前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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昨日投稿し忘れました。ごめんなさい。

それはそれとしてナイツ&マジック参戦ですよ。やりましたよ。でもボトムズは続投シナカッタ……。


第28話 強襲

 昨日丸一日出撃したばかり、まだ疲れは抜けきってない。なので夜までは徹底的に寝まくった。

 

 自室の部屋に立て籠り、お昼の時以外はとにかく寝た。布団にくるまって寝つづけた。

 

 悪夢を見た反動か、今度は変な夢も見ず、じっくりと寝ることができた。夕方、晩御飯頃に目が覚める。寝まくったおかげで、シャキーンと目が覚める。今度は遅刻はなしだ。

 

 晩御飯もたっぷり食べたいけど、あんまり食べると気持ち悪くなる。ほどほどで済ませた。飛鷹さんも気を使ってくれた。味噌汁とかお粥とか、胃に優しいメニューを出してくれた。

 

 気分はなかなか良い。満潮が一緒の時点で凄まじい拷問になってるけど、現状まだプラスだ。

 

 よほどのことがなければ、まあまあの気分で哨戒任務に挑めるだろう。

 

 だけど、あの不知火のスマイルで気づくべきだった。

 不知火が用意したのは、間違いなく『お仕置き』だってことに。よほどのことが、起きてしまった。

 

「今日の旗艦は、このポーラが、務めます~」

 

 もう駄目だお仕舞いだ。わたしは今日死ぬのだ。遺言状を書いとけば良かった。

 

「ポーラ、卯月さん、満潮さんで、哨戒任務をしま~す。良いですね~」

「良いわけないぴょん」

 

 そういうことだった。お仕置きってのはつまり、ポーラのお守りだったのだ。

 

「こんな、こんな最後なのわたしは?」

 

 満潮も絶望した顔で天を仰いでいた。

 普段なら『ザマーみろ!』って気分だけど、今回ばかりは同情する。足の小指の爪先ぐらいには。

 

 それでも僅かな希望を抱いていた。

 出撃の時ぐらい飲酒はしてないって。朝飲んでなかったのも、今晩任務があると知ってたからだって。

 

「迎え酒~」

 

 ワインをラッパ飲みした。今、目の前で。

 

「神は死んだぴょん!」

「高宮中佐は正気なの!?」

「Buono!」

 

 もうやだコイツ。満潮とは別ベクトルで疲れる。

 というか、コレの同伴を許可した高宮中佐も中佐だ。

 

 いくら危険度が低くても任務は任務、真面目に行かないとダメだ。なのにポーラのこの態度。とても正気とは思えなかった。

 

「諦めな二人とも」

「北上さんからもなにか言ってよ!」

「しがないメカニックには無理だねぇ」

 

 工廠から艤装を持ってきた北上さんは、諦めた目をしてた。

 

「本気でコイツを連れてくの……?」

「諦めな、それがお仕置きってやつだよ。まー死んだら線香ぐらい上げてあげる」

「願い下げだぴょん」

「はいはい、あとこれもね」

 

 艤装とともに、『首輪』も渡された。

 轟沈しかけた時用の自爆装置だ。やっぱりつけなきゃいけないのか。

 

 ガチリ、と音が鳴りロックがかかった。これで帰ってくるまで外れなくなった。自爆装置なんて代物だ、否応なしに緊張が走る。

 

「やっぱこれ、つけなきゃだめぴょん?」

「深海棲艦になっていいなら良いよ」

「……ぴょーん」

 

 仕方がないか、今日も沈まないよう頑張るしかない。

 例えゲロ助同伴のベリーハードモードでも、頑張るしかない。

 

「哨戒だけど、この辺で深海棲艦の目撃情報があったの。どーもイ級とかそんぐらいのザコだけど」

「それを見つけてこいってこと?」

「違うよ、『本隊』がいないかの哨戒。あのイ級がただのはぐれならいい。けど偵察の可能性は捨てきれない。万一に備えての、哨戒任務ってわけ」

 

 あ、百パーセントお仕置きって訳じゃないのね。

 真面目にやらないといけない任務ってことだ。

 だとすると余計分からない。なんでポーラが来るんだ。

 

「じゃあなんでこんなアル中がいるのよ」

 

