ヴォルデモートなんていない   作:taku1531

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39.キミはともだち

「おかえりなさい、ハリー。あら、トンクスさんも一緒なのね」

「ただいま、ママ」

「バレちゃいましたんで開き直って送ってくことにしました。それじゃ失礼しますね」

 

 僕を玄関先まで送っていったトンクスさんが、手を振りながら姿くらましで消えていった。

 

「ずいぶん荷物が増えたわね。あら……これは」

 

 僕が拡大呪文付ポーチから荷物を僕が出していたところ、ママが目をつけたのはやはりいちばん目立つもの。

 ダフネさんからの誕生日プレゼントだった。

 ポーチから出されたばかりのケージに入ったシロフクロウは、僕とママを交互に見ながら首を傾げた。

 

「飼っていいよね?」

「どこで貰ってきたのよ」

「ダフネさんから誕生日プレゼントで貰ったんだ。ダメって言われたら家出する」

「はいはい。言わないわよ。それよりちゃんとお礼するのよ、先方の誕生日はちゃんと聞いた?」

 

 言われてみれば……僕は誕生日プレゼントをもらったのにダフネさんの誕生日のほうは知らない。

 

「ちゃんと聞いときなさいよ。忘れたらダメよ」

 

 ママは僕の顔で答えを察したのか、すぐに言葉を継いだ。

 理屈ではわかるんだけど……結構ハードルが高い。女の子に誕生日を直接聞いたことなんて無いし。

 まあ、今すぐ聞く必要もないだろう。例えば学校で顔をあわせたときとかにそれとなく話題に出せば……

 

「今日聞くのよ? いい?」

「はい」

 

 釘を刺された。ママが正しい。

 

「ん? ハリー、帰ってたのか。どうだった? バッチリだったか」

 

 はやくダフネさんへの返事を考えないと。

 この子の名前も決めなきゃいけないし。

 

「おい。ハリー。返事しろ、返事」

 

 そう思って僕は階段を昇り、自室へと入ってベッドに転がり込む。

 目の前に置いたケージの中でシロフクロウはこちらの顔をじっと見て、扉を翼で叩いた。

 出してくれと催促しているのだろう。大人しくその指示に従い、僕の部屋の中に放すとフクロウはパタパタと部屋の中を舞い始めた。

 

「君の名前、どうしよっか。ダフネさんからのプレゼントだしとりわけ素敵な名前にしないと」

 

 そう考えながら魔法史の教科書をパラパラめくる。

 目の前のフクロウは僕の苦労を知ってかしらずか飛ぶのに飽きたか、結局ベッドの上に戻ってきて寝転んでいる僕の髪をつついている。

 ダフネさんが選んだだけあり、とても美しい毛並みだ。こいつは世界一美しいフクロウかもしれない。

 もちろんかわいい。かわいい……かわいい……

 

「ああああ! ダフネさんすっごいかわいかった!」

 

 バーカムステッド城についたときは興奮して気付かなかったけど手まで握って歩いてしまった。

 今思うとあまりにもマナーが欠けていたと思う。

 

「その後僕にプレゼントもくれたし、嫌がってないよね……?」

 

 そうとは言えない。少なくとも前々から用意してたのは間違いないのだから、プレゼントを渡すぐらいは社交辞令でもしてくれるだろう。ダフネさんは優しいから。

 でも、それと僕が嫌われてないかどうかは別だ。僕は冷静なのでそこを切り分けて適切に評価することができる。

 プレゼントをもらったぐらいで舞い上がるのはよくない。

 

「でも嬉しいなあ……!」

 

 ごろごろとフクロウを抱えながらベッドで転がる。

 本当に素敵なプレゼントだ。僕の好きな色が白だと言ったことも覚えていたみたいだし。

 フクロウは僕に抱きかかえられると迷惑そうに腕を噛んできた。

 

「わあ、ごめんごめん。そうだ、君の名前を決めないといけないんだった」

 

 送ってくれたダフネさんにちなんだ名前にするといいかもしれない。ダフネさんといえばいつも凛としてて、横顔が美しくて、もちろん横顔以外も素敵なんだけど、取り分け僕を見ながら笑うときの表情はすごい綺麗で……

