ヴォルデモートなんていない   作:taku1531

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106.義務教育よりも大事な練習

「確かにビンズ教授の授業とはぜんぜん違ったわね!」

「でしょ!? そこがいいんだよ、バチルダおばあちゃんの話は! ホグワーツの歴史についての講義だけどスポットライトを当てたのが炎のゴブレットが導入された時代を語るなんて斬新!」

「そうよね、普通ホグワーツの歴史について語るならやっぱり創設者の時代だったり、あるいはマーリン在学中の頃だけど……当時の欧州史と炎のゴブレットを結びつけるなんてね」

「契約者にチャンピオンとしての振る舞いを強制させる炎のゴブレットが導入される前の第一回魔法学校対抗試合では、試合の当日に参加者が全員行方不明になってたとか……血なまぐさい時代だよね、いやー面白かった! ロンもそう思わない!?」

「君らの話を聞いてるだけでお腹いっぱいだね」

 

 魔法史の授業が終わり、ハリーとハーマイオニーがやいのやいの言っている。

 確かに僕も退屈なビンズの授業と比べて遥かにバチルダ・バグショット臨時講師の授業を楽しめたけど、それでもここまでの熱意を持つことはできない。正直いってちょっと置いてけぼりを感じるね。

 

「よし! せっかくだから僕たちでも調べてみよう! まずは図書館に」

「ハリー? ロン? ハーマイオニー?」

 

 意気揚々と図書館に向かおうとしたハリー。そんな僕らの背後にぬっと男が現れ、僕たちの肩にポン、と手を置いた。

 我らがグリフィンドールチームのキャプテン、オリバー・クィディッチ狂・ウッドだ。

 

「図書館なんて行く余裕はないぞ! 次の試合はもう目前だ、会場がアイルランドで移動もあることをかんがえれば、もう一時間だって無駄にできない!」

「あー……ウッドキャプテン。今の競技場はウッドキャプテンが3人いるような状態だから、あんまり顔を出したくなくて」

 

 ハリーがボヤく。

 ホグワーツ代表として順調に勝ち進んだ僕たちはついにスコットランド選抜のチームの1つに選ばれ、本戦トーナメントへの出場が決まった。

 今まではアマチュアやセミプロ相手ばかりだったけれど、本戦では一回戦からプロと当たる可能性が高い(とはいえガチのプロチームはシードだから、当たるのはリザーブとかユースだと思うけど)。

 そんな期待の中で、引退間近の7年生2人とホグワーツの教職員を代表するスポーツ狂のコーチの指導はどんどん過激になっている。

 

「なに! 俺が3人だと……なんだその楽園は!」

「話が通じないよー!」

 

 そう言って僕たち3人はウッドが出した魔法の縄で文字通りズルズルと引きずられて校舎を後にし、外の競技場へ連れ出されることになった。

 やった、もう置いてけぼりじゃないね。

 

 

「ドラコ! 腕だ、腕を使え! スピードに乗った選手へのチャージは反則にとられがちだしなにより危ない! 加速する前の出鼻をくじけ!」

「マークしている選手だけではなく常に周囲を見続けるのです、ミスター・マルフォイ! 腕でマークしている選手をブロッキングしつつ、キーパーの視界を体で遮るように動きながら! ミスター・マルフォイ! 顔を上げるのです! 顔! クアッフルは見ないで扱う! 顔が上がってない、顔!

 

 案の定、僕たちが来たタイミングでマルフォイがフーチ先生とスリザリンのキャプテンであるマーカス・フリントにシゴかれまくっていた。

 いい気味だ。5分後僕らも同じ目に合う保証がなかったら素直にそう思えるんだけど。

 スリザリンのキャプテンは僕らに気付き、一瞥してこう言った。

 

「グリフィンドールの連中が来たか。おいウッド、なにボサッとしてる? ドラコの練習に付き合え。キーパーのポジションのやつが欲しかったところだ」

「なんでお前が指図する? 年明けまでホグワーツにいなかった奴がよ!」

「単にちょっと病気で休んでいただけだ。籍は置いたままだ」

「マシな嘘をつけ、日和見野郎! ホグワーツに行くべきか様子をみていたが、俺らの活躍が羨ましくなって来たんだろう?」

「卒業前に俺を高くプロチームに売るにはいい機会だと思っただけだ」

 

