ヴォルデモートなんていない   作:taku1531

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100.君は世界の反対側(Half The World Away)(1)

 透明マントの下に身を潜め、海岸で待ち続けて2時間ほどか。

 12月だけあって当然寒い。

 水平線に目を凝らしながら、体を震わせてハリーは不平を漏らした。

 

「パパ、寒い」

「あれほど言ったろ! ついてきても楽しくないから来るだけ無駄だってな!」

 

 12月の潮風は体に染みる。

 そこで2時間も突っ立ってればハリーが寒がるのも無理はない話で……いや、じゃあついてくるなよって俺としては言いたいんだが、アズカバン脱獄組と落ち合うために透明マントを借り受けるには、現在の所有者であるハリーの同意を得る必要があった。

 その交渉の過程でハリーは強硬に付き添う意思を示した。

 結果として、勢い任せについてきたハリーと俺は暖気の呪文も使えない(杖呪文なんぞ使ってたら透明マントの下に隠れている意味がない)状況で体を震わせることになった。

 

「でも、バチルダおばあちゃんが心配だし……」

「その気持ちは大事だが、別にホグワーツで待ってたって変わるもんでも……」

 

 海の方から何かが寄ってくる気配を感じた。

 ジェスチャーでハリーに合図すると、しっかり察して口をつぐんだ。杖を構え、気配の方に近づく。

 バイキング船にのった大所帯。アズカバン脱獄作戦の連中に見える……が、油断大敵。杖を構えながら背後に周り、拡声呪文(ソノーラス)で声の出どころがわからないようにしながら、語りかけた。

 

「クィリナス・クィレル! お前の部屋の、隠し酒棚の一番上の銘柄は?」

「……へ!?」

「おい、クィリナス。呼ばれてるよ、とっとと答えてやりな。というかあんた、隠し酒棚なんてつけてたのかい」

「え、ええと!? ぽ……ポートエレンの10年です!」

「あんた、身の丈考えて酒ぐらい買いな」

 

 ここに来る前に確認してきたやつと同じだ。

 おそらく本人だろうと確認できたため透明マントを外し、俺とハリーは姿を現した。

 

「バチルダおばあちゃん! 無事だった!?」

「おやおや、ハリー。ジェームズに付き合ってきてくれたのかい?」

「うん!」

「いや、俺が付き添う側なんだが……」

「あ、ネビルのパパとママも……よかったあ……」

 

 ハリーはバチルダの婆さんやフランクとアリスに駆け寄って抱きつく。幼い頃から面倒をみてもらってたから不安だったのはわかるが、そういうポーズ俺にも取ってくんねえかなあ……パパ、さみしいぞ。

 

「どうやら貴様の能天気具合は相変わらずのようだな? 子供連れとは、ピクニックかレクリエーションと勘違いしているのかね?」

「お、懐かしのスネイプ節じゃあないか、再会できて嬉しいぜ」

「……やはり我輩と貴様の意見には大きな隔たりがあるようだ。もっとマシな人間を出迎えに使えと手紙で言っておくべきだったな」

「そう言うなよ。こう見えてもベラトリックスと軽くドンパチした後なんだぜ」

「あのベラと!」

 

 マルフォイさん家の奥さんが半ば悲鳴のような声をあげた。

 俺が驚いてそっちを向き、知り合いなのだろうか……と思案していたところ、大げさに肩をすくめたスネイプが割って入ってきた。

 

「ミセス・マルフォイはベラトリックスのご令妹だ」

「ああ……なるほど? なるほどね?」

「まったくわかっていないようだから教えてやるが、お前の友人の薄汚れた野犬が後足で砂をかけ、追い出されたブラック家の出身だ」

「そういやそんなこと言ってた気もするな……いや、すまんな。こういうの俺は疎くて……」

「ポッター家の人間は社交界にも顔を出さん奇人の家だからな。世情に疎いのも無理はない」

「……あれ? 今俺ほぼ初対面の人間に家ごと喧嘩売られた?」

「とんでもない」

「なら良かった、ちょっとびっくりしたぜ。社交に通ずるマルフォイ家の当主ともあろうものが、余計な敵を増やすとは思わなかったもんで」

 

