前科戦線ウヅキ   作:鹿狼

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モンハンやることがないよ。ストーリーズ買おうかな……ともかく、卯月にとって三戦目のボスバトル開幕です。


第36話 駆逐棲姫

 深夜の海へ、わたしたちは出撃していた。

 わたしにとって通算3回目の出撃、駆逐棲姫を確実にぶち殺すため、ヒーヒー言いながら訓練に耐えたのだ。

 

 駆逐棲姫は、前回自力で近海まで現れた。

 どうして来れたのかは分からない。私が原因という可能性もあり得る。

 どっちにしても、次は、基地内へ侵入する可能性が高い。ならば先に迎え撃って出る。その為の出撃だ。

 

 メンバーは合計5隻。

 球磨、熊野、ポーラに満潮、そしてわたしこと卯月だ。

 前回いた飛鷹さんは夜戦なので休み。那珂ちゃんもなぜか休みだ。

 

「なんで那珂ちゃんは来ないぴょん?」

 

 当然の疑問だった。

 駆逐艦や軽巡にとって、夜戦こそ本領発揮の時。一番活躍できる時間帯だ。出ない理由が分からない。

 

「那珂は、「お肌が荒れちゃう」って言ってたクマ」

「おい」

「冗談クマ、万一の為に控えてるんだクマ」

 

 万が一、ありえないが万が一わたしたちが負けたら、基地が襲撃される。その時戦える人がいなかったら、時間稼ぎもできない。その為に那珂は残っていた。

 

「不知火と飛鷹さんがいるけどぴょん」

「不知火は所長の護衛、飛鷹さんは夜は戦えないクマ」

「なるほどぴょん」

 

 納得したところで、近海の機雷エリアを抜けた。

 今回も機雷の配置は変わっている。抜け道を知ってるのは旗艦の球磨だけだ。

 

 今回は気を付けないと。

 前回うっかり機雷源に踏み込みかけたことは、忘れてない。場所を覚えて、近づかないように立ち回るのだ。

 

「球磨さん、駆逐棲姫は本当に現れるの?」

「絶対に、此処へ来る。所長がそう言ったんだクマ、球磨たちは信じるだけたクマ」

「所長には、襲撃ポイントが分かっているのですわね」

 

 わたしたちが居る此処に、今からまさに現れるだろう。

 そう高宮所長は予想しているらしい。

 どうやってあたりをつけたのか。鎮守府近海はかなり広い。それに襲撃のタイミングも分からないのに。

 

「ついたクマ、所定位置で待機クマ」

 

 此処が近海のどのあたりなのか分からない。

 真っ暗闇に加えレーダーも持っていない。周辺の地形が分かったら脱走のヒントになる。旗艦以外は持たされていないのだ。

 

 全員静かに待っていた。

 緊張しているのだろう。夜戦は恐いものだ。どこから何時なにが来るか検討もつかない。慣れても慣れてなくても、この緊張は変わらない。

 

 本当に、来るのだろうか。

 駆逐棲姫がどこに来るか、何時来るか、どうやって来るか分からないのに。

 所長は『絶対に』と言ってたが、実際はどうだか。

 

 無駄だなこれは。わたしは考えるのを止める。

 仮説が──わたしを探知して、接近したんじゃないかという──合ってるなら、奴は現れる。そうじゃないなら、仮説が違ってたってだけの話だ。

 

 来たら、殺す。それで良い。それで十分過ぎる。

 

「来やがれぴょん」

 

 どうせ目視は意味がない。目を閉じて静かに待つ。

 波しぶきの音、みんなやわたしの呼吸音。神経が研ぎ澄まされていき、血液の音や心音までもが聞こえる様だ。

 

 聞こえた、()()()()()

 

「雷撃ぴょんっ!」

Guardato(視えました)!」

「レーダーに反応クマ!」

 

 三人がほぼ同時に叫んだ。全員で一気に移動し、雷撃を回避する。以前と同じような音、他の個体の攻撃も混じっているが、奴で間違いない。

 

「7時の方向、全員一斉射クマ!」

 