 僕らがホグワーツに入学してからずっとバチバチやりあっていた二人のキャプテンは合同チームになっても相変わらずだ。ウッドは既にパドルミア・ユナイテッドのプロ入りが内定しており、スリザリンのキャプテンも同様にどこかのチームと契約は進めているみたいだけど、どうやら更に活躍することでより良い条件の契約を他チームから引きだそうという目論見らしい。僕の見解では契約金の多寡にかかわらずキャノンズに行くべきだと思うんだけど……

 

「僕の正ポジションはシーカーなのに……なんでこんなことに」

 

 マルフォイがボヤく。

 現状、正シーカーの座はハリーが不動のレギュラーとして獲得している。2番手もレイブンクローのチョウ・チャンさんで、マルフォイの序列は3位か4位(ジニーと争ってる。平均的なパフォーマンスで言えば……まあマルフォイのほうが流石に上だと思うけど、ジニーはマルフォイの冷静さを奪うすンばらしい挑発をするもんで、なかなか明確な差を見せつけることができない。さすが僕ら兄弟に揉まれてきただけある)というところだけど、シーカーは独立したポジションだから、相手のチームや採用する戦術によって1番手が降りることは少ない。

 そのため、出場機会を得るべく合同チームではチェイサーにコンバートしている。基本的にはうちのチームのアンジェリーナか、ハッフルパフのアルジャーノン・カドワラダーさんのほうが序列は上だけど、クアッフルの扱いはともかく飛ぶのは……まあ、そこそこなので一対一でマークすべき選手がいる相手のときは時折起用されてきた。

 

 ボヤいたマルフォイに、スリザリンのキャプテンは首を振る。

 

「それは違う。いいかドラコ、クィディッチのチームで一番人数がいるポジションはどこだ?」

「それは……チェイサーですが」

「だろう? つまり、チームのキャプテンは必ずチェイサーのことがわかってなきゃいけない。卒業後にお前がスリザリンチームのキャプテンになったとしたらこの経験は必ず役に立つ」

「ぼ、僕がキャプテンに!?」

「さあな。お前の頑張り次第だろう。俺はキャプテンにはチェイサーへの理解が必要という事実を伝えただけだ」

 

 けっ。あんな露骨なおだてに乗っちゃって。バカだよねー、マルフォイは。

 そんな風に冷めた目で上空を見ていたら、ウッドに一喝された。

 

「おい、ロン! なにぼーっとしてるんだ、とっとと箒の準備をしろ!」

「うええーい……そうは言うけどさあ、僕なんて良く見積もっても4番手キーパーってところだろ? 練習したってなんにも……」

「ロン。なにを言ってるんだ? 俺の引退後に空くグリフィンドールチームのキーパーのポジションを埋めるのは……お前かもしれないと俺は思っている」

「……! それホント!?」

「今からそれを証明してみせろ! ウォーミングアップのシュートストップ100本からだ!」

 

 まさか……ウッドが僕にそこまで期待してくれていたなんて。

 グリフィンドール代表キーパーかあ。流石に来年はアンジェリーナがキャプテンだろうけど、そのまま1年間活躍すればキャプテンにもなっちゃったりして。そうしたら家族の中でも鼻高々だし、フレッドとジョージに箒磨きの命令だって出せる……うん。そこまで期待されてるならやってみせないとな!

