呪い満ちるこの空を -flying MIKO- 作:甲乙兵長
ハーメルンで呪術廻戦SSをざっと見漁ったら、敵呪霊の特徴が結構かぶってるお方がいらっしゃった。
本当に偶然ですし、後追いはこちらなので全面的に自分が悪いのですが・・・・・・。
なにかしら文句や訴えがあるようなら変更もやむなし。
とりあえず、今はそのまま投稿させてもらいます。
呪い。
それは人々の負の感情から漏出する凝り固まった
ゆえに邪悪、ゆえに醜悪。ヒトという種がひた隠しに抱える悪性の業が呪いであり、形を持った象徴が呪霊という害獣なのだ。
日本で年平均一万人と数えられる怪死者・行方不明者などの末路は、多くがこの呪霊による被害である。
そんな人に仇なす因子を社会の裏で駆逐するのが、呪術師。
己から捻出する呪いを異能に変えて、危険な呪霊を日々
しかし、人が存続する限り、呪いもまた
かつての平安時代ほどではないが、年々強大になり続ける呪霊たち。さらには、他者を呪うことで糧を得る
呪術師家系の御三家のひとつ、
知恵持つ呪霊も、私腹を肥やす呪詛師も、この名を知らぬ者はいない。
しかし、彼と同等の実力を持つと噂される少女が、もうひとり。
博麗霊夢。
名家というわけでもないごくあり触れた神道系の一族に産まれた特異点。
府立呪術高等専門学校京都校所属の、
「霊夢・・・・・・あなた、四国に出張中じゃなかったの?」
「ピンチを助けた恩人に向ける第一声がそれ? あんなの、秒で
「特級なんだから私なんかよりよっぽど稼いでるでしょうに・・・・・・」
真依の不平に聞く耳持たない霊夢。魔法の黒いカードを扱えるような立場に関わらず、彼女は金に意地汚い。フリーランスの
少女の頬は上気し赤らみ、髪はいつもより
ちなみに、真依たちがいるこの場から四国まで車で約七時間余りの距離がある。たとえセスナに乗ってやってきたとしても、間に合うとは到底思えなかった。
(神出鬼没・・・・・・相変わらず正体不明の術式よね。まぁ、
危うい渦中にありながら、二人の少女は呑気に語り合う。
その隙を逃さず、霊夢の足元より幾条もの伸びる手掌が放たれた。
「おっと」
足場を蹴って
地面が陥没していたので分かりづらかったが、どうやら霊夢は呪霊の禿頭を足場にしていたらしい。大地に首だけ生えた地蔵の周囲から、空ぶった灰の腕が樹木のように生え揃っている。
(なんであの呪霊晒し首みたいな状態なの?)
「あの娘が呪霊の頭上から踵落とししたからだよ、真依ちゃん」
「桃!」
胸中の疑問に答えたのは髪を角のように結んだ金髪の少女。三年の
箒を跨ぎ浮遊する彼女の後ろにはぐったりした三輪が干されていた。隙を見て回収したようだ。
西宮は地蔵呪霊が自分たちの手に負えないと断じた真依が、救援を呼ぶため単独で避難させたのだ。領域で異界化されたのは地上までで、空は手薄だった。
「
「わたしができたのは外で待機してた田辺さんと合流するまで。高専の
「・・・・・・そういうこと」
御三家の一角、禪院家は真依の生家である。けれど、決して関係は良好ではない。
禪院に産まれた双子の姉妹。女であり、呪いを見る力すらろくに備わらなかった
そんな家系が、純粋に真依を心配して霊夢を呼び寄せたとは考えづらい。一応の宗家筋ゆえか、なんらかの貸し借りか、勢力争いのダシにされたといったところが妥当だろうか。
苦味に顔をしかめる真依に、西宮が悪い空気を察して話題を変える。
「まさか霊ちゃんが来るなんて思わなかったけどね。なんにしろ、もう大丈夫だよ」
「ええ。でしょうね」
二人は夜空に視線を移した。
西宮と違い、身ひとつで風を切る赤白装束。それを捉えようと追いすがる怪腕群だが、風にそよぐ紙のようにひらひらと
何にも縛られず、物理法則にすら逆らって自由に駆ける少女の雄姿に、真依は眩しいものを見るように目を細めた。
「なんか飽きたわね」
