モンスターハンター 焔の心   作:たつえもん

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第32話:強者との出会い

 アリス達がヨツミワドウの狩猟を達成してから、はや1ヶ月。カムラの里も各所で賑わいを見せ、里を訪れるハンターも日に日に増えるばかり。

 しかし、その日里の集会所は珍しく静まり返っていた。

 その原因は、駐在する三人のハンターにあった。

 

「………………どうしたもんか」

「は、ハルト様、元気を出してください。自信がないのは皆同じなんですから」

「って、言ってるアリスはんもやけどな……」

 三人共、 思いつめた表情で後ろ向きな発言をしている。普段の彼らからは考えにくい光景だった。

 

 

 

 

 

 事の発端は、15分ほど前である。

 ハンター三人がいつものようにギルドに向かい、入っているクエストを確認していると、見慣れない依頼書が貼りだされていた。

「ミノトはん、このクエストは何や?」

「そちらは………つい昨日、入ったばかりのものですね。寒冷群島でのフルフルの狩猟依頼になります」

 

 

「「「フルフル!?」」」

 

 ミノトの口から発せられたモンスターの名前に、三人は驚く。

 奇怪竜の別名を持つフルフルは、名前こそ可愛らしい印象を覚えるものの、実際には不気味な見た目と厄介な攻撃の数々から、ハンターからは嫌厭されるモンスターの一種であった。

 そして、この三人のハンターは、いずれもフルフルと戦ったことがない。その為、先程のような淀んだ空気になっていたのだ。

 

 

 

 

 しかし、いつまでも座って途方に暮れているわけにもいかない。そう思ったハルトは意を決して、

「とりあえず、依頼を受けようか。里にハンターは俺達しかいないんだし、俺達がやるしかないよな」

「そ、そうやね。ミノトはん…………」

 と、ユーリが立ち上がり、受付を済ませようとカウンターに向かおうすると、

 

 

「失礼する」

 

 

 突如、ギルドの入口からくぐもった低い声が聞こえてくる。そちらを見ると、モンスターの素材を使った鎧を着込み、大型の武器を背負った人物が入って来ていた。

 頭を丸ごと隠す形の兜を着用していたので、どんな顔かは分からないが、先程の声色や背丈から男性だろうと予想でき、更にその装備からその人物がハンターだということは想像に難くなかった。

 その武器も防具もハルト達が見たことのないものであり、三人とも自分より強いハンターだろうと推測している。そのハンターはカウンターに向かい、ミノトにギルドカードを提出すると一言だけ告げた。

「依頼はあるか?」

「今は……フルフルの狩猟依頼がありますが」

「受けよう」

「ですが………カードによれば、貴方は上位ハンターですよね?こちらは下位向けのクエストですが」

 上位ハンター。

 その言葉で、三人はほぼ同時に顔を見合わせた。

 

 ハンターズギルドは、ハンターの実力を示すものとしてHR(ハンターランク)以外の指標を設定している。

 それが、今ミノトの口にした言葉であり、最初に訓練校を卒業したハンターは下位からのスタートとなり、依頼達成を重ねてギルド本部にハンターとしての実績が認められると上位へと昇格し、より難易度の高い依頼が受けられるようになっている。そこから更にクエストをこなしていけば、より優れたハンター、「G級」として認定され、場合によっては国防レベルの依頼を受けることも可能となるという。

 

 

「構わない」

 ミノトはこの人物がそんな上位ハンターであることを鑑みて発言したのだが、彼は声のトーンを変えることなく返答した。

「ちょ、ちょっと待ってください」

 そのやり取りを聞いていて、ハルトは椅子から立ちハンターの元に向かう。

「その依頼は、俺達のチームが受けようとしてたんです」

「ということは、まだ受けていなかったということか」

「……でも、一応俺達が住んでる里だし、話し合いとか」

「おそらく、お前達はHR上でもこのクエストを受けられるんだろう?にも関わらず、すぐに受けなかったということは、自信がなかったんじゃないのか」

「……………確かに、それは事実です。なら、せめて俺達とパーティを組んで4人で」

「駄目だ。この依頼は俺一人で行く」

 一切の反論を辞さないという意思を示すかの如く、そのハンターは全く同じ声色で話し続けた。

「あのっ!それって、私達が弱そうだから足手まといになるってことですか!?」

 言い淀むハルトの様子を見ていたアリスも加わり、先程の発言に反論してみせる。しかしそれにも全く語気を変えず、

「そんな事は言っていない。俺に仲間は必要ない、ただそれだけだ」

 

 男の発言に、皆再び静まり返ってしまった。しかし、

「あなたにどんな事情があるのかは知らない。でも、この依頼は…………俺達のチームで達成したいんです。だから、お願いします、俺達三人を同行させてください!」

 言い終わると同時に、ハルトは頭を下げる。アリスと、遅れて二人の元に来たユーリも続く。

 そのハンターはしばらく黙って見ていたが、

 

「顔を上げろ」

 と、不意に一言だけ言う。そしてハルトの方を向き、やはり先程までと口調を変えずに質問をする。

「お前は何故、この依頼にこだわる?」

「この依頼を出したのは、遠征から帰ろうとしてた(ウチ)の住民なんです。俺は、里と皆を守りたくてハンターになった。だから……その依頼者は、俺の手で救ってやりたい」

 言い終え、ハルトは真っ直ぐハンターの方を見据える。その眼には、一点の曇りも感じない。

「………………」

 ハルトのその表情を見た彼の脳裏に、ある記憶が蘇って来る。

 

 

 

 

 

『本当にチームを離脱するのか』

『ああ…………俺には、複数人(マルチ)で狩りに行く資格はない』

『お前がそう言うのなら、私は止めん。だが、これだけは伝えておく。

 

過去の自分を責めるな、未来を生きろ』

 

 

 

 

 

「…………………ギル?」

 そのハンターは何かを思い出したかのように小さく呟いた。

「あの、どうかしましたか」

「いや、こちらの問題だ。それよりも」

 と言い、ミノトの立つクエストカウンターの方を向き、

 

 

「先程のフルフル狩猟のクエスト、三名追加だ。四人パーティで向かう」

 

 その言葉を聞いた途端、ハルト達三人の顔が明るくなり、再び頭を下げる。

「あ、ありがとうございます!」

「危ないと感じたらすぐに逃げろ、フルフルは四人がかりでも勝てないことはザラにある」

「そや、まだ名前を教えとらんかったな。ボクはユリウス・ライザーいいます、ユーリでええよ」

「アリス・フューリです、よろしくお願いします」

「俺はハルト・クルーガー、足手まといにならない程度には頑張るつもりです」

「…………クローム・ヴァリアス。

今日の夜に出発する、早めに準備を済ませておけ」

 

 その後、クロームと名乗ったハンターの助言の元、道具や装備を整えた一行は、フルフルの待つ寒冷群島へと出発するのだった。

 

 

次回へ続く

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