呪い満ちるこの空を -flying MIKO-   作:甲乙兵長

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日常回その2。

ちなみに、作中で他人を呼ぶとき、一応キャラごとで

「お前」が「おまえ」だったり、

「あんた」が「アンタ」だったり、

「君」が「キミ」だったり。

一人称・二人称でもなるべく他人とかぶらないようにしています。

あくまで大雑把で、いちいち適用してるわけじゃないし、場面違いでは普通に前回と違ったりしてる可能性があります。

一番はっきりしてるのは霊夢で、一人称「あたし」二人称「あんた」「あなた」。

長文失礼しました。本編どうぞ。




【第陸話:紅白巫女は義理を果たす】

 

()っ―――!」

「フッ! ハァッ!」

 

 高専京都校の屋外運動場。

 青々とした人工芝生が目に優しい舞台で、遠慮なく草を踏みにじり拳を交える両者。

 ひとりは特徴のない赤ジャージに袖を通す黒髪をリボンでまとめた少女。

 もうひとりは髪をつむじで結い左目を縦断する乾いた傷持ちの筋骨隆々な男。

 前者は特級呪術師・博麗霊夢。

 後者は一級呪術師・東堂葵。

 共に現役の学生としては破格の等級、強さを誇る二人である。

 東堂の大砲掃射のような連突を避け、受け流し、ときにはカウンターの呼び水にする霊夢。

 反撃の掌打や裏拳を鳩尾、喉、顎といった弱所に受け、続けざまの金的蹴りにもなんら怯まず膝で阻み対処。技後硬直の隙に体格差を活かし組みつこうと手を伸ばす。

 霊夢から見た東堂は、その上背と鋼のごとく重厚な恰幅から立ち上がったヒグマに匹敵する威圧感を持つ。並みの少女なら恐怖に負けて身を縮こまらせ悲鳴を上げることだろう。男であろうとも根負け必至。無論、霊夢はどちらにも当てはまらない。

 クワガタの顎のように挟み込む両腕をしゃがんで躱し、相手の力と前に崩れ気味な体勢を利用して東堂の身体を押し投げる。

 受け身をとり反転した東堂の目先にはシューズの片側。首を傾げ最小限の挙動で回避するも、一瞬霊夢の姿を見失う。

 強襲する顎への衝撃。蹴られたと気付いたときには反対側から遠心力を借りた足刀が頭部を打ち据え、脳を左右に攪拌。三半規管が一時的に狂わされる。

 ふら付く巨漢の正面に陣取り、トドメとばかりに腰の乗った掌底をみぞおちへ叩きこんだ。

 が、インパクトの直前、そこへの攻撃を予見していたかのように太い前腕が行く手を阻む。さらに、霊夢の細腕をガシリと掴んだゴツゴツの手のひらが骨を軋ませた。

 

「っ・・・・・・!」

 

 その瞬間、光の速度でシナプスを駆ける情景。

 上半身に組みつかれ、逆さに身体を持ち上げられたのち頭から大地に叩き落される自分。

 

(まじかこのゴリラか弱い女に向かってブレンバスターとかあり得るなちくしょう!)

 

 神感が見せた0.1秒の硬直を振り切って、強く地を蹴り両足で東堂の頭を挟み捉える。無理な可動に肩の筋が悲鳴を上げるが、構わず巨体を浮き上がらせてプロレス技にはプロレス技で応じた。

 

「ふぐぉ!?」

 

 やや変則気味のフランケンシュタイナー。

 捻りが足りずそのまま脳天を叩きつける形となったが、相手の体重が加算された落下衝撃は相当なものだ。芝生とはいえ、場合によっては頭部がパッカーンとクルミになるか、そうでなくとも頭蓋骨、頸椎へかかる負担は計り知れない。

 霊夢は緩んだ拘束から脱出、距離を取って肩を回す。痛みはあるが、動きに支障はない。

 

「フゥン・・・・・・トァッ!」

 

 東堂も脳天から地面に刺さったまま両腕で支え三点倒立。身体のバネを活かして高く舞い上がり、捻りすら加えながら体操選手のようにシュタっとブレなく着地する。

 タラリ、と裂けた頭皮から血を流しつつも、東堂は不敵な笑みを絶やさない。

 

「フフ、やはり闘争とはこうでなくてはな。血沸き肉躍る、巧緻を極めた一進一退の詰将棋。先手後手の読み合い、即応力に胆力。呪力なしで、生来付きまとう体格差、膂力差をものともせず、この俺と拮抗・・・・・・否! 翻弄するとは。さすがだ」

「あっそう。ご機嫌なとこ悪いけど、もういいかしら。あんたの相手疲れんのよ」

「いやいや。まだまだまだまだ! いま、俺の闘志は熱く燃えている。備える交流会にも、楽しみができたからな。お前から言い出したからには、気のすむまで付き合ってもらうぞ、博麗!」

 

 豪胆に言い放ち、構える東堂を虚ろに眺めて、霊夢は早速自らの発言を後悔していた。

 

 

 

