モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第11話:変幻の唐傘鳥

「おぉ…………これが」

 ある日、加工屋の前で出来たばかりの武器をまじまじと見るハルトとアリス。

 手に握られたそれは、氷の剣。厳密にはアイシスメタルを加工したものなのだが、青く煌めく刃と盾の装飾は、一見本物の氷のようだった。

「そいつがフロストエッジだ、アイシスメタルを使うことで氷属性の攻撃が可能になっている。狩りに役立てるといい」

「ありがとう、確かモンスターの弱点の属性で攻撃すれば大きなダメージを与えられるんだよな」

「逆に、属性によってはほとんど効果がないものもいる。相手によって見極めることが重要になるだろう」

 

「ハルト様、新しい武器を試してみたくはありませんか?」

「まぁ、確かにそれは思ってるけど………そんな都合よくモンスターの討伐依頼なんて入ってるかね?」

 しかし、偶然とは恐ろしいもので、常にこちらの期待を良くも悪くも裏切るものである。二人がヒノエの元に向かい、クエストを確認すると、

「お二人とも、お待ちしてましたよ。新しいクエストが追加されています。それも、大型モンスターの」

「マジかよ………なんてタイミングだ、まぁフロストエッジを試すいい機会だな」

「それでヒノエ様、そのモンスターとは何なのですか?」

 アリスの質問に対し、ヒノエは微笑んだまま告げる。だが、少しだけ険しい表情にも見える。

「アケノシルム」

 

 

 

 クエストの受注手続きを終え、二人は依頼地である大社跡の拠点(メインキャンプ)に到着する。ハルトは今回、先程完成したばかりのフロストエッジⅠを装備して来ている。

「アケノシルムねぇ、また初めて戦うモンスターだな」

「ヒノエ様のあの様子からして、どうやら今までのモンスターとは一味違うようですね」

 アケノシルムは、オサイズチ等と同じ鳥竜種に属するモンスターだが、その前脚は翼となっており、空を飛ぶことも出来る。オサイズチは「竜」として進化を遂げたのに対し、アケノシルムは「鳥」としての進化を遂げていると言えよう。

「ま、フィールドが大社跡なだけ助かったか。よし、まずオサイズチと同じようにエリア7に向かってみるか」

 

 二人は拠点を出てエリア1から3へと移動し、そのままエリア7へと向かう。そして、そこに標的(ターゲット)はいた。

「あれが………アケノシルムですか」

 まず目に入るのは、細長い首に付いた頭の大きなトサカと長く尖った嘴。全身を白い羽で覆っており、ところどころに赤い模様が入っている。一本足で立ち、翼を前で合わせた姿は傘鳥という別名そのものだった。

 アケノシルムはこちらに気付き、ゆっくりと歩み寄ってくる。そして頭をもたげると、

「クワァァァァアーーーーッッ!!」

 

「なっ…………!?」

 突如、傘鳥は咆哮を上げた。その見た目からは想像し難い重く響く声に、二人はその場で耳を塞いでしまう。ようやく身体が動く頃には既にアケノシルムは眼前まで迫って、身を屈めている。

 危機を感じたハルトは咄嗟に横転し、直後に彼のいた場所が翼で薙ぎ払われる。そのままもう一度同じ攻撃を繰り返し、それが終わったタイミングを見計らってボーンホルンを構えたアリスが突っ込む。

「はぁぁっ!」

 足を踏みしめ、胴体に狩猟笛を打ち付ける。弾かれはしなかったが、鱗が変化したアケノシルムの羽は見た目以上に硬く、簡単にダメージを与えられそうにない。続けて体制を立て直したハルトが脚に斬り掛かるが、羽に変化せずそのままの鱗で覆われた脚は硬く、刃が通らず表面を浅く削るだけに終わる。しかし、振るわれたフロストエッジは冷気の軌跡を描き、斬りつけた部分には氷の破片が飛び散る。物理的ダメージは少ないが、付与された氷属性によって確実にダメージを与えていた。

「ちっ、こりゃあ手こずりそうだな」

 すると、アケノシルムが翼を広げて後退しながらホバリングを始める。そして、開かれた嘴から赤く光る塊を幾つか吐き出す。それらは地面を跳ねながら、少しずつ小さくなって消える。見ると、塊が地面に着いた所は着火し燃えていた。

「火も吐けるってか、確かに今までとは違うな」

 正しくは、ブンブジナの体液と同じような発火性の高い液体なのだが、炎による攻撃が可能なのは変わりない。アケノシルムが火炎液攻撃をしている間も、アリスはボーンホルンを振るい攻撃を加える。片手剣はリーチが短く、相手が空中にいる間は思うように攻撃を当てられないので、飛んでいる時の攻撃はアリスに任せていた。