 まずい。思考がどんどん脱線していく。ひとまず頭を振って身を起こす。

 フクロウは僕の腕から脱して、開かれたままの魔法史の教科書に留まった。

 ページは中世ドイツの項目。聖人にして魔法戦士、南ヴィーラリーダーシップ会議を結成し、ヒトの魔女ながらヴィーラのために戦った『聖人ヘドウィグ』の挿絵が本の中で勇敢に旗を振っていた。

 

「これだ! 君の名前はヘドウィグでどうかな!」

 

 ヘドウィグと名付けられたフクロウは、同意するかのように翼を大きく広げてよじのぼり、僕の肩に留まり直した。どうやらお気に召したようだ。

 

 ひとまず問題は一つ解決した。とはいえ、僕にはもう一つ難題が残っている。さあ、どうしようか。ダフネさんからもらったヘドウィグの最初の一通に当てるのは決定として、どう切り出すか……彼女の名前をヘドウィグにしたところから書き出して……

 僕はヘドウィグを肩に乗せたまま起き上がり、手紙を書くために机につこうとすると、ヘドウィグが体を起こしたことへの猛抗議を僕の耳に向かって始めた。いたい。

 

「わかったわかった。ほら、ヘドウィグは机に留まってなよ。……さて、どうしようかな。『ダフネさん、誕生日プレゼントありがとう』……って感謝から始めるのが無難かな。でも今日一緒にいるときに何度も言ったしな……わざわざ手紙で繰り返すのは変かな……?」

 

 

 ─────

 

 

「グッドモーニング! ハリー! ママ、トースト貰ってくよ」

「……」

「ハリー! 昨日のデートはどうだった? 楽しんできたか?」

「……」

 

 昨日の夕方からハリーが俺に口を利いてくれない。どうやらなにか怒っているようだが……理由がわからない。

 俺がやったことといえば俺の子供時代の古着をうまく魔法で仕立て上げて、それをあえて更にボロボロにしてハリーに最高にかっこいい服だといって勧めただけなのに……かっこよかったよな!? たぶん! リリーも何も言ってなかったし!

 ハリーが相手をしてくれないのでしょぼくれながら一旦ダイニングを出てキッチンへと向かう。

 リリーならあんなにハリーが怒ってる理由がわかるかも知れない。

 

「なあリリー、ハリーが怒ってるみたいだけど、俺なんかしたか?」

「あんたの見繕った服、最高にダサかったわよ」

「マジで!?」

 

 そんなはずは……めちゃくちゃかっこよく見えたが……と思うが、冷静に考えてみると俺はそんなにファッションに詳しいわけはなかった。

 なんで俺はあんな自信満々に勧められたんだ? 不思議だ。錯乱の呪文を受けていたかもしれん。

 

「それじゃフラれて帰ってきたわけか? 悪いことしたな……」

「なんとかなったみたいよ。だからまあそのうち機嫌も戻るでしょ」

「ならいいんだが」

 

 そう言いながらまな板の上の刻んだトーストをつまんで、エッグスタンドに乗せられたゆで卵を割って中に浸す。

 うむ。いい半熟具合だ。流石リリー。

 

「あ、そうだ。今日は俺ホグワーツに呼ばれてっから。たぶん来期に向けての申し送りで。言ったっけ?」

「言ってないわよ。もう、前の日から言っときなさいよ」

「悪い悪い」

 

 9月の始業式からホグワーツが始まるのは生徒だけ。実際はその前からホグワーツのスタッフや住人はフィルチさんからほとんど首無しニックに至るまで大忙しだ。

 

「よーしハリー、俺はこれからホグワーツに行くけどなんか用事あるか? かさばる荷物なんか先に俺が運んどいてもいいぞ、ニンバス2000とか!」

「別にいい」

「ハリー、昨日は俺が悪かったって……ごめんな。俺だってミスぐらいするんだよ。な?」

「ミスばっかりじゃない?」

「ママ……ハリーの当たりがめちゃくちゃ強い」

 

 結構怒ってるな、これ。悪気はなかったんだよ、悪気は!