 肩をすくめておどけてみせ、この場は穏便に済ませておく。

 なんでこう、スリザリンに染まった連中は無意味に攻撃的なんだ? 俺と喧嘩してもしゃあねえだろ。

 そう考えていた内心が顔に出たか、突然、後頭部をどつかれた。

 

「あんたもだよ。内心が相手に通じてないと思うんじゃないよ、もっとスマートに済ませな」

「いでえ! バチルダの婆さん、杖で叩くな、杖で! ……ああ、ハリーはフランクのとこか」

「なにか聞きたそうな顔してたからね。来てやったんだよ」

「そりゃそうだろ。……シルバヌスは?」

 

 ハリーに聞こえないように声を落として、この場に居るはずの人間について尋ねる。

 いい知らせは期待してなかったが……やはりというか、バチルダの婆さんは首を振った。

 

「アズカバンを出るとこまでは上手くいったんだけどね、魔法大臣自ら追っかけてきたもんでね。シルバヌスは……足止めを志願した」

「止めなかったのか?」

「あの爺が行かなかったらわたしが行ってたさ。老い先短いもんが行かないでどうする?」

「……まあ、しぶといジジイだ。案外どこかに流れ着いてるかもしれん」

「ああ。かもね」

 

 ひょっこり、何事もなかったかのように顔を出す。あのジジイはそういうジジイだ。

 ともあれ、ここに長居しても仕方がない。追っ手は振り切ったとアリスとフランクがいうならまあそうなんだろうが、それでもリスクがないというわけではない。

 

「よし、なにはともあれホグワーツだ。一時的にこの一帯からホグズミードの郊外まで姿くらましできるようにしてる。さすがに手製の杖じゃ不安もあるだろうから、正規の杖を持ってるメンバーと付き添い姿くらまししてくれ」

 

 そう俺が言い放つと……ロングボトム夫妻、マルフォイ夫妻、レギュラスくんはクィリナスと、セプティマはバチルダという組み合わせになり……おや? 一人余ってるな?

 

「日頃の口の悪さが祟ったな? スネイプ。まあ、何を隠そう俺はハリー含めてふたりまとめて付き添い姿くらましできる実力者だからな、俺に一言頼んでくれるなら喜んでお前とお手々繋いでホグワーツまで――」

「不要だ」

 

 そうスネイプが強がった瞬間に――ピリッとした感覚を腰から感じる。これは杖ホルダーのアラートだ!

 

「では、失礼」

 

 そう言って俺のサブ杖をホルダーから強引に(おそらく諸々の防犯チャームも無言呪文で裁ち切っていった。タチが悪すぎる)盗んでいったスネイプは他人の杖で器用に姿くらましして消えていった。あ、あの野郎、手癖が悪すぎる……

 

「パパ、油断しすぎじゃない?」

「ハリー、正論は人を傷つけるぞ」

 

 息子の前で恥をかかせやがって……あいつ、どんだけ俺に頼みたくないんだよ。そんなに俺と手繋ぐのが嫌か?

 

 

 ――――

 

 

 スネイプ先生に出し抜かれてへこたれるパパを慰めながら付き添い姿くらまししてもらい、追いかける形で僕たちはホグワーツに戻ってきた。

 ネビルのパパもそうだけど、アズカバンに入ってたメンバーはそこで一旦検査のため医務室へ。の、はずなんだけどスネイプ先生はそれを断って報告のために校長室に向かったそう。タフだなあ。

 パパはそこで僕を追い返したい感じだったけど、なんとか無理を言ってそのまま付き添わせてもらった。僕だってあのトム・リドルには怒ってるんだ。あいつの鼻をあかす計画が進んでるなら耳に入れておきたいよね。

 

 校長室に入ると、中にいたのはマクゴナガル校長にスネイプ先生、それに……あれはマートル編集長?

