呪い満ちるこの空を -flying MIKO-   作:甲乙兵長

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久しぶりです。

気が付いたら一か月も空いてました。

更新してなくても読んでくださってるかたがいらっしゃるので、

なんとか応えようと頑張りました。




【第玖話:紅白巫女は巻き込まれる】

 

 

 呪術高専夏季の一大イベント。

 

 

 東京・京都姉妹校交流会。

 

 

 環境変化や気温の変動などによって生じるストレスが、もっとも多く呪いとして現れやすいのが初夏の繁忙期。それを越えると、基本的に呪いの発生が落ち着き始め、わずかながら呪術師のスケジュールに空きが生まれだす。年中忙しいという場合もあるが、おおよそのルーティンは毎年同じ。

 交流会は、そんな晩夏に行われる。

 両姉妹校所属の若き呪術師たちが己が研鑚の成果で(しのぎ)を削る呪術合戦。

 命を奪う、再起不能になるような負傷を与える以外ならなんでもあり。

 開催期間である二日間のうち、初日は団体戦、二日目が個人戦で行われるのが恒例だ。

 二・三年メインではあるものの、交流会にこれといった参加資格はないため、人数合わせとして一年が駆り出されることも往々にしてある。現に、去年はひとり、今年は二人、東京側から一年が参加する予定らしい。

 等級による区別なども存在しないため、完全な乱戦形式となっている。

 

「シード権を主張したいわ」

「アナタはサボりたいだけでしょ?」

「当たり前よ。ようやっと真夏のクソ忙しいスケジュールが片付いたと思ったらコレだもの。ぶっちゃけあたし出る必要性ないわよね? メリットないし。今からでも京都戻ってエアコン利かせた部屋で猛烈にぐうたらしてたいんだけど」

「ダメだ。特級だからといって交流会は免除にならない。去年の乙骨のときもそうだったろう」

「来てるといいがなぁアイツ。今年は去年の雪辱戦だ。博麗、お前も気張れよ」

「だからぁ、頑張んのがイヤだっての。あんま暑苦しい気配漂わせないで、ただでさえムサいんだから」

「っていうか、霊ちゃんの言い分だと個人戦はどうにかなっても、団体戦はどうしようもないよね?」

「そこはあんたらの出番でしょ。期待してるわー」

「ただただ怠慢のダシにされているだけでしかないナ。いっそ清々しいふてぶてしさダ」

「そうです! 去年は乙骨って人に惨敗してますからね! 知りませんけど! 同じ特級の霊夢さんは、存分に活躍してもらわないとっ。京都の面目黒塗りのままですよ!」

「ねぇ、なんで霞こんな気合入ってんの?」

「交流会で活躍すれば、現役の術師から注目されて推薦が受けやすくなるからでしょ。貧乏解消に、一刻も早く昇級したいのよ」

「お姉ちゃんは頑張りますよーっ! 見ていてくださいマイリトルブラザーズ!」

「三輪、あまり気負いすぎれば逆効果だゾ」

「いいんじゃない。モチベーションがあるのは。ま、実際、今年の団体戦は霊ちゃんいるから勝ちはほぼ既定路線だろうし、個人戦で下手こきすぎなきゃなんとかなると思うけど」

「楽観な上に他人任せは関心しないな。呪霊との戦いでもトラブルはつきものだ。どんな内容で争うかは関係者しか知らないが、必然、東京校との衝突は避けられないだろう。呪術師同士ともなれば様々な要因の重なり合いが予想される。容易に済むと油断していると、足元をすくわれるよ」

「はいはいわかってますよーだ」

「加茂の言うとおりね。あたしが全部片づけたんじゃあんたらの成長に繋がんないでしょ。つまり、あたしはなるべく手を出さないほうがより緊張感を持ってのぞめるわ。獅子は若人(わこうど)を千里の滝に放り込むってヤツよ」

「霞じゃないんだから反射で適当に喋るのやめてくれる? ツッコむのも億劫だけど慣用句無茶苦茶。しかも、どっちにしろサボる言い訳にはならないし。まったく・・・・・・」

 

 交流会会場、高専東京校の敷地を一行は侃々諤々(かんかんがくがく)進む。

 やがて見えた石階段を昇り切った先の広場に、彼らは待ち構えていた。

 

 

 眼鏡をかけたポニーテールの、どこか見覚えのある顔立ちをした少女は、東京校二年の禪院真希(ぜんいんまき)

 口元までを制服の襟で覆い隠す白いマッシュルーム頭の少年は、東京校二年の狗巻棘(いぬまきとげ)

 ツンツンした黒髪を逆立たせた冷めた目の少年は、東京校一年の伏黒恵。

 なぜか横に旅行前のような荷物を置いて不機嫌そうに腕を組みガンを飛ばす茶髪の少女は、東京校一年の釘崎野薔薇。

 そして、何度見ても珍生物な二足歩行型大熊猫、東京校二年、パンダ。

 

