前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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シン仮面ライダー見てきた。カッコ良かった。

……とんでもないアイデアが浮かんだが……いけるか……?


第214話 ガンビア・ベイMk.II"D"③

 ステルス迷彩&カムフラ迷彩を駆使し、あの手この手で姿を隠すガンビア・ベイ。海上封鎖突破のタイムリミットが迫る中、卯月達はどうにか彼女の位置特定に成功する。

 

「喰らいデース!」

 

 その瞬間を逃しはしない。ずっとチャンスを伺っていた金剛と比叡が、一斉攻撃を叩き込む。

 戦艦二隻分の集中砲火。海面に張った布に浮かんだ、ガンビア・ベイのシルエットが、一瞬で粉微塵になる。

 

 しかし、粉微塵ではなかった。

 霧散しただけだった。

 

「これって──」

 

 おかしい。手応えがない。今撃ったのは本当に彼女なのか? 

 比叡の疑問は、直ぐ解消される。

 砲撃で破けた布から、出てきたのは、艦載機の残骸だけだった。その意味を卯月は理解する。

 

「違う! 当たってない! 騙された、艦載機で人型のシルエットを作っただけだぴょん!」

 

 布越しに居場所を特定しようとした。それを逆に利用された。彼女は布が人型に浮かび上がるよう、艦載機を使って、布の一部を持ち上げたのだ。

 なら、本体は今何処に? 

 卯月は布を凝視する。そして気づく。とても小さいが、布を押しのけて動く『何か』がある。

 

 理解した。ガンビア・ベイは艦載機を囮にした。その上で匍匐前進で逃げている。一手遅れたがまだ間に合う。

 

 金剛達はリロードタイムが必要だ。待ってたら逃がす。ダメージにならずとも、時間稼ぎはできる。

 卯月はナイフを構え、彼女の所へ飛び込む。渾身の力で振り下ろす。

 

 そして、布を割いたその瞬間。

 大量の黒煙に襲われた。

 

「うっ!?」

 

 同時に炎が噴き出す。

 

「何だコレ! まさか、燃えてんのかぴょ──」

「『二手』。遅れましたね」

「ッ!?」

 

 声が聞こえた瞬間、卯月はそこへナイフを振るう。しかし虚空を切る。もう彼女はいない。

 

 ガンビア・ベイは、何かの手段で布を燃やしていたのだ。改めて探そうとしても、大量の黒煙が邪魔をする。やむを得ず距離を取り、砲撃で煙を蹴散らす。

 

「お姉さま。これは……」

「逃げられ。あ、そこまでじゃない。けど、クソ面倒な。また探し出すトコからスタートかっぴょん!?」

 

 既に影も形もない。ガンビア・ベイは再び姿を消した。

 そして、再捜索の難度は間違いなく上がっている。卯月に対し攻撃するのさえ、慎重にやるだろう。

 その時、味方がやって来るのが見えた。アレは……満潮か。

 

「テメー、今更何の用だぴょん」

「ガンビア・ベイを探す目は、少しでも多い方がいいでしょ。私は此処からアンタを援護する」

「それ、何時通りでは?」

「そうなるわ。他の連中は、周りから捜索してる」

 

 この位置一点から探すより、多角的に探した方が、ガンビア・ベイは発見し易い──筈だ。多分だけど。

 そして、満潮は卯月の背中についた。

 

「背中合わせにして。お互いの背後を補って。全方位を見ないと、アイツには対応できないわ!」

 

 その指示に従い、この辺りにいる者達は、それぞれ背中合わせにくっつく。

 卯月は満潮、金剛は比叡、秋月は……卯月を暫く見つめた後、悲しい顔で桃にくっついた。桃は極めて不服そうである。

 

