呪い満ちるこの空を -flying MIKO- 作:甲乙兵長
次話投下。
特殊タグとかフォントとか、試験的に活用しました。
チキチキ! 霊夢逃走中~!
新規ルール解説!
①敷地内を移動する博麗霊夢(ターゲット)の頭に付けられた風船(マーカー)を先に割ったチームの勝利。日没までに決着しなかった場合、霊夢一人の勝ち越しとする。以下の順位付けは、討伐した呪霊総数の多い順に決定する。
②霊夢(ターゲット)は生得術式、また攻撃性の高い術式を生徒相手に使用禁止。呪力強化による攻防はあり。ただし、結界術などで自身や風船を守る行為は禁止。また形代で分身を作ったとき、必ずオリジナルだけが風船を保有すること。
③原則、霊夢(ターゲット)は敷地内の呪霊を祓うことは禁止。生命の危機に及ぶ場合はその限りではない。
三つの前提に加え、両校ともに互いの妨害はあり。霊夢(ターゲット)と電話等による意思疎通は禁止など、細々とした判定ラインを明確にして、迎えた正午。
「・・・・・・はぁ~」
派手なターゲットマーカー(呪力でしか壊せない風船)が付属した帽子を間抜けにかぶり、霊夢は遠い目で梢向こうの青天井を眺めていた。
結局、押し切られる形で競技に参加する羽目になった霊夢。
五条の単なる悪ふざけであったなら普通に宣言通り帰る腹積もりだったが、どうにも学長二人も正式に認めた内容であり、今になって覆すのは不可能との言い分。じゃあなんでギリギリまで当の霊夢に報せなかったのかと言えば、逃げ道を封じる意味合いも含んでいたからだ(発案は五条。殺意が湧いた)。
ただ、胡散臭さは隠しきれない。
此度の催し、どこか両校の交流というより、霊夢個人を試している気配があった。
それを直球で五条に訊ねれば、奴は苦笑いしつつ、
「やっぱ分かるー? いや、どーもお
「は? どういう・・・・・・」
「二か月前の宿儺暴走の件。霊夢、宿儺を祓うんじゃなく、悠仁を叩き起こして止めたでしょ? けど、上層部からすると、きっちり仕留めてほしかったのが本音のところなわけよ。自決なんて形じゃなくてさ」
「・・・・・・済んだ案件をグダグダと・・・・・・自分たちで救援に駆けつけられない細工しておきながら、いざ間に合ったらキッチリ殺せって? どんだけ自己中な連中なの。駄々こねるガキかよ」
「ねぇ~。ま、ぶっちゃけ、単なる難癖でしかないわけだから、無視が順当なんだけど、そこに余計な茶々を入れてボヤを大きくしようとする連中がいてさ。禪院家や加茂家の木っ端派閥なんだけどね?」
「もしかして、見合いを一方的に破棄したから? ウッザっ」
「縁談の引き合いにされた当人たちは二の次で、霊夢を追い落とそうとする動きを煽って特級階位を体よく剥奪しようとしてるんだろうね。きみを
「別に、あたしはいいんだけど? 特級じゃなくなろうと、あたしはあたし。階級が博麗霊夢なわけじゃない。むしろ仕事が楽になっていいかもね」
「いやぁそう都合よくは行かないでしょ。そういうやり方が通じるって変な自信付けちゃったらますますバカが助長する。下手すりゃ底の底に辿り着くまでしつこく粘着しかねないよ? 嫌でしょ、四六時中、一挙手一刀足監視されて、揚げ足狙われて。僕なら辛抱ならないね。思わず皆殺しにしてしまいそうだ」
「・・・・・・確かにウザいけど、それと今回が関係あんの?」
「もちのろん。今回の流れは、霊夢の有用性、ないし、危険性を忘れたか、そもそも知らなかったバカの小規模な暴動だ。だったら、改めて知らしめればいいんだよ。きみが連中にとって
「で、
