「おっ、あれだな」
雪の積もる高い丘に登り、崖付近で白く光る鉱脈を見つけると、小走りしながら採掘に向かう。
先日、オサイズチの討伐を完了したハルト達。その二人は今、寒冷群島に来ていた。
寒冷群島とはその名の通り、寒冷地の海域に浮かぶ幾つかの島からなるフィールドである。一年を通して厳しい寒さに見舞われ、ところどころが凍り雪が積もる場所だが、他の場所では入手できない素材なども見つかる為に、寒冷群島を指定した依頼や、進んで訪れるハンターも多い。
今回はイカダガキと呼ばれる、寒冷群島にのみ生息する大振りの牡蠣の納品依頼に来ていた。イカダガキを採集するついでに、今はエリア8と10の間の丘にこうして鉱石の採掘に来ているというわけだ。ちなみにアリスも同じクエストを受けたが、現在は別行動中である。
「よい、しょっと」
体全体で勢いを付け、鉱脈目掛けてつるはしを振り下ろす。鉱脈に当たると火花が散り、一部が欠けて雪の中に幾つか鉱石が落ちる。
その中に、大社跡では見られなかった白色に輝く結晶があった。アイシスメタルと呼ばれる、寒冷群島でのみ手に入る貴金属であり、加工することで非常に硬く粘り強くなる為、ハンター用の武具の素材として重宝される。
「だいぶ集まって来たな、あともう少しだ」
既にハルトの臨時ポーチには、鉱石の他にガウシカの角や翼蛇竜ガブラスから剥ぎ取った皮も入っている。そろそろ別の場所に移動しようと、疾翔けを使い崖を降りる。
そして、地面が凍結した開けた場所であるエリア10に着くとハルトは目を見開く。
「な………アリスーッ!」
そこでは、アリスがエリア10の中央辺りに倒れ込んでいた。急いで駆けつけ、体に付いていた雪を払って起こす。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!アリス!!」
何度も呼びかけ肩を揺すり背中を叩くが、目を閉じたまま動かない。まさか、とハルトの頭の中に最悪の事態がよぎり、背中を冷や汗が流れる。
「そんな…………アリス、ここでやられちまったのか?嘘だよな、そんなことあるわけ………!」
「…………ぅ………ん……」
すると、不意に目を閉じたままアリスが何か言葉を口にする。まだ生きていると確信し、少し安堵する。
「アリス!?どうした、何か………」
「ふにゅぅ………だめですよ、ハルト様…………私の分のお肉、残しておいてくだ、さぃ……」
「えっ」
アリスの口から出て来た場違いな台詞に驚くも、すぐに寝言だと分かる。どっと体から力が抜けるが、何度も身体を揺すり起こす。こんな寒い場所で寝れば本気で命が危ないし、第一彼女は採集クエストとはいえ肉食モンスターもいる所に来ているのだ。
「おい、起きろアリス!こんなとこで寝てんじゃねえ!」
「んぅ…………………ほぇ?ハルト様、何故家で防具を着ているのですか」
「寝ぼけてんじゃない、ここは寒冷群島だ!俺と二人でイカダガキの納品依頼に来てただろ!」
「寒冷…群島……………はっ!?す、すみませんハルト様、私いったい何を」
寒冷群島の言葉を聞いたアリスは飛び起き、一応ハルトは安堵して溜め息を漏らす。
「目が覚めたか、いくら眠いからってエリアの真ん中で寝るなよ、死ぬぞ。徹夜でもしたのか?」
「それが、先程あのモンスターと戦っていたら急に意識が薄れてきて、気がついたらこんなことに………」
と言って彼女の指が指す方向に目を向けると、そこには頭の出っ張ったトサカと青い体色が特徴的なイズチに似たシルエットのモンスターが三匹こちらの様子を伺っていた。バギィという、寒冷地にのみ暮らすモンスターであり、イズチと同じ鳥竜種に属するモンスターである。
「あいつらと戦ってたら寝ちまったのか?それって……」