 

 以上の東京校面子が、現れた京都一行を出迎える。

 その中に虎杖の姿がないのを確認して、まだ合流していないのかと内心呟く霊夢。復活ののちに五条が交流会までには復帰させると言っていたのを知っているからだ。

 

(正直、大見得切った手前、顔合わせ辛いのよね)

 

 複雑な心境に曇る霊夢とは裏腹に、先頭の真依が早速喜々と食ってかかる。

 

「あら、みなさん揃ってお出迎え? 気色悪い」

「乙骨いねえじゃん・・・・・・」

「うるせぇ、早く菓子折りだせやコラ。八つ橋葛切りそばぼうろ」

「しゃけ」

「腹減ってんのか?」

 

 四人の挨拶(?)から始まる両校の顔合わせ。尖った態度は今さらだ。

 その横で、知ってる顔と知らない顔をそれぞれ分析する霊夢。

 

(なかなかクレイジーな一年ね。元気のよいこと。あのマッシュルームが呪言(じゅごん)使いか。暑くないのかしらあの恰好。で眼鏡が真依の姉・・・・・・呪力一般人並みの天与呪縛。悟が()ったあの男は呪力ゼロだったらしいし、さすがに学生でソレと同レベルじゃないわよね。伏黒は相変わらず陰気な調子。虎杖の件とは別で、単純に性格の問題でしょ。ただアイツ、悟によると潜在力で言えばここの全員千切れる次元なのよね、あたし以外で。無自覚なのが盛大な枷になってるけど。パンダは・・・・・・パンダだし)

「てか、そこの女子はなんで制服違うワケ? こちとら夏服でも真っ黒長袖なのに、不公平じゃない」

 

 思考に没していると、釘崎が霊夢を指して不遜に宣う。

 にわかに緊張が走る京都の面子だが、当事者は別段気にした様子もない。相手は察するに自分を知らないようだし、階級を盾に横柄に振る舞うのも性に合わない。権力闘争に明け暮れる老害たちと同類になるのも御免である。

 

「その人は例外が許される立場なんだ。以前話したろ、少年院で、宿儺から俺を助けてくれた特級術師の博麗霊夢さん」

「ああ・・・・・・あんたが、アイツの最期に立ち会ったっていう」

 

 釘崎は特級という事柄より、仲間の死に際に同席したことのほうが重要だったらしい。複雑そうでありながら、険悪な目つきが途端に和らぐ。

 その変容に、初対面だが霊夢は素直な好感を抱いた。

 呪詛師を除いた術師たちが霊夢へ対する反応は大抵三パターン。媚びるか、怯むか、敬うか。釘崎の反応はどれとも違う。席次ではなく純粋に霊夢という一個人を同列認識している証拠だった。

 役職や階級で人間を判断するような、そういった連中の相手は嫌というほど経験している。だからこそ、ちゃんと等身大を見ている釘崎のような人種は喜ばしい。

 

「これはあたしの知り合いが(こしら)えてくれたの。個人で店やってるから、必要なら今度紹介したげる。私服のオーダーも受け付けてくれるし、口利きで割り引かせたりもできるわ」

「マジっすか。ちなみに、相場おいくらくらいで・・・・・・」

「んー、ざっとこんなもん」

「え! 安っ! その服も生地とか結構良さげなのに!?」

「儲けより半分以上趣味でやってるタイプだからね、アイツ。お金に執着がないっていうか。たまに変なコスプレ衣装勝手に作って送ってくるときもあるけど」

 

 それも十分コスプレでは? という共通思考が場に流れたが、誰も口にはしない。虎の尾を進んで踏みに行くバカは生き残れないのだ。

 

「そういえば、霊夢さんが服真っ赤な理由、聞いたことありませんでしたね」

「別に大したものじゃないわよ。リボンに合わせたかったから、必然的に赤白で落ち着いただけ。あと、全員没個性のまっくろくろすけなのダサいし」

 

 三輪の疑問に忌憚なく応える横から、引率の歌姫が段差を昇ってやってくる。

 

「みんな揃ってるようね。喧嘩もしてないようで何より。で、あのバカは?」

「悟は遅刻だ」

「バカが予定通りに来るわけねえだろ」

「誰もバカが五条先生だとは言ってないですよ」

 

 思い思い口を滑らせ、五条へのある種の信頼の置き方を再認識する中、台車のようなものを押しながら噂の当人が現れた。

 いつもと変わらない逆立ち白髪に目隠しの長身男。歌姫は心底嫌そうな、三輪は画面越しの芸能人をナマで見た女子高生のような顔をする。

 妙にご機嫌な様子で海外土産を京都校組(歌姫・霊夢除く)に渡していく姿に、霊夢はそこはかとない予感を覚えた。神感云々などではない、経験則から培われたレーダーが、五条から良くない気配を察知している。こういうとき、五条はろくなことを仕出かした覚えがない。

