紅魔館の犬   作:村雨 晶

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作者のメモを見つけた。
読んでみよう。


犬のデータ①

見た目はただの柴犬だが、妖力を持った妖犬である。
紅魔館住人はこれを承知で飼い始めた。
本人(犬)はまったく自覚がないため、自分は普通の犬だと思っている。


第2話

 

 

 

「おや?美鈴さん、ここって犬なんて飼ってたんですか?」

 

「最近飼い始めまして……。可愛いでしょう?」

 

「ええ、可愛いですけど、洋館に柴犬ってなんだかミスマッチですね」

 

私が温かい日差しにうとうとしていると声が聞こえてきた。

片方は赤髪だが、もう一人は聞いたことのない声だ。

 

確認のために目を開けると、私を覗きこんでいる緑色の髪の娘が見えた。

幼女や赤髪を見て思ったが、この辺りは変わった髪の色をしている人間が多いのか?

それともテレビで見た「ぎゃる」と呼ばれる人種なのだろうか。

 

「あ、起きた。美鈴さん、この子撫でてもいいですか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。でもあんまり乱暴に撫でると拗ねちゃいますから気を付けて」

 

拗ねるというか疲れるからやってほしくないだけなのだが。

この屋敷だと撫で方が下手なのは幼女位だからあまり気にはならないが。

 

「うわ、ふわふわ……。手入れが行き届いてますねー」

 

「咲夜さんがいつもブラッシングしてますからね。いつもモフモフしてますよ。抱き心地がいい上に気持ちいいんです」

 

毛並みを褒められるのは嬉しいが、赤髪、お前が私を抱いて寝るせいで銀髪娘がナイフを投げるたびに私の体に血が付くんだが?

 

「っと、和んでる場合じゃありません。レミリアさんに用があったんでした」

 

ふむ、幼女の客か。では案内するとするか。

私はすっと立ち上がり、緑娘の前に立つ。

 

「あれ、もしかして案内してくれるんですか?」

 

「ええ、この子は番犬と案内役を兼任してますから。付いていけば確実に会えます」

 

わん、と一声かけてから屋敷内に入る。

緑娘は慌てて私の後をついてきた。

 

さて、幼女の現在地は、と。

私は幼女の匂いで場所を探す。結果、幼女はどうやら図書館の方にいるらしい。

 

やがて図書館に到着し、ドアノブに括り付けられているロープを引っ張って扉を開ける。(このロープは銀髪娘が取り付けてくれたものだ。おかげで屋敷内の移動が楽になった)

 

図書館内には幼女と紫娘、悪魔女がいた。

幼女はどうやら紫娘と談笑していたようだ。

 

「レミリアさん!」

 

「ん?確かお前は守矢の……」

 

「東風谷早苗です。実は今回レミリアさんに協力していただきたいことが…」

 

「また何か企んでいるの?まあ私に被害が来なければ別にかまわないけどね」

 

「ありがとうございます!じつはレミリアさんの能力でやってほしいことがありまして……」

 

幼女と緑娘が話し込んでしまったため、手持無沙汰になってしまった。

帰るときも案内は必要だろうし、戻るわけにもいかない。どうするか…ん?

 

ふと本棚の方を見ると銀髪娘が本棚間に設置されている椅子で舟をこいでいるのが見えた。常に仕事をしている彼女にしては珍しいことだ。

私は銀髪娘の方に足を向け、彼女のもとに辿り着くと彼女の足元に毛布が落ちていることに気が付く。

どうやらここで仮眠をとっていたようだ。

 

私は毛布を咥えると、銀髪娘に掛けた。

すると、毛布は体を包んでいるが、足元までは掛かっていないことに気付く。

 

寝るときは足を冷やしてはいけないとテレビで見たことがある。

私は銀髪娘の足が私の毛で隠れるように伏せる。

こうすれば足が冷えることはないだろう。どうせ緑娘は幼女との話でしばらくはいるだろうし、湯たんぽ代わりくらいはしようではないか。

 

 

 

 

 

30分。それが私の決めた仮眠時間。

 

私の仕事は大量にある。それこそ一日では終わらないほどに、だ。

しかし私には幸いにも時間を操作する能力がある。それをフルに使えば仕事を一日の内に終わらせることができる。

しかし、そうすれば当然私の体内時間は狂っていく。

それを調整するために設けているのが30分の仮眠時間なのだけど……。

 

ふと目を覚ますと足に妙な感触があった。フカフカしたまるで毛布のような……。

下を見ると犬が私の足を毛で覆うように伏せていた。

この犬は最近飼い始めたばかりなのだけど、この犬、人間のような気遣いができるみたいなのよね。

来客があれば客を私達のもとへ案内し、新聞が届けられればテーブルの上まで運ぶ。

今回だって、おそらく私の足が冷えないようにここにいたんでしょう。現に起きた私を一瞥して立ち上がっているし。

 

「では私はこれで。よろしくお願いしますね!」

 

「任せなさい。なかなか面白そうだし、私も楽しみだわ」

 

どうやら私が寝ている間に早苗が来ていたようだ。

客人をもてなさないとはメイドとしての名が泣いてしまう。

 

私は早苗を玄関まで案内しようとして――何かに押されて座っていた椅子に戻されてしまう。

 

「わん」

 

そこで休んでろ、これは俺の仕事だ、とばかりに犬は私を流し見ると、早苗を連れて図書館を出て行ってしまった。

 

「どうやら貴方、心配されてたみたいよ?彼に」

 

お嬢様が意地悪な笑みを浮かべながらこちらを見る。

 

「まったく、犬にもモテるなんて人気者ね、咲夜」

 

パチュリー様もお嬢様と同じ笑みを浮かべながらからかってくる。

 

「あれは色々例外のような気がしますが」

 

「まあね。妖犬とはいえ規格外よ、あの犬は」

 

「何気に紳士ですよね、彼って。犬じゃなかったら惚れてるかも」

 

こぁも本を運びつつ話に参加してくる。

 

「あら、ああいうのが好みなの?あなた」

 

「性格の話ですよう。人間か人型の妖怪だったら即ベッドインです!」

 

さすがは悪魔というべきか、その手の話題になると彼女は途端に生き生きとし始める。

 

あの犬に対する他愛もない雑談は、寝ていたらしい美鈴が犬によって噛み起こされて悲鳴を上げるまで続くのだった。

 

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