 さすがのわたしも同意見だ。あいつのせいで沈んだら化けて出てやる。

 不満を分かってるのかそうでないのか、うんうんと北上は頷く。

 

「卯月も満潮も知らないと思うけど、実はね」

「実は?」

「ポーラ、あんたたちより強いよ」

 

 そうなんだ。わたしたちはポーラを見た。

 

「きもちわるいです、いっきにのみすぎました」

 

 わたしたちは北上を見た。

 

「あれが?」

「うん、マジにマジ」

「へぇ」

 

 なんか、もう誰も信じられなくなってきた。この時ばかりは満潮とこころが一致した。

 

「……なあ満潮、こいつ後ろから撃っちゃダメぴょん?」

「やめなさいよ、それはしでかした時だけにしときなさい」

「うん、そうするぴょん」

 

 そうこうしてる間に、出撃時間になってしまった。

 わたしは最後に、ポケットからハチマキを取り出した。そう、『形見』のハチマキだ。

 

 首には首輪がある、額につけると髪に絡まりそうだ。手首には長過ぎる。

 

 あと満潮もハチマキをつけている。ハチマキにしてはやたら長いけど。あいつとお揃いみたいになるのはとても嫌なのだ。

 

 なので髪の毛につけた。

 ウサギの髪飾りと合わせて、髪止めみたいに結びつけた。ほどけないようしっかりと。

 

 これで準備完了、出撃あるだけ。今回も同じく、必ず生還してやろう。足手纏いがいたとしても。

 

 

 

 

 前科戦線周辺には、脱走防止用兼侵入防止用の機雷が撒かれている。

 それがあるから、出撃は空路じゃなきゃいけない。そう思っていたけど、実は機雷源を突破することも、可能なんだとか。

 

「良いですか~、この機雷源には安全なルートが、()()だけありまーす。そこを通ってSotome(外海)へでまーす」

 

 よく考えたら、安全ルートがなきゃおかしい。外海と完全に隔絶されてたら、色んな不便が起きてしまう。

 

 ただし安全と言っても、かなりギリギリだ。

 航路が一メートルでも逸れたら機雷に接触してしまう。しかも安全ルートは固定されていない。定期的に変更されている。

 

「安全ルートは不知火から教えて貰ってるので、ポーラについてきてくださーい」

 

 大丈夫、なのか、これは。

 先導役がポーラって時点で、死ぬ予感がプンプン漂う。

 かといって一人で行ったら百パーセント機雷とごっつんこだ。ついていく以外の選択肢はない。

 

「……酔っぱらってるぴょん」

「あいつの巻き添えで死ぬのだけは御免だわ」

 

 フラフラと、ポーラの足元はおぼつかない。選択肢はないと考えても不安がぬぐえない。本当に機雷に触れないで外海へ出れるのか。

 

 深夜の暗闇のせいで、機雷を見ることもできない。いや元々見えるもんじゃないけど。止まらない冷や汗をなんども拭いながら、ポーラの後ろをついていく。

 

 あまりの緊張に時間間隔が飛ぶ。長いか短いか、それぐらいの時間が経った後、ポーラが急に動きを止めた。

 

「はーい、機雷源は突破しまーしたー」

「え、まじかぴょん」

Davvero(本当)ですよー、ポーラ、お仕事は真面目にこなしますからー」

「酒は良いのかぴょん」

「良いお酒はですね~、体にも良いんですよ~」

 

 駄目だこりゃ。もうそれしか言えない。

 こんなんでもかなり強いと北上は言ったけど信じがたい。この酔いどれはどうやって戦うつもりなのか。

 

「帰りもポーラが先導するので、絶対に迷子になららいでくだひゃい」

 

 もう呂律も回ってないじゃないか。ホントヤダこいつ。

 わたしも人のことは言えないが、出撃前に迎え酒をするバカじゃない。なんかもう、いっそ解体した方が良いように思えてきた。

 

「では参りまひょー」

 

 夜間の海は、また一味違った。

 夜戦の訓練は神鎮守府でもやっていたけど、訓練と実戦は違う。恐怖に近い緊張が背中にへばりついて離れない。

 

 暗闇のベールは敵も味方も覆い隠す。いつどこから、突発的に敵が現れるかも分からない。瞬きした後には、口を開けたイ級が待っているかもしれないのだ。主砲を握る手が力んでいくが分かる。

 