しばらく様子を見ていると、バギィ達の近くに一匹のガウシカが現れる。それを見つけたバギィは仲間と共にガウシカを取り囲み、背後に回った一匹が口から水色の液体を吐き出す。ガウシカはそれを受けると、角の生えた頭を何度か振ったのちにその場で眠ってしまった。
「そういうことか、それであんなとこで寝てたんだな」
どうやら、バギィが吐き出す液体には強力な催眠成分が含まれているらしく、液体を浴びると否が応でも眠ってしまうのだ。あのまま寝ていれば、アリスは今頃バギィ達の餌になっていたかもしれない。
「獲物を眠らせた隙に襲うだなんて、なんと卑劣極まりないモンスター!即刻討伐してみせます」
言うが早いか、アリスはボーンホルンを担いでバギィに突撃する。ハルトも続き、2分もしないうちに三匹のバギィは残らず倒され、二人は剥ぎ取りを行っていた。
「(さっきのは、絶対に私怨も含まれてたな。小型モンスターに眠らされたのがそんなに悔しかったのか)」
「(うぅ、私としたことがハルト様にあんなみっともない所を見られて…………変なこと言ってないといいんですが)」
二人の考えていることは、微妙に食い違っていた。彼女の心配していた寝言はバッチリ聞こえていたのだが、言うのも気が引けるのでハルトは聞かなかったことにした。
その後、首尾よく目的のイカダガキを採集し、さらに素材を集めた二人は里に戻る。
そして翌日、二人はハモンが営む加工屋に来ていた。寒冷群島で手に入れた素材により、ハルトのカムラノ鉄片刃とアリスのボーンホルンはそれぞれ強化されていた。しかし、武器に限った話ではなく、
「よし、これで完成だ。これでより安全に戦えるはずだ」
「ありがとうハモンさん、少し体に馴染ませておかないとな」
ハルトは、新しい防具も手に入れていた。ハンターシリーズという、鉱石と小型モンスター素材を中心として作られた装備だ。アリスは以前と同じレザーシリーズだが、鎧玉を使い防御力を高めていた。
「でしたら、スクアギルの討伐依頼が入っているそうなので、そちらに行きませんか?」
「そうだな、それくらいならちょうどいいか。よし、アイテムの準備をしたら出発するぞ」
その頃、ハルト達のいるカムラの里から遠く離れたとある街のハンターズギルドでは、一人のハンターがクエストカウンターで手続きを行っていた。その背には、棒の先端に刃を付けた薙刀のような細長い武器を背負っている。
「はい、クエスト完了ですね。お疲れ様でした。
それにしても、拠点を置いている村があるのに、相変わらず色々な所でクエストを受けているんですね」
「そうね、贔屓目に見てもあの村は少し寂れているもの……
それに、今はモンスターの動きも落ち着いてるみたいだし、こうして旅に出てる方が落ち着くのよねぇ」
「そうですか、ゆっくりしていってくださいね。ハンターは体が資本ですから」
「えぇ、そうさせてもらうわね………
どこで待っているかしら、体感したことのない
次回へ続く
皆様、前回ぶりです。たつえもんです。
ということで、今回は二人で寒冷群島に出向き、武器の強化&新しい防具も手に入れました。ちなみに、カムラノ装→ハンターシリーズというのは私と同じだったりします。
そして、途中で出て来たアリスの寝言シーン。作者が言うのもなんですが、可愛くないですか?彼女は私の思う「可愛い」の権化みたいなもので、女性への理想をぶつけてるような感じです。勿論、アリスみたいな女性だけが可愛いというわけではありませんが(誰得アピール)。
また、最後に受付嬢との会話だけ出て来たハンター。ハルト達と絡むのは少し後になりますが、かなり印象に残るキャラに仕上げました。お楽しみに!
では、最後まで読んでくださってありがとうございます!
またお会いしましょう。