 指示に従い、全員で砲撃を放つ。

 爆発が真っ暗闇を眩しく照らす。光の中に小さな影がいくつか浮かび上がってきた。

 砲撃の爆発があったが、敵の爆発はなかった。運よく当たってくれれば良かったんだが。

 

 爆炎を切り抜け、一隻の姫が現れる。

 そいつは言うまでもなく、駆逐棲姫だった。

 

「アラ、随分ト……大勢デ出迎エテクレタノネ」

「礼儀がなっていませんね。歓迎のプレゼント(砲撃)はお気に召しませんでしたか?」

「イラナイワソンナモノ、特ニ卯月ノモノハ」

 

 まただ。またこいつはわたしを毛嫌いしている。

 いくら泊地棲鬼を殺したからといって、ここまで憎まれるとは。なんだかムカムカしてくる。

 

「言いがかりもいーかげんにしろぴょん。泊地棲鬼はなぁ、ゴミだったんだぴょん」

「……ゴミ、デスッテ?」

「そう! ゴミはゴミ箱へ。うーちゃんは懇切丁寧に廃棄処分をしてあげただけ。なのにお前と来たら。はぁーあこれだから異常者は」

 

 駆逐棲姫の血管が千切れる音が聞こえた。

 開幕の挑発としては中々なんじゃないか。ただし嘘は言っていない。全部本心から言っている。わたしは嘘が嫌いなのだ。

 

「アレダケ痛メツケテ、全ク懲リテイナイナンテ。驚キダワ。相当物覚エガ悪イノネ」

「脳味噌腐ってるお化けに言われたくないぴょん。あ、腐ってるから理解できないのかぴょん。ごめんぴょん配慮が足りなかったぴょん」

「イイワヨ、ドウセ、死ヌンダカラ」

「はん、あと一回で死ぬ奴がなーにいってるぴょん!」

「ソウヨ、ダカラ貴女ダケデモ、殺シテヤルノ!」

 

 駆逐棲姫が雄たけびと同時に、主砲を発射した。

 奴に合わせて随伴艦も一斉に砲撃を放つ。負けじとこちらも、一斉射を放った。

 

 凄まじい爆風に闇が掻き消える。一瞬だけど敵編成が見えた。

 

「姫一隻、PT小鬼三グループ、重巡ネ級elite二隻、中々えげつない編成ですわね」

「PTはポーラが始末するクマ!」

Inteso(了解で~す)

 

 ポーラは距離をとらないと狙撃ができない。あっと言う間に背を向けて、夜闇の中へ逃げ去って行く。

 

「奴ハ逃ガスナ、狙撃ヲ阻止シテ!」

 

 しかし、前回の戦いで駆逐棲姫も学習している。重巡ネ級が二隻ともポーラの逃走経路を塞ぐように砲撃する。

 

「あー誰かー、aiuto(助けてください~)

 

 ポーラは迎撃しない。分かっているのだ。下手に砲撃したら味方へ当たると。近距離では物理法則を無視したノーコンなのだから。

 

 即座に反応したのは満潮だ。砲撃をネ級に当てて注意を引く。続けて雷撃をばら撒き、回避行動を強要させた。

 昼間ならまだ、雷撃を撃って除去できる。けど夜間戦闘じゃ無理だ、回避しかない。

 

 発射直前に動きを変えたせいで、ネ級の砲撃は逸れた。

 だが、それでも()()()()()()。照準が逸れたのに何発かはポーラの近くへ降り注いだ。

 

「わたしがポーラにつくわ」

「頼むクマ、残りは駆逐棲姫、奴一隻を狙うクマ!」

「殺してやるぴょん!」

 

 敵艦隊の旗艦は言わずもが駆逐棲姫だ。

 奴が沈めば戦局は変わる。敵は瓦解する。人数でも劣っているわたしたちには、これが一番確実な勝ち方だ。

 

 となれば、使う時が来る。

 わたしは腰回りのポーチに手を伸ばし、武器の準備を密かに整えておく。

 チャンスは多くない。何回も使えるものじゃない。

 

「隙アリ」

 

