アリスがカムラ所属のハンターとなってから、早いもので3ヶ月が経過していた。正式にチームを結成した二人は、共に様々なモンスターとの狩りを経験し、ハンターとして更なる成長を遂げていた。
そして今、ハルトは白兎獣ウルクススの狩猟クエストで寒冷群島に訪れている。アリスは別の依頼を受けていた為、今回は久しぶりに単独での狩りとなる。二人はチームを組んでいるとはいえ、必ずしも一緒にクエストに行かなくてはならないという決まりはない為、何も問題はない。
しかし、ハルトも完全に一人という訳ではなく、アリスとは違う、頼れる仲間を連れて来ていた。
「よし、あそこだ。出来るだけ音を立てずに近付くぞ」
「ガゥッ」
そう言って、ハルトは近くにいた大型犬のような姿のモンスターに跨り、彼を乗せたそのモンスターは素早くしかし静かに駆け出す。
そのモンスターはガルクと呼ばれる種族で、人間との親和性が高いことから、ホムラ地方周辺では人間の仕事を手伝うことが多く、訓練を受けたガルクはハンターのオトモとして狩りを支援することも可能である。
別の地域で一般的なオトモアイルーと違い、人語は話せないものの、ほぼ同等の知能を持つ為言葉を理解することは可能であり、アイルーに比べ体格が大きく力も強い為ハンターを背に乗せたまま走ることも出来る。
このガルクは、先日オトモ広場のイオリが紹介した中からハルト自らスカウトした一匹であり、濃紺の体色をしていたこの個体はスバルと名付けられた。
「行くぞっ!」
標的のもとに辿り着いたハルトはスバルから飛び降り、腰から剣を抜き斬りつける。その手にはそれまで使っていたフロストエッジやカムラノ鉄片刃とは違い、イズチやオサイズチの素材を使用した片手剣、イーズルシックルを持っていた。
「ガァァァァァ!」
その攻撃でウルクススはハルトの存在に気付き、前脚を振り上げて威嚇する。ウルクススは白兎獣の名の通り、全身の白く柔らかい毛皮が特徴なのだが、兎というには顔はいかつく、腹部は皮膚が硬質化した黒い甲殻に覆われており、体格もアオアシラと同じくらいの大きさである。兎の要素を上げるとすれば、笹の葉の形をした耳が辛うじて兎に見えるくらいだろう。
ウルクススは前脚を振り回してハルトを追い払おうとするが、彼は既に距離を取っており攻撃は当たらない。一瞬の隙を突いてイーズルシックルで斬りかかり、反対側からはオトモガルク用の短刀を口に咥えたスバルが白兎獣を攻撃する。
「ベェェェェ!」
一人と一匹から攻撃を受けていたウルクススは独特な鳴き声を上げ、地面の雪に爪を突っ込む。そして、ジャンプと同時に掘り起こした雪の塊を放り投げた。すかさずハルトは横っ飛びに回避し、さっきまで立っていた所に投げ上げられた雪が着弾するが、彼の視界ではウルクススが四つ足を地面に着けて縮こまっていた。
ハルトが危機を感じた次の瞬間、
「ぐぁ………………っ!?」
彼の全身に凄まじい衝撃と激痛が走り、身体は宙を舞っていた。地面に落ちる前に翔蟲受け身を取り、頭を打つのはどうにか避けた。
ウルクススは腹を使って滑走し、そのまま体当たりをしてきたのだ。おそらく、その攻撃を繰り返すうちに滑りやすいよう腹が硬化したのだろう。
「今のが滑走攻撃か、素早い動きに気を付けるってのはこれか」
体勢を整えたハルトは応急薬を飲み干し、再び剣を構えて白兎獣に向き直ると、再びウルクススが滑走突進攻撃を行おうと、身体を縮こまらせる。そして滑り出す瞬間を見計らい、ポーチから取り出した球状の物体を投げつける。それはウルクススの顔に当たると破裂し、キンッという高音を響かせる。その直後、
「グォォォ!?」
滑走していたウルクススはバランスを崩して転倒し、立ち上がろうと手足をばたつかせる。その隙に、ハルトはガルクと共に突撃する。
今使ったのは音爆弾という道具であり、ウルクススのような聴覚が敏感な一部のモンスターに絶大な効果を発揮するのだ。
一気に距離を詰めたハルトは、頭部に向けてイーズルシックルを何度も叩き込む。ウルクススは頭の肉質が柔らかく攻撃がよく効くのだが、立っていてはリーチの短い片手剣では届かず、かと言って正面から斬りかかっては返り討ちを受ける危険性が高い。なので、こうして攻めるべきタイミングで的確に繰り返し斬撃を弱点に当てるのである。
ウルクススは立ち上がると、口から白い息を吐きハルトを睨みつけ、大きく開いた口で吠え威嚇する。
「怒り状態か。負けねぇぞ」
あの後、スバルの協力もあり首尾よくウルクススを討伐したハルト。既に今はカムラに帰って来ており、加工屋のハモンにウルクススの素材を見せていた。
「うむ、確かにこれは白兎獣の氷爪だな」
「ようし、あとはマカライト鉱石を集めればフロストエッジを強化できるな」
ハルトがウルクススを狩りに行ったのは、フロストエッジの強化に必要な白兎獣の氷爪を入手する為だったのだ。だが、他に必要なマカライト鉱石が採取できるフィールドにはまだ行けないので、強化そのものはとうぶん後になりそうだが。
「ところで、ハルト。武器の強化はいいが、依頼の達成報告は済ませたのか?」
「やべ、そうだった!じゃあまたっ」
ハモンの言葉を聞き、ハルトは慌ててハンターズギルドへと向かうのだった。
次回へ続く
皆様、こんにちは。作者のたつえもんです。
ということで、今回は初めて狩猟シーンを簡単にまとめてみました(できてるか分からないけど)。今作が初登場のモンスターでなければ、新しい登場人物が出てくるわけでもない場合はこういうことも増えてくると思います。
あと、劇中ではさらっと触れていましたが、依頼の達成報告を忘れるなんてのはとんでもないことです。「私はこの日の仕事をちゃんと終わらせました」って言わないと、無限に残業することになって不当に残業代を支払われて………なんてことがあるかは分かりませんが、とりあえず大変なことです(現社会人より)。
では、今回はこの辺で失礼します。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
またお会いしましょう。