「……情報によれば、アイツがステルスになれるのは、動かない時だけって聞いたが」

「そうよ。だけど、カムフラージュなら動きながらでもできる。でも激しく動いたら、当たり前だけど見つけやすくなる」

「この煙幕がなければ、だけどね」

「ステルスじゃなくて十分なんだ。この煙があれば、カムフラでも十分姿は隠せるって訳だ」

 

 さっき布が燃えた分の煙も加わり、視界はより悪化した。

 声がするので、近くにいるのだろうが、松と竹の姿もぼやけてる。竹の言った通りだ。ガンビア・ベイの姿はまるで見えない。

 

「透明になってる訳じゃあない。動けば必ず痕跡が残る。注意深く観察して、見つけ出す。現状それしかないぴょん!」

 

 卯月は叫ぶ。実際それしかない。本来なら透明化の原理を突き止めないといけないが、今のままではそれさえできない。

 だけど、必ず仕掛けてくる。

 海域封鎖はまだ継続中。機雷は残っている。その間に少しでも頭数を減らそうとする筈だ。

 

「せめて、空爆の援護が加わってくれれば……!」

 

 チラリと、空を見る。

 飛鷹や赤城の航空隊は、ガンビア・ベイ&イロハ級の航空部隊と交戦中。

 艦載機のパワーアップも尋常ではない。ほぼ拮抗。ギリギリ優勢と言った所。爆雷を投下した基地航空隊が、補給を終え帰ってくれば、状況は変わる。

 

 逆に言えば、そこまでに仕掛けてくるということ。

 

 ……多分だが。

 

 逃げ特化のスタイルのせいで、向こうから攻めてくるイメージが皆無だ。本当に攻撃して来るよな。でないと困る。

 

「来るなら来やがれってんだぴょ──」

 

 その時、寒気を感じた。

 気のせいとか、第六感的なものではない。

 背中越しに感じていた、満潮のぬくもりが、消えた。

 

「な……」

 

 振り返る。

 脇腹から血を流し蹲っている。

 満潮が既に攻撃されていた。

 

「何でだぴょんッ!?」

 

 内臓に到達している可能性さえあり得る。深い傷を満潮は負わされた。

 それだけの攻撃なのに、発砲音一つしかなかった。

 艦載機の飛ぶ音もなかった。機体の影も見えなかった。

 なのに攻撃されていた。

 

「バカな、どうやって、何時、どう攻撃が来たんだぴょん!」

「大声出すな……傷に、響く……!」

「っだ、大丈夫かぴょん」

「節穴なの……眼球機能してんの……無事に決まってんじゃない」

 

 皮肉は言える辺り、一応大丈夫っぽい。しかし深い傷に変わりはない。卯月は周囲に警戒しながら、応急処置を始める。

 

 急いで傷を塞ぎながら、卯月は確証を持った。

 来る、攻撃が、今此処で来る。

 治療中の隙を突いて、必ずガンビア・ベイは仕掛けてくる。

 

 周りの仲間もそれを察知し、警戒心を一層高める。

 

 殺意を感じた。

 

「──ッそこか!」

 

 治療を中断し主砲を構える。やはり死角からの攻撃。真後ろから『何か』が来る。振り返った卯月が見たのは──無音で飛行する戦闘機。

 その機銃は、卯月へ向いている。

 

 予想はしていたが、こっちも無音。ガンビア・ベイ本体同様、艦載機まで音を消せる。一体どういう原理なのか。

 

「けど、撃ち落とせば、関係ないぴょん」

 

 この距離だ。狙いをつけるとかは要らない。撃てば終わる。

 トリガーを引く、その寸前。

 秋月が悲鳴を上げた。

 

「違いますお姉さま! そっちじゃない!」

 

 何を? その疑問は直ぐ解消される。

 

()()()!」

 

 そう言ってくれたから、卯月はギリギリで気づけた。

 今、撃ち落とそうとしていた艦載機。

 ──その隣に、もう一気に、透明な艦載機がいた。

 

 

 

 

 気付かなかければならなかった。

 ガンビア・ベイは、自分だけでなく、艦載機も透明化できる。

 

