは外した。事情をよく分かってない藤鎮守府の艦娘は引いていたが、前科持ちには今更という事でスルーされた。

 

「逃げないと逃げないと逃げないと逃げないと──!!」

 

 ガンビア・ベイは、落下しながらも艦載機を展開。新しく足場を作り、逃れようとする。

 しかし、艦載機は発艦した瞬間、破壊される。

 秋月の対空砲火だ。

 

「発艦直後で、貴女自身が空にいるのなら、迎撃は簡単です。お姉さまに良い所見せますから!」

 

 カタパルトから出た瞬間迎撃。出てくる場所が分かってるのだ、動きの予測の必要がない、狙いを合わせるだけでいい。

 それにしても百発百中。

 D-ABYSS(ディー・アビス)がなくても、今までの戦闘経験は活きている。そういう事なのだろう。卯月は一人納得する。

 

「う゛ー……traitor(裏切者)の癖に……!」

「直ぐ逃げる卑怯者に言われる筋合いはありませんね……お姉さま、今です!」

「よっしゃー!」

 

 すれ違い様に、その首元にナイフを突き立てる──卯月は跳躍し、ガンビア・ベイへ修復誘発剤の塗られたナイフを構える。

 自分が振るう勢い。彼女の落下の勢い。リミッターありだけどシステムの強化。

 三つのパワーが合わされば、外殻を貫き、傷つけられる筈だ。そういう算段だった。

 

 しかし、ガンビア・ベイも無抵抗ではない。

 咄嗟に腕でガードする。

 

 問題はない。それならそれで腕が溶解する。何かしらのチャンスに繋げられる。そう踏んで卯月はナイフを振るった。

 

 そして砕かれた。

 

「──は?」

 

 傷は付かなかった。()()()()()。逆にナイフが砕かれる結果に終わった。

 卯月は、逆に危機に陥った。

 ガンビア・ベイが突撃銃をこちらへ向けていた。

 

「喰らって下さい」

 

 放たれるのは弾丸か艦載機か。どちらにしても、この距離&システムの強化込み。喰らえば絶命は免れない。

 しかし卯月は冷静だ。予想していた展開だからだ。

 

「チッ、分かってるぴょん。そんな簡単にはいかないって」

 

 卯月は、予め投下しておいた鎖を引っ張っる。それにより一気に()へ移動。攻撃を回避し、海面へ着地する。

 それと同時に、味方の空爆が、ガンビア・ベイを捉えた。

 大量の爆弾に晒され、爆炎に彼女は覆われる。

 

 そう、爆炎でガンビア・ベイを見失った。なら次に起きる展開は決まってる。ステルスだ。

 

「また消えやがったぴょん……」

 

 ガンビア・ベイの基本戦術が分かってきた。兎にも角にも逃亡全振り。一瞬でも目線から外した途端、ステルス迷彩──もしくは体表の色を変えて、姿を消す。そうして探している間に戦線離脱。

 迷彩を活用して、暗殺とか奇襲をする様子はない。普通の戦闘ならありがたいが、追撃戦では最悪。それを承知でしてるのだろうが。

 

 しかし、謎なのは、何故『波紋』すらないのか。

 

 ガンビア・ベイは今、空中で空襲を受けた。その爆炎を利用し、ステルス迷彩で姿を消した。なら何処かに『着水』している。足場になる艦載機は秋月が全滅させた。空中にいられないのだから、『着水』しかない。

 

 なら、『波紋』が立つ。

 空から『着水』したなら、『波紋』が立つ。

 それが、ないのだ。

 

「……漠然と、戦うだけじゃ、ダメかもしれない」

 

 卯月は呟く。なら、それは私の役割だ。この中で一番システムを理解してるのは私だ。私がやらなきゃいけない。

 だが、此処から逃がしたら元も子もない。

 姿を消したガンビア・ベイを、再び探さなければならない。

 

 尤も、もう簡単には、逃げれないけど。

 

『第三段階、完了。とりあえず一段落、お疲れ様ー、海域封鎖は完了だよー』

 

 忘れてはいけない。今の空中戦も時間稼ぎに過ぎない。基地航空隊が任務を完了するまでの時間稼ぎだ。

 何が何でも、ガンビア・ベイを逃がさない。

 と、なれば、アレだ。

 海域封鎖と言えばアレ。かつての海軍──ってか、この国が苦しむ羽目になったアレ。

 

 基地航空隊は、アレを既に撒き切った。

 

 そして、封鎖エリアに、大規模爆発が起きる。そこに、爆風で打ち上げられたガンビア・ベイがいた。

 

「──何で、機雷が!?」

 

 『アレ』とは機雷のこと。

 接触した瞬間、大爆発を起こす兵器。それを基地航空隊を使い、外海との境界線上に投下したのだ──山程の量を。それに触れ、爆発により彼女は打ち上げられたのだ。

 

 大発動艇と、土砂崩れで物理的に封鎖。それでも残る隙間は機雷で封鎖。これで海域封鎖は成立した。もう簡単には逃げられない。

 

