モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第17話:ドンドルマでの出会い

「お客さん達、着いたよ。ここがドンドルマだ」

「ようやく到着したな、ありがとう」

 定期船に揺られ、更にアプトノス車を使い、里を出発してから10日後、ハルトとアリスはようやくドンドルマに到着した。

 

「ほえぇ…………本当に人が多いですね」

「ああ、里もそれなりに住民は多い方だと思うが、比べ物にならないくらいだな。気の所為かもしれんが、俺が養成校に通っていた時よりも増えた気がする」

 待合所を出た二人の目に最初に入ったのは人、人、人である。多くの人でごった返しており、通れないわけではないが子供はすぐにはぐれてしまいそうだった。少なく見積もっても、今目に入った人数だけでもカムラの里の全人口の倍はいるだろう。

 ドンドルマはカムラの里がある東方大陸から海を挟んだ先の中央大陸の中心に位置する大規模な商業都市であり、街路には数多くの店が立ち並び、街の中心地にはハンターズギルド本部がある。その為、ハンターから商人、観光客まで連日多くの人で賑わう大陸内でも有数の繁華街である。

 ちなみに、ハルト達は既に防具を着用しているが、ドンドルマには同じように防具を着たまま歩くハンターも多いので違和感は全くない。

「とりあえず、ハンターズギルドに行こうか。道は覚えてるけど、一応地図を見ながら行こう」

「あっ、待ってください」

 早速ギルドへの道を行こうとするハルトを呼び止めるアリス。振り返ると、彼女は少し恥ずかしそうにもじもじしている。

「その…………手を、繋いでもいいですか?えっと、これだけ人が多いと、はぐれてしまいそうで………」

「そっか、アリスは初めて来るんだったな。いいぜ、そういうことなら」

 と言うが早いか、ハルトはアリスの手を引き、道を歩き始める。ハルトに先導されながら、アリスは少し俯き彼に見えないように頬を紅潮させた。

 

 

 

 そして二人は大勢の通行人をくぐり抜け、何とかハンターズギルドに辿り着き、戸を開けると思わず絶句した。

 そこでは、グラスを打ち合わせる音、人々の話し声、食器が配膳される音などが混ざり合う喧騒の中で、多種多様な防具を身に着けた途轍もない数のハンターと私服を着た少しの町民が各々テーブルを囲み、料理を食べ酒を飲みながら狩猟談義に花を咲かせていた。勿論、入って来たハルト達に誰も気付いた様子はない。

 ドンドルマのハンターズギルドは酒場を兼ねており、ハンターでない一般人も利用可能だが、基本的にはハンターが利用客の大多数を占めている。ハンターは職業柄、仕事をする時間が毎日決まっていないので、こうして昼間から宴会をすることも少なくない。

 

 そんな様子を見ていた二人は、顔を見合わせ互いに苦笑する。

「す、凄いですね…………ハンターというのは本来、あんなに宴が好きなのでしょうか?」

「一概には言えないと思うけどな。ちょうど飯の時間だし腹も減ってきたけど、まずはクエストカウンターでハンター登録をしないとな」

 二人は早速クエストカウンターに向かい、受付嬢にギルドカードを提出し、書類に名前や色々な情報を記入していく。

「はい、登録完了しました。依頼を受ける際はそちらの掲示板からどうぞ」

「ありがとうございます、それではどんな依頼が出てるか見てみましょうか」

 と言って、二人はカウンター横の掲示板(クエストボード)の前に移動し、二人でも受けられそうな依頼がないか張り出された紙を注視する。

「ティガレックスの狩猟にジンオウガの捕獲、タマミツネとトビカガチの同時狩猟なんてのもあるのか。まあ、どのみち今の俺達には無理そうだけど」

「やはり、経歴の長い上級ハンター向けのクエストが多いですね。私達にもできそうなものは………」

 

 

「おいおいそこの嬢ちゃ~ん、可愛いじゃねぇかよォ~」

 