 みな一様に暗い顔をしている。校長とスネイプ先生はともかく、ワタシにとっては森羅万象がメシの種よ! と普段から豪語している彼女がこんな暗い顔をしているのは初めてみたかも。

 

「ご苦労でした、ジェームズ」

「いえいえ、大したことはなかったですよ。おら、スネイプ。杖返せ、杖」

「間に合せの杖では心もとない。しばらくの間使わせてもらう……ということでマクゴナガル校長からはすでに許諾を得た」

「てめえ! 事後で承諾得やがって! ……しかし、皆がこんな暗い顔してるのはシルバヌスの件か? 俺より付き合い長かったもんな」

 

 パパははっきりとした話を僕の耳には入れたくなさそうだったけれど、僕だってケトルバーン教授が姿を見せていないことが何を意味してるかわかる。

 だが、暗い顔をしている理由はどうやら異なるようだ。

 ある程度言葉を濁しながらもパパが校長に問いかけると、マクゴナガル校長は首を振った。

 

「その分、アズカバンの奥底から何人も同僚が戻ってきました。複雑な心境ではありますが、割り切れる部分はあります。ですが……マートル・ウォーレン編集長の持ってきた報告は……あまりにも! 非道です!」

「おいおい、何があったんだ? そんな怒った様子を見るのは久しぶりだぞ。俺らが未登録の動物もどき(アニメーガス)であることを伝えて以来の顔だ」

 

 確かに(クィディッチが関係しない限り)いつも冷静なマクゴナガル校長がこんな感情的になるなんて。

 ちょっと僕も驚いた。

 

「ワタシも普段なら人の不幸なんて大喜びで聞くけどねぇ。さすがに、これはちょっと笑うには度を越してるわぁ」

 

 そう言ってマートル編集長はどうやら作成途上なのだろう、未完成の「週刊魔女」をめくった状態で僕たちに手渡してくれた。

 見出しには……「カーディフの惨劇! 死者は少なく見積もっても数十人!」とあった……

 数十人!?

 

「おいおい、一夜でか!?」

「その通り。しかも一人で、だ。どうやらケトルバーンを追い払った我らが魔法大臣様はその勢いでカーディフに乗り込み、死の呪文を唱えて回ったらしい」

 

 パパは狼狽した様子で、ウェールズに住む友人の名前を挙げた。

 

「嘘だろ……ハグリッドとリーマスは!?」

「正直言うと、ワタシでも現地の詳細はわかんないのよね。うちの特派員も殺られちゃったから。まあでも、いいニュースは一つもないわよ。ウェールズだけじゃなく、イングランドのほうもリスクが高まってるって報告が来てるから」

「……」

「ですから、現状は脅威下にある人間を急いで救出する作戦を練っています。このような暴挙を許してはなりません!」

 

 どうやら、僕らがいない間にも校長は救出することを決め、その策を練っていたらしい。

 僕も大賛成だ。向こうに知り合いはいっぱいいる。プリマスの地図屋さんとか、競技場で僕にシーカーのプレイを教えてくれた大先輩とか……ダフネさんとか。

 

「だが……大量の人を運ぶってのは思ったよりも難しいぞ? 貨物と見れば10~20ストーンのかさばる荷物を大量に運ぶのは難題だし、自力である程度動くことを期待すると老人や就学前の子供、あるいは病人だっているかもしれねえ。そういう異なる属性の人間に規律をもって動いてもらうというのはなかなか難しいぞ」

「……遺憾ながら、私も同感です。マクゴナガル校長」

「お前も法執行部の現場にいたもんな。安全を保った状態で人間を輸送するってのがどんだけ難しいか」

 

 パパの懸念に、スネイプ先生も同意して頷く。

 

「姿くらましできる地点を見つけて、リレーの要領で渡すのは?」

「ちょっとここからロンドンは遠すぎる。ここにいる人間を総動員しても数百人どころか数十人単位で動かすのはかなり厳しいぞ」

 

 その他にもなんとかして移動キーを作る、煙突(フルー)飛行ネットワークを新造する、マグルの乗り物を使う、箒で護衛しながら運ぶなどの案がマクゴナガル校長から出されたけれど、パパとスネイプ先生は首を振って否定した。どれも難しいみたいだ。

 