『今だよー! アイツをこっちへ引っ張って! 逃がさないでー!』

『その辺の指示は出さなくていいから大丈夫ですご主人様』

『あ、そう?』

 

 僅かに宙へ浮いたガンビア・ベイ。回避行動は一切取れない。そのチャンスを見逃しはしない。さっきの航空隊が現れ、矢継ぎ早に爆弾を投下。その衝撃で、彼女を『内地』に押し戻す。下からも砲撃で支援。このまま『内地』まで引き摺り込めば──

 

「痛い、です!」

 

 しかし、そこで抵抗が激しくなる。空中で転がされながらも、艦載機を発艦。その衝撃で纏わりつく爆発を吹っ飛ばし海面へ着水。

 尚、無傷である。

 相当量の攻撃を浴びせかけたが、無傷だった。

 

「……ちょっと、自信を無くすデース」

 

 金剛のボヤキに誰もが同意した。

 幾ら何でも()()()()。ここまで殴って掠り傷もつかないのは何なんだ。このまま砲撃や空爆で攻撃して、倒せるのか? 

 当然の疑問が、脳裏を過る。

 

「う、うう……酷い。何で、皆寄ってたかって、私を虐めるんですか……人の心がない。devil(悪魔)、そうです、全員devil(悪魔)です!」

 

 全員『は?』と言いたげな顔で固まった。

 その瞬間、機雷が次々と爆発を始めた。

 何事かと視線を向けると──想定される事態だが、起きて欲しくなかった光景が見えた。

 

 イロハ級が、特攻を仕掛けていた。

 

 一匹が封鎖海域に入る。回避運動はしない。当然機雷に触れ、爆死する。次の個体も同じ様に突っ込み、触れて、自爆。

 とんでもない方法で機雷掃海を始めた。物量ゴリ押しかよ。卯月は内心絶句する。

 

 だが手段はどうでもいい。

 問題は、タイムリミットが生まれたということ。

 機雷はアホ程撒いたが無限ではない。いつかは掃海が完了する。艦娘一隻が通れる隙間が生まれた瞬間、ガンビア・ベイは逃げ出す。

 

 そこまでがタイムリミット。

 正面から戦える時間制限。

 

「そんな、手段をしたってことは、戦う気になったってことでオーケー、かぴょん?」

 

 ガンビア・ベイの顔は青ざめていた。脂汗を絶え間なく流し、心の底から怯え切っている。卯月は苛立ちを抑えきれない。

 

「どうして、私がこんな目に合うの? とでも言いたげな顔だぴょん」

「そうです! は、恥ずかしくないんですか、こんな、か弱い私を、寄ってたかって、虐めて、騙して! 恥を、知りなさい。prideとか無いんですか!」

「安心するぴょん」

「へ?」

 

 卯月は満面の笑みを浮かべた。

 殺意全開。システム起動。こめかみに血管が浮かぶ。

 今更だが、卯月は彼女が嫌いだ。

 何なら、今まで会った敵の中で、ダントツで嫌いだ。

 

「これから、その性根が焼き切れるまで、虐め抜いてやるぴょん」

「ピエ」

 

 自分の行為を認めすらしない外道を、嫌悪しない理由はない。

 

 

 

 

 やっと、正面からの戦いが始まった──と思わせといて、そんな展開にはならない。

 ガンビア・ベイが正面戦闘をする筈がない。

 その点においては、謎の信頼がある。

 

「助けてぇぇぇぇ!」

 

 悲鳴そのもの。泣きながら絶叫する。

 同時に何かの作動音が聞こえた。

 今の悲鳴が、何かの合図になっていたのだ。

 

「──何か、来る、警戒を!」

 

 卯月は急いで音源を辿る。その先にあったのは──爆発で吹っ飛んだ輸送艦だ。

 それらが突然、カッと輝き、一斉に爆発した。

 

「目晦まし!?」

 

 複数隻あった輸送艦全員が、閃光を放ち自爆。

 アレは単なる輸送艦ではない。

 万が一の時、ガンビア・ベイの逃亡を援護する目的もあった。今の眼晦ましもその一環だったと、卯月達は理解する。

 

 再び目を開けた時、ガンビア・ベイは姿を消していた。

 だけではなかった。

 あの輸送艦が放ったのは、閃光だけではなかった。

 

「……煙幕まで兼ねてんのかぴょん」

 

 同じく戦場全域が、煙幕で覆われてしまっていた。

 どれも、ステルス能力を補強するものだ。面倒なことになったと、卯月は舌打ちをする。

 そうこうしている間にも、外からイロハ級は押し寄せる。機雷を除去する為の自爆を慣行し続ける。

 

『イロハ級の迎撃を優先! ガンビア・ベイへの攻撃は慎重にやって、下手にやったらフレンドリーファイアになるからー!』

 

 藤提督の指示が飛ぶ。その声通り、砲撃や空爆により、掃討部隊の迎撃が始まる。しかし、相手は命も顧みない自爆特攻。押し切られる可能性は高い。そうのんびりしている時間はない。

