三人を威嚇したドスフロギィはまず、嘴を開いて噛み付こうとするが、三人は各々違う方向に回避。続けて尻尾を振り回すも、これも距離をとっていた為当たらない。アリスはいつも通り攻撃の合間を縫ってドスフロギィの頭を狙い、小回りの効くハルトとユーリは周囲のフロギィを掃討していく。
そうして三人で連携して攻撃を重ねていると、アリスの方を向いたドスフロギィの首元の袋が膨らんでいた。アリスは咄嗟に横転し、直後に毒狗竜の口から紫色の粘ついた液体が吐き出される。液体はそのまま放物線を描いてべしゃっと音を立てて地面に落ち、そこに生えていた草がみるみる萎れていく様子から、それが毒液であることは明確だった。
アリスは毒液から漂う刺激臭に顔をしかめながらも、ドスフロギィへの攻撃を再開する。近くにいたフロギィを仕留め終えたハルトも加わるが、ドスフロギィは後ろに大きく跳躍して二人の攻撃を躱した。
ハルトは短く舌打ちをしてドスフロギィを追うが、対する毒狗竜もハルトの方に近付いて来る。そして体当たりを躱すと、ハルトは何かを閃いて武器を収め、ドスフロギィの視界から外れるように小走りしながらポーチに手を突っ込む。
「よし、試してみるか」
小声で呟くと、ハルトは先程の肉エサを地面に置く。動きが早いドスフロギィに隙を作り、攻撃のチャンスを生もうと考えたのだ。
「ハルトはん、ちゃう!それはモンスターに食べさせるもんやない!」
「何っ!?」
ユーリが声を挙げてハルトに知らせるが、それがまずかった。予想外の反応にハルトは動きを止めてしまい、そしてドスフロギィも背後の存在に気付いたのだ。そしてハルトがしまったと思い前を向いて剣を構えた時には、目の前でドスフロギィが喉の袋を膨らませていた。
「ゴワォォォッ!」
刹那、ドスフロギィが紫色の霧を吐き出す。ハルトは避ける余裕もなく、正面から毒霧を浴びてしまう。
「ハルト様っ!」
「アカン、今行ったらアンタまで毒を受けてまう!」
「でも………!」
「ぐぅ……………っ」
やがて霧が晴れると、中にいたハルトは青い顔をして片膝をついており、見るからに具合が悪そうだった。その隙を逃さずドスフロギィが体当たりを喰らわせ、ハルトは軽々と吹き飛ばされる。
それを見たアリスは悲痛な表情を浮かべ、スライドビートで一気に距離を詰め連続して打撃を叩き込む。ドスフロギィはアリスに狙いを変え、尻尾攻撃で反撃に出る。肉薄していたアリスは躱しきれず、尻尾の先が少し肩に当たってしまったが、彼女は気にせず攻撃を続ける。
「あのアホ、冷静さを失っとる!」
ユーリは弾丸をLv2通常弾に切り替え、速射でドスフロギィを狙撃する。だが、素早く動き回るドスフロギィになかなか狙いが定まらず、背中や尻尾をかすめる程度にしか当てられない。すると、
「二人共、目閉じろ!」
聞こえてくる声に二人は咄嗟に目を瞑る。直後にドスフロギィが悲鳴を上げ、まばゆい光がエリアを包んだ。目を開けると、ドスフロギィは目を開けられず狼狽している。その間に、ハルトは二人のところに戻って来ていた。
「ハルト様!大丈夫ですか」
「あぁ、とりあえずな。心配かけてすまなかったな」
漢方薬を飲み終えた後、応急薬も飲んだハルトは顔色も元通りになり、体力も幾分か回復したようだった。
「って、ハルトはんもええけど、アリスはん。ジブン、何の為にマギアチャームを持って来とんねん。まずはハルトはんの毒を治すんが先やろがい」
ユーリの言葉を受け、アリスははっとする。
「す、すみません…………私としたことが、冷静さを欠いてしまって」
「いいよ、もう終わったことなんだから。毒はこの通り治ったし、次に失敗しなければいいさ」
「ま、いつまでもしょげてても仕方あらへんなっ」
と言い、ユーリはクロスブリッツを構え直す。そこで、彼がボウガンを構える姿を初めて注視したハルトはようやく気付く。
多くのライトボウガン使いのハンターは右手でグリップを握り、左手で銃身を支える体勢になるのだが、ユーリはその逆、左手でグリップを握って右手で銃身を支えていた。
ユーリは左利きだったのだ。ならば、今までの独特なライトボウガンの背負い方にも納得できる。
「そらっ!」
閃光玉の効果を受けたドスフロギィに、ユーリはLv2通常弾の速射を撃ち込む。先程と違い、標的は動き回っていないため的確に銃弾を命中させていく。
その一方、ハルトとアリスは反対側からドスフロギィを攻撃する。アリスは頭を、ハルトは胴体を攻撃する。そしてアリスが震打を決めると同時に、ドスフロギィも視界が回復した。
「グォッ、グォオーーッ」
三人を視界に捉えた毒狗竜は目を血走らせながら白い息を吐いており、明らかに怒っているようだ。そのまま二人を追い払おうと尻尾を振り回すが、アリスはスライドビートで躱し、ハルトは盾を構えて衝撃に後ずさりしながらもどうにか防ぐ。
続けてドスフロギィは毒袋を膨らませ、毒液を発射する。アリスとハルトは横に跳躍して斜線から外れるが、毒液は二人を大きく超えていく。
「まさか、ユーリ!?」
「のわぁっ!?」
完全に意表を突かれたユーリは慌てて横転するが、毒液が少しかかってしまったらしく、解毒薬を取り出そうとポーチを探っていた。それを見て、ユーリのもとに駆け寄ったアリスはマギアチャームの旋律を解放し、解毒効果のある音色を響かせる。その音を耳にしたユーリの身体からは毒が消え、更に体力も僅かに癒えた。
「ありがとな、今度はちゃんとできたやん」
「何度も同じ失敗は繰り返しません!」
そう言い終えると、ユーリに追撃を加えようと接近していたドスフロギィに三音演奏の打撃を叩き込む。自身の能力を上げ、加えてパーティ全員に体力回復と音の防壁を付与する。
攻撃を受けたドスフロギィは三人から離れて行き、別のエリアへ移動を始めた。それを見届けた三人は、砥石を使ったり弾の装填をする等して各々体制を整える。
「そういえば、この肉エサはモンスターに食べさせるものじゃないって言ってたけど、どうやって使うんだ?」
「それは水辺で使うんや。チャンスを見てボクが使うから、貸してみ」
その言葉に従い、ハルトは持っていた残りの肉エサをユーリに渡す。ユーリはそれをポーチに入れ、全員の準備が終わったのを確認すると三人はドスフロギィを追うのだった。
次回へ続く