起き上がれず手足をばたつかせるボルボロスに、三人はそれぞれの場所から連続攻撃を加える。エリザベスは前脚、アリスは頭、そしてハルトは尻尾を狙っていた。
そしてエリザベスのアンバーハーケンが前脚の泥をほぼ全て落とした頃、ようやくボルボロスは起き上がるが、まだ気絶から立ち直っていないのか出鱈目に頭突きをしたり尻尾を振り回したりしている。勿論、狙いの定まっていない攻撃は三人に当たらない。
正気を取り戻したボルボロスは、口から涎を垂らして息を荒らげており、さしもの土砂竜も疲れているようだった。三人はその隙を見逃さずに攻撃を再開するが、ボルボロスは背を向けエリア11と呼ばれる地下洞窟へと入っていく。
「あそこは確か…………二人とも、出来るだけ早くエリア11に向かうわよ!ここまでの苦労が台無しになっちゃうわ」
「まさか、ボルボロスのエサ場があるのか?」
「ちょっと違うけど、そう思ってていいわ。とにかく、急ぐわよ」
手早く砥石を使い終えた三人がエリア11に到着すると、ボルボロスは水溜まりの中で寝転がってゴロゴロと身体を擦り付けていた。
「少し遅かったみたいね………」
「あれって、まさか?」
大方の予想通り、起き上がったボルボロスの身体には、最初と同じように泥があちこちに付着していた。エリザベスが言っていた苦労が無駄になるとはこのことだったのだろう。だが、先程エリザベスが攻撃していた前脚には泥が付いておらず、砕けた甲殻が露わになっていた。
「こんなこともあろうかと思って、前脚は部位破壊までしておいたの。部位破壊に成功すれば、その部分には泥が付かなくなるのよね」
得意げに言いながら、エリザベスは再び猟虫を飛ばす。後脚からエキスを採り、彼の腕に留まり能力を上げさせる。それでこちらに気付いたボルボロスは三人に歩いて近付くものの、疲弊したその体の動きはあまりに遅い。
ボルボロスは地面に頭突きをするが、既に三人は泥も当たらない位置に移動しており、ハルトとエリザベスはそれぞれ尻尾に攻撃を加える。アリスは演奏で自分を強化したのち、先程と同じように頭を殴っていく。
邪魔者を追い払おうと尻尾を振り回すが、エリザベスは難なく躱し、ハルトは弾かれながらも盾でガードし、アリスは尻尾が迫る直前にスライドビートで距離を取る。カムラに来たばかりの頃は慣れない翔蟲の扱いに四苦八苦していたアリスも、練習と実戦を重ねたおかげで今ではハルトに並ぶほどに翔蟲を使いこなしていた。
今度はボルボロスは全身を震わせて、泥を飛ばしてくる。ハルトとアリスは距離を取って避け、エリザベスは空中で操虫棍を振るって背中を何度も斬りつけ泥を落としていく。ボルボロスは自身の背を執拗に狙うエリザベスを追い払おうとするが、空中への迎撃手段がないらしく滅茶苦茶に頭や尻尾を振っていた。
そして、泥の隙間から覗く甲殻にアンバーハーケンの刃を叩き付けると、背中の甲殻が砕けて破片が泥と一緒に飛び散る。
泥を再び纏ったとはいえ、それまで与えたダメージは残っている。エリザベスは空中から背中を何度も攻撃していた為、部位破壊に成功したのだ。
背中の甲殻を割られたボルボロスはたまらず大きく仰け反り、大きな隙が生まれた。地上にいた二人はそれを待っていたとばかりに鉄蟲糸技を用いて追い打ちを仕掛ける。ハルトは風車を繰り出し部位破壊された前脚の甲殻をフロストエッジが更に削り、アリスは震打で頭を狙い、もう一度頭部の泥を吹き飛ばす。
度重なる攻撃にボルボロスは三人から逃げ出し、洞窟を出ていく。ハルト達も追いかけ、先程と同じエリア5に戻って来る形となった。
「さっき、ボルボロスは足を引きずっていたわ。もう少しで討伐できそうだけど、油断しないようにね」
エリア5に到着し、エリザベスが牽制とばかりに猟虫をボルボロスの尻尾に飛ばす。猟虫の噛みつきで土砂竜は三人を見つけると頭から蒸気を上げ、重く響く咆哮を飛ばして再び怒り出した。そのまま顔を地面に向け、猛烈な勢いで突進する。
だが三人は冷静にその突進を避け、すぐさま反撃に向かう。ボルボロスも身体を震わせて泥飛ばしで迎え撃とうとするが、泥を纏っていない場所からは当然泥は飛んで来ない。その結果、腰から後ろ辺りにしか泥が残っていないボルボロスは上半身が無防備な状態となった。
ハルトとエリザベスは土砂竜を挟むように前脚を斬りつけ、アリスは三音演奏から気炎の旋律に繋げて自分を含むチーム全員を強化し、そのまま力いっぱいマギアチャームで頭を殴り付けた。
バッカァァアン!!!
「グワォォォ!?」
直後、乾いた音と共にボルボロスの王冠のような頭の甲殻の上部、中央が少しくぼんだ丸い突起が並んだ部分が分離し、ゴトッと硬い音を立てて地面に落ちる。
「やった、部位破壊できました!」
「アリスちゃん、凄いじゃないの!」
どうやらボルボロスの頭部は、ハンマーや狩猟笛による打撃系統の攻撃でないと部位破壊ができないらしい。アリスはいつも通りモンスターの気絶を狙おうとボルボロスの頭を殴り続けただけだったが、結果としてそれが功を奏して部位破壊に成功したようだ。
ボルボロスは自分の頭の甲殻を壊したアリスにますます怒りを強めたらしく、勢いよく尻尾を振り回して辺りを薙ぎ払う。しかしそれだけでは終わらず、尻尾で地面を掘り起こして泥と一緒に
「アリスっ!」
「あらあら、レディを泥で汚すイタズラっ子ちゃんにはお仕置きが必要ね」
シュザザザザザザッ!
そう言うと、エリザベスはエキスを採取して自分を強化し、物凄い勢いで無数の斬撃を見舞う。そして、突進を華麗に跳躍で躱すと、落下重力も利用してアンバーハーケンを一閃させた。
「喰らいなさいっ!!」
「グオォォォォーーーーー……………」
エリザベスの渾身の一撃を受け、ボルボロスは断末魔の叫びを上げズシンッと倒れた。そして、既に生気を失ったその体はもう動かない。
「討伐完了ね、二人ともお疲れ様。ごめんなさいね、最後においしいところ持っていっちゃって」
「いや、謝る必要なんてないよ。エリザベスがいてくれて本当に助かった」
「そうですよ、エリザベス様、本当にありがとうございました」
ボルボロスの泥攻撃を喰らっていたアリスも合流し、泥だらけの防具をそのままにすぐさま感謝を伝える。それは気遣いではなく、心からの言葉だった。
「そう?二人とも優しいわね、さすがコンビを組んでるだけあるわ。
さて、それじゃあ剥ぎ取りと行きましょうか。ちなみに、ボルボロスの壊れた頭からも剥ぎ取りはできるわよ」
「そうなのか、素材を使うかは分からないけど一応やっておくか」
そうして、素材を剥ぎ取った三人は一度拠点に戻る。その道中で、
「それにしても、三人での狩りって初めてだけど心強いな」
「そうですね、やっぱり仲間がいるのは有難いです」
「ええ、ワテクシも久しぶりにパーティを組んで狩りに行ったわ」
「ところで、俺達は里に帰ろうと思うけど、エリザベスはまだドンドルマにいるのか?」
ハルトから質問を受け、エリザベスは少し考えた後、
「そうね、一度ワテクシの故郷の村に帰ろうかしらね。その村にいるハンターはワテクシだけだし、さすがにずっとハンターがいないのも心配だわ」
「そっか、じゃあ一度お別れか。また会ったら一緒にクエスト行こうぜ」
その後、ドンドルマのハンターズギルドで依頼の達成報告を済ませ、エリザベスと別れを告げた二人はカムラに向かう定期船に乗る為アプトノス車に乗る事にする。二人はその車内で今回の遠征の話(主にエリザベス絡み)をしていた。
「それにしても、エリザベスは凄い人だったな」
「はい、最初は話し方で少し驚きましたけど」
「ちょっとじゃないよ、かなり驚いたって。でも、強さは本物だった。さすが一人で旅をしてるだけあるなぁ」
「ええ、私もカムラに留まるまでは旅をしていましたが、大変でした」
しばらく話した後、ハルトは少し考えてこう言った。
「…………三人目か」
「えっ?」
「いや、今までは俺達二人でクエストに行ってただろ?今回の狩りで、三人目のチームメンバーを入れてもいいかもと思ったんだ」
「……………そう、ですね。私も、賛成します」
次はどんなヤツがいいかなー、大剣とか攻撃力の高い武器を使うハンターもいいけどガンナーも欲しいなー、等とハルトが独り言を言う横で、アリスは神妙な顔をしていた。
さっき、ハルトが三人目の仲間が欲しいと言ったとき、賛成するとは言ったが少し返事に迷ってしまった。
このままハルトと二人きりで狩りをしていたい。
でも、ハルトの言う通り仲間を増やしたい気持ちもある。
そう考えるアリスの中には、一つの確信が生まれていた。
自分は、彼が─────ハルトが好きだ。
次回へ続く
皆様、こんにちは。作者のたつえもんです。
ということで、いろんな意味で長かったドンドルマ編も一旦終わり、次回からはまた里での狩りが始まります。いやー、ボルボロスとの戦闘シーン大変だった!更新お待たせして本当にすみませんでした。
以前も後書きに掲載したんですが、エリザベスが操虫棍を使うキャラなのに、私は今までゲームで操虫棍を使ったことがなかったんですよね。それで実際にエリザベスと同じアンバーハーケンを持ってボルボロスと戦いに行ったりもしました。エキスを管理する手間はありますが、操作がシンプルで動きも軽快でいいですね(個人的に一番驚いたのはXA同時押しのコマンドがないこと)。
それにしても、最近すっかり暑くなりましたね。自宅と私の職場では既にクーラーが使われています。まだ6月なのに、7月に入って夏本番になったらどうなっちゃうんだろう………。過去シリーズにあったクーラードリンクが飲めればなあ。なんでライズのハンターは溶岩洞でも平気なんだろう?
では、今回はこの辺りで失礼します。22話も執筆中ですので、もう少しお待ちください!
最後まで読んでくださってありがとうございました!
またお会いしましょう。