「まっさかカーニバル」
「顔逸らすな。ったく・・・・・・その案を成立させるには、あたしがみんなを圧倒しなきゃならないわけでしょ」
「あっれ~? 自信なさげなのかな?」
「違う。これじゃ交流会なんてのはお飾りで、あたしの当て馬にみんながあてがわれてるようなものじゃない。そんなクソつまんない思惑に納得しろっての?」
「んー大丈夫でしょ。それはそれ、これはこれって呑み込んで自分なりの意義や意味を見出すくらいには、みんな弁えてると僕は思うけど」
「・・・・・・・・・」
「何ごともやってみなきゃ分からない。きみが想定するより、みんな強いよ。油断してると、あっという間に食われちゃうかも」
「楽しそうね」
「そりゃ、若人の成長は眩しくて、愛しいモノさ。立ち向かう壁が高ければ高いほど、挑む側の性根が出る。僕は、僕の生徒を信頼してる」
「喜々として壁を築くサドが言うわね。・・・・・・乗ってやろうじゃない。等級云々のややこしい事情なんざ関係ないわ。向かってくるなら叩き潰す。久々にガチでやったろうじゃない」
「フフン。調子づいてきたね。じゃ、もう一つ、きみのやる気を出させる報奨を提示しようか―――」
そんな会話があったのが数刻前。
最終的には乗り気になったものの、時間を置くと見えてくる己の浅慮。煽り耐性が貧弱になっている自覚もあるが、もはや火蓋は切られようとしている。吐いた唾は飲み込めない。
それに五条の言っていた報奨の件は、十分旨味のある話だ。足元を見られている感が否めないのが腹立たしいが。
珍しく、霊夢の意気を奮い立たせる。
《えー、開始一分前でーす。ではここで、庵歌姫先生に、ありがたーい激励のお言葉をいただきまーす》
《はっ!? えっ、えーっと・・・・・・ある程度のケガは仕方ないですが、あー、その・・・・・・時々は、助け合い的なアレが・・・・・・》
《時間でーす》
《ちょ! 五条アンタ―――!》
何やってんだか。期せずして各所に散らばる学生たちの心が一つになった。
おふざけを挟んだことで、ついに開始刻限に達する。
《それでは、交流会団体戦・・・・・・スタァートっ!》
開幕から十数分。
霊夢は身を隠し手持ち形代を四体の式鬼に変えて学生たちの動向を見守っていた。
瞑想のように瞼を閉ざし、あぐらの姿勢で微動だにせず網膜に直接伝心される複数の情景を観測する。
五感の内、視覚と聴覚を式鬼と同期。不要な嗅覚、味覚は閉鎖。表皮をなぞる大気の動きだけが本体で唯一感じ取れる外部情報だ。
夜蛾に師事して最適化された霊夢独自の傀儡操術。専門分野ではないため、いくつか五感を封じ、感覚の共有を義務付ける縛りで術式の精度を上げている。プログラム通りに動作させるならともかく、マニュアルで四つの異なる身体を操ることは、両手足で全く別の作業をすることよりも困難だ。
そんなマルチタスクを滔々と継続しつつ、各地の状況を把握して思わず溜息が漏れた。
(こいつら、競技に興味なさすぎね)
霊夢(ターゲット)を探すでもなく、雑魚呪霊を狩ってポイントを稼ぐでもなく。各人好きなように振る舞っていた。
虎杖と東堂。伏黒と加茂。真希と三輪。メカ丸とパンダ。西宮と釘崎。
対戦カードとしてはこのような図式。残った狗巻と真依は式鬼の手が足りず捕捉できていない。どちらも索敵に長けているタイプではないが、真っ先に警戒するとしたら射手としての観察力、視力の高い真依だろうか。狗巻は情報が少なく類推が難しい。
あくまで真面目に探していれば、の話だが。