 一度アケノシルムが降り立ち、首を反らして頭を高く持ち上げる。アリスは攻撃をやめ、横っ飛びに回避する。

 刹那、尖った嘴がドガンッと音を立てて地面を砕く。その威力に目を丸くするも、地面に嘴の先端が刺さって動けない傘鳥の頭を打ち据える。アケノシルムも頭はダメージを与えやすく、今回も狩猟笛の打撃によるダウンを狙っているのだろう。反対側から、ハルトはトサカを斬りつける。頭と同じく、トサカも幾分か攻撃が通りやすいようだった。

 傘鳥が地面から嘴を抜き、体制を立て直すと翼を広げ、そのまま別のエリアに移動する。二人は同時に座り込み、息を整える。

「はぁ、まさにアリスが言った通り、今まで戦ったモンスターより強い感じがするな」

「ええ、空を飛び火を吐き、更に硬い羽や鱗を持つ。もっと強い飛竜種のモンスターに通ずるものがありそうですね」

 

 次に二人がアケノシルムに出会ったのは、エリア4と呼ばれる場所だ。エリア1、2と3へ繋がり、崖の下にある三角形のエリアで、先程のエリア7とは直接繋がっていないのだが、空を飛べるアケノシルムには関係ないことである。

 こちらに気付いた傘鳥は、嘴を開き先程見せた火炎液を放つ。しかし今度は地面を跳ねず、真っ直ぐハルト達に向かって飛んで来る。二人は真横に移動し回避するが、アケノシルムは続けて左右にも火炎液を吐き出して来た。着弾するギリギリのところで何とか踏みとどまり、アケノシルムへと接近する。

 すると今度は、トサカを真っ直ぐ伸ばした頭を正面に向け、こちらへ突進して来る。その標的はハルトに向いていた。ハルトは走って回避するが、背後でアケノシルムが方向転換をしたのには気づけていなかった。こちらへ向けて突進を続けるアケノシルムが視界に入って来た時にはもう遅く、トサカに当たり突き飛ばされる。しかし、翔蟲受け身を取った為、地面にぶつかるのは免れた。

 それを見て安堵したアリスは、腹を擦り付けて勢いを殺したアケノシルムの尻尾にボーンホルンを突き立て、震打でダメージを与える。

「クアァァァァアッ!!」

 その攻撃に業を煮やしたのか、アケノシルムは再び咆哮を上げる。ハルトは距離があった為影響を受けなかったが、アリスは耳を抑えてその場に立ちすくむ。アケノシルムがこちらを向くと、嘴の端からは怒りを表すかのように火が漏れ出ていた。

 アリスの方を向いたアケノシルムが、体勢を低くし、その場で宙返りして掬い上げるように尻尾を叩き付ける。咆哮から解放され動けるようになっていたアリスは後転して直撃を免れたが、巻き起こった風圧にまたしても動きを封じられる。

 アケノシルムは一度着地し、反転して身動きの取れないアリスに翼を打ち付ける。今度はクリーンヒットし、軽々と吹き飛ばされてしまう。

「アリスっ!」

 何度か地面を転がり静止するが、アリスは動けないでいる。どうやら今の衝撃で目眩を起こしたらしい。そこへ、追撃を仕掛けようと傘鳥が迫る。

「ぁ………ぅ………っ」

 辛うじて声は出るものの、手足が言うことを聞かない。ノイズの混ざる視界の中では、アケノシルムが嘴を高く上げ、先程も見せた突き刺し攻撃を繰り出そうとする。あの威力なら、レザーシリーズなど簡単に突き破ってしまうだろう。自身の死を覚悟した、その時だった。

 

 

 

ガギィィッ!!

 

 

「ぐぅ…………っ」

 

 ハルトが自分の前に立ち塞がり、盾でアケノシルムの嘴を受け止めていた。そして盾を払い、軌道を逸らされた嘴は彼のすぐ横に刺さる。しかしハルトは反撃はせず、アリスに肩を貸し場を離れる。更に嘴が抜けたのを見計らい、近くに飛んでいた虫に剥ぎ取りに使うナイフを振るう。

ビカァァッ!!

「クワォォォ!?」

 直後、眩い光がエリアを包み込む。直視してしまったアケノシルムは目を開けられず、その場で右往左往する。

 今のは閃光羽虫という、空中を舞う一回り大きな光蟲である。刺激することで、閃光玉と同じようにモンスターの視界を一時的に奪うことが可能なのだ。

 閃光でアリスも意識を取り戻したようで、二人はエリア1へと一時退却するのだった。

 

 

次回へ続く

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