 

「本当に、正面から戦ってくれんのかぴょん……」

 

 このままずーっと隠れ続ける可能性も否定できない。それならそれで、しらみつぶしに探すだけだが。どっちにしても、彼女を探さなければ始まらない。卯月は聴覚に意識を集中させる。

 色んな音が聞こえるが、彼女らしき音は何もない。

 そんな筈はない、ステルスだろうが何だろうが、何かしらの音はあって然るべき。卯月はもっと、もっとと、集中していく。

 

 しかし、何も聞こえない。

 どれだけ集中しても、騒音以外聞こえない。

 そんなに集中していては、隙を晒すようなもの。

 

「…………」

 

 ガンビア・ベイは卯月の背後にいた。そして突撃銃を構えていた。近づかない。接近戦はリスクがある。ライフルで頭部を跳ねれば良い。

 

「……聞こえない、何も、何でだぴょん」

 

 トリガーが引かれた。

 薬莢の炸裂音さえ響かない。無音のままライフル弾が撃ちだされる。

 

「でも『殺意』は感じたぴょん」

「!!」

「見えないけど、そこにいるな、ガンビア・ベイ!」

 

 真っ赤な眼光がガンビア・ベイを射抜いた。

 ぐるりと上半身を回し、その勢いで主砲を振るう。幾ら艤装の補正があっても、ライフル弾と艤装では話にならない。

 頭部を跳ねる筈だった弾丸が、主砲に殴られ、弾かれる。

 

「パターンが単調なんだぴょん。後ろに回り込んでくるって予想してれば、察知するのは簡単だ。赤城のクソ訓練が役に立ったぴょん!」

 

 反撃の砲弾が迫る。ガンビア・ベイは思考する。当たってもダメージはない。だが、当たればいると確証を持たれる。まだ卯月は位置を完全特定できていない。それは避けたい。回避が望ましいが、大きく動けば『迷彩』がブレる。

 

 と、なれば、選択肢はアレだ。

 

「着弾! そこかっぴょん!」

 

 砲弾が当たり爆発が起きる。ガンビア・ベイがいるのはあそこだ。一点集中で砲撃する。ダメージは無くていい。奴が此処にいると、周りに気付かせるのが目的だ。次の砲弾を叩き込もうとして──手応えがない。

 

 艦娘を撃ったにしては、手応えが小さい。

 次の瞬間、卯月は判断ミスを理解する。

 

「違う、これ、艦載機だ、ステルスの!?」

 

 何度か彼女が用いた、完全ステルスの艦載機。動き出さない限りは、迷彩が解除されない、厄介な代物。

 卯月が撃ったのはそっちだった。

 予め上空に待機させていた一機を、ここを目標として、落下させたのだ。

 

 卯月に隙が生まれた。ガンビア・ベイは躊躇なくそこを突く。再び突撃銃を構え、頭に狙いを定めてトリガーを引く。

 今度は防御できない。艤装よりも奥。顔の前へ弾丸が迫る。

 

 けど卯月は別に、一人で戦ってるのではない。

 

「秋月! 最上! 助けてくれだっぴょんーッ!」

 

 その声を聞いてか、事前に察知してか、卯月の正面を機銃が薙ぎ払った。

 それは、上から降下してきた、瑞雲の機銃。

 更に、秋月の長10センチ高角砲ちゃんが、ガンビア・ベイを補足した。

 

「最初から、弾丸がどう飛ぶか見れば、透明でも位置は特定できます。後は隙間なく連射するだけです」

 

 卯月とは比較にならない。高密度の弾幕が、一帯を覆う。再びステルス艦載機でガードするも、防ぎきれない。一発がガンビア・ベイに着弾。

 その衝撃で迷彩が一瞬乱れる。

 ダメージはない。だが、秋月は目ざとくそれに気づく。

 

「発見しました!」

「よくやった秋月。後でよしよししてあげるっぴょん!」

 

 ガンビア・ベイの迷彩は直ぐ復元される──が、卯月はもう目の前にいた。そして、彼女がどう逃げても、問題ない戦法を取る。ナイフを振るうと見せかけて、卯月は、大きな風呂敷を宙へ投げる。

 

「エネルギー吸収阻害用のでかい布。これで、巻き取ってやるぴょん。最上、またもお願いしますだぴょん!」

 

 『任せてよ!』と声が聞こえる。

 投げた布を、瑞雲がフロートで上手くキャッチ。からの急降下で、周囲を一気に覆う。

 と、なればどうなるか。

 ステルスだろうが関係ない。ガンビア・ベイがそこにいれば、彼女の形が浮かび上がる。

 

 ガンビア・ベイの位置が完全に特定された。

 

 その瞬間を待っていた人達がいる。

 

 この場で最高火力を出せる二人組。金剛と比叡。

 金剛型改二丙二隻。かつ夜戦でのみ、出せる大技がある。

 

「これの直撃なら」

「どうです、カーッ!」

 

 僚艦夜戦突撃がシルエットに直撃した。

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