 

「そして、東京のみんなにはコチラ!」

 

 ハイテンションの教師に対し冷めた目の生徒たちは、公開された台車の中身に思考を深淵へ突き落とされた。

 

「はい! オッパッピー!」

 

 とある肉体系芸人のお決まり芸をかまして登場したのは、宿儺の器・虎杖悠仁。

 霊夢、伏黒、釘崎からすれば、約二か月ぶりの再会である。

 しかも、死別。霊夢と違い、二度と顔を見ることはできないと思っていた伏黒、釘崎の表情は名状しようがない。他の二・三年も、直接顔を合わせるのは初めてな上、すでに故人であった虎杖の出現にコメントのしようがなかった。

 サプライズ出演の当人も、東京組の微妙な反応に、徐々に顔色が悪くなる。

 

「はーい、京都のみなさーん。これが宿儺の器、虎杖悠仁くんですよー」

 

 硬直する虎杖を台車ごと動かし、京都側に向ける五条。十中八九、企画立案の下手人に他ならないが、呵責は微塵も感じられない。明かな愉快犯だ。

 で、京都の面子もなぜか五条のピンクのミイラ人形みたいな土産に夢中であるため、必定、虎杖の困惑面は既知の霊夢へ向けられる。

 

(ンな顔で見られても知らないっての。恨むなら安易に悟の案に乗った自分を恨め)

 

 そっと、視線を逸らす。再会前とは別種の居たたまれなさだった。

 立ち会うのも惨いサプライズを終え、いよいよ交流会一日目・団体戦の競技説明。

 

 

 その名も、『チキチキ呪霊討伐猛レース』。

 

 

 敷地内に放たれた二級のボス呪霊を、先に仕留めたチームの勝ち。ボス以外にも、三級以下の呪霊が複数はなたれ、日没までにターゲットを祓えなかった場合は討伐した総数の多い側が勝者となる。妨害もありだが、死に至る怪我や再起不能になるような手段はご法度。特に目新しさもなく、順当なところだった。

 といったところで、夜蛾にコブラツイストをかけられていた五条が、霊夢へ向けもがきながら手招き。

 

「霊夢、霊夢」

「・・・・・・なに。自業自得なんだから助けないわよ」

「違う違う。いいから。ほら学長も」

「・・・・・・団体戦のおおよそのルールは先の通りだ。だが、今回、去年の結果を踏まえ、一部ルールを抜本的に変更する結論に至った」

 

 なぜか苦々しく眉をひそめ、怖い顔つきをさらに強張らせる夜蛾。隣の楽巌寺も分かりづらいが沈み気味。

 対照的に、能天気な微笑みで近寄ってきた霊夢の頭に帽子のようなものをかぶせる五条。

 

「は?」

「いやぁ、去年の憂太が結構しっちゃかめっちゃか暴れたじゃない? 里香(リカ)ありきとはいえ、特級一人でああも一方的な決着の着きかただと交流もクソもないってことでさー。今年から別枠を(もう)けることにしたんだよ」

「知らんがな。それよかコレの説明をしろ」

 

 霊夢にかぶせられたのは頭頂にカラフル模様の風船が据えられた、昔のバラエティ番組にありがちなオモチャの帽子。

 

「身も蓋もない言い方するとさ、普通に団体戦を行うと霊夢単騎でその他大勢を圧倒しうる可能性が高い。それじゃ他の学生が活躍し甲斐がないよね? そ・こ・で! 当初は呪霊を追いかける競技内容を根本から見直し、特級術師である霊夢を追いかける、んぅチキチキ! 霊夢逃走中ぅー! を、開催する運びになったわけさ! 頭の風船は、ボスのターゲットマーカーだよん!」

「・・・・・・・・・」

「とまぁそういういうわけでー! 色々と変更点もあったけど、ようは霊夢と君ら姉妹校全員で行う鬼ごっこだ! 高専呪術師トップランカーの実力の一端を、身を持って知れる絶好の機会! 盛り上がっていこうぜ生徒諸君! 打倒・特級ってね!」

「帰るわ」

 

 ライブ中観客を盛り上げるアイドルのようにボルテージを加速させる大人げない大人に呆れた様子の学生たち。

 その端で、当たり前のように紅白巫女は帽子を投げ捨てた。

 

 

 





読了感謝です!

続きを投稿したいのですが、交流会の一区切りがまだ全部書き終わってないのです。

だから明日以降の投稿はちょっと決めかねてます。

不安定でごめんなさい。

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