 目すら合わせてくれないハリーに手を振りながら煙突飛行粉(フルーパウダー)を使う。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校闇の魔術に対する防衛術(DADA)教授室!」

 

 噛みそうになるぐらい長い目的地を唱えると、見慣れた部屋に飛ぶことが出来た。

 目的地が長いと難しいし誤ジャンプもよくあるし、煙突飛行ネットワークを利用した移動が魔法使いにとって人気がない理由はそこなんだよな。

 あとは廊下を歩いて目的地である校長室に向かうだけだが……邪魔が入った。

 

「おおぉぉぉぉぉ! でっかいポッターちゃんが廊下を歩いてるぅぅううう!」

「うお、石化したままじゃねえのか!?」

「ざーんねん! 俺はあんなんじゃ止められないの!」

 

 どうやら、自力で復活したらしい。まあピーブズのために貴重な魔法薬を用意するやつなんていないだろうしな……それにしてもバジリスクの邪視すら時間はかかったとは言え跳ね除けるとは。

 まあ、こいつはこんなんだが、単なる幽霊ではなくホグワーツ城の中に遥か昔から存在しているポルターガイストだ。神秘性ではバジリスクに負けてはいないだろう。

 

「そんなことよりでっかいポッターちゃんに悪戯し放題って聞いた! 食らえ!」

 

 ピーブズが髭もじゃぶくぶく泡(スタブル・バブリング・バブル)を放ってくる。

 もちろん魔法を使えば避けたり弾くのは容易だ。

 だが――ここはあえてそのまま受けてみせる。

 

「……!?」

 

 案の定ピーブズは無抵抗の俺を見てビビっている。

 

「あ、あれ……? でっかいポッターちゃん、体調でも悪い……?」

「いや。お前がそういうつもりじゃなかったのはわかってるが、結果的にお前のおかげで俺の息子のガールフレンドの命は助けられたみたいだからな。礼ぐらい言っておこうかなと」

「えっ……怖っ……感謝とかされたくないんだけど……」

「そういうなよ。ま、今後もよろしくな」

 

 そう言って別れると後ろでピーブズが「ポッターちゃん……悪戯の受けすぎでおかしくなったのかな……」「というかあの子、おちびポッターのガールフレンドなのね……」「よし! このやるせない気持ちはちびポッターのほうをからかって晴らそう!」などと呟いている。

 ヤバい。またハリーを怒らせる材料を増やしてしまった気がする。

 まあでも黙っとけばバレないだろ、たぶん。俺がピーブズにからかう材料を与えたなんてこいつがそう言わなきゃバレないはずだ。

 

 つまり絶対バレるってことだ。どうしよう。

 まあ、起きてしまったことは仕方ない。忘れて切り替えるべきだ。責められたらとぼけてピーブズが嘘をいってると主張しよう。完璧な作戦だ。

 

 とりあえず今行くべきは校長室だ。それから考えよう。

 いつものように合言葉を唱えて校長室の扉を開く。

 

「ポッター。剃刀の使い方を忘れたのか? 夏季休暇の間に頭が空っぽになるのは生徒だけではないようだな」

「ピーブズから髭もじゃぶくぶく泡(スタブル・バブリング・バブル)を食らったんだよ。つーかあいついつの間に復活したのな」

「あれはああ見えてホグワーツの護りの一つじゃからのう。校長が存在を否定しない限り、存続し続けるという性質を持っているそうじゃ」

「なんで否定しないんです?」

「歴代校長で考えは異なるが……少なくともわしは生徒が成人し、魔法界に出るにあたって悪意あるゴーストやポルターガイストの存在を知らないのは非常に危険だと考えておる。イギリスには特に多いからのう。その点、ピーブズは悪意はあるが危険は小さい。教材としては最適じゃ」

「マジか。てっきり面白いから放置してるのかと……」

「うむ。そちらのバージョンの説明を使うときもある」

「真意はどっちなんだ……?」

 

 校長室にはお馴染みの面々。陽気な顔のダンブルドア校長に、仏頂面のスネイプ……あれ? 今日来期の引き継ぎじゃないの?