 だが、その一瞬の隙を駆逐棲姫は突いてきた。

 自爆上等の超加速、目の前に現れた。まだ準備はできていない。

 

 そうだ、こいつの殺意も本物だ。

 見当違いとか意味不明とかはさておき、確実に殺す気迫で来ているのだ。振り上げた右腕で、力任せに腸を抉り取ろうと手刀が迫る。

 

「それはさすがに、予測済みですわ!」

 

 わたしと駆逐棲姫の間を通るように、砲撃が刺し込まれた。

 突然の攻撃を駆逐棲姫はバックで回避する。反射神経もイカれた次元だ。

 助かった。熊野が助けてくれたのだ。

 

「チィ!」

「ド単調な動き、視なくても予想できますわ」

「……ソウネ、コレハ私ガマヌケネ」

 

 熊野は予測済みだった。ほんの一瞬の隙を突いて卯月を殺すことを。まっさきに殺そうと加速することも。

 だから事前に、砲撃を撃っておいたのだ。

 

 しかし、熊野の頬を冷や汗が流れた。

 回避されるとは、思っていなかった。あそこで命中しないにせよ、掠るぐらいはすると思って居たからだ。

 

「今だ撃て、考える時間を与えるなクマ!」

 

 球磨の指示に従い、また砲撃を乱射する。

 駆逐棲姫もPT小鬼も即座に反応し、細かい動きで回避し続ける。

 練度の足りてないわたしのはともかく、球磨や熊野の砲撃は当たっている。だけど装甲で的確に受け止めているのだ。

 

「今度ハ、私達ノ番ネ」

「まずい、止めろクマ!」

「サセルワケナイデショウ」

 

 全九隻のPT小鬼群が、雷撃体勢に入った。

 阻止しようと砲撃するも、駆逐棲姫が全て、自分の体で防いでしまった。回避をしなかった分、小鬼の狙いは正確だ。

 

「ヤリナサイ、子供達!」

 

 耳障りな奇声を上げて雷撃が発射された。どう回避しても、どこかしらに雷撃が飛んでくる。挙句逃げ場を塞ぐように、駆逐棲姫が砲撃を連発してきた。

 

「回避クマ!」

「無理無理無理当たっちゃうぴょん!」

「うるさい躱せクマ!」

 

 いやできねぇよ! 

 と思っていたら、熊野と球磨は雷撃を回避して逃げ切ってしまった。

 これぐらい回避できないと、前科戦線の及第点にはいかないようだ。

 

「ナンデスッテ」

「鍛え方が違うんだクマ」

「ダガ、卯月ダケデモ」

 

 全員逃げきった。つまり残ってるのはわたしだけ。

 さながら群れからはぐれた子ウサギ、格好の獲物だ。

 だがなめて貰っては困る。ウサギとは逃げることに特化した生物なのだから。

 

「こっちだってぇ、練習してんだぴょんっ!」

 

 夜で雷撃は視認困難だ。しかし見えないわけじゃない。そういう訓練だってやっている。

 意識を尖らせ雷跡を凝視する。見逃したらジエンドだ。死と隣り合わせの緊張感が力を引き出す。

 

「逃ガサナイワ……」

「おっと、ダメクマ」

 

 逃走妨害に砲撃を撃とうとしたが、球磨の牽制に阻まれる。その一瞬の隙を突いて、わたしは攻撃範囲から脱出した。

 駆逐棲姫へ向かって。

 

「ナッ」

「こんにちわ死ねぴょん!」

 

 急旋回と同時に、至近距離から魚雷を飛ばす。

 駆逐棲姫は持ち前の反応速度で見極め、逆に超加速で殴りかかる。魚雷の爆発地点を越えて、拳が迫る。

 

「またこれかぴょん、やっぱり脳ミソ腐ってるぴょん」

 

 だが、予想できている! 