 ジャージ少女と上裸男が肌を打ち交わす光景を、離れた位置から眺める機械的な目。

 合金の皮膚に鋼の骨格、躯体に仕込まれた数多くの絡繰り仕掛け。高専京都校の制服を着込んだ人型呪骸(じゅがい)が、腕を組み二人の戦いを見届けている。

 

「あ、メカ丸ぅー! どうしたんですか、そんなところで」

「三輪・・・・・・それに、真依と西宮カ」

 

 京都校所属二年の究極(アルティメット)メカ(まる)。それが呪骸の名であり、仲間に認知された姿だった。本体となる人間は、遠方からメカ丸の感覚を通して状況を認識している。

 各々運動着に着替えたお馴染みの女子三人組が、彼の近くにやってくる。

 

「見ての通り博麗と東堂の模擬戦を観察していル。お前たちも訓練カ?」

「交流会も近いしねー、ちょっとは鍛えとかないと。けど、霊ちゃんが東堂くんと模擬戦なんて珍しいね。いつも面倒がって逃げてばかりだったのに」

「なんでも博麗が東堂に借りを作って、その返礼に呪力無しの条件で模擬戦を約束したらしイ」

「借り?」

「詳しくは知らン。任務の一部を代わってもらったそうダ。ヤツにしては珍しく、随分とやる気があったらしイ。厄介な呪霊討伐を複数掛け持ち状態で最速解決したそうだからナ」

「ちゃんと詳しく知ってるじゃない。なに、アナタ霊夢のストーカー?」

「理由までは知らないという意味ダ。鬱陶しい邪推をするナ」

 

 鉄面皮から苛立ちをにじませて真依の煽りを真面目に切り捨てるメカ丸。

 まぁまぁと緩衝材の三輪が苦笑いで場を収める。

 

「今のところどっちが優勢です?」

「博麗だナ。東堂をうまくいなしてクリーンヒットを避け続けていル。とはいえ、一撃浴びれば逆転されかねないのが東堂の恐ろしいところダ。小技を着実に当ててダメージを蓄積させているが、あれで東堂がダウンするのは千里の道のりだろうナ」

「ひゃ~、見てるコッチが怖い、あのスレスレ感。いま拳と顔の間ミリ単位じゃなかった?」

「私としては、あの体格差でなんでポンポン熊並みのヘビー級をぶん投げられるのかが不思議でならないわ」

「博麗は八卦掌や合気、柔術といった主に相手の力を利用する技に長けていル。重量、リーチ、腕力。身体的な面で博麗が東堂クラスの巨体に勝る点は一切なイ。それでもああして翻弄できるのは、相手の使う運動エネルギーをそのまま自分のものとして掌握しているからダ。当然、言うは(やす)し、行うは(かた)しだガ」

「私も寝技とか使えたほうがいいのかな?」

「三輪は刀を主体とした戦術が基本ダ。仮に、太刀を失った場合を想定しても不足にはならんだろうウ。あくまで時間稼ぎ、対人に限るだろうガ」

「じゃ、あとで頼んでみましょう! いまは東堂さんが怖いので!」

 

 明るく情けない三輪は西宮とともに柔軟を始める。西宮なんかは最初から体術などの技術面は捨てているようだ。なまじ不得意分野をかじるより、得意な領分を伸ばすか、相手をそこに押し込むかのほうが彼女には合っているように思う。体力増加はどうであれ必要という考えのようだが。

 先輩と同輩が身体を伸ばす最中、残った真依はメカ丸に黙って視線を送っている。

 

「・・・・・・なんダ」

「アンタ、霞に対してはどうも甘いというか、好意的よね。そのくせ、距離感は一定で保っておこうと線を引いてる感じ。あぁ、それは誰に対しても一緒か」

「そんな自覚はなイ」

「ふぅん。そう・・・・・・ま、あの子はいい子だし、術師には異常なくらい普通だからね。贔屓(ひいき)もしたくなるでしょう」

「何が言いたイ?」

「私以外に遠距離得意なアンタの意見を聞いておきたいのよ。交流会に備えてね」

 

 妙な迫力のこもった眼差し。それは正面の霊夢たちを眺めているようで、ここではない誰かを見据えている様子だった。先日、楽巌寺学長に同行した東堂同様、東京で焚きつけられるものがあったのかもしれない。

 にしても、助力の乞い方が不器用すぎる。

 

「・・・・・・お前とオレとでは遠距離でもタイプが違うと思うが・・・・・・まぁ、聞きたいことがあるなら聞ケ」

「じゃあ対物(たいぶつ)ライフル? とか持ってるかしら? サブマシンガンでもいいけど」

「エ?」

 

 得物をマルチに使いこなすのは容易じゃないと諭すメカ丸だった。

 

 

 




読了感謝!

別に真依強化フラグとかじゃないからマジで(真顔)。

本編の発言はアクション映画に触発されただけだから。

あと話変わりますけど、

メカ丸の小型呪骸ってどれくらいまでのがあるんですかね? 渋谷事変でのメダリオンみたいな奴だけじゃなくて、「トリコ」の超小型GTロボみたいなのもあるのかな。


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