ボルボロスを追ってエリア5へ到着すると、丁度ボルボロスは一同の方を向いており、三人を発見すると低く唸って威嚇する。
まず、牽制とばかりにエリザベスが猟虫を飛ばす。今度は背中に噛み付き、エリザベスの腕に留まり先程とは違うエキスを彼に浴びせる。それに反応してか、ボルボロスはエリザベスの方に歩み寄り、地面に頭突きを繰り出す。直前に横に転がり、頭突きの直撃だけでなく泥も躱すと前脚を斬りつける。ボルボロスの前脚は他の部位より若干攻撃が通りやすいようで、先程までよりも簡単に刃が入っていった。
その間、ハルトは後脚を、アリスは頭を攻撃する。演奏で強化されたマギアチャームの打撃は弾かれることなく、僅かながらも確実にダメージを蓄積させていく。
しかし、そのまま攻撃を喰らいっぱなしでいるボルボロスではない。
「グォォォーーーーーッ!!」
突進の予備動作と同じように頭殻から蒸気を噴き出し、咆哮を上げハンター達を威圧する。怒り状態になったのだ。三人はたまらず耳を抑えて立ちすくんでしまう。
かと思いきや、アリスだけは動きを止められず攻撃を継続していた。自分の咆哮が聞いていない存在がいるのに気付いたボルボロスは、アリスに頭突きを喰らわせるが彼女は横転して回避、飛んで来る泥の射線から外れたことでそれらも避ける。
「アリス、どうして咆哮が効いていないんだ?」
「この狩猟笛の旋律のおかげです!」
あらかじめ彼女はマギアチャームの持つ旋律効果の一つ、音の防壁を発動していたのだ。特殊な音を奏でることで、一度だけダメージをある程度軽減するバリアのようなものを纏うことが出来るのである。ハルトとエリザベスはその時離れていたので効果を受けられなかったが、モンスターの咆哮なら完全に防げる。
初めて使う武器の性能を最大限に活用するアリスに感心しながらも、咆哮の影響から立ち直ったハルトはフロストエッジを振るい後脚を斬りつけ、一度距離を取ったエリザベスは猟虫で尻尾からエキスを採取して自身を強化する。
一度ボルボロスはアリスに背を向け、移動するかと思ったアリスは武器を納めるが、その直後にボルボロスは顔をこちらに向け尻尾を振り上げる。危機を感じたアリスが横っ飛びに回避したすぐ後に、彼女の後ろに尻尾が叩き付けられ、尻尾の泥と砕けた地面の一部が飛び散る。
「アリスちゃん、大丈夫かしら?」
「はい、何とか………ボルボロスは頭を使った攻撃が多いと聞いていましたが、見たところ尻尾での攻撃も多いように見えます」
「そうね、だとしたら私とハルトちゃんで尻尾の切断を狙うのもいいかもしれないわね。尻尾の位置が高いから、片手剣のハルトちゃんは難しいかもしれないけど」
「でも、相手の攻撃範囲が制限されるなら狙うに越したことはない。やってみるか」
作戦のやり取りを手早く済ませ、三人はそれぞれ別の方向に移動する。直後、三人の中心をボルボロスが突進で通り過ぎた。
突進の後の隙を突き、アリスは三音演奏で自己強化と同時にハルトとエリザベスの体力を僅かに回復させ、音の防壁を付与する。エリザベスはアンバーハーケンで尻尾を斬り付けて泥を削ぎ落とし、ハルトは後脚を攻撃して転倒を狙う。そして、それまで蓄積していたダメージも加わり、ボルボロスの片足が地面から浮く。
「ガゥゥウッ!」
「何っ!?」
だが、ボルボロスはそのまま転倒することはなく、もう片方の脚を踏ん張って持ち堪える。
ボルボロス等の獣竜種に分類されるモンスターは、その発達した後脚により転倒しそうになっても踏み留まることがあるのだが、ハルトとアリスは初めて獣竜種と戦う為それを知らなかったのだ。
ボルボロスはすぐに持ち直し、回転して尻尾を振り回す。驚いていたハルトは避けきれず、直撃を受け吹き飛ばされてしまう。
「ハルト様っ!」
尻尾の攻撃は音の防壁でも勢いを殺しきれず、そのままハルトは受け身を取る間もなく地面を何度も転がり、倒れたまま起き上がれずにいた。そこへ、無慈悲にも追い打ちを仕掛けようとボルボロスが迫る。それを見たアリスは、ハルトの前にマギアチャームを構えて立ち塞がる。
「アリ………ス……?」
「私は今まで、2回もハルト様に窮地を救っていただいたのです。だから、今度は私がハルト様を守る番!」
アリスは力強く叫び、迫り来るボルボロスの顔目掛けて狩猟笛を突き立てる。そしてマギアチャームを吹き鳴らし、鉄蟲糸を伝って音波がボルボロスの顔を震わせ、同時に頭の泥が弾け飛ぶ。
「グルゥゥ!?」
震打が決まり、土砂竜は目を回して今度こそ倒れ込んだ。狩猟笛の音波攻撃は肉質を貫通する為、硬いボルボロスの頭に攻撃を通してスタンまで取ることが出来たのだ。勿論、今までアリスが喰らわせていた打撃の蓄積もあるだろう。
ボルボロスが身動きが取れなくなったのを見て、アリスは素早く武器を背負ってハルトの元に駆け寄る。
「ハルト様、大丈夫ですか?」
「あぁ…………すまない、あのままアリスが反撃を喰らうかもしれなかったのに、わざわざ危険な目に遭わせて悪かった」
「ハルト様…………優し過ぎます。自分のことも心配してあげてください」
アリスは泣きそうな声と顔でハルトに訴えかける。エリザベスは、少し離れたところから二人の様子を見ていた。
「とりあえず、ハルトちゃんは大丈夫そうね。
それにしても、あれが信頼できるチームメンバーってヤツか………
少し、嫉妬しちゃうじゃないっ!」
エリザベスは二人を横目にアンバーハーケンを振るい、ボルボロスに突貫する。そしてアリスと体力を回復したハルトも、その後に続くのだった。
次回へ続く