 僕は期待に満ちた目で箒にまたがり、空へ上がり……そして、3時間ずっと(ずっとは永遠って意味だ)マルフォイのシュート練習も兼ねたシュートストップの練習をやらされ……揃ってボロ雑巾のようにグラウンドに寝転がった。

 

「このクソヤロー(git)。良くもどさくさに紛れて僕の鼻を小突いてくれたな?」

「あれは正当な体の入れ方だ。こちらから言わせてもらえば、箒の先で僕の脛を狙ったのは明らかに故意の報復だろう」

「……ああやってヒートアップしてもあのキャプテン2人は止めもしなかったよね。狂ってる」

「お前に同意するのは忌々しいが……同感だ」

 

 ズタボロになって動けない二人のところに、幽霊のようにゆらゆらしながらハリーが降りてきて……僕の横に倒れ込んだ。

 漏れ出るような声が横から聞こえた。

 

「ふたりともお疲れ……」

「ハリーも大概に見えるよ……」

「そうだね……」

 

 その漏れ出てきた声によると、どうやら狭めの室内スペースを使ってジョージとフレッドが打つ(一応練習用らしいけれど)ブラッジャーをひたすらかわすという特訓を受けたらしい。

 しかも、飛んでいるスニッチから目を離すたびにフーチ先生の叱責が飛んでいたらしい。終わった後も自分の脚で寮に戻れるあたりさすがビーターを4年やってきた僕の兄貴たちだけれども、さすがに練習が終わるころにはいつもの笑みも剥がれ落ちていたそう。

 

「みんなお疲れ様……」

「ハーマイオニーもすごい顔色……」

「3時間ずっと過去の試合の写真を見て分析させられてたの……魔法界にもビデオカメラを導入してくれないかしら、いくら動くからって引き伸ばした写真を何枚も同時に見続けるのは……一時停止もないしね」

 

 次に歩いて来たのはハーマイオニー。

 建屋の中に連れ込まれたハーマイオニーはフーチ先生にノートと大量の写真を渡され、うちがしてきた過去の試合を分析し修正点を見つけるタスクを課されていたらしい。

 

「あるかないかもわからない修正点を探して見続けるのは辛すぎるわ……せめて早く相手のチームが決まればいいのに」

「そういえば今日だっけ? 発表は」

「ええ。たぶんもう少ししたら」

「みんな。ちょっと静かにして……今、あそこで物陰がなかった?」

 

 ハリーが突然、少し声を落としながらも鋭い声で僕らに呼びかけた。ハリーは禁断の森のほうを指差している。僕には全然見えなかったけど……

 マルフォイが怪訝そうに聞き返す。

 

「ケンタウロスあたりではないのか? ハリー」

「わかんない。結構大きく見えたし、ありそうではある……けどみんな、一応杖に手をかけておいて」

 

 静寂がホグワーツの外を包む。薄暗くなってきた外でこうやって静かになると、ざわめいている森がいつも以上に不気味に思えて……

 のそり、と木陰で何かが動いた。ハリーが指差していたあたりだ。思わず悲鳴をあげそうになる。

 かなり大きい。横の樹木の大きさを考えれば、10フィートはあるんじゃないか?

 

 沈みかけた西日を背にしてのそり、のそりと近づいてくる影はどんどん大きくなっていく。

 それは……男だった。ボロボロの傷だらけの衣服。髭でモジャモジャの大男だ!

 僕はついに悲鳴を上げた。

 

「う、うわああああ!」

「あ、あれ? もしかしてハグリッド?」

「……あん? もしかしてハリーか?」

 

 ……悲鳴を上げた僕をヨソに、ハリーはその大男と会話を始めた。

 あれ? もしかして知り合い?

 

「おおよかった。無事ホグワーツまで辿りつけたっちゅうわけか」

「うん。そうだけど……どうしたの、その格好。ずいぶんボロボロだけど」

「ああ、これか? ウェールズからずーっと歩き詰めでな。まあ、ちーっと身なりはよくないかもしれんな」

「ウェールズからここまで!? 歩いてきたの!?」

 

 それ! と言ってそのハグリッドさん? は杖を振って一瞬で服についていた草やら虫やらを取り払い、ズタボロだった服を直した。

 なんだよもう。できるなら最初っからしてよ! それだったら間抜けな悲鳴なんか上げなくてよかったかもしれないのに。

 マルフォイがニヤついてこちらを見ている。後でドツいてやる。

 

