秋月の贅沢   作:マツケン-2

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第5章、エピローグ

「そのあと、訓練所で朧さんと秋雲さんに出会って、色々あってなんとか自分を取り戻すことができたんですが・・・、は、恥ずかしい話ですよね・・・」

秋月は恥ずかしさからかもう限界という感じで話を切り上げようと、入隊後からの話はかなり省略し始めていた。

「借金の方も、自分の勘違いでかなり前には完済できていたみたいなんですよ・・・。ほんと、だめな人ですよね・・・」

国が派遣した税理士の調査で秋月の両親はそれぞれそれなりの金額の終身保険に入っており、それにより家のローンは7割は返済でき、そのうえ秋月本人の優秀な戦果と限度を超えているとも言える節約もあってあっという間に完済していた。会社のほうも経理だった人を中心に再建され、なんとか会社を継続することができており、秋月がその負債を背負うことはなかったのであった。

「両親のお墓まで先延ばしして、借金を早く返そうとしてたのに、結局無駄に待たせるだけに、・・・って、吹雪さん、親潮さん、どうしました?」

相手が国とはいえ、借金を肩代わりしてもらっているのは悪いと思っていた秋月は自分を犠牲にしてでも早急に返そうとしていたのであった。

そんな自分の話に夢中になっていた秋月であったが、ここで聞いていた二人の異変に気づいた。顔が俯き、細かく体が震えていたのであった。

「・・・ほんと、だめな人なんですよ、私・・・。両親になんて言えばいいのか・・・」

あまりの不甲斐なさに怒りを抑えていると思った秋月が自嘲ぎみに話し始めたその時であった。突然二人が顔を上げて、秋月を見てきた。その顔は赤く紅潮し、目尻には涙が見えていた。

あまりのことにびっくりして身が引けた秋月に二人は

「「秋月ちゃん(さん))!!」」

飛びかからん勢いで秋月に近づき、腰に腕を回し、泣き始めていた。

「そんなことないよ!。そこまで考えて、必死に働いてた秋月ちゃんは悪くないよ!!」

「そこまで過酷なことを乗り越えて、なおも悲しむ親なんていませんから!!!」

秋月はただ自分の恥ずかしい過去を話しているだけという感覚であったのだが、どうやら秋月の評価と一般的な評価とはかなりの差があったようだ。突然の騒ぎに店中の人が振り向き、3人の会話が聞こえる範囲の人には静かに涙を拭う人までいた。

あまりに当然の出来事と周囲のたくさんの視線で、秋月はどうしていいかわからず、ただおろおろするしかなかった。

 

そこからなんとか落ち着くことができた3人は、秋月に年頃の女の子の楽しみ方を思う存分楽しんでもらうために町へと繰り出した。あまりに服の少ない秋月のために格安店の服だったが大量に買い込み、クレープを食べ、ゲームセンターなどを楽しんで歩いた。秋月も戸惑いながらも楽しんで、次第に笑顔を見せ始めていた。鎮守府ではあまり見ていなかった笑顔に二人は心底安心していた。

そして秋月は時おり、やや旧式のカメラのシャッターを切っていた。そのカメラはあの日以来電源を入れてこなった、両親のカメラであった。

 

世の中が本格的に年の瀬を迎えようと忙しなく動いていたある日、秋月はあるところに手紙を書いて、秘書官業務の合間にその手紙を投函していた。

送り先は「漂流ポスト3.11」。東日本大震災から3年後にとあるカフェの店主が誰にも話せなかった故人への思いを手紙に込めて、そこから新たな一歩を歩んでほしいとの願いから設置されたものであった。

秋月は今までの経緯や今の自分が課せられている使命、そしてお墓の用意が遅れたことへの謝罪をその手紙に込めていた。

秋月自身はすでにあの日から一歩を踏み出していたのだが、なかなか地元に帰れないのでこの形で両親に報告することにしたのであった。

これを出したからと言って秋月自身になにか変化があるわけではないだろう。それでも秋月の顔にはどこか晴れやかなものが浮かんでいた。

手紙を投函し、秘書官の事務所に戻ろうとしたときであった。一陣の強い風が秋月の髪をなびかせた。年の瀬の冷たい風に思わず目をつぶる秋月。その時

”もう大丈夫、ありがとう”

”これからは自分のために生きなさい”

どこか懐かしい声が聞こえていた。それは間違いなく両親の声であった。

秋月はきょとんとした表情で辺りを見渡した。聞き間違いかと思い、周囲を見渡したが他に誰もいなかった。でも確かに声は聞こえていた。

そこに

「あぁ!、秋月さん!。これから倉庫整理の増援頼める!?。人手が足りないようなの!」事務所の窓から身を乗り出して話しかける風雲の声に、

「・・・あ、はい!、わかりました!。事務所の方はよろしくおねがいします!」

我に返ってきた秋月はそういうと倉庫の方へと足早に向かい始める。

 

両親を震災でなくし、一時は後を追うことすらしようとしていた少女は今、自身の持つ特別な力で仲間、はては人類を守るため、守ることのできなかった思いを繰り返さないために今日もひた走るのであった。

 

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