 同じ要領で、艦載機もカムフラージュできたのだ。

 

 透明って訳ではない。集中すれば見える。しかし、煙幕の中、縦横無尽に飛行する、小さな艦載機を補足し続けられるかは、全く別の問題。

 

 今、卯月の眼前にいるのは、正にそれだ。

 

「痛いぴょん……!」

 

 満潮のようなダメージは回避した。しかしノーダメージはダメだった。機銃をギリギリで防いだものの、跳弾に肩を抉られた。

 

「何てこと。これに気付けなかったなんて、防空駆逐艦失格です!」

「わー、これ、ヤバいね。でも、やるしかないよ……ね?」

 

 上空では制空権争いが続いている。

 きっと、それも囮だった。

 

 ガンビア・ベイはずっと、卯月達を艦載機で包囲しようとしてたのだ。

 それが今、完成してしまった。もっと早く気付くべきだったのに、策に嵌ってしまった。後悔しても遅い。

 

 ()()()()()()()()()()と意識して周囲を観察する。絶望的な状況に松は悲鳴を上げた。

 

()()()()()()! 透明な艦載機に!」

 

 それを合図に攻撃が始まった。

 不可視かつ、電探にかからず、かつ無音の艦載機が突っ込んでくる。

 咄嗟に金剛が指示を出した。

 

「注意して観察するネー! 完全なstealth(透明)じゃない。camouflage(擬態)してるだけ。集中すれば見えるカラ!」

 

 彼女の言う事は間違ってない。確かに見えるっちゃ見える。迎撃はできる。だが、とんでもなく見にくい。そこが問題だった。艦載機は手の平サイズしかない。それが周囲の色と同化した挙句、煙幕の中を飛翔する。

 見える訳がない。

 見えたとしても凄まじい集中力が要求される。

 

 しかしやらなきゃスクラップにされる。

 

 それを分かっているから悲鳴も上げず、全員が対空砲火を始めた。

 

 これもまたガンビア・ベイの狙いだ。対処困難だが不可能ではない攻撃を続け、集中力を削いでいく。そうしておけば海域封鎖が破壊された時、楽々と逃亡できる。殺すのは二の次。自分を生還させることが至上目的だ。

 

「秋月ちゃん……で、いいんだよね。もうちょっと狙いを定められない!? 正直、秋月ちゃんが頼りなの!」

 

 秋月は桃と背中合わせで戦っている。偶々そういう組み合わせになった。

 彼女は他の防空駆逐艦と会ったことがある。本来の性能を知っているが故に、もう少し何とかならないかと声を上げる。

 

「すみません。でも、全盲の身ではこれが限界で……」

「全盲かぁ……全盲!? 嘘でしょ!? それで戦闘に参加しちゃったの!?」

「はい、お姉さまの役に立ちたくて!」

「お姉さま?」

「あ、卯月お姉さまです」

 

 その瞬間、金剛達の意識が卯月へ向けられた。

 

「まあこういう空気になるわよね」

「何だこの空気。言いたい事があるなら言いやがれってんだぴょんッ!」

「あ、うん。後で聞くね」

 

 聞かれるんですか。そうですか。生き残っても地獄が確定した卯月。やけくそ気味に鬱憤を対空砲火へぶつける──が上手くいかない。

 実際問題、秋月が要になり得るのは確かだ。

 彼女は防空駆逐艦。空母の天敵。しかも包囲する為艦載機はかなり近くに降りている。上手くいけば一網打尽にできる。

 

 しかし全盲なのが此処で足を引っ張る。

 長10センチ連装砲の視界経由では、肉眼で見るより、余計にカムフラ戦闘機を見つけ辛い。対空砲火は中々当たらず、苦戦を強いられている。

 

 それを打開できるスペシャルな策が浮かべばいいのだろうが、そう都合の良い展開はあり得ない。卯月は思考を切り替える。秋月はあくまでサポート。やるべきことは艦載機殲滅ではなく、ガンビア・ベイの撃破。

 

 このままでは埒が明かない──その状況を認識したのは、卯月だけではない。遠くから状況を聞いている藤提督も同じ。

 戦場全域に彼女の声が響いた。

 

『追加の指示です! 今から少しの間、ガンビア・ベイ捜索を中断。戦闘部隊を包囲する艦載機の殲滅に集中してください! 全員です、イロハ級の迎撃や航空隊も全員です、よろしくお願いします!』

 

 ……それでいいのか? 

 疑問に思った卯月に向かって、意味ありげに金剛が目配せをする。

 そういうことか。

 何となくだが藤提督の意図を察する。

 

「対空戦闘へ突入だぴょん! でも、背中合わせは継続すべきだぴょん!」

「そうですね。奇襲への警戒は、怠ったら不味いですから!」

 

 わざわざそれを口に出した。そこがミソだ。

 藤提督は『嘘』を吐いた。

 艦載機殲滅に集中はする──但し私達以外。戦闘部隊である卯月達は、集中する『フリ』をしてるだけ。やってることは逆。ガンビア・ベイ補足に集中する。

 

 そうすれば、彼女は姿を現す筈だ。艦載機処理に集中する今を逃す手はない。

 

 重要なのは『殺意』だ。

 ガンビア・ベイであっても、攻撃には『殺意』が伴う。

 その瞬間カウンターを当てる……いや当ててもダメージにはならないが、策はある。

 

 卯月は懐にナイフを潜ませている。そこには、鎮守府攻略戦でも使った、細いワイヤーが通されている。攻撃と同時にこれを絡めれば、再度逃亡されても追跡できる。

 

 さっさと出てこい。

 攻撃を仕掛けてこい。

 

「ガンビア・ベイです!」

 

 だからその意味が分からなかった。

 声を上げたのは『弥生』だった。

 

「What!?」

「うーちゃんじゃない。弥生達の方に!?」

 

 確かにそこにガンビア・ベイはいた。見辛いが間違いなくいる。艦載機に集中していた弥生と望月の方へ出現したのだ。

 ガンビア・ベイがライフルを構える。攻撃の姿勢だ。

 

「まさか……倒しやすい方から、狙ってるってこと……舐められてるねー、アタシ達」

「だとしたら、弥生は怒ります。舐めるなと」

 

 艦載機の処理は中断を余儀なくされる。

 攻撃を仕掛けんとするガンビア・ベイに主砲と雷撃を同時に発射。更に二人が左右に分かれ、どちらへ逃げても追撃できる状況へ。

 

 それに対し彼女は──無防備に食らった。

 

「え」

 

 回避行動さえ取らなかった。主砲も魚雷も直撃。けどダメだ。駆逐艦程度の攻撃ではダメージにならない。

 そう思っていたのに。

 

「どうして」

 

 ガンビア・ベイの半身が千切れ飛んでいた。

 何なら頭部も半分消し炭だ。

 どう見ても、再起不能に陥っている。

 

 おかしい。卯月の全てが警鐘を鳴らす。明らかに何かがおかしい。

 

「……え、勝った、の、あた」

「『Victory(勝利)』を確信、しましたね。それが一番dangerous(危険)なのに」

「──っ!?」

 

 ここからがガンビア・ベイの攻撃だった。

 卯月達の眼前にある光景。

 それは、半身が千切れたまま動くガンビア・ベイと──血飛沫を上げて倒れる弥生の姿だった。

 

「弥生っ!!」

 

 更に攻撃は続く。次の標的は。

 

「自分への『殺意』じゃなきゃ鈍い。私のPredict(予想)は正解……あ、安心しましたよ」

「が……っ!?」

 

 卯月の艤装にライフル弾が撃ち込まれた。

 ──真正面から、脇腹諸共。

 彼女の視界が、鮮血と臓物で染まった。

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