「それよりジェームズはいるか? あるいは、リーマス・ルーピンって男がこっちに来てたりしないか?」

「パパなら中にいるよ。リーマス・ルーピンって……確かパパの同級生の?」

「おお! 知っちょったか。そうだな、うちのところの牧場で働いてもらっててな、いいやつだったんだ。だがなあ……」

 

 ハグリッドさんは先ほどまで見せていた安堵の表情を大きく崩して、手で顔を覆って涙を流し始めた。

 

「あいつはいらん気を遣って! 俺は気にもせんっちゅうのに。戦争で薬が手に入らなくなったぐらいのことで、自ら姿を消して……俺は、あいつが心配で心配で。行き先をジェームズが知っとるかもしれんと思ってここまで来た」

「す、すごいね……よし。パパのとこに行こうか。案内するね」

 

 立ち上がったハリーはハグリッドさんの案内のために校舎のほうに戻り姿を消した。

 

「強烈な人だったね。でもいい人っぽい」

「そうね」

「僕はあの手の手合は苦手だ」

 

 僕の素朴な感想にハーマイオニーは頷くけど、マルフォイはそっぽを向いた。やれやれ。あのお坊ちゃんにはわからないか。

 

「しかしウェールズから歩き詰めってすごいなあ。300マイルはあるんじゃないの? 僕には絶対無理」

「そうよね……あれ、そう言えばアイルランドでのクィディッチの試合って、どうやって移動するのかしら? いまって移動キーとか、暖炉移動とか使えないのよね? 移動キーは触ったことがないから一度使ってみたいと思ってるんだけど」

「移動キーを使ってみたいなんて言うのはこの世でグレンジャーだけだな。僕は気分が悪くなる」

「これだからお坊ちゃんは。いつもあれだけ自分の家の豊かさを誇ってるのに遠距離移動にも慣れてないの?」

「ああ、そうだな。汚い家の不快さに慣れている君にとっては移動キーぐらい余裕なんだろう。君の父親の身なりときたら」

「なんだと? マルフォイ」

「先に煽ってきたのはお前だろ、ウィーズリー」

「はいはい。やめやめ」

 

 僕らは悪口を言い合うけど、さすがに立ち上がれず寝転がったままだとお互いに迫力がない。僕らは何も言わずそっぽを向いた。

 

「噂をすれば……あそこにいるの、ロンのお父さんじゃない? もう一人、誰かがいるみたいだけど」

「ああ。ホントだ。ここから聞こえるかな。パパ!」

 

 そう僕が叫ぶと、返事代わりなのかなんなのかまばゆい光で突然僕らは照らされた。

 光ったのは……マグルの機械だよね、確かあれは。

 パパともう一人の物陰はその光ったマグルの機械に乗り込み……なんと、それは鈍い音をたてて動き始めた。マグルの機械はホグワーツの中では動かないはずだけど、それでも動くところを見ると、魔法で動いてるのかな?

 

「あれは……自動車だわ」

「痔ろう車?」

「でも、おかしいわね。前触った、魔法族が一から作ったラジオとかと違って明らかにその辺で売ってる物だわ。非魔法族の機械の製品に魔法をかけるのは違法のはずだけれど……」

 

 僕の問い返しをハーマイオニーはスルーして自分の世界に入った。え、それって違法だったの? パパはマグルの機械の大ファンで、ママに隠れて車庫というところでいじっているのをよく見かけた。

 これは完璧に大丈夫で99パーセント合法で念のため万が一を考えて保険をかける意味でしかないが一応絶対人には話すな、ぐらいしか僕には言ってなかったから合法だと思ってたけど……

 その、マグルの機械はグラウンドの外、僕らの横でピタリと止まり……扉を開けて中から人が出てきた

 

「やあロン! これって……クールだぜ!」

「あ、ディーンか。パパといるなんて珍しいね」

「いい時代が来たものだ、マグルの機械を弄り放題とは! ああロン。お前の友達のトーマスくんから色々聞いてな! 彼はマグルの機械に詳しいようだから、いろいろと手伝ってもらったところだ」