 

「この3人だけでいいのか? 来期の話だと思ってたぜ」

「もちろん。その前にいくつか先んじて話さねばならぬことがあっての。では先に、ジェームズにとって良いニュースから」

「おっ! いいねえ、ボーナスか? ボーナスだろ?」

「うむ。そのようなものとも言えるのう」

「濁したってことは違うな?」

 

 ここのところ、わけのわからんもの買うための小遣い減らされてるんだよな……

 一気にボーナスが貰えたらいろいろ悪戯グッズを買い揃えられたんだが……

 

「昨年度はいろいろトムが仕掛けてきたじゃろう? そして、今年はさらに激化すると予測されとる。予算がギリギリのホグワーツ財政としては手痛いところじゃが、教員スタッフとは別に人員を増やすことにした。まず、人員を増やす箇所としては医務室じゃ」

「妥当なところだな。マダム・ポンフリーが狙われていた可能性は高い。リスク分散の意味でも、学期末の襲撃のようなのに対抗する意味でも多いにこしたことはないだろう」

「後から妥当だのなんだのそれらしいことを言うのはお前が空っぽな証拠だな、ポッター。そう思うならなぜ提案しないのだ?」

「悪かったな! はいはい、考えておりませんでした!」

 

 スネイプが茶々を入れてくる。

 なんかいつにも増して発言が刺々しい気がする。なんかやったかな。

 

「これはセブルスの進言を取り入れてのものじゃな。実に頼もしい」

「校長。もしや私が結果に満足していないことを承知の上で言っているのですか」

「満足はしておらぬが、納得はしておるじゃろ?」

「私としては、納得すらもできなくなる前に次のスタッフを見つけておいて欲しいものですが」

 

 どうやら新たに入ってくる人員にスネイプは納得していないらしい。誰を入れたんだ? グリフィンドール生だろうな、おそらく。

 

「では、紹介しよう。ホグワーツ卒業後、聖マンゴ魔法疾患傷害病院で務め、魔法医(メディウィザード)としての研鑽を積んできたが、私生活の変化からスコットランドでの勤務を求めてこちらに赴任してくることになった。ピーター・ペティグリュー氏じゃ」

「や、やあ。ジェームズ。……それに、スネイプも」

「わっはっは! ピーター! 今年からホグワーツで働くのか! お前と同僚になるとはなあ! 私生活ってのはアレか、前から言ってた親御さんの件か?」

 

 後ろの扉を開けて入ってきたピーターの両手を掴んでぶんぶん振る。

 なんだよ、水臭いな! ホグワーツで働くのなら教えてくれてもいいのに!

 

「私に対する挨拶は不要だ。永久に」

「あー……おそらくそうもいかなさそうで……ま、まあ……学生時代はいろいろあったけど、よ、よろしく……」

 

 スネイプはこれ見よがしに大きなため息を付いた。いつものスネイプだ。

 まあ、ピーターもそのうち慣れるだろう。

 

「いやまあ、伝えるつもりではあったんだけど、ホグワーツへの赴任自体はかなり急に決まったんだよね」

「うむ。まあわしも割と慌てて探しておったからの。ピーターをすぐに見つけられたのは僥倖じゃ」

 

 魔法医(メディウィザード)癒者(ヒーラー)も、魔法界で医療に携わる職なのは変わりない。

 が、対応する範囲が違う。聖マンゴの癒者(ヒーラー)は基本的に特定の分野に特化し、知識や技能を掘り下げていく。マダム・ポンフリーも癒者(ヒーラー)だが、あれだけ幅広い範囲の技能を持っているのはホグワーツで長年一人で校医を務めてきたという特殊な事情からだ。

 魔法医(メディウィザード)が扱う主な分野は救急医療だ。魔法使いはタフで、魔法を使った治療はマグルの医術よりも遥かに強力だ。迅速な救命作業さえ間に合えば、ほとんどの場合癒者(ヒーラー)は回復させることができる。

 

「ダンブルドア校長の言う通り、本当に仕事を請けたのは最近なんだよね。どこかの折でジェームズにも伝えようと思ってたんだけど、結局先週まで聖マンゴで仕事詰めで……あそこの魔法医(メディウィザード)の仕事は地獄だから……」

「ああ……」

 