死角から突き出された貫手を首だけで回避し、コースを限定するように張り巡らされる呪霊の腕の隙間を縫って虚空を泳ぐ。それほど速い動きでもないのに、敵の攻撃はかすりもしない。剛に対する柔の要領で、流動する液体のごとく星空を背に舞い踊る。
(腕の射程は五十メートルくらい。わざとギリギリの範囲で漂って手を探ってるけど、基本攻撃方法はそれくらいかな。
冷静に分析しつつ、背後から迫る拳を
すでに地蔵の術式影響下にある霊夢の耳には外界の音は一切情報として入っていない。その気になれば準一級の術式ぐらい『
無音世界に放り込まれても、避ける程度なら持ち前の直感で賄える。
大方の分析を終え、霊夢は地上の呪霊を冷淡に見据えた。
(・・・・・・火照りも冷めたからそろそろ祓うか)
霊夢にとって、この敵は真面目に取り合う必要のない雑魚である。
特級の位階に座す少女からすれば戦いですらない。温泉で熱くなった身体を冷ます戯れ相手程度にしか興味を持たなかった。
だからこそ、あくまで気軽に
【オ・・・・・・レ、ヨ】
濁った音が脳に刺さる。
聴覚ではなく、頭に直接ねじ込まれる昏い怨念。
【オソ、レ・・・・・・ヨ。オソレ、ヨ】
か細い信仰を失い、堕落した怨霊の
【ワレ、ヲ、オソレヨ・・・・・・ワワワレヲヲヲヲ・・・・・・】
「知らないわよ。恨むのは勝手にすればいい。けど、私を巻き込むなら覚悟をしなさい――欠片も残さずぶっ潰される覚悟をね」
【ヲヲヲォォォオオオオオオオオオ!】
呪霊は怒りの咆哮を上げてありったけの腕を突き出した。
自分たちに突如向けられた攻撃に対して、少女たちは対処できなかった。
そして、必要もない。
ガィィンっ! と、見えない壁に阻まれる呪いの千手。
真依らの手前でガチャガチャと渋滞を起こしせき止められた怪腕群は、障壁を突破しようと藻掻きながら暴れ狂っていた。足元の土中からも仕掛けているようだが、衝撃の震えをわずかに感じるだけで傷つけるにははるか遠い。
身構えながらも圧倒される真依は、いつの間にか自分たちの四方に突き立った杭状の呪具に気付く。呪力を帯びたその杭を起点に、不可視の力場が発生していた。
(結界術!)
瞠目した視線の先に、呪霊の背中をとった霊夢が剣指を立てていた。
「こすい神様ね。弱いモノ虐めしかできないような
首を180度回した地蔵は大口を開き呪力砲を放つ。
だが、地面すれすれに身を屈めた霊夢には届かず、真下から掌底で顎をカチあげられる。
おそらくこの呪霊に脳震盪のような概念はないが、ダメージは確かに受けるため効果はある。
一撃で下顎が粉砕された呪霊は大幣を持たぬ手を頭上に掲げ、呪力を漲らせる巫女を視界に映す。もはや、抵抗の余力はなかった。
「じゃあね―――」
終わりを告げた霊夢の手中に顕現した太極を描く大玉の呪力に、準一級呪霊は跡形もなく圧し潰された。
「すご・・・・・・」
西宮の感嘆に、真依も内心同じ気持ちだった。
理解していながらも、改めて思い知る。差を、見せつけられる。
(これが特級・・・・・・)
終始優位を揺らがせず、足手纏いすら利用した不意打ちにも即時対応し、埃ひとつ付着させないまま容易く勝利した少女。
単純に格上というなら、同校所属の男子学生たちも該当する。だが、個人的に霊夢の立ち振る舞いは彼らよりずっと超然として隔絶していたように、真依には感じた。
己が作ったクレーターを前に、はぁ、と疲れたような息を吐く巫女。ほぼ本来の性能を発揮していないにも関わらず億劫げなその様子は、やはりどこか年寄り臭い。
霊夢は真依らに眠たげな目を向け、平時のように悠々と言い放った。
「じゃ、帰りに焼肉奢ってね真依。もちろん、食べ放題じゃないとこよ」
読了感謝!
術式持ち相手とはいえあまり霊夢の強さを表現できてない感がある。
だけどあんま敵を強くしたら京都女子組があっさり死ぬし、難しい。
連日投稿は明日で最後。それ以上は展開思いつくかストックたまってからですかね。