「ほえ?わ、私のことですか」

 難易度の高いクエストに頭を悩ませていると、突然見知らぬ二人の男性ハンターが声をかけてくる。二人共顔は赤く足元はふらつき、明らかに酔っ払っていた。

「勿論だぜぇ。なぁ、クエストに悩んでるなら俺達と行かないかぁ~?安心しな、俺達ぃ結構強いから色々助けてやんよ~」

「えっと………私、」

「何なら狩り以外のことも教えてやろ~かぁ?手取り、足取り、ゆっくり丁寧に」

「(まっ…………まさか、これが「なんぱ」というものなのですか!?でもっ、私どうしたら)」

「アンタら、いい加減にしとけよ。困ってるだろ?」

 対応に困るアリスを見かねて、ハルトが立ち塞がる。男達は、水を差されたのが気に食わないのかこめかみをピキッと震わせハルトを睨む。

「なんだボウズ、邪魔すんなよな」

「彼女は俺のチームメイトなんだ、見知らぬハンターにそうやすやすとパーティを組ませてたまるか。どうしてもって言うなら、俺と四人で行ってもらうから」

「は?お前、まだハンターシリーズなんか着けてる分際で俺達に口出しすんなよっ!」

 

「っ………!()ってぇ、何しやがる」

「ハルト様っ!?」

 遂に耐えられなくなった一人が、防具を着けたままの拳でハルトの頬を殴る。ハルトは床に尻餅をつき、アリスも慌てて駆け寄る。

「さぁお嬢ちゃ~ん、あんな弱っちょろいヤツほっといて俺らと一緒に行こうぜ?優しくしてやるからさぁ~」

「あ、その、私は……」

「だからっ、やめろって言って………」

「しつけぇぞ!!」

 立ち上がりなおも行く手を阻むハルトに対し、もう一人が怒鳴ると共に、今度は腹を思い切り蹴りつける。モロに喰らったハルトは吹き飛ばされ、咳き込みながら腹を押さえてうずくまる。

「………あ…………」

 邪魔者がいなくなり、二人組はアリスの肩を抱いて連れ去ろうとするが、アリスはハルトを見たままその場から動こうとしない。

「や、や……め………」

 そしてアリスが動かないのをいいことに男が乱暴にアリスの肩を掴み、腰の辺りを撫でたその時、

 

 

 

ダァンッ!!!

 

 

 突如、入口のドアが音を立てて雑に開けられる。その音に酒場は静まり返り、アリス達を含めた全員がそちらを見ている。

 間もなく、一人の男性がゆっくりと歩いて入って来る。それを見た酒場の客は次第にどよめきを上げ始める。その人物はかなりの長身で、ツンツンした暗めの茶髪に長いまつ毛を蓄えた青い瞳が特徴の、鼻筋の通った美形の青年である。首から下にはモンスターの素材を使った黒い防具を着ており、ハンターであることは明確だった。それも、アリスが見たことのない素材が使用されていることから、かなりの上級者だろう。

 そして彼は人々の中心に立つと、胸を反らし右手を振り上げ、大袈裟にポーズを決める。直後、拍手と歓声に加え、女子達の黄色い声が上がる。そのハンターは手を振って応じ、アリス達のもとに歩み寄る。

「お、おい…………」

「まさか、ドンドルマに来てたなんて!?」

 ハルトを黙らせた二人はそのハンターが現れてからというもの、戸惑った表情で酔って赤くなっていた顔を見合わせている。

 やがて、彼が二人組のところに着き、あっさりとアリスを引き剥がして少し距離を取らせると、笑顔で彼らの肩に手を置き、

 

 

 

「ガァッ、デェム!!!」

 

「「ヒィィィ!?」」

 整った顔は怒りの表情に変わり、凄みを効かせた声で、二人を思い切り怒鳴りつける。

「アナタ達、腐ってもハンターならばモンスター以外に暴力を振るうのはおやめなさい?加えて、レディーは丁重にエスコートするのが通例というものよ」

 離れたところからそのやり取りを見ていたアリスは、呆気に取られていた。何故なら、その男性は端正な顔立ちと先程の怒声からはとても想像できない、女性のような言葉遣いで話していたからだ。

「それとも、そんなに溜まってるのであれば…………」

 一度言葉を切り、二人に顔を近付けると、

 

 

「このワテクシが、思う存分た~っぷり愛してあ、げ、る」

 バチッとウインクをして、優しく微笑む。だが、その笑顔の裏には明らかに闇を含んでいた。

 それを見て二人組は一目散に退散し、ギルドを飛び出ていく。一部始終を見届けていた人々は再び拍手喝采を送り、彼は一礼して応じる。そして、一度アリスに向き直り、先程とは違う心からの優しい笑みを浮かべる。