 これが夜、これが夜戦。駆逐艦の戦場か。

 そして、この暗闇のどこからにイ級──もしくは『本隊』が潜んでいるかもしれない。そう思うとなおさら緊張する。

 

「あぁ~夜風が気持ち良いでふね~」

 

 台無しだった。前言撤回緊張感の欠片もない。メンバーが悪すぎる満潮とポーラのダブルタッグなんて。

 クソの相手と酔いどれの介護。

 お仕置きだ。間違いなくお仕置きだ。これで沈む羽目になったら化けて出てやる。

 

「なあ満潮」

「なによ話しかけないでよこのザコ今イライラしてんだから」

「ポーラ後ろから誤射しちゃダメかぴょん?」

「帰れなくなるからダメ」

 

 二人揃って大きくため息だ。早く任務を終わらせて帰りたい。

 けど、任務の終了条件は厄介だ。

『ハグレ』か『偵察』、どっちなのかは、目撃されたイ級を調べないと分からない。この暗い海でイ級一匹を発見しなければ終わりようがないのだ。

 

「レーダーとかは持ってきてんのかぴょん」

「当たり前でしょ、あんたやポーラみたいな馬鹿じゃないんだから。わたしが持って来てるわよ。わたしは馬鹿じゃないの」

「へー、レーダーを持ってきたぐらいでそんなに自慢できるなんて羨ましい限りぴょん」

「ええ、まともなレーダーも詰めない低スペック艦のアンタとは違うの」

 

 ポーラといっしょに満潮も沈めるべきだろうか? 

 なんてことを考えてたら、うっかりポーラにぶつかってしまった。冷たい海水に尻もちをついてしまう。

 

「スカートが濡れた、最悪だぴょん」

「ふん、その程度気にするなんてザコね」

「え、じゃあ満潮はパンツが透けて見えてても気にならないのかぴょん? ド変態ぴょん!」

「誰が変態よ!?」

「うーちゃんをひん剥いて幼女の肌を勝手に触ってたのはトラウマぴょん」

「半年間寝てた奴の世話してただけって、前言ったでしょ!」

 

 なんて言い訳をするのだ満潮は、見苦しいったらありゃしない。

 

 と、アホな言い争いにキレたのだろうか。

 わたしと満潮は、二人揃ってポーラに投げ飛ばされた。

 

「なにすんだぴょん!」

「なにすんのよゲロ女!」

 

 ポーラを睨み付けた。

 しかし、わたしと満潮は押し黙った。

 彼女の様子が、今までとまるで別だった。緩まった眼が鋭く締まり、暗闇の向こうを見つめている。

 

「ポ、ポーラ?」

 

 そして、爆発が起きた。

 今さっきまでわたしたちがいた場所だ。魚雷が来てたのだ。ポーラが投げてくれなければ直撃だった。

 

 どうやって気づいたのか。この暗闇でどうやって魚雷を発見したのか。そんなことはどうでもいい。

 

 魚雷が放たれた、意味することは一つしかない。

 

 敵がいる。

 

「この魚雷の威力、イ級のそれじゃない」

「『本隊』がいたってことか、クソだっぴょん!」

 

 わたしと満潮はそれぞれ、背中合わせになって周囲を警戒する。いったい敵はどこに潜んでいるのだ。

 自覚したせいで、暗闇全てが殺意を放っている錯覚に陥る。突然の襲撃にこころが追いついていないのだ。

 

「ちょっとポーラ、なにじっとしてんの!」

 

 ポーラはただ、真っ直ぐに一つの方向を見続けていた。

 満潮が叫んでも目をそらさない。なにかいるのか、そこに敵がいるのだろうか。

 真似をするように、そちらへ意識を集中させてみる。

 

 風の音、波と水しぶきの音、海の中の音が徐々に鮮明に聞こえてくる。

 くぐもってまじりあった音の反響。

 ()()()()。水を切る音──魚雷の音が。

 

「満潮飛べぴょん!」

「なによ急に!」

 

 文句を言いつつも満潮も飛ぶ。わたしは反対へ飛んだ。

 直後魚雷の爆発が起きた。聞こえた、魚雷の音が、聞こえなければ喰らっていた! 