 腰だめで主砲を、やつの顔目掛けて撃った。

 駆逐棲姫が苦い顔をした。目潰しの一撃を思い出したのだ。

 

 致命傷にはなり得ない。それでも視界は狭まる。前回と違いこっちの方が数は多い。無茶なアクションは行わない。顔で受け止めるには危険が多い。

 

「ナマイキネ」

 

 やむを得ず砲撃を防御した。装甲に覆われた腕部での防御、かすり傷が──できた。

 そうだ、腕を使ったのだ。これで殴っての攻撃は中断された。

 

「ダメージダト、ソンナ、前ハ」

「こっちは成長してんだぴょん、てめぇらを皆殺しにするためにぴょん!」

「ホザケ、タカガカスリ傷デ、図ニ乗ラナイデ!」

 

 苛立つ駆逐棲姫は主砲を構える。

 しかし卯月は、目の前からいなくなっていた。卯月を探す駆逐棲姫を見て、卯月は嗤う。

 

「やっぱバカだぴょん、このうーちゃんが! 脅かすために懐へ潜ったとでも!?」

 

 背後からの声に駆逐棲姫は振り替える。

 卯月の足元には、踏みつけにされるPT小鬼群がいた。

 

「子供達!?」

「これだけ魚雷を撒いといて、再装填の隙を見逃すうーちゃんじゃないぴょん」

 

 何隻かは再装填を終えていたが、一斉射でなければ回避はできる。目障りなPT小鬼群から仕留めると、最初から決めていた。

 

「臓物ぶちまけろ汚物どもぴょん!」

 

 全てを回避へ振り切った小鬼群では、駆逐艦の砲撃に耐えられない。主砲の接射をくらい、小鬼が内臓から弾けとんだ。

 

「アアアアッ!?」

「はーっはっはーザマァねぇぴょん!」

 

 卯月はなんとも思わない。こんな海産物なんて、何匹死のうとも構わない。なんなら惨たらしく死ねと思っている。

 厄介な敵の除去兼、駆逐棲姫への嫌がらせ。そのための攻撃だったのだ。

 

「貴様ァァァッ!」

「叫んでろ、まず小鬼どもから殺すぴょん」

 

 この行動が、駆逐棲姫の怒りを買うことは予想している。それはしょうがない。深海棲艦が仲間──そんな概念があること事態びっくりだが──に怒ることは、実に不可解だが。

 

「駆逐棲姫は任せろクマ!」

「その間にPTをお願いしますわ!」

 

 夜戦とは至近距離の戦い。予想以上に近くにいた球磨と熊野の攻撃は無視できるものではない。

 駆逐棲姫は憎悪に顔を染めながらも、二人の相手をし始めた。

 

「卯月ノ仲間、当然、貴女達モ殺スワ」

 

 不意打ち気味に超加速、速攻で勝負を決めにかかってきた。だが突撃直後、目の前に重巡級の主砲が置かれていた。事前に発射していた、予想されていた。

 急カーブで回避したところには、球磨の雷撃が発射されていた。

 

 逃げ場がない、足を一瞬止めてしまう。結果主砲と雷撃、両方に当たってしまった。

 

「いつものセリフですわね」

「深海の連中は同じことしか言わないクマ」

 

 駆逐棲姫は健在だが、ダメージは通った。卯月がつけている以上の傷が体に刻まれている。

 一瞬で傷を負った。その事実に彼女は認識を改める。卯月を殺すにしても簡単にはいかないと。

 

「コノ駆逐棲姫、コノ程度デハ、沈マナイワ……!」

「だったらガッツを見せるクマ、駆逐艦を、名乗るなら」

「言ワレナクテモ!」

 

 こいつらは卯月とは比較にならない。

 怨念を纏いながら構える駆逐棲姫。

 夜の海はまだ、燃え始めたばかりなのだ。




艦隊新聞小話

 駆逐棲姫さんはPT小鬼群のことをしょっちゅう子供と言ってますが、あながち間違いじゃないんですよね。
 姫級深海棲艦は、部下になる深海棲艦を自力で作ることができちゃうんです。上位個体になれば姫級も想像できるとか……?
 とはいっても、作るのに手間もエネルギーもかかるので簡単じゃないですが。
 それなりに苦労してPT小鬼群を生んでるので、愛着はあるようですよ。その『愛着』が人間と同じとは限りませんが。
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