紅魔館の犬   作:村雨 晶

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他の小説のネタを考えていたら思いついた作品。
山なし谷なし落ちなし。

好評だったら連載します。不評だったらこれで終わり。


―追記―

連載に伴って文章を追加しました。


新しい主人

――吾輩は犬である。名前はまだない。

 

少し昔は前の主人にもらったタローなる名があったのだが、前の主人が死に、新しい主人に拾われて以降は名無しも同然だ。

 

思えばここに来るきっかけも随分と奇妙な物であった。

前の主人の家は築100年はあるであろう木造の一軒家だったのだ。

前の主人が老衰で死んでも、私はその場を離れるつもりはなく、そのまま骨をうずめるつもりであった。

 

しかし、ある日ふと目を覚ますと周りは私の知らぬ景色となっており、羽の生えた小人が私を物珍しそうに見ていたのを覚えている。

その後、その小人の者たちになにやら色とりどりに輝く光をぶつけられて命からがら逃げた時に見つけたのが真っ赤な屋敷であった。

小人たちは屋敷を恐れるように近づいては来なかった。

 

何か食料をもらえないだろうかと屋敷の周りをうろうろしていると、門のあたりにいた赤い髪のやたらと大きい人間が私を見つけた。

随分と暇を持て余していたらしいその人間は私を見つけるや否や私に近付き、抱き上げて全身を撫ではじめた。

なかなか心地のいい撫で方に私が目を細めていると、突然私を撫でていた人間の額にナイフが突き刺さり、傍らに銀髪の少女が立っていた。

年で衰えているとはいえ、私の鼻に感知させずに近づいてきた人間は彼女が初めてであったが故に驚いて思わず大きく距離を取ってしまった。

 

すると銀髪の少女は無表情ながらも少し悲しそうな雰囲気を出したので申し訳なくなった私は彼女に近付き、手を舐めて頭を擦り付ける。

こういう時、人の言語を話せないというのは不便なものだ。

 

しかし彼女は私の言いたいことが分かったのか、雰囲気を柔らかいものに変え、頭を撫でてくる。

他にもいろいろな動物を撫でたことがあるのだろう、先程の人間よりも撫で方がうまい。

 

すると、ナイフが刺さっていた人間が立ち上がり、私を撫でていた少女に私を飼えないか相談し始めた。……今更だが、ナイフが刺さっていた額は大丈夫なのだろうか?人間は頭に刃物が刺されば死んでしまうものだと思っていたが。

 

少女が言うには私を飼うには屋敷の主人の許可が必要らしい。

前の主人に拾われる前は野良として生きていた私だ。

飼われようと飼われまいと私にとってはどうでもいいのだが。

 

ふと、屋敷の中から誰かがこちらに近づいてくるのが匂いで分かった。

目を向けると、そこには10歳程度の幼女が傘を差して立っていた。

だがなんとなく、その辺の人間とは別の感じがした。

恐らく天才だとかそういう人種だろう。才能のある者は何となく本能で別格だと分かるものだ。

 

幼女は少女に話しかけ、何事か聞いている。

少女が話を終えると、幼女は私をじっと見て、一撫ですると私を飼うと言い出した。

どうやら彼女がこの屋敷の主人らしい。

珍しいことだが、まあ彼女にも複雑な事情があるのだろう。

 

飼うことが決まると、赤髪の人間が張り切って門の近くに私の小屋を建てた。

どうやら私の寝床はここらしい。

まあこの者達に飼われるというのならそれでいい。

自分は飼い犬として役目を果たすだけである。

 

 

 

 

 

それから30回ほど日没が過ぎ、私は未だに屋敷にいる。

時折やってくる白黒の人間に吠えて追いかけるのが最近の私の役目だ。

すると時折線の細い紫色の娘がジャーキーを置いていってくれるようになった。

よく分からないがありがたいことだ。

一回だけ金髪の娘が私を一日中構い倒した日もあった。

顔が幼女に似ていたので妹か何かであろう。

最初は恐る恐る触れていた娘は何かを握る動作をした後、嬉しそうに笑い、私で遊び始めた。

子供が無駄に元気なのは知っていたが、さすがにあの日は疲れた。

 

その他にも狐のような女や、烏のような女、巫女服を着た女は時折現れ、すぐに立ち去る。(たまに大きな騒ぎが起こるときもあるが)

 

そういえば、屋敷の主人である幼女は私に名をつけなかった。

付ける必要がないと思っているのか、それともうっかり忘れているだけなのか。

まあ、名前などさしたる意味を持たない。

 

私は今日も赤い屋敷を守るだけなのだから。

 

 

 

 

 

「えー、では、犬の命名会議を始めるわ。議長は私。書記はパチェよ。何か意見はある?」

 

紅魔館ホール。

いつもは紅魔館の住人の食卓であるこの場所は今は会議室へと変貌していた。

この模様替えに完璧で瀟洒なメイドの奮闘があったのは言うまでもない。

 

「はい!狗音なんかいいと思います!」

 

「中国語じゃない。紅魔館に合わないから却下。次」

 

美鈴が勢い良く手を上げて発言するが速攻で切り捨てられ撃沈。

 

「ソル、なんかいいんじゃないかしら」

 

「吸血鬼が飼うのに太陽の名前なんか付けられるわけないでしょう!却下!次!」

 

パチュリーが続けて発言するが、レミリアの反発を受けて撃沈。

 

「はい!インキュバスなんかいいと思います~!」

 

「男の淫魔の種族名でしょうそれは!趣味を前面に押し出し過ぎよ!却下!次!」

 

小悪魔が嬉々として発言するが色々アレだったので撃沈。

 

「ポチ、なんてどうでしょうか」

 

「平凡すぎ!却下!」

 

咲夜が発言するがやはり撃沈。

これでは埒が明かないとパチュリーがレミリアに声をかける。

 

「だったらレミィ、貴方はどんな名前がいいと思うの?」

 

その問いに対し、よくぞ聞いてくれたとばかりにレミリアが胸を反らして立ち上がる。

 

「当然だ、あの犬の名前は――「スカーレットドッグ」だ!」

 

その名を聞いた瞬間、部屋の中の温度が五度ぐらい下がった気がした。

 

「あはは、お嬢様、それはちょっと……」

 

「相変わらずレミィのネーミングセンスは壊滅的ね」

 

「そ、それはさすがに可愛そうじゃ…」

 

「申し訳ありません、お嬢様。フォローしきれません」

 

美鈴と小悪魔が遠慮気味に、パチュリーがバッサリ斬り伏せて咲夜がさりげなくとどめを刺す。

 

その後、命名会議は紛糾し、最終的に名前は保留となった。

あの犬が新しい名を得るのはいつになるか――それは神さえも分からないかもしれない。

 

 

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