「パパ、さっきハーマイオニーが言ってたんだけど……それって法律的に大丈夫なの?」

「……はっはっは! いま、マグル製品不正使用取締局には職員は誰もおらん! 補充もないようだ……非合法と判断する人間がいないということは、非合法ではないということだ!」

「パパ。僕はなんにも知らないから。ママにバレたときかばわないからね」

「大丈夫だ。モリーは……合法だと信じている」

「パパ……」

 

 僕はパパを憐れみの目で見る。なんでそんないつか絶対にバレる爆弾みたいなウソをつくかなあ。

 

「それにだな、君らに関係ない話でもないんだぞ? アイルランドへはこれで行く。まあ、飛び立ったあと競技場からはちょっと遠いところにこっそりと降りる予定だが……」

「この車が飛ぶの!? そしてそれに乗ってアイルランドまで!? それだったら絶対非魔法界の旅客船なり飛行機なり使うほうがマシだわ!」

「ハーマイオニー、絶対やめたほうがいいよ。この車に乗りたくないなら君一人とか、せいぜい数人はフェリーとか飛行機で行くのはアリだと思うけど」

 

 悲鳴をあげたハーマイオニーに対して、ディーンが否定する。

 

「去年の夏休みにさ、ロンとネビルを連れて一緒にフットボールスタジアムにいったんだよね。まあ……いろいろとすごかったよ。楽しかったけど」

「え、僕らなにかしてた?」

「付け加えるならあの二人ですらマシなほうだと思う。僕は正直、他にもお客さんがいる旅客船の甲板にジョージとフレッドを放ったらたぶん1分間に100個は機密保持法を破るだろうし、飛行機に載せたらその飛行機はなにかひどいことが起きてカナリア諸島にたどり着くことになると思う。君、止められる自信、ある?」

「……やめておくほうが無難ね」

 

 そんな目立つようなことしたかなあ……服装だって地味な紫色の頭巾とケープだったし、杖だって隠してたしなにも問題ない格好だと思ったけど……

 

「まあ、これはさておいて」

「さておいていい問題かなあ、パパ……」

「大人はさて置くべきときはさて置くんだよ、ロン。ゴホン……君らの次の対戦相手が決まったようだぞ」

「え、どこ!?」

 

 どうやら、パパはただ機械をいじって遊んでただけではなく、僕らに報せを伝えるつもりもあったらしい。ディーンを巻き込んでいたあたり、機械いじりのほうにかなり熱が入ってたみたいだけど。

 

「バリーキャッスルバッツ・U-18だ」

「バッツか。地元のチーム相手ってのはやりづらいけど、そんなに強いチームではないよね」

「キャノンズほどじゃないけどね」

「やめてよハリー。そりゃ、キャノンズより下はないけど……自分で言ってて悲しくなってきた」

 

 バリーキャッスルバッツといえばアイルランドのプロ・クィディッチチームだ。U-18だから18歳以下の選手で構成された下部チームということになる。

 プロとはいえ年齢的には僕らより少し上。相手としては与し易いほうじゃないか?

 そう僕が楽観的に考えている中で、マルフォイだけが難しい顔をしていた。

 

「いや。彼が出てくるなら……相当に手強い相手になるかもしれん」

「誰のことだよ、マルフォイ。さすがに贔屓じゃないチームの若手までチェックしてないから誰がいるかとか全然知らないや」

「僕も別に詳しくはない。だが、情報が入りづらくなったホグワーツにおいても、人脈をいかして情報を集めている父上がちらっと言っていたのを覚えている。ライバルチームがアイルランド代表シーカーを擁していることから、対抗するために海外から代表クラスの若手を引き抜いてきたと。今までうちのチームはハリーというシーカーの質的優位が勝ち筋の一つだった。だが……この相手は流石に厳しいかも知れない」

「いつもの父上自慢はいいから。もったいぶらずに言えよ」

 

 そう言ってマルフォイは、僕でも知っている現代クィディッチのスターの名前を出した。

 

「バリーキャッスルバッツには、ブルガリアの代表シーカー……ビクトール・クラムがいる」

 

 

 

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