「移動キーは作るのが大変だぜ? 省では複数の人間で分担して時間をかけて作ってた。よっぽどの万能の天才魔法使いがどこかにでもいない限り今から量産は無理だろうな。数個で稼働させたら全員移動させるまえにすぐ探知されちまう」

煙突(フルー)飛行ネットワークの新造というのは意表を突く手ではありますが……暖炉が固定されてしまうというのはネックですな。大量に人を一度に運べない以上、時間はかかります。そこに連中が襲撃をかけてくれば大惨事でしょう」

「マグルの乗り物は便利みたいだが……現実的に今から俺らが調達して運用できるかっていうとな。マグルの英国政府が俺らに好意的なら交渉の余地もあるんだが、今のところ介入を避けて俺らとの接触を拒否してるからな」

「誰もが箒に乗れるわけでもありますまい。安定性を重視してイランかアメリカから絨毯を取り寄せてそこに乗せるという手も考えられますが、そうすると逆に箒での追跡を振り切れなくなります」

 

 マクゴナガル校長は挙げられた反論が理にかなっていることを認めはしたけれど、それでも他に手段がないのであれば試すしかない、と主張した。

 

「……欠点があることは承知です。しかし、体が弱かったり魔法が不得手な人間も大量に運べる、などというそんな都合のいい移動手段はないでしょう」

 

 まあ、そうだよね。誰でも乗れて、今までホグワーツでも運用してきた、そんな都合のいい乗り物が見つかるわけは……

 ん? そうでもなくない? というか僕、心当たりがある。

 

「まあ、確かにな。どっかで妥協は必要かもしれん。それより重要なのは脱出を希望する人間と連絡を取るネットワークだな。フクロウは便利だが、常に傍受のリスクがある。速度とセキュリティと簡便さを併せ持った通信手段をまず考えねえと」

「あのー……ちょっといい? パパ。通信手段のほうはわからないけど、色んな人を大量に運ぶ移動手段っての、僕心当たりあるんだけど」

 

 さすがに僕が口出しすると追い出されかねないから黙ってたけど、誰も思いついていないようだったから慌てて口を挟んでみる。

 だってほら、まさにお誂え向きの乗り物があるじゃないか!

 

「なんだ、ハリー?」

「うん。ホグワーツに入学する直前の一年生も含めてまとめて大量に運べるような乗り物でしょ? だったらもちろん――」

ハリー・ポッター!

 

 提案をしようとしたタイミングで、突然見知らぬ声が校長室に響き渡った。

 僕も即座に杖を抜き、声がしたほうに杖を向けると……僕が相手を認知した時点で、既に金縛り呪文(トタルス)がかけられていた。これは……屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)

 

「はっはー、俺のほうが早かったな? スネイプ」

「この杖に慣れていないだけだ」

「いやいや、嬉しいね。そんな言い訳がスネイプから聞けるとは……武器よ去れ(エクスペリアームス)、と。なんだ? こいつ、どっかで見た気もするが……ホグワーツの屋敷しもべ妖精じゃあねえよな?」

「これは……マルフォイ家に仕えていた屋敷しもべ妖精だ。名は確か、ドビー。トム・リドルの命令を受けて昨年ここに忍び込んできた屋敷しもべ妖精だ」

「なにぃ? 同じ手を仕掛けてきたか? にしてもやり方が直接的だな……」

 

 パパは視線を乱入者から外さないまま、懐からなにか紙切れを出してボソボソと呟き、ちらっと目を向けていた。

 

「他に侵入者はいねえみたいだ。アラートも一つ。こいつだけの可能性が高いな」

「では、尋問するしかないな」

「真実薬は?」

「誰も触っていなければ、私の居室の奥にある」

「アズカバンから出てきたばっかだってのに用意がいいなあ、ったくよ。必要なら使うとするか、よし……上半分だけ呪いを解くぞ?」

 

 そう言ってパパは再び杖を振ると……忍び込んできた屋敷しもべ妖精の頭の部分だけが動き始めた。

 

ハリー・ポッター!

「それはもう聞いた」

 

 その屋敷しもべ妖精は甲高い声で僕の名前をもう一度呼んだ。ちょっと怖い。なんで僕?