(加茂たちが総出で虎杖にちょっかいかけに行ってたわね。東堂に邪魔されて頓挫したみたいだけど。察するに、宿儺の器存命を危険視した学長の指示かしら? 虎杖を殺せ、みたいな。まぁ東堂は乗るわきゃないけど、生真面目な加茂委員長がいるからねぇ・・・・・・あたしと違って、虎杖じゃなく呪いと認識してたら殺害もやむなしか。三輪なんかは、内心嫌がりはしても正面から反発できる度胸ないし、真依たちはリーダー加茂の旗に続くのが妥当。で、当然、伏黒たちはそれを阻止しようとするわよね。結果、現状に至ると)
競技を放ってやりたい三昧。一応真面目に取り組もうとした霊夢がバカに思えてくる。
不確定要素として狗巻、真依の動向が気にかかるところだが、監視の目は増やせない。今の霊夢では、式鬼の同時操作は四体までが限界だ。
(となれば、それぞれの監視を行いつつ残った二人の奇襲に警戒。しばらくは静観かしら。鬼ごっこっていうかかくれんぼじゃないのコレ。あ、メカ丸・パンダが移動するわね。桃・釘崎とどっちに
文句を垂れる間にも、勝手気ままに変動する天気のように、状況は推移する。
伏黒・加茂は建物内でいちゃついてるようで、気付かれないよう屋外から追跡。
三輪の刀を略奪した真希は姿を見せた真依と因縁の姉妹対決。近距離からの弾丸を掴むとかいう漫画みたいな真似をしでかしてる。
一方の西宮・釘崎は釘崎に軍配が上がったものの、真依の横やりで昏倒。西宮は箒が一時的に使えないせいで徒歩移動を強いられている。じきに索敵、サポートに戻るだろう。
虎杖・東堂戦はいつの間にやら指導じみた形式に置き換わっていた。東堂が虎杖を殴り叩いて矯正しつつ、より上の段階へ導こうとしてるのが見て取れる。虎杖は気難しい理系ゴリラのお気に召したらしい。随分な気に入られようだ。
(総観した限り、戦績は京都が劣勢かな。もうちょっと頑張んなさいよ・・・・・・とか、どの口が言うんだって話だけど。メカ丸とパンダの決着はどうなったかしら。桃か真依に尾けてるのを代わりに送って・・・・・・そういえば霞どこ行った?)
あちらこちらと、一歩も動かないまま忙しなく状況に合わせて式鬼たちを派遣し把握に努める霊夢。気分的にはスポーツ中継を同時視聴しているようなものだが。
すると、そんな彼女の前頭を、馴染みある感覚が貫いた。
「―――っ!」
――片腕の白面――樹木――血――
「っあ・・・・・・く! 今のッ・・・・・・!?」
不意に到来した神感。稀に見る情報量の圧力は洪水のように頭を圧迫し痛みすら催す。
刹那に圧縮された情景の数々を、ひとつずつ解析するより先に行動を起こすべく霊夢は術式を解除した。
回帰した五感が真っ先に認識した年季の入った木の香り。開眼した周囲に広がる埃混じりの薄闇は、寺社地帯に据えられたお堂のはらわただ。
「詳しくはわかんないけど、緊急事態が迫ってるのは間違いない。
復帰して間もないにも関わらず、焦燥に衝き動かされるまま出口に駆け寄り木扉に手をかけて―――。
ゾクッ! と脊髄を走った怖気に、乱れかけた思考が瞬間冷やされる。
「――――」
呪いの気配・・・・・・背後。
臨戦の備えを袖からひっそり取り出し、振り返ったその向こう。
つい先刻まで己が座していた場所に突き立った、鈍色に艶めく大小。
(刀――呪力――呪具!)
近接する空間を歪めるほど濃密な呪力を漂わす二振りを、共に特級相当の呪物と断じた・・・・・・瞬間。
しわがれた、人ならざる怨嗟が闇を震わせた。
【 領 域 展 開 】
読了感謝!
一体ナニがやってきたのか。
気になる部分で切っていくスタイルが好み。