 逆に言えば、それだけ「迅速な救命作業」が重要ということになる。呪いを伴わない、治療不可能な外傷なんてのはほとんどないが、この前俺が銃で撃たれてその憂き目にあったように治療される前に失血死してしまえばどうしようもなくただ死ぬ。

 そのため、専門技能を持った癒者(ヒーラー)とは別に、迅速に患者の場所にたどり着き、最悪一人であらゆる事態に対応できる魔法医(メディウィザード)がいる。ピーターのように常勤の人間もいれば、緊急事態にのみ対応し、普段はまったく別に仕事をしている人間も少なくない。有資格者の数が重要なことから癒者(ヒーラー)に比べれば、資格を得るハードルは低い。

 

 ……が、それは決して仕事が楽という意味ではない。

 ピーターが見習いの魔法医(メディウィザード)の頃、遅くまでキツい仕事をさせられることをよく酒の席で愚痴っていた。俺もシリウスも闇祓い(オーラー)のキツさを同じように訴えたもんだ。

 が、いつの日かそんな機会はなくなった。なぜなら見習いでなくなった魔法医(メディウィザード)の激務は俺達よりも遥かにひどいもので、飲むどころではなくなったから。

 

「ダンブルドア校長から話を聞いた直後の記憶が正直、ないんだよね。ただ、気付いたときには契約を受けたサインが入った書類と、なぜかボロボロ泣いてる自分がいたんだ……今はずいぶん心が軽くなった気分だよ」

「お、おう……それはなによりだ」

 

 仕事もキツい上に、少し前からスコットランドのほうに住んでる親御さんが体を崩していて、こっちの面倒もみながらだったらしい。そりゃ、暖炉でもなんでも使えば移動自体はすぐだが、負担はとんでもないことになるだろうな。

 

「さて、良い知らせの2つ目じゃ。昨年までは主にセブルスとジェームズに仕事の合間を縫ってホグワーツを護るための任務を果たしてもらっていた。しかし、やはり今年からはその負担も、要求されるリスクも高くなる可能性が高い。そこで、それを担当する専門家を配置する。新設されたポストであるセキュリティ・スーパーバイザーは……まあ、経歴を言わんでも知っとるじゃろ。アラスター・ムーディじゃ」

「げえええええ!?」

 

 俺が叫んだ途端、後ろから無言の麻痺呪文(ステューピファイ)が飛んできた。(プロテゴ)で防ぎ安堵したのもつかの間、背後に立っていた義眼の男は再度素早く杖を振る。

 絶対(プロテゴ)で防げないやつだ。局長が同じ手で防げる手を2回使うわけねえ。そう確信したので横に飛ぶと……俺の後頭部にクィディッチカップが激突した。

 

「痛え! 局長、俺が右に跳ぶのわかっててわざとその軌道使ったでしょう!? そういう人読みは卑怯ですよ!」

 

 局長……元局長が使ったのはおそらく召喚呪文(アクシオ)だ。狙いが俺でないから当然、盾では防げない。なので横に跳んだこと自体は正解だったが……それを読んでわざと軌道を曲げてきた。

 

油断大敵だ! 馬鹿者!

「ひいいい! 校長、さっき良い知らせって言ってませんでした!?」

「儂がホグワーツにいることが悪い知らせとでも言いたいのか、ええ?」

「そうです」

 

 当たり前だ。アラスター・ムーディと同じ建物にいることが良い知らせのやつがいるわけがない。

 

「ちょっと待って下さい、校長……これより悪い知らせがあるんですか!?」

「そうだジェームズ。お前のせいで儂が尻拭いをするハメになった。心して聞くが良い」

 

 どうやら悪い知らせとやらを、アラスターは先んじて知っているらしい。尻拭い? なにか迷惑でもかけたのだろうか?

 

「あー。そうじゃの。では話させてもらおうかの」

「校長、なんとなく歯切れが悪いですね。言いづらい話なんですか?」

「まあ、わしが無力じゃったという話じゃからのう」

 

 コホン、と咳払いしてから校長は書類を取り出して読み上げ始めた。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校教員、ジェームズ・ポッター。ホグワーツ理事会の承認のもと、魔法省は2ヶ月の停職を命ずる」

 

 は? 停職? 俺が?

 

 

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