「大丈夫だったかしら?ちょっと派手にやり過ぎちゃったかしらね」

「い………いえ、私はいいので、それよりハルト様を」

 と言って、アリスが指す方向を見ると、ハルトは腹を押さえながらも壁に手を付きどうにか立ち上がっていた。男は頷き、ハルトの元に歩み寄り、アリスも後に続く。

「ハルト様、大丈夫ですか?防具を着けたまま殴られたり蹴られたりして、骨折でもしていたら………」

「心配すんな、少し痛いけど。

あの、さっきはすんません。わざわざ巻き込ませちゃって」

「いいのよ~、ワテクシが好きでやってることなんだから。それと、敬語は使わなくても結構よ。堅苦しいのは苦手なの」

「でも…………さっきは本当に自分が不甲斐なかった。一方的に酔っ払いにボコられて、通りすがりに助けられるなんて…………チームメイトとして、アリスを守ってやれなかった。こんなんじゃ、モンスターと戦うハンターとして情けない」

 ハルトは先程の自分の無様な姿を思い出し、悲壮感に囚われ俯いてしまう。アリスはどう言葉を掛ければいいか分からず、困った顔を浮かべてただハルトを眺めていた。そんな二人を見た彼は、

「顔を上げなさい、ハルトちゃんだったわよね。アリスちゃんは、どこも怪我をしていないでしょう?それに、アナタは一度も手を上げることなく彼女を守った。それで十分じゃないの」

「だけど、アイツらの言ってたことも少し分かる。まだ俺はハンターになって日も浅いし、強いわけでもない。もっと俺が強かったら……………」

 まだ立ち直れないハルトに、アリスはしゃがんで目線を合わせる。

「ハルト様、今のははっきりと断らなかった私にも責任があります。それに、今すぐに強くならなくたっていいじゃないですか。私達はチームなんですから、これから一緒に強くなりましょう?」

「アリス………………うん、そうだな。すまん、いつまでも落ち込んでちゃ仕方ないよな。これから俺達でもっと強いハンターになろうな」

 アリスの言葉を受けたハルトは立ち上がり、男に向き直り礼を述べ頭を下げる。アリスもそれに倣い、お辞儀をする。

「ところでアナタ達、見たところ依頼を選ぶのに困ってるんじゃないかしら?」

「え、どうして分かるんですか!?」

「女の勘ってやつよ。もし良ければ、ワテクシが一緒にパーティを組んであげてもよろしくてよ?」

「本当か!?そりゃ有難いよ、アリスはどう思う?」

「はい、私も賛成です!」

「それじゃ、決まりね。そういえば名乗ってなかったわね、ワテクシはエリザベス、そう呼んでくれたらいいわ。よろしくねん」

 その直後、二人の代わりにそれぞれの腹がぐうぅっと盛大な音で返事をした。ハルトはあまり表情を変えなかったが、アリスは赤面して慌てふためく。

「す、すみませんっ、私としたことが」

「いいのよ、食欲があるのは健康の証。せっかくだからご馳走してあげるわ、席に着きましょう」

 そして、エリザベスを含めた三人は空いたテーブルを探し、椅子に座ると各々料理を注文し、食事を始めたのだった。

 

 

次回へ続く




 皆様、どうもこんにちは。最近夜更かしが多くなりがちな作者です。

 ということで、今回は二人がドンドルマに訪れ、そこで新たなハンターと出会いましたね。このパートは分けたくなかったのでぶっ通しで書き進めた結果、いつもより遥かに長くなっちゃいました。
 皆様、あのキャラどう思いますか?ギャグキャラっぽく扱われることも多いですが、私はああいう人物結構好きなんですよね。とりあえず、初見のインパクトはかなり強くしてみました。

 さて、次回は初めて三人での狩りに出向く予定です。果たしてどんなモンスターと戦うのか?初登場キャラはどんな戦い方をするのか?そしてたつえもんの寝不足は改善するのか?

 では、今回はこの辺で失礼します。
 最後まで読んでくださってありがとうございます!
 またお会いしましょう。
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