 

「ロンドンの学校に通われているダフネ・グリーングラス様からお言伝があります!」

「えっ、ダフネさん!?」

「おいおい、雲行きが見えねえが……どういうことだ? トム・リドルの刺客とかじゃないのか?」

「まったく違います! ドビーめたちはあの闇の帝王と戦い、我々に自由をもたらす女神が掲げた理想のために戦っているのです!」

 

 なんだかわからないままだ。

 でも、どうやら敵じゃないみたい。油断はできないけど、金縛りで立たされたままってのはかわいそうだ。

 

「うーん、とりあえず椅子はどう? 金縛り全部は解けないと思うけど、そんなつま先立ちのピンとした格好のままじゃ大変だよ」

「す、座ってなんて! ハリー・ポッター様はなんとご寛大なのでしょう!」

 

 椅子を差し出しただけでうるうると感極まっている。やりづらいなあ。

 

「まあ、なんだかわかんねえけど……その言伝ってやつを教えてくれよ」

「はい! ですが、悪い魔法使いにドビーめが騙されないように、合言葉というものをミス・グリーングラスは指定されました。誕生日パーティへの返事のときの宛名です!」

「へー……なんだかわからんけどハリー、言ってみろよ」

 

 誕生日パーティへの返事のときの宛名……宛名って……アレだ!

 よりにもよってあれを合言葉にしたの、ダフネさん!?

 もしかしたら、他の人が周囲にいる状況を想定してなかったのかもしれない。今はクリスマス前の休暇とはいえ夜中だし。

 

「えー……あー……うーん」

「どうした? 恥ずかしがって。単なる宛名だろ?」

「う、うん。ほ……『ホグワーツで一番美しい魔女に向けて』だよね……?」

「思ったより恥ずかしい感じだった。すまん、ハリー……痛い! やめろ!」

 

 顔が真っ赤になったし、それを更に上塗りするようなフォローをパパが入れてきたのでちょっと脛を蹴っておく。

 マクゴナガル校長ですら吹き出しそうになっているし、マートル編集長はニヤニヤと笑いを隠していない。スネイプ先生は相変わらずのポーカーフェイスだけど。

 

「はい! 合言葉を確認致しました! ではお伝えします……『ハリーくん? 初めてだからお試しね。もしかしたら彼らを使ってホグワーツとこっちでやり取りできるかも。こっちは安全な形でフクロウが使えないから。聞いたら返事よろしくね』とのことでした!」

「声の調子までコピーしてるぞ、この屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)

「しかし……これは使えるかもしれませんな。安全な通信手段であることを計らずも証明できた」

 

 そういって頷くと、仕事を褒められて上機嫌であることは隠していないドビーだったけれど、屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)という部分は否定した。

 

「お言葉ですが、ドビーはもう屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)ではありません!」

 

 どこからどう見ても屋敷しもべ妖精のドビーは、そう言い放った。戸惑う僕らを気にもかけずドビーは話を続けた。

 

「元ご主人さまは、仕えていた屋敷(ハウス)を捨てていった! ドビーは自由なのです!」

「なに? そんなことあるのか?」

「……私も詳しくはありませんが。ただし、正当な契約解除や変更の手続きを踏まずに亡くなるなどで家を放棄した事例において、いつのまにか屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)がいなくなっていたという話は聞いたことがあります」

「ルシウスは逮捕され、奥方とご子息もホグワーツに逃げるにあたり、屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)との契約どころではなかったのでしょう。契約がなくとも残るケースはあるようですが……まあ、ルシウスは良い主人だったとは言い難い」

 

 マクゴナガル校長がそう言うと、同意するようにスネイプ先生も頷いた。

 ドビーもそれについて同意するようにぶんぶんと首を振って頷く。

 

「ですから、我々はもう屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)ではないのです!」

「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」

「我々は悪しきしもべ妖精(Louse Elf)! 我々に自由をもたらす偉大なる女神、ハーマイオニー・グレンジャー様の掲げた理想のために闇の帝王と戦っているのです!」

 

 

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