 

「……あの~、もう、見つかってますよ?」

 

 ポーラが暗闇へ話しかけた。

 わたしたちもその先をじっと見つめた。

 闇から溶け出すように、『敵』が現れた。

 

「ダカラ、何ダトイウノ……私ヲ見ツケタカラ、何ダトイウノ……」

 

 絶句した。その外見に。

 

 ()()()()()()。いや足らしき部位はあるけど、太ももの真ん中から完全に途切れている。千切れてしまったように。

 

 その途切れた足と艤装で浮かんでいた。歪で不気味な幼げな少女の姫だ。外見の雰囲気で言えば駆逐艦に近い。

 

「なるほどー、あなたが本隊、ですねぇ」

「貴女ニ興味ハ、ナイノ。用ガアルノハ貴女ヨ」

 

 少女の姫が指差す。その先にいたのはわたしだ。

 

「え、うーちゃん?」

「ソウ、貴女ニ会イニ来タ」

「う、うーちゃんに、なんで」

「ソレハ……」

「あ、いやちょっと待つぴょん」

 

 わたしに会いに来たってことは……わたしの熱烈なファンってことか。でなけりゃこんな所まで来たりはしない、きっとそうだそうに違いない間違いない。

 

 元々老若男女大人気のわたしだけど、まさか深海棲艦にまでモテるとは。

 那珂ちゃんじゃないけどアイドルを目指していいのかもしれない。泊地棲鬼も死んだことだし、その道も中々魅力的だ。

 

「何笑ッテルノ」

「いや、大丈夫、お前の気持ちはよーく分かったぴょん」

「ハ?」

「さあ色紙を見せるぴょん、うーちゃんの最高にイカしたサインをプレゼンツするぴょん!」

 

 結果、とーっても冷たい風が吹いた。まだ冬でもないのに。

 

「あれ、違ったぴょん?」

「死ネ」

「ちょ、待っ!」

 

 問答無用で砲撃が飛んできた。満潮を足場にして大ジャンプで逃れる。満潮の悲鳴が聞こえたが、これは事故だ、悲しい事故なのだ。沈んでしまってもしょうがない。

 

「おいこらクソ卯月なにすんの!」

「チッ生きてやがるぴょん」

「敵がいんのにふざけてんじゃないわよ!」

 

 失敬な、攻撃回避はふざけてない。たまたま満潮が良い場所にいたから蹴っただけなのだ。

 

「それにふざけてんのはあっちだぴょん、うーちゃんに会いたいなんて紛らわしいこと言うから!」

「ふざけてんのはアンタの脳味噌でしょ!?」

「……貴女タチデショ、フザケテルノハ」

 

 静かな、ドスの聞いた声だった。

 威圧感が激増する。これは不味い、ボケをかます雰囲気じゃない。

 なぜだか分からないけど、あいつは明確に『わたし』を狙っている。

 

「泊地棲鬼ガ沈ンダ」

「あ゛? お前、泊地クソ鬼の関係者か?」

「ソウ、彼女ハ私ノ上官ダッタ、大切ナ仲間ダッタノ」

「御冗談を! 化け物に仲間意識があるわけねえぴょん。アリとかハチの方がきっと仲間意識があるぴょん、虫以下の深海魚どもめ」

 

 音がまた聞こえた。

 ブチブチブチって音だった。

 あ、やべ。挑発し過ぎた。

 

「ちょっと卯月!?」

「いやだって、泊地クソの仲間なんていうからつい」

「……フ、フフフ、ハハハハハ!」

 

 少女の姫が狂ったように笑い出す。不味い、これ絶対不味い流れだ。

 

「モウ分カルワネ、駆逐艦卯月、私ハオ前ヲ殺シニキタ。泊地棲鬼ヲ苦シメタ元凶ノオ前ニ、罰ヲ与エニキタ!」

「罰ぅ? あれはな、自業自得って言うんだぴょん」

「減ラズ口ハ十分ダ、私ハ『駆逐棲姫』──水底ニ、オトシテヤルヨ……ッ!」

 

 一瞬刺し込んだ月明かりが戦場を照らす。

 復讐などというふざけたことを抜かす姫に、殺意を滾らせる。

 なにも関係がない。泊地棲鬼の関係者なら殺すだけなのだから。




第二のボス的、駆逐棲姫出現。
ポンデリングとゲロ重巡を抱えながらの戦闘、うーちゃんには地獄を見て貰いましょう。
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