モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第22話:未明の悪夢

 ハルト達がカムラに帰還してから、何度か里で依頼をこなして一ヶ月が立った頃のある日。

 

 

 黒い帳に覆われた空に月が浮かぶ夜、二人は一体の大型モンスターと対峙していた。

 場所はよく見慣れた大社跡。しかし、その相手のモンスターは見たこともない恐ろしい姿をしていた。全身の至るところから尖った角や甲殻が突き出ており、剥き出しの牙と双眸(そうぼう)は月光を受け鋭く輝いている。

「うぅ、こんなモンスター、私達本当に勝てるんでしょうか……?」

「確かに、アイツは強い。でも、諦めなければいつか勝利への糸口は見つかるはずだ」

 自分を鼓舞したハルトは剣を構え直し、モンスターを睨む。そして、大地を踏みしめ斬り掛かる。片手剣を何度も振るうが、その甲殻は硬く思うように刃が通らない。

 アリスも頭を狩猟笛で殴り付けるが、まるで手応えがなく、攻撃が効いているとはとても思えなかった。

 

「ゴルルルッ!」

 弾かれながらも何度も攻撃をしていると、そのモンスターは鋭い爪を持った太い腕を振り上げる。ハルトは横転で躱し、彼の立っていた地面がドガッという音を立てて砕ける。ハルトは今度は脇腹を斬りつけるが、やはり攻撃が効きづらいようだった。

 それを見て、アリスは演奏でハルトの攻撃を強化しようと試みる。一度笛を体の横に構え、柄に息を送り込もうと口を付ける。だが、その瞬間モンスターがアリスのすぐ近くに迫っていた。回避をしようにもこの距離では間に合わない。演奏の隙を突かれることは何度かあったが、今回のそれは今までとは段違いの危険度だ。

「しまっ……………!」

 もう駄目だ─────アリスはあまりの恐怖に、両目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、いつまで経っても痛みを感じない。おそるおそる目を開くと、そこには────

 

 

「ぐっ………………う………」

 

 

「ハ…………ハルト様!?」

 

 ハルトが自分の前に立ち塞がり、真っ直ぐモンスターを睨んでいた。だが、モンスターの尻尾の先はハンターメイルを貫き、腹に深々と突き刺さっている。

「ハルト様、そんな……………私を庇って……」

「ア………リス、大、丈夫っ、ぐふっ」

 ハルトが咳き込むと、口から赤いものが垂れてくる。それが何であるか、頭で理解してはいるが理解したくない。認めたくない。

 やがて、尻尾がずるっと抜けると、彼の口と腹の傷口からどばっと赤黒い液体が溢れ、ハルトは力を失ってその場に倒れ伏した。

 

「そんな……………ハルト様、ハルト様っ!」

 アリスは武器を放り出し、ハルトのもとに駆け寄り何度も名を呼び体を揺する。

「ハルト様っ、ハルト様!しっかりしてください!ハルト様!!」

 だが、アリスの必死な呼びかけも虚しく、目を閉じ口元と腹を真っ赤に染めた彼は動かない。

「……………………そんな、うそ………です、よね?」

 そんなハルトの様子に、アリスの目から光が失せる。ハルトを討ったモンスターは、口を開けて吠えながら、赤い雫の残る尻尾を振るいアリスを威嚇する。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあーーーーーーーーーっ!!!」

 夜の大社跡に、少女の悲鳴が響いた─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ………………!?」

 

 気が付くと、アリスの視界に入って来たのはすっかり見慣れた光景。ハルトの家の、アリスの自室となった部屋だった。よほど汗をかいたのか、前髪は額に貼り付き、寝間着は湿って全身にピタッと纏わりついている。窓を見ると、朝日が山々の間から漏れ始めており、普段彼女が起きる時間よりずっと早い時間だった。

「今のは…………夢、だったのですか」

 ふうっと溜息を零し、安堵すると同時に、胸の中にえも知れぬ不安が渦巻くのを感じる。あれは夢にしてはあまりにリアルで、どうにもただの悪い夢で終わらせられない気がした。

 とりあえず、寝汗で濡れた服を着替えようと思い、倦怠感で重い体を起こしてタンスに手をかける。すると、

 

「どうした、アリス?大丈夫か?」

 バタバタと足音を立て、ハルトが部屋に入って来た。後で聞いた話だが、この時彼は早い時間に目が覚めてしまい、水を飲んでいたらアリスの部屋からうなされる声が聞こえてきた為様子を見に来たらしい。

「ハルト…………………様…………ううっ………」

 夢では得体のしれないモンスターに倒されたハルトが、今自分の前で立っている。アリスはすっかり安心し、涙を零していた。

「ど、どうした!?何かあったのか」

「いえ、少し怖い夢を見てしまって……………でも、ハルト様の顔を見たら落ち着きました」

「そ……………そうか、なら良かった」

 と言いながら、ハルトは顔を背ける。何事かとアリスが首をかしげた直後、ハッとする。

 

 

 先程アリスは起きた後、濡れた服が体にくっ付いているのが嫌だった為に寝間着を脱ぎ、更に下着も汗を含んでいたのでそれらも外した上でタンスから着替えを出そうとした。つまり、

 

 今の彼女は全裸だったのである。

 

「…………………っ!!」

 

 

 アリスは一瞬で顔を真っ赤に染め、声にならない悲鳴を上げた。

 勿論これは夢の中ではなく、今度こそ現実である。

 

 そして、その叫び声は里にいる人のうち半分以上を叩き起こしたという。

 

 

次回へ続く




 皆様、こんにちは。作者です。

 ということで、前回からたった半日で次話を投稿するという、当サイトでも異例のスピードの更新です。
 今回のストーリーは物語の構想段階でもかなり初期から考えていたので、字におこすのも簡単だったのです。

 では、少し短いですが今回はこれで失礼します。
 最後まで読んでくださってありがとうございます!
 またお会いしましょう。
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