あの後、家での二人の騒動は瞬く間に里の間に広がり、今は住民のほぼ全員がハンターズギルドに集まっていた。
「ゔぁあぅぅぅ~~、もぅお嫁に行けませぇん~~~っ」
「わ、悪かったよ。心配していたとはいえ、ノックもせずに入ったのは良くなかったよな」
そして、張本人である二人のうち、アリスはテーブルに顔を伏せて大泣きしている。ハルトはその隣に座り、何度も謝罪の言葉を口にするが、謝ったとてすぐに許されるものではないと彼自身も理解していた。
「まぁ、なんだ………ハルトも悪気があったわけではなかろう。儂からも頼む、許してやってはくれんか。」
「ふぐぅ……………皆様、この度はご迷惑をおかけしました。本当にすみません」
アリスはどうにか泣きやみ、涙を拭うと住民達に向き直り頭を下げる。
「いや、アリスに非はないはずだろ?どうして謝るんだ」
「私の行動で、こんなに大勢の方を集めてしまったのです。これで私に非がないとは言えません」
アリスの否定を許さないと言わんばかりの発言に、集会所が重い空気で包まれる。
「そ、そうです。お二人とも、せっかく集会所にいらしたのですから、クエストを見てみてはいかがです?」
しばしの沈黙の後、ヒノエが場の空気を切り替えようとぽんと両手を打って明るく二人に提案する。
「そう、だな。いつまでもくよくよしてちゃ駄目だよな」
「そうですね。ミノトさん、今はどんなクエストが入っていますか?」
「少々お待ちください、確認致します」
ハルトとアリスはそれに応じ、書類を調べるミノトを待つ。そして数分後、
「お待たせしました、新しいクエストが届いています。内容はドスフロギィの狩猟依頼、場所は水没林です」
ミノトから告げられた言葉を聞き、二人は固まってしまう。何故なら、二人はドスフロギィと戦うのも、水没林に行くのも経験がないのだ。
「お恥ずかしながら………私、水没林には行ったことないですし、毒攻撃をするモンスターとも戦ったことがないのです」
「あぁ、俺もアリスと同じだ。でも、だからって依頼を受けないわけにはいかないよな。苦戦するかもしれないけど、頑張ろうな」
「は………はいっ」
アリスは返事をしたが、自身がないことは明らかだった。空気を変える目的だったはずのヒノエの提案は、裏目に出て余計に空気を重くしてしまった。再びギルド内が沈黙すると、
「おはようさん。おろ、なんや人おるやないけ」
不意に、聞き慣れない訛りが混じった声が聞こえてくる。
入口を見ると、ハンター用の武器と防具を身に着けた青年が入って来ていた。
「えらい静かやったから、まだ誰もおらんかと思っててんけど、ちと安心したわ。ほんで、何やこの空気?」
天然パーマのかかった桃色を帯びた茶髪と、深い藍色の目をした人懐っこそうな顔立ちは、独特な話し方と相まって
「防具を着てるってことは、あんたハンターか?実はな…………」
「なるほどー、そういうことならボクも協力したってもええよ。ドスフロギィは何度か倒してるし、水没林も行ったことあるしな」
ハルトから一連の流れを聞くと、その青年は快く協力の意を示した。
確かに、彼が着ている異国のガンマンを思わせるような橙色の防具は、ドスフロギィやフロギィの素材を使用したフロギィシリーズだ。一体や二体討伐した程度で素材が集まるものでもないし、彼の言葉に嘘はないだろう。
「本当ですか?ありが…」
「た、だ、し!」
感謝を伝えようとするアリスを遮り、青年はビシッと人差し指をハルトの眼前に立てる。
「ギブアンドテークや。ボクがドスフロギィ狩猟に協力する代わりに、君らにはこちらの出す条件を一つのんで貰うで」
「条件だと?どんなのだよ」
「そうやなぁ、今回の依頼を達成したら、報酬の分け前はボクが一番多く貰う、ってのはどや?」
言い終わると、青年はにやっと笑みを作る。その屈託のない純粋な笑顔が、それが様子見でも何でもなく、心から出た言葉であることを表している。
「それだけでいいのか?俺は構わないが、アリスはどうだ」
「はい、私からもお願いします。私も元より、報酬目当てで依頼を受けるつもりではありませんでしたので」
二人が了承をあっさり受けたことに対し、青年は少々呆気にとられているようだった。
「こら驚いた!あんたら、金に対して執着ってもんはないんか?」
「俺からしたら、そこまで執着心が強いほうが珍しいと思うけどな」
「んー…………ま、ええわ。とりあえず、パーティは成立やな。ボクはユリウス・ライザー、ユーリって呼んでくれや」
「ハルト・クルーガーだ、よろしく頼む」
「アリス・フューリと申します。ユーリ様、よろしくお願いしますね」
三人のハンターは律儀に挨拶を交わし、その後フゲンの提案もありユーリが里に滞在する間はアリスの時と同様にハルトの家に泊まることになった。
「悪いのぉ、わざわざ部屋まで貸してもろて。ホンマ、この里の人らはお人良しっちゅーか何ちゅーか」
「そりゃどうも。それで、今日の夜には水没林に出発するんだろ?今のうちにドスフロギィの情報を教えてくれよ」
「せやな、じゃあ早速やけど、ドスフロギィの特徴といえばやっぱ毒ブレス攻撃や。これには毒液をそのまま吐き出す弾速の早いものと、ガードできひん霧状のものがあんねん。どちらにせよ、解毒薬と漢方薬は必須やな」
「でしたら、私のマギアチャームは旋律で毒を消すことができますので装備していきますね」
「そら助かるわ、でも過信は禁物やで。ほんで、他の鳥竜種と同じように配下のフロギィを呼ぶこともあるから、常に周囲に気を配る必要があるな」
ハルトとアリスはふんふんとユーリの話を聞きながら、ポーチの中にアイテムを準備していく。
「そして、ドスフロギィは喉元に毒を作る器官があるから、頭を部位破壊すればブレスを弱体化させられるで。まぁ正面に立つ分、ドスフロギィから攻撃を受けるリスクはあるけどな」
「でも、毒攻撃を封じることができるなら狙う意味はあるな。チャンスがあれば頭を狙うことにしよう」
その後、一通りの作戦会議を済ませ、三人はその日の夜ポポ車に乗って水没林へと向かうのだった。
次回へ続く
皆様、こんにちは。作者です。
ということで、今回はまた新しいハンターが二人のもとに現れました。果たして彼はどんな武器を使うのでしょうか?
ちなみに彼の話し方ですが、私は関西出身ではないので漫画やアニメの登場人物を参考にしています。どこかおかしな部分があったらごめんなさい。
次回はドスフロギィとの戦闘が始まります!お楽しみに。
では、今回はこの辺